[本編] 国重 昴正 編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【客A】
「んも~、ジュンちゃんったら! そんな優しいこと言ってるから、騙されるのよ~!」
【客B】
「だって、あんないい男に2丁目で声をかけられたら、じゃあその辺でちょっと呑む?って流れになるじゃな~い」
【客C】
「だから余計に気をつけなきゃならないのよ~! 知ってるでしょ、別れさせ屋の話!」
【客A】
「そうそう、だから最近は、声をかけるだけで微妙に警戒されちゃうのよ」
【客C】
「ね~。私なんてこんな外見だからぁ、こないだ声かけた子に聞かれちゃったわよ」
【客C】
「まさか別れさせ屋じゃないですよねって! あたしのどこがそんな胡散臭い業者に見えるってのよ~ンもう失礼しちゃう!」
【クロノ】
「……」
ちらりとカウンターを見やると、昂正は難しい顔で何かを考え込んでいる。
今の話はきちんと聞こえたようだ。
どうやら別れさせ屋の話はこちら界隈ではかなり有名らしい。
この調子なら思っていたよりも順調に進みそうかなと思った時。
憔悴しきった表情の、新たな男性客がやってきた。
昂正と一つ席を空けて座った彼は、腰掛けるなりカウンターに伏せてしまった。
【男】
「もう駄目だ……ううう、ウイスキーをロックで……」
【ママ】
「まあまあ。ちょっとだけ待ってね、すぐ作るから」
【国重 昂正】
「……」
【ママ】
「せっかくこないだヨリが戻ったって幸せそうだったのに、さっそく彼氏とケンカでもしたの?」
【男】
「……ッ、俺が、俺があんな……」
【男】
「俺があんな探偵を利用したりするから、あいつはおかしくなったんだ……!」
【クロノ】
(探偵……?)
【国重 昂正】
「ママ、その酒、俺の方につけといてくれ」
【ママ】
「ふふ、わかったわ。相変わらず優しいわね、昂正ちゃん」
【男】
「え? いや、でも……」
【ママ】
「安心して。この人ね、とっても頼りになる人なのよ」
【ママ】
「信頼できる男ってことは私が保証するわ。良かったら彼に聞いてもらったら?」
昂正は営業用の顔でにっこりと微笑んだ。
【ママ】
「……はい。これは優しい彼からよ」
男は、目の前に出されたグラスと昂正の顔を交互に見て。
はにかんだように笑い…ぐっとグラスを煽った。
【男】
「ありがとう。こんな所で人の優しさに触れるなんて……俺もまだ、頑張れるってことですかね」
【国重 昂正】
「良かったらその話、俺に聞かせてくれないか?」
【国重 昂正】
「それであんたが前に進めるようになるなら」
【男】
「へへ……。でも、聞いても面白くもなんともない話ですよ?」
【国重 昂正】
「こんな場所じゃ、面白い話の方が珍しいさ」
【男】
「じゃあ、聞いてくれますか…?」
【男】
「……あれは、先月のことでした。『アビス』っていう探偵事務所を利用した時のことです」
男には、バイの恋人がいた。
しかし先日、恋人が女性と二股をかけ始めたことを知って問い詰めたところ。
『最近親が結婚しろってうるさいから、お前のことは好きだけど……ごめん』
そう、別れ話を切り出されてしまった。
今日と同じように意気消沈してバーで、飲んだくれていると。
ママとの会話を聞いていた、隣に座った男から『アビス』を紹介されたという。
【国重 昂正】
「………………」
【男】
「その時は……本当にかなり参ってて」
【男】
「どうしてもあいつと別れたくなくて……藁にもすがる思いで、依頼したんだ」
【男】
「『別れさせ屋』の噂も、俺も耳にしたことくらいはあったけど」
【男】
「その人に、改めて勧めてもらうまでは、コロッと存在を忘れててさ」
【男】
「かなり成功率が高いって聞いて、それで……依頼したんだ」
それが功を奏して、恋人は女と別れて自分の元へ戻ってきた。
『二股かけてた上に、俺がやったプレゼントを売って相手の男に貢いでた。もう女は信じない』
そう言って戻ってきた恋人を、男は喜んで受け入れた。
アビスに頼んで良かった。その時は心から思った。
しかしその後、恋人が不眠を訴え始め、あげくに逆にお前が浮気をしているんじゃないかと疑ったり。
どんどんネガティブな思考に陥っていき、仕事も休みがちになって、
家に閉じこもるようになってしまったのだという。
【国重 昂正】
「……なるほど」
【クロノ】
「……」
ここに来る前に、一応自分なりに、別れさせ屋のことを調べてはみたけど。
話を聞いた限りでは、よくある別れさせ屋の手口を踏襲してるみたいだ。
不自然なところは感じなかったけど……
昂正は……もっと踏み込んで聞くかな。
【国重 昂正】
「……その恋人について、もう少し聞いても構わないか」
【国重 昂正】
「………………」
口元に手をあてて考えるような仕草をしたあと、昂正が口を開く。
【国重 昂正】
「……その恋人とは、今も話し合いできるような状態じゃないのか?」
【男】
「……はい。一緒に住んではいるんですけど」
【男】
「自分の部屋に引きこもって、一日中ほとんど出てこなくて」
【男】
「食事の差し入れくらいはするんですけど、俺が声かけても出てきてくれなくて」
【国重 昂正】
「じゃあ、君が部屋に入ることも出来ないのか」
【男】
「……部屋に鍵はついてないし、内側からドアが開かないようにされてるとかではないんですが」
【男】
「たとえ入っていっても、全然口をきいてくれないんです」
【男】
「カーテンの閉めきった真っ暗な部屋の隅で、うずくまってたり」
【男】
「ベッドの中で布団被ってじっとしてるとか、そんな感じです」
【国重 昂正】
「その様子だと……本格的に精神的に参ってるな」
【男】
「…そうですよね」
【男】
「本当は、病院に連れて行ったりしたいんですけど」
【国重 昂正】
「部屋から出ようとしないし、その上君とも話せないくらいの状態じゃ、厳しいよな」
【男】
「……どうしたらいいんだろう、本当に」
昂正は、頭を抱えた男の方に向き直る。
【国重 昂正】
「じゃあ、カウンセラーを連れてくるってのはどうだ」
【男】
「そんな……出張検診やってくれるような精神科医なんて、いますかね…?」
【国重 昂正】
「いるぞ? 俺の知り合いに」
【男】
「え…? そ、そうなんですか?」
「んも~、ジュンちゃんったら! そんな優しいこと言ってるから、騙されるのよ~!」
【客B】
「だって、あんないい男に2丁目で声をかけられたら、じゃあその辺でちょっと呑む?って流れになるじゃな~い」
【客C】
「だから余計に気をつけなきゃならないのよ~! 知ってるでしょ、別れさせ屋の話!」
【客A】
「そうそう、だから最近は、声をかけるだけで微妙に警戒されちゃうのよ」
【客C】
「ね~。私なんてこんな外見だからぁ、こないだ声かけた子に聞かれちゃったわよ」
【客C】
「まさか別れさせ屋じゃないですよねって! あたしのどこがそんな胡散臭い業者に見えるってのよ~ンもう失礼しちゃう!」
【クロノ】
「……」
ちらりとカウンターを見やると、昂正は難しい顔で何かを考え込んでいる。
今の話はきちんと聞こえたようだ。
どうやら別れさせ屋の話はこちら界隈ではかなり有名らしい。
この調子なら思っていたよりも順調に進みそうかなと思った時。
憔悴しきった表情の、新たな男性客がやってきた。
昂正と一つ席を空けて座った彼は、腰掛けるなりカウンターに伏せてしまった。
【男】
「もう駄目だ……ううう、ウイスキーをロックで……」
【ママ】
「まあまあ。ちょっとだけ待ってね、すぐ作るから」
【国重 昂正】
「……」
【ママ】
「せっかくこないだヨリが戻ったって幸せそうだったのに、さっそく彼氏とケンカでもしたの?」
【男】
「……ッ、俺が、俺があんな……」
【男】
「俺があんな探偵を利用したりするから、あいつはおかしくなったんだ……!」
【クロノ】
(探偵……?)
【国重 昂正】
「ママ、その酒、俺の方につけといてくれ」
【ママ】
「ふふ、わかったわ。相変わらず優しいわね、昂正ちゃん」
【男】
「え? いや、でも……」
【ママ】
「安心して。この人ね、とっても頼りになる人なのよ」
【ママ】
「信頼できる男ってことは私が保証するわ。良かったら彼に聞いてもらったら?」
昂正は営業用の顔でにっこりと微笑んだ。
【ママ】
「……はい。これは優しい彼からよ」
男は、目の前に出されたグラスと昂正の顔を交互に見て。
はにかんだように笑い…ぐっとグラスを煽った。
【男】
「ありがとう。こんな所で人の優しさに触れるなんて……俺もまだ、頑張れるってことですかね」
【国重 昂正】
「良かったらその話、俺に聞かせてくれないか?」
【国重 昂正】
「それであんたが前に進めるようになるなら」
【男】
「へへ……。でも、聞いても面白くもなんともない話ですよ?」
【国重 昂正】
「こんな場所じゃ、面白い話の方が珍しいさ」
【男】
「じゃあ、聞いてくれますか…?」
【男】
「……あれは、先月のことでした。『アビス』っていう探偵事務所を利用した時のことです」
男には、バイの恋人がいた。
しかし先日、恋人が女性と二股をかけ始めたことを知って問い詰めたところ。
『最近親が結婚しろってうるさいから、お前のことは好きだけど……ごめん』
そう、別れ話を切り出されてしまった。
今日と同じように意気消沈してバーで、飲んだくれていると。
ママとの会話を聞いていた、隣に座った男から『アビス』を紹介されたという。
【国重 昂正】
「………………」
【男】
「その時は……本当にかなり参ってて」
【男】
「どうしてもあいつと別れたくなくて……藁にもすがる思いで、依頼したんだ」
【男】
「『別れさせ屋』の噂も、俺も耳にしたことくらいはあったけど」
【男】
「その人に、改めて勧めてもらうまでは、コロッと存在を忘れててさ」
【男】
「かなり成功率が高いって聞いて、それで……依頼したんだ」
それが功を奏して、恋人は女と別れて自分の元へ戻ってきた。
『二股かけてた上に、俺がやったプレゼントを売って相手の男に貢いでた。もう女は信じない』
そう言って戻ってきた恋人を、男は喜んで受け入れた。
アビスに頼んで良かった。その時は心から思った。
しかしその後、恋人が不眠を訴え始め、あげくに逆にお前が浮気をしているんじゃないかと疑ったり。
どんどんネガティブな思考に陥っていき、仕事も休みがちになって、
家に閉じこもるようになってしまったのだという。
【国重 昂正】
「……なるほど」
【クロノ】
「……」
ここに来る前に、一応自分なりに、別れさせ屋のことを調べてはみたけど。
話を聞いた限りでは、よくある別れさせ屋の手口を踏襲してるみたいだ。
不自然なところは感じなかったけど……
昂正は……もっと踏み込んで聞くかな。
【国重 昂正】
「……その恋人について、もう少し聞いても構わないか」
【国重 昂正】
「………………」
口元に手をあてて考えるような仕草をしたあと、昂正が口を開く。
【国重 昂正】
「……その恋人とは、今も話し合いできるような状態じゃないのか?」
【男】
「……はい。一緒に住んではいるんですけど」
【男】
「自分の部屋に引きこもって、一日中ほとんど出てこなくて」
【男】
「食事の差し入れくらいはするんですけど、俺が声かけても出てきてくれなくて」
【国重 昂正】
「じゃあ、君が部屋に入ることも出来ないのか」
【男】
「……部屋に鍵はついてないし、内側からドアが開かないようにされてるとかではないんですが」
【男】
「たとえ入っていっても、全然口をきいてくれないんです」
【男】
「カーテンの閉めきった真っ暗な部屋の隅で、うずくまってたり」
【男】
「ベッドの中で布団被ってじっとしてるとか、そんな感じです」
【国重 昂正】
「その様子だと……本格的に精神的に参ってるな」
【男】
「…そうですよね」
【男】
「本当は、病院に連れて行ったりしたいんですけど」
【国重 昂正】
「部屋から出ようとしないし、その上君とも話せないくらいの状態じゃ、厳しいよな」
【男】
「……どうしたらいいんだろう、本当に」
昂正は、頭を抱えた男の方に向き直る。
【国重 昂正】
「じゃあ、カウンセラーを連れてくるってのはどうだ」
【男】
「そんな……出張検診やってくれるような精神科医なんて、いますかね…?」
【国重 昂正】
「いるぞ? 俺の知り合いに」
【男】
「え…? そ、そうなんですか?」