[本編] 国重 昴正 編
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しかし、そこで俺達を待っていたのは絶望だった。
じいに渡されていた死亡予定者リストの通りにその場所に向かったが。
一歩間に合わず、地面にはそのチンピラが転がっていた。
周囲に群がる野次馬の中に入って、怪しい人物がいないか探したが、見つかるわけがなかった。
死因は刺殺。
『別れさせ』のターゲットとなり、自殺した男の恋人に刺された。
そう、死亡予定者リストには書いてあった。
【国重 昂正】
「手掛かりの男は死亡、事件を起こしていた会社は消滅、か」
昂正は、渡された書類をテーブルの上に放って足を組んだ。
たった今、事件解決の依頼をしてきた昂正の知り合いが事務所を出て行ったところだった。
『事件はこれでひとまず終わりだな』
そう言ってがっくりと肩を落として去っていく背中を、俺達はただ、見送ることしかできなかった。
……もし俺が、知っていることの全てを昂正に話していれば。
もう少し結末は変わっていたのだろうか。
【クロノ】
(…そんなの無理だ)
死亡者リストのことを死神以外に話すのはタブーだ。
これでも死神の端くれだ。
こうなってしまった今再び考えても、禁忌を破るわけにはいかなかったという結論しか出ない。
それでも、別の言い方をしたり、それとなく昂正を誘導したり、しようと思えばできた筈。
【国重 昂正】
「……何か考え事か?」
【クロノ】
「あ……うん。ちょっと、ね」
【国重 昂正】
「……ユリスとかって言う奴、お前の仕事仲間なんだったな」
【国重 昂正】
「だからって、手伝っていいこと、無理なこと、どうしようもねえことは、色々あるだろ」
【クロノ】
「……昂正」
かなり落ち込んだ顔をしていたのか、昂正はわざわざ俺が座っていたソファの方までやってきて。
隣に腰を下ろして、そっと俺の体を引き寄せた。
【国重 昂正】
「俺は、お前がいてくれたらそれでいい」
【クロノ】
「……うん、俺も」
【国重 昂正】
「お前が助けに来てくれた時、本当に嬉しかったんだぞ」
【国重 昂正】
「……まあ、絶対来るだろうと思ってたから、ほとんど心配してなかったんだけどな」
【クロノ】
「酷い。もっと必死で呼んでよ、俺のこと」
【国重 昂正】
「だから呼んでたって。心の中でな」
【国重 昂正】
「お前も早く体治せ。……あのじーさんが言うには、なんか夢の中でド偉いことやったんだと?」
【クロノ】
「…………」
【国重 昂正】
「……何にせよ、早く治せ。そんで、一緒に温泉行こうぜ」
【クロノ】
「…うん」
運命を故意に捻じ曲げられて死亡者リストに載ってしまった魂は、ほとんどが彷徨うことになってしまう。
その夜、殺されたチンピラの魂を回収して死神界へと運ぶため。
俺は疲労しきった体を引きずって、一時、探偵事務所を後にした。
【国重 昂正】
「……はー」
【国重 昂正】
「ま、暗くなっても仕方ねえからな。ぱーっと酒でも飲むか!」
【国重 昂正】
「……あいつ戻ってきたら、改めてお礼を言わねえとな」
【国重 昂正】
「あんなに疲れてんのも、多分俺のせいなんだろうな、……ん?」
【国重 昂正】
「……お、お前……あのビルに居た…」
【???】
「はい、今晩は」
【???】
「相変わらず、癪に触るくらい元気にしてたみてえだな」
【国重 昂正】
「……出てけ。やっぱりお前が黒幕か」
【???】
「だったら何だよ? オッサンには関係ねーだろ」
【国重 昂正】
「……っ!」
【???】
「おっ、なんだそりゃホウキか? ははは面白ぇ、ちゃんと頭狙えよ!!」
【???】
「人間が死神とやりあえるか試してみろよ。打ち所が良けりゃあ、のた打ち回ってこのまま退散してやるかもなぁ?」
【国重 昂正】
「本当にやるぞ」
【???】
「どうぞどうぞ。やっちゃって」
【???】
「……はい残念。そんなノロマな素振りにあたるわけねーだろバーカ」
【国重 昂正】
「――――!!」
【???】
「そもそもそんな優しい奴に見えるか? 俺が」
【???】
「そんな生っちょろい条件出すくらいなら、あの時てめえのこと殺そうとしてねえんだよ」
【???】
「ぶっちゃけ計算外だったわけよ。てめえらの『愛の力』ってやつ」
【???】
「あああああああ反吐が出る!! 大っ嫌いなんだよなぁそういうクッセーの!!」
【???】
「お前がしぶとくあいつのこと信じてるの、ホンットむかつくわ」
【???】
「だから今度こそきちんと、カッキリと、真面目に殺してやる」
【???】
「お前のことを忘れるくらい、俺への憎悪を刻みつけてやる。あいつに」
【???】
「お前にとっての唯一幸せなことは」
【???】
「寿命が来てねえ魂を狩った死神も、消滅するってことかなぁ?」
【???】
「……はははははははははは!!」
―――――――……
数十年後、街に密やかに流れる噂があった。
『何でも解決してもらえる幻の探偵事務所があるらしい』、と。
なんでもそこの事務所所長は、黒い髪を結い上げた、恐いくらいに美しい男で。
恋仲であった前事務所所長を殺されて嘆き悲しみ。
恋人との思い出を胸に、前事務所所長の意志を受け継いだのだと。
だから、愛する人のことを強く信じている者だけが、見つけることができるのだという―――。
―国重4章・BLACK END―
じいに渡されていた死亡予定者リストの通りにその場所に向かったが。
一歩間に合わず、地面にはそのチンピラが転がっていた。
周囲に群がる野次馬の中に入って、怪しい人物がいないか探したが、見つかるわけがなかった。
死因は刺殺。
『別れさせ』のターゲットとなり、自殺した男の恋人に刺された。
そう、死亡予定者リストには書いてあった。
【国重 昂正】
「手掛かりの男は死亡、事件を起こしていた会社は消滅、か」
昂正は、渡された書類をテーブルの上に放って足を組んだ。
たった今、事件解決の依頼をしてきた昂正の知り合いが事務所を出て行ったところだった。
『事件はこれでひとまず終わりだな』
そう言ってがっくりと肩を落として去っていく背中を、俺達はただ、見送ることしかできなかった。
……もし俺が、知っていることの全てを昂正に話していれば。
もう少し結末は変わっていたのだろうか。
【クロノ】
(…そんなの無理だ)
死亡者リストのことを死神以外に話すのはタブーだ。
これでも死神の端くれだ。
こうなってしまった今再び考えても、禁忌を破るわけにはいかなかったという結論しか出ない。
それでも、別の言い方をしたり、それとなく昂正を誘導したり、しようと思えばできた筈。
【国重 昂正】
「……何か考え事か?」
【クロノ】
「あ……うん。ちょっと、ね」
【国重 昂正】
「……ユリスとかって言う奴、お前の仕事仲間なんだったな」
【国重 昂正】
「だからって、手伝っていいこと、無理なこと、どうしようもねえことは、色々あるだろ」
【クロノ】
「……昂正」
かなり落ち込んだ顔をしていたのか、昂正はわざわざ俺が座っていたソファの方までやってきて。
隣に腰を下ろして、そっと俺の体を引き寄せた。
【国重 昂正】
「俺は、お前がいてくれたらそれでいい」
【クロノ】
「……うん、俺も」
【国重 昂正】
「お前が助けに来てくれた時、本当に嬉しかったんだぞ」
【国重 昂正】
「……まあ、絶対来るだろうと思ってたから、ほとんど心配してなかったんだけどな」
【クロノ】
「酷い。もっと必死で呼んでよ、俺のこと」
【国重 昂正】
「だから呼んでたって。心の中でな」
【国重 昂正】
「お前も早く体治せ。……あのじーさんが言うには、なんか夢の中でド偉いことやったんだと?」
【クロノ】
「…………」
【国重 昂正】
「……何にせよ、早く治せ。そんで、一緒に温泉行こうぜ」
【クロノ】
「…うん」
運命を故意に捻じ曲げられて死亡者リストに載ってしまった魂は、ほとんどが彷徨うことになってしまう。
その夜、殺されたチンピラの魂を回収して死神界へと運ぶため。
俺は疲労しきった体を引きずって、一時、探偵事務所を後にした。
【国重 昂正】
「……はー」
【国重 昂正】
「ま、暗くなっても仕方ねえからな。ぱーっと酒でも飲むか!」
【国重 昂正】
「……あいつ戻ってきたら、改めてお礼を言わねえとな」
【国重 昂正】
「あんなに疲れてんのも、多分俺のせいなんだろうな、……ん?」
【国重 昂正】
「……お、お前……あのビルに居た…」
【???】
「はい、今晩は」
【???】
「相変わらず、癪に触るくらい元気にしてたみてえだな」
【国重 昂正】
「……出てけ。やっぱりお前が黒幕か」
【???】
「だったら何だよ? オッサンには関係ねーだろ」
【国重 昂正】
「……っ!」
【???】
「おっ、なんだそりゃホウキか? ははは面白ぇ、ちゃんと頭狙えよ!!」
【???】
「人間が死神とやりあえるか試してみろよ。打ち所が良けりゃあ、のた打ち回ってこのまま退散してやるかもなぁ?」
【国重 昂正】
「本当にやるぞ」
【???】
「どうぞどうぞ。やっちゃって」
【???】
「……はい残念。そんなノロマな素振りにあたるわけねーだろバーカ」
【国重 昂正】
「――――!!」
【???】
「そもそもそんな優しい奴に見えるか? 俺が」
【???】
「そんな生っちょろい条件出すくらいなら、あの時てめえのこと殺そうとしてねえんだよ」
【???】
「ぶっちゃけ計算外だったわけよ。てめえらの『愛の力』ってやつ」
【???】
「あああああああ反吐が出る!! 大っ嫌いなんだよなぁそういうクッセーの!!」
【???】
「お前がしぶとくあいつのこと信じてるの、ホンットむかつくわ」
【???】
「だから今度こそきちんと、カッキリと、真面目に殺してやる」
【???】
「お前のことを忘れるくらい、俺への憎悪を刻みつけてやる。あいつに」
【???】
「お前にとっての唯一幸せなことは」
【???】
「寿命が来てねえ魂を狩った死神も、消滅するってことかなぁ?」
【???】
「……はははははははははは!!」
―――――――……
数十年後、街に密やかに流れる噂があった。
『何でも解決してもらえる幻の探偵事務所があるらしい』、と。
なんでもそこの事務所所長は、黒い髪を結い上げた、恐いくらいに美しい男で。
恋仲であった前事務所所長を殺されて嘆き悲しみ。
恋人との思い出を胸に、前事務所所長の意志を受け継いだのだと。
だから、愛する人のことを強く信じている者だけが、見つけることができるのだという―――。
―国重4章・BLACK END―
