[本編] 国重 昴正 編
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【サトル】
「あ……、は、初めまして。サトルです」
不安そうに頭を下げる男に向かって、俺は考えうる精一杯の『誠実そうな笑顔』を作った。
【クロノ】
「初めまして。黒乃です」
【サトル】
「……!」
【クロノ】
「僕は国重の………大切な友人です」
【国重 昂正】
「あー…そうだな、気の置けねえ間柄、ってやつだ」
【クロノ】
(俺のこと勝手にカウンセラーにしたお返しだよ、昂正)
サトルと名乗ったその男は、俺達のやりとりをポカンと見詰めていた。
【クロノ】
「ふふ…。少しは緊張は解れました?」
【サトル】
「…えっ、あっ、す、すみません……」
【国重 昂正】
「はは、こいつがイケメンすぎるからびっくりして固まってるんだろ」
【サトル】
「ええ…、お医者さんっていうから、もっと年配の方を想像してて…そしたら…」
【クロノ】
「はい、僭越ながら、まだまだ若輩者なんです」
【クロノ】
「ですから勉強も兼ねて、ボランティアとして患者さんのお宅を訪問させていただいています」
【クロノ】
「勿論お金なんていただきません。無理を言って、僕のわがままを聞いてもらっている状態ですから」
【クロノ】
「精神科のお医者さんに診てもらう、なんて堅苦しく考えないで下さい」
テーブルの上で不安そうに震えている手の上に、そっと掌を重ねると。
男は泣きそうな顔で、こちらを見上げた。
【クロノ】
「親しい友人のように接してくださって構いません」
【クロノ】
「ですから、私のカウンセリングを受けた後も」
【クロノ】
「心配でしたら改めて、別のお医者さんにも診てもらってくださいね」
【サトル】
「で、でも、そんなこと、黒乃先生に申し訳ないですよ…!」
【クロノ】
「いいえ、私はまだまだ未熟者です。お金をとらないというのは、そういうことなんです」
【サトル】
「じゃ、じゃあ、本当に、お金は……」
【クロノ】
「ええ、本当に必要ありません」
【サトル】
「……でも、あの、先生に見てもらいたい恋人……なんですけど」
【クロノ】
「はい。国重から、そちらの事情はきちんと聞いています」
【サトル】
「……その、彼は今、まともに喋れる状態じゃないんです」
【サトル】
「それでも、カウンセリングって、できるんですか…?」
【クロノ】
「ヒアリングとカウンセリングは違います。確かに会話で症状を緩和させていくというのも一つの方法ですが」
【クロノ】
「それが難しい場合は、症状を見てお薬を使ってみてから…という方法もありますよ」
【サトル】
「……ッ、先生…っ!」
【クロノ】
「はい、なんでしょう」
【サトル】
「あの、いっ、いきなりで申し訳ないんですけど…っ」
【サトル】
「是非、今から家に来てもらえませんか? そこに診てもらいたい彼がいるんです!」
思惑通りに事が運び、そっと笑みを深める。……少しだけ悪者の気分だ。
【サトル】
「あっ、今日はもう遅いですし、明日の方がいいですよね、すみません無理言っ……」
【クロノ】
「いいえ、とんでもありません」
握っている男の手を、更に両手で包み込む。
男の真剣な視線は、俺の瞳を捉えて離さない。
色仕掛けで落とせれば楽だと思ってたけど、どうやら恋人にゾッコンのようなので。
俺はあくまで良きカウンセラーとして接することにする。
【クロノ】
「僕を頼ってくれたこと、本当に嬉しく思います」
【クロノ】
「だからこそあなたの希望に応えたい。問題なければ、今からご自宅に伺っても宜しいですか?」
【サトル】
「はい! ぜっ、是非来て下さい……っ!」
【クロノ】
「ありがとうございます」
【クロノ】
「ココだけの話ですが、実は国重と俺は…、恋人同士なんです」
【クロノ】
「だからあなたの、恋人を救いたいという気持ちはよくわかるつもりですよ」
俺の言葉に、彼は涙目になって深く頷いた。
【クロノ】
「――――というわけで、勝手に段取り進めたから」
男がトイレに言ってる間に会計を済ませて、
俺達は店の外で男が戻ってくるのを待っていた。
【クロノ】
「不都合があるなら自分で何とかして。俺はどうなっても知らないって言ったんだからね」
昂正は携帯灰皿を取り出して、煙草に火をつける。
【国重 昂正】
「やる気ねえって顔して、なんだかんだでやりきるところがムカつくなぁオイ」
【クロノ】
「本当めんどくさい……。なんで人の顔色見ながら話さなきゃなんないの」
【国重 昂正】
「基本的に面倒臭がりなのを何とかすりゃ、立派に詐欺師としてやってけるぜ」
【クロノ】
「あいにく、探偵助手だけで手一杯なんで」
【国重 昂正】
「そう言ってもよ、お前に任せて良かったろ? 俺の目に狂いは無かったろ?」
【クロノ】
「だから知らないって」
【国重 昂正】
「しかしアイツ、ニコニコしたツラのお前を前にしても恋人しか見えてませんってのがすげえな」
【クロノ】
「それよりこれからどうすんの。医者まがいのことなんて、本当にできないから」
【国重 昂正】
「様子を見る口実なんだから、適当にそれっぽいこと言っとけばいいって」
【クロノ】
「だからさすがにそれはできないって……」
【サトル】
「すみません、お待たせしました!」
【クロノ】
「…いいえ、では行きましょうか。案内、宜しくお願いしますね」
【サトル】
「はいっ!」
【国重 昂正】
「…………」
男の車で向かったのは、近くにあるアパート。
そこの4階の一室のドアの前で、俺達は中の様子を窺っていた。
【サトル】
「中、真っ暗なんですけど、びっくりさせるといけないんで」
【サトル】
「まだ明かりはつけない方がいいかなって思うんですけど……、どうでしょうか」
【クロノ】
「暗くても様子はわかりますので、問題ありません」
【サトル】
「そ、そうですか。良かった」
「あ……、は、初めまして。サトルです」
不安そうに頭を下げる男に向かって、俺は考えうる精一杯の『誠実そうな笑顔』を作った。
【クロノ】
「初めまして。黒乃です」
【サトル】
「……!」
【クロノ】
「僕は国重の………大切な友人です」
【国重 昂正】
「あー…そうだな、気の置けねえ間柄、ってやつだ」
【クロノ】
(俺のこと勝手にカウンセラーにしたお返しだよ、昂正)
サトルと名乗ったその男は、俺達のやりとりをポカンと見詰めていた。
【クロノ】
「ふふ…。少しは緊張は解れました?」
【サトル】
「…えっ、あっ、す、すみません……」
【国重 昂正】
「はは、こいつがイケメンすぎるからびっくりして固まってるんだろ」
【サトル】
「ええ…、お医者さんっていうから、もっと年配の方を想像してて…そしたら…」
【クロノ】
「はい、僭越ながら、まだまだ若輩者なんです」
【クロノ】
「ですから勉強も兼ねて、ボランティアとして患者さんのお宅を訪問させていただいています」
【クロノ】
「勿論お金なんていただきません。無理を言って、僕のわがままを聞いてもらっている状態ですから」
【クロノ】
「精神科のお医者さんに診てもらう、なんて堅苦しく考えないで下さい」
テーブルの上で不安そうに震えている手の上に、そっと掌を重ねると。
男は泣きそうな顔で、こちらを見上げた。
【クロノ】
「親しい友人のように接してくださって構いません」
【クロノ】
「ですから、私のカウンセリングを受けた後も」
【クロノ】
「心配でしたら改めて、別のお医者さんにも診てもらってくださいね」
【サトル】
「で、でも、そんなこと、黒乃先生に申し訳ないですよ…!」
【クロノ】
「いいえ、私はまだまだ未熟者です。お金をとらないというのは、そういうことなんです」
【サトル】
「じゃ、じゃあ、本当に、お金は……」
【クロノ】
「ええ、本当に必要ありません」
【サトル】
「……でも、あの、先生に見てもらいたい恋人……なんですけど」
【クロノ】
「はい。国重から、そちらの事情はきちんと聞いています」
【サトル】
「……その、彼は今、まともに喋れる状態じゃないんです」
【サトル】
「それでも、カウンセリングって、できるんですか…?」
【クロノ】
「ヒアリングとカウンセリングは違います。確かに会話で症状を緩和させていくというのも一つの方法ですが」
【クロノ】
「それが難しい場合は、症状を見てお薬を使ってみてから…という方法もありますよ」
【サトル】
「……ッ、先生…っ!」
【クロノ】
「はい、なんでしょう」
【サトル】
「あの、いっ、いきなりで申し訳ないんですけど…っ」
【サトル】
「是非、今から家に来てもらえませんか? そこに診てもらいたい彼がいるんです!」
思惑通りに事が運び、そっと笑みを深める。……少しだけ悪者の気分だ。
【サトル】
「あっ、今日はもう遅いですし、明日の方がいいですよね、すみません無理言っ……」
【クロノ】
「いいえ、とんでもありません」
握っている男の手を、更に両手で包み込む。
男の真剣な視線は、俺の瞳を捉えて離さない。
色仕掛けで落とせれば楽だと思ってたけど、どうやら恋人にゾッコンのようなので。
俺はあくまで良きカウンセラーとして接することにする。
【クロノ】
「僕を頼ってくれたこと、本当に嬉しく思います」
【クロノ】
「だからこそあなたの希望に応えたい。問題なければ、今からご自宅に伺っても宜しいですか?」
【サトル】
「はい! ぜっ、是非来て下さい……っ!」
【クロノ】
「ありがとうございます」
【クロノ】
「ココだけの話ですが、実は国重と俺は…、恋人同士なんです」
【クロノ】
「だからあなたの、恋人を救いたいという気持ちはよくわかるつもりですよ」
俺の言葉に、彼は涙目になって深く頷いた。
【クロノ】
「――――というわけで、勝手に段取り進めたから」
男がトイレに言ってる間に会計を済ませて、
俺達は店の外で男が戻ってくるのを待っていた。
【クロノ】
「不都合があるなら自分で何とかして。俺はどうなっても知らないって言ったんだからね」
昂正は携帯灰皿を取り出して、煙草に火をつける。
【国重 昂正】
「やる気ねえって顔して、なんだかんだでやりきるところがムカつくなぁオイ」
【クロノ】
「本当めんどくさい……。なんで人の顔色見ながら話さなきゃなんないの」
【国重 昂正】
「基本的に面倒臭がりなのを何とかすりゃ、立派に詐欺師としてやってけるぜ」
【クロノ】
「あいにく、探偵助手だけで手一杯なんで」
【国重 昂正】
「そう言ってもよ、お前に任せて良かったろ? 俺の目に狂いは無かったろ?」
【クロノ】
「だから知らないって」
【国重 昂正】
「しかしアイツ、ニコニコしたツラのお前を前にしても恋人しか見えてませんってのがすげえな」
【クロノ】
「それよりこれからどうすんの。医者まがいのことなんて、本当にできないから」
【国重 昂正】
「様子を見る口実なんだから、適当にそれっぽいこと言っとけばいいって」
【クロノ】
「だからさすがにそれはできないって……」
【サトル】
「すみません、お待たせしました!」
【クロノ】
「…いいえ、では行きましょうか。案内、宜しくお願いしますね」
【サトル】
「はいっ!」
【国重 昂正】
「…………」
男の車で向かったのは、近くにあるアパート。
そこの4階の一室のドアの前で、俺達は中の様子を窺っていた。
【サトル】
「中、真っ暗なんですけど、びっくりさせるといけないんで」
【サトル】
「まだ明かりはつけない方がいいかなって思うんですけど……、どうでしょうか」
【クロノ】
「暗くても様子はわかりますので、問題ありません」
【サトル】
「そ、そうですか。良かった」
