[期間限定イベント"千夜一夜と月の使者"]浅多 侑思 編
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【浅多 侑思】
「……おい」
窓の側に立ち、たっぷりと月明かりを浴びる。
その青い光を受けた侑思の顔は、酷く怯えたような表情をしていた。
【クロノ】
「どうした」
口から零れ落ちた声は、自分の物なのに何かが違う。
【浅多 侑思】
「お前……耳」
【クロノ】
「耳がどうし……タ?」
【浅多 侑思】
「やたら小刻みに揺れている」
【クロノ】
「アア、それは……満月のチカラを受けテ、ワタシの力が……暴走始めタからデス」
【浅多 侑思】
「……お前、誰だ。クロノじゃないのか?」
怯えた瞳の中に、微かな怒りが煌めいた。
その顔が、なんだか美しいと……俺は一枚ガラスを隔てたようなところから眺めていた。
【クロノ】
(これは俺だ)
【クロノ】
「ワタシは……ワタシ」
意識と、声がリンクしながら反響し合う。
自分でも一体、何がどうなっているのか理解できなかった。
【浅多 侑思】
「違う、お前は……クロノじゃない!」
【浅多 侑思】
「お前は……お前が、兎……なのか?」
【クロノ】
「フッフッフ。モウ、ソンナコトカンケイアリマセン」
【クロノ】
「コノ、キメラレタヒマデニ、ジョウブツデキナカッタ……」
【クロノ】
「ダカラ」
【浅多 侑思】
「だから何だ? 一体、どうなるんだ!?」
必死に訴えるように縋り付いてくる。
そんな侑思の顔が堪らなくイイ、と俺は感じていた。
【クロノ】
「モウ、テンへノボレナイ」
【クロノ】
「モウ……ズット、チジョウニイル、シカナイ」
【浅多 侑思】
「お、お前が地上に縛られるというのは構わない!」
【浅多 侑思】
「だが、だからといってなぜ、クロノの身体を乗っ取っているんだ!」
【浅多 侑思】
「返せ。あいつを俺の元に返せ!!」
【浅多 侑思】
「クロノの身体も、心も……全て俺のものなんだ!」
必死な声が、響いてくる。
虚ろになった俺の中で、ぐわんぐわん、こだまする。
【クロノ】
(ああ、そう……俺は、お前のもの……)
【クロノ】
(そうだ、俺は……)
侑思の声がスッと染み込んできて、切れていた何かの糸が繋がりかける。
【クロノ】
「そ、うだ……俺……は」
【浅多 侑思】
「クロノ、クロノなのか? しっかりしろ」
【浅多 侑思】
「お前は死神だろ? 天に還れないという魂を、刈り取って連れて行くのがお前の仕事じゃないのか!」
【クロノ】
「あ、ああ……あ……」
【ウサギ】
『ダメ。コノカラダ、ワタシノモノ』
【クロノ】
「違う。これは、俺のもの……だ」
意識をはっきり取り戻して、手元に死神の鎌を具現化させた。
【クロノ】
「最初っから、こうすればよかったんだ」
【クロノ】
「さっさと鎌で刈れば……!」
振りあげて、頭上に伸びる耳を掴んで振り下ろす。
【ウサギ】
『ヤメ……ロ。ヤメロ……! ヤメロォオオオオ!!』
激しい抵抗と、凄まじい断末魔が頭の中に響く。
【クロノ】
「ぐっ」
一瞬怯んだ、その隙を突いて──兎が再び俺の身体を支配する。
そして、耳を刈り取ろうとした鎌を……横に振り払った。
その鋭い刃の先には、愛おしい人の顔。
【クロノ】
(やめろ。やめろぉおおおお!!)
【浅多 侑思】
「クロノ……っ」
【クロノ】
(侑思!!)
酷く鈍い、嫌な音が聞こえて、俺の身体の血が逆行する。
身体の支配を取り戻して、見えた目の前には──赤く染まった侑思の眼鏡が落ちていた。
【クロノ】
「クソッ、クソ……!!」
荒ぶる感情に任せて、長い耳をぶった切る。
【ウサギ】
『ウ、ウァアアアッッ』
完全に自分の身体を取り戻し、鎌をかなぐり捨てて床に座り込む侑思を抱きしめた。
【クロノ】
「侑思、侑思!」
【浅多 侑思】
「……クロノ」
【クロノ】
「ごめん、侑思」
【クロノ】
「こんなことになる前に……さっさとあんな奴、葬っておけば……」
どうしようもない後悔に苛まれる俺の顔を、拙い手付きで触れてくる。
【クロノ】
「ごめん、本当にごめん」
どんなに謝っても、許されるわけがない。
鎌で顔を斬りつけられた侑思は──目が見えなくなっていたのだから。
【浅多 侑思】
「泣いて……るのか?」
【浅多 侑思】
「そんな、悲しまなくてもいい…」
【浅多 侑思】
「僕の目から光は失われたけど、お前と一緒に見た光景がしっかりと焼き付いている……から」
【浅多 侑思】
「今、目の前には果てない砂漠と、澄んだ空に挟まれた美しいオアシスが見えてる」
【浅多 侑思】
「だから、悲しい事なんかない」
【浅多 侑思】
「だから……泣く必要なんか、ないんだよクロノ」
こんな状態に陥りながら、それでも俺の心配をしている。
哀しいくらい献身的な愛を感じながら──俺は絶望の中に落ちていった。
期間限定イベント
「千夜一夜と月の使者」
浅多 侑思編 END
「……おい」
窓の側に立ち、たっぷりと月明かりを浴びる。
その青い光を受けた侑思の顔は、酷く怯えたような表情をしていた。
【クロノ】
「どうした」
口から零れ落ちた声は、自分の物なのに何かが違う。
【浅多 侑思】
「お前……耳」
【クロノ】
「耳がどうし……タ?」
【浅多 侑思】
「やたら小刻みに揺れている」
【クロノ】
「アア、それは……満月のチカラを受けテ、ワタシの力が……暴走始めタからデス」
【浅多 侑思】
「……お前、誰だ。クロノじゃないのか?」
怯えた瞳の中に、微かな怒りが煌めいた。
その顔が、なんだか美しいと……俺は一枚ガラスを隔てたようなところから眺めていた。
【クロノ】
(これは俺だ)
【クロノ】
「ワタシは……ワタシ」
意識と、声がリンクしながら反響し合う。
自分でも一体、何がどうなっているのか理解できなかった。
【浅多 侑思】
「違う、お前は……クロノじゃない!」
【浅多 侑思】
「お前は……お前が、兎……なのか?」
【クロノ】
「フッフッフ。モウ、ソンナコトカンケイアリマセン」
【クロノ】
「コノ、キメラレタヒマデニ、ジョウブツデキナカッタ……」
【クロノ】
「ダカラ」
【浅多 侑思】
「だから何だ? 一体、どうなるんだ!?」
必死に訴えるように縋り付いてくる。
そんな侑思の顔が堪らなくイイ、と俺は感じていた。
【クロノ】
「モウ、テンへノボレナイ」
【クロノ】
「モウ……ズット、チジョウニイル、シカナイ」
【浅多 侑思】
「お、お前が地上に縛られるというのは構わない!」
【浅多 侑思】
「だが、だからといってなぜ、クロノの身体を乗っ取っているんだ!」
【浅多 侑思】
「返せ。あいつを俺の元に返せ!!」
【浅多 侑思】
「クロノの身体も、心も……全て俺のものなんだ!」
必死な声が、響いてくる。
虚ろになった俺の中で、ぐわんぐわん、こだまする。
【クロノ】
(ああ、そう……俺は、お前のもの……)
【クロノ】
(そうだ、俺は……)
侑思の声がスッと染み込んできて、切れていた何かの糸が繋がりかける。
【クロノ】
「そ、うだ……俺……は」
【浅多 侑思】
「クロノ、クロノなのか? しっかりしろ」
【浅多 侑思】
「お前は死神だろ? 天に還れないという魂を、刈り取って連れて行くのがお前の仕事じゃないのか!」
【クロノ】
「あ、ああ……あ……」
【ウサギ】
『ダメ。コノカラダ、ワタシノモノ』
【クロノ】
「違う。これは、俺のもの……だ」
意識をはっきり取り戻して、手元に死神の鎌を具現化させた。
【クロノ】
「最初っから、こうすればよかったんだ」
【クロノ】
「さっさと鎌で刈れば……!」
振りあげて、頭上に伸びる耳を掴んで振り下ろす。
【ウサギ】
『ヤメ……ロ。ヤメロ……! ヤメロォオオオオ!!』
激しい抵抗と、凄まじい断末魔が頭の中に響く。
【クロノ】
「ぐっ」
一瞬怯んだ、その隙を突いて──兎が再び俺の身体を支配する。
そして、耳を刈り取ろうとした鎌を……横に振り払った。
その鋭い刃の先には、愛おしい人の顔。
【クロノ】
(やめろ。やめろぉおおおお!!)
【浅多 侑思】
「クロノ……っ」
【クロノ】
(侑思!!)
酷く鈍い、嫌な音が聞こえて、俺の身体の血が逆行する。
身体の支配を取り戻して、見えた目の前には──赤く染まった侑思の眼鏡が落ちていた。
【クロノ】
「クソッ、クソ……!!」
荒ぶる感情に任せて、長い耳をぶった切る。
【ウサギ】
『ウ、ウァアアアッッ』
完全に自分の身体を取り戻し、鎌をかなぐり捨てて床に座り込む侑思を抱きしめた。
【クロノ】
「侑思、侑思!」
【浅多 侑思】
「……クロノ」
【クロノ】
「ごめん、侑思」
【クロノ】
「こんなことになる前に……さっさとあんな奴、葬っておけば……」
どうしようもない後悔に苛まれる俺の顔を、拙い手付きで触れてくる。
【クロノ】
「ごめん、本当にごめん」
どんなに謝っても、許されるわけがない。
鎌で顔を斬りつけられた侑思は──目が見えなくなっていたのだから。
【浅多 侑思】
「泣いて……るのか?」
【浅多 侑思】
「そんな、悲しまなくてもいい…」
【浅多 侑思】
「僕の目から光は失われたけど、お前と一緒に見た光景がしっかりと焼き付いている……から」
【浅多 侑思】
「今、目の前には果てない砂漠と、澄んだ空に挟まれた美しいオアシスが見えてる」
【浅多 侑思】
「だから、悲しい事なんかない」
【浅多 侑思】
「だから……泣く必要なんか、ないんだよクロノ」
こんな状態に陥りながら、それでも俺の心配をしている。
哀しいくらい献身的な愛を感じながら──俺は絶望の中に落ちていった。
期間限定イベント
「千夜一夜と月の使者」
浅多 侑思編 END