[本編] 国重 昴正 編
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【クロノ】
「……収穫なし、と」
昂正に言われるがまま管理人室を覗いたのは良いんだけど、何の手掛かりもない。
適当に引き出し開けたり、その辺の棚の中身をひっくり返したりもしたけど。
アビスに関係ありそうな書類は何も入ってなかった。
仕方なく別の階にも移動して、一つ一つ部屋を回ってみたが、めぼしい手掛かりはない。
………………
最後に残った屋上に来て溜息をついていたところ、じいが目の前に現れた。
【クロノ】
「おわ、びっくりした……。何か進展でもあった?」
【アンク】
「はい。私の方でも、アビスについて調べておりましたところ」
【アンク】
「…まずはこちらを御覧ください。新宿区内での死亡者リストです」
【アンク】
「このページの……この男が、アビスを経営していた者であることがわかりました」
【クロノ】
「……チンピラじゃん」
【アンク】
「左様でございます。まあ、こういう輩の方が、黒幕としては扱いが楽だったのでしょうね」
【アンク】
「この男の名前が、突然、新宿区内の死亡者リストに現れたのです」
【クロノ】
「……それって、死亡場所が変わったっていうことだよな」
【アンク】
「左様でございます。運命が、人為的に捻じ曲げられたということになります」
【アンク】
「人間にはそのようなことは出来ませんので、人外の何かによって……と言った方が正しいですかな」
【クロノ】
「じゃあ、この男の死亡場所に先回りすれば、死ぬ前に黒幕のことを聞き出せるかもしれない…」
【クロノ】
「ありがとう、じい。さっそく昂正に伝えてくる」
引き続き調査を進めて参りますと残してじいが去るのと同時に、俺も急いで階下へ向かう。
【クロノ】
「昂正、新情報が――――」
【クロノ】
「って、昂正、おい!」
部屋の中で倒れている昂正に駆け寄り、慌てて抱き起こす。
【クロノ】
「…………っ!息はある…よかった」
触れ合うくらいに顔を近づけると浅く呼吸する音がして、知らず止めてしまっていた息を絞り出した。
【クロノ】
「昂正…!しっかりしろ!」
だけど顔色も悪く、幾ら声をかけてもぐったりとしていて反応がない。
その上、昨日の男と同じように、体から魔力の残滓が感じられる。
これは只事ではないと判断し、去ったばかりのじいを呼び戻して。
改良したリビドーを持って来させて、急いで装着する。
【アンク】
「脈が荒い……、それに、意識どころか、深層心理まで深く眠っています」
【アンク】
「お気をつけください。何かとても強力な魔力装置によって……」
【クロノ】
「行ってくるから、じいはサポートよろしく!」
じいの言葉を聞き終わらないうちに、俺は昂正の夢の中へ飛び込む。
昂正の夢は、相変わらずロマンチックだった。
以前の夢と同じ庭園で。
その一角に、とある姿を見つけた。
……沢山の、俺だ。
【クロノ】
『ねえ、もういい加減わかっただろ? 俺が黒幕なんだよ』
【クロノ】
『今更そんなに否定することもないだろ。俺がやりそうなことじゃない』
【クロノ】
『だって俺は死神だよ? お前とは違うんだよ』
【クロノ】
『俺が起業して金を得ることの何が不思議なの』
【クロノ】
『俺だってこっちの世界に慣れてきたし、欲しいものもやりたいこともあるんだよ』
【クロノ】
『あんたと別れてさ、自由になりたいんだ』
【クロノ】
『若い体はいいね。何度出しても枯れないし、何度でも俺の相手をしてくれる』
【クロノ】
『実際、昂正に昨日拒まれちゃったんだし、浮気するのも当然だと思わない?』
【クロノ】
『それともまだタチやりたいって思ってるの? なら別れて別々のパートナー探そうよ』
【クロノ】
「あー、クソ、うざい。何なのこいつら!」
沢山の俺の間を掻い潜って輪の中央に顔を出すと、
昂正は突っ立ったままぼんやりと地面を見つめていた。
【クロノ】
「昂正! こいつらは偽物だ! こっちに手を伸ばして……、わっ!」
【クロノ】
『昂正、別れよう』
【クロノ】
『別れよう昂正。それでお前は別な人を抱きなよ』
【クロノ】
『俺だってネコやりたくない相手のこと組み敷くのは良心が痛むから』
【クロノ】
「だ…っからこいつらは偽物だから! 聞く必要ない!」
【クロノ】
『そいつは偽物だから、聞かなくていい。俺が本物だよ。オッサンなんか大嫌い』
【国重 昂正】
「…………」
幾ら声をかけても届かない。
こいつら全員ぶった切って、
昂正だけを救い出そうと鎌を錬成しようとした時。
半分の俺が振り返って、俺の体を雁字搦めにして封じた。
【クロノ】
「……っ離せ、この…!」
【クロノ】
『昂正、どうせ最後なんだから、気持ちいいことしてあげるね』
【クロノ】
『大丈夫、誰にも邪魔させない。だってこれが最後なんだから……』
棒立ちになっている昂正に無数の手が伸びて、剥ぎ取るように服を脱がせていく。
【クロノ】
「……!」
そして露出しかけた下半身に、偽物の俺が一気に群がる。
自分の中で、ぶちん、と何かが切れた音がした。
鎌の錬成を防ごうと腕全体にまとわりついていた偽物の体が、一瞬で蒸発する。
溶かした鉄のように真っ赤になった掌から出てきたのは、特大サイズの鎌。
死ぬほど疲れることを理由に、金輪際二度と使うものかと誓った、俺の最終兵器。
【クロノ】
「――――邪魔なんだよ!! 退け!!」
一薙ぎすれば、空間に亀裂が走り、同時に一刀両断された偽物の体がボロボロと地面に崩れる。
降ってくる偽物の残骸の雨の中、俺は昂正の元へと風のように走った。
【国重 昂正】
「…………」
【クロノ】
「早く起きろよ、バカ」
【クロノ】
「一緒に温泉行くんだろ?」
【クロノ】
「その約束が果たされるまで、あんたのこと裏切るわけないじゃん」
【クロノ】
「久し振りに旅行に行こうって、言ってたじゃん」
【クロノ】
「あんなとこ、一人で行ったってつまんない。俺、そこまでお一人様に慣れてない」
【クロノ】
「風呂入って、美味いメシ食って、エロいことすんだろ?」
【クロノ】
「浴衣着た俺見て、うなじがどうのーって言うつもりだったんだろ?」
【クロノ】
「俺だって見たいよ。オッサンみたいに、風呂入って熱燗飲んでる昂正を」
【クロノ】
「タチやりたいって言うなら、今度こそ、ちゃんと考えるからさ」
【クロノ】
「だから………」
「……収穫なし、と」
昂正に言われるがまま管理人室を覗いたのは良いんだけど、何の手掛かりもない。
適当に引き出し開けたり、その辺の棚の中身をひっくり返したりもしたけど。
アビスに関係ありそうな書類は何も入ってなかった。
仕方なく別の階にも移動して、一つ一つ部屋を回ってみたが、めぼしい手掛かりはない。
………………
最後に残った屋上に来て溜息をついていたところ、じいが目の前に現れた。
【クロノ】
「おわ、びっくりした……。何か進展でもあった?」
【アンク】
「はい。私の方でも、アビスについて調べておりましたところ」
【アンク】
「…まずはこちらを御覧ください。新宿区内での死亡者リストです」
【アンク】
「このページの……この男が、アビスを経営していた者であることがわかりました」
【クロノ】
「……チンピラじゃん」
【アンク】
「左様でございます。まあ、こういう輩の方が、黒幕としては扱いが楽だったのでしょうね」
【アンク】
「この男の名前が、突然、新宿区内の死亡者リストに現れたのです」
【クロノ】
「……それって、死亡場所が変わったっていうことだよな」
【アンク】
「左様でございます。運命が、人為的に捻じ曲げられたということになります」
【アンク】
「人間にはそのようなことは出来ませんので、人外の何かによって……と言った方が正しいですかな」
【クロノ】
「じゃあ、この男の死亡場所に先回りすれば、死ぬ前に黒幕のことを聞き出せるかもしれない…」
【クロノ】
「ありがとう、じい。さっそく昂正に伝えてくる」
引き続き調査を進めて参りますと残してじいが去るのと同時に、俺も急いで階下へ向かう。
【クロノ】
「昂正、新情報が――――」
【クロノ】
「って、昂正、おい!」
部屋の中で倒れている昂正に駆け寄り、慌てて抱き起こす。
【クロノ】
「…………っ!息はある…よかった」
触れ合うくらいに顔を近づけると浅く呼吸する音がして、知らず止めてしまっていた息を絞り出した。
【クロノ】
「昂正…!しっかりしろ!」
だけど顔色も悪く、幾ら声をかけてもぐったりとしていて反応がない。
その上、昨日の男と同じように、体から魔力の残滓が感じられる。
これは只事ではないと判断し、去ったばかりのじいを呼び戻して。
改良したリビドーを持って来させて、急いで装着する。
【アンク】
「脈が荒い……、それに、意識どころか、深層心理まで深く眠っています」
【アンク】
「お気をつけください。何かとても強力な魔力装置によって……」
【クロノ】
「行ってくるから、じいはサポートよろしく!」
じいの言葉を聞き終わらないうちに、俺は昂正の夢の中へ飛び込む。
昂正の夢は、相変わらずロマンチックだった。
以前の夢と同じ庭園で。
その一角に、とある姿を見つけた。
……沢山の、俺だ。
【クロノ】
『ねえ、もういい加減わかっただろ? 俺が黒幕なんだよ』
【クロノ】
『今更そんなに否定することもないだろ。俺がやりそうなことじゃない』
【クロノ】
『だって俺は死神だよ? お前とは違うんだよ』
【クロノ】
『俺が起業して金を得ることの何が不思議なの』
【クロノ】
『俺だってこっちの世界に慣れてきたし、欲しいものもやりたいこともあるんだよ』
【クロノ】
『あんたと別れてさ、自由になりたいんだ』
【クロノ】
『若い体はいいね。何度出しても枯れないし、何度でも俺の相手をしてくれる』
【クロノ】
『実際、昂正に昨日拒まれちゃったんだし、浮気するのも当然だと思わない?』
【クロノ】
『それともまだタチやりたいって思ってるの? なら別れて別々のパートナー探そうよ』
【クロノ】
「あー、クソ、うざい。何なのこいつら!」
沢山の俺の間を掻い潜って輪の中央に顔を出すと、
昂正は突っ立ったままぼんやりと地面を見つめていた。
【クロノ】
「昂正! こいつらは偽物だ! こっちに手を伸ばして……、わっ!」
【クロノ】
『昂正、別れよう』
【クロノ】
『別れよう昂正。それでお前は別な人を抱きなよ』
【クロノ】
『俺だってネコやりたくない相手のこと組み敷くのは良心が痛むから』
【クロノ】
「だ…っからこいつらは偽物だから! 聞く必要ない!」
【クロノ】
『そいつは偽物だから、聞かなくていい。俺が本物だよ。オッサンなんか大嫌い』
【国重 昂正】
「…………」
幾ら声をかけても届かない。
こいつら全員ぶった切って、
昂正だけを救い出そうと鎌を錬成しようとした時。
半分の俺が振り返って、俺の体を雁字搦めにして封じた。
【クロノ】
「……っ離せ、この…!」
【クロノ】
『昂正、どうせ最後なんだから、気持ちいいことしてあげるね』
【クロノ】
『大丈夫、誰にも邪魔させない。だってこれが最後なんだから……』
棒立ちになっている昂正に無数の手が伸びて、剥ぎ取るように服を脱がせていく。
【クロノ】
「……!」
そして露出しかけた下半身に、偽物の俺が一気に群がる。
自分の中で、ぶちん、と何かが切れた音がした。
鎌の錬成を防ごうと腕全体にまとわりついていた偽物の体が、一瞬で蒸発する。
溶かした鉄のように真っ赤になった掌から出てきたのは、特大サイズの鎌。
死ぬほど疲れることを理由に、金輪際二度と使うものかと誓った、俺の最終兵器。
【クロノ】
「――――邪魔なんだよ!! 退け!!」
一薙ぎすれば、空間に亀裂が走り、同時に一刀両断された偽物の体がボロボロと地面に崩れる。
降ってくる偽物の残骸の雨の中、俺は昂正の元へと風のように走った。
【国重 昂正】
「…………」
【クロノ】
「早く起きろよ、バカ」
【クロノ】
「一緒に温泉行くんだろ?」
【クロノ】
「その約束が果たされるまで、あんたのこと裏切るわけないじゃん」
【クロノ】
「久し振りに旅行に行こうって、言ってたじゃん」
【クロノ】
「あんなとこ、一人で行ったってつまんない。俺、そこまでお一人様に慣れてない」
【クロノ】
「風呂入って、美味いメシ食って、エロいことすんだろ?」
【クロノ】
「浴衣着た俺見て、うなじがどうのーって言うつもりだったんだろ?」
【クロノ】
「俺だって見たいよ。オッサンみたいに、風呂入って熱燗飲んでる昂正を」
【クロノ】
「タチやりたいって言うなら、今度こそ、ちゃんと考えるからさ」
【クロノ】
「だから………」
