[本編] 国重 昴正 編
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依頼を受けた時は、調査の為に仕方なくリビドーを使うことにした。
そして夢の中であいつに出会って―――やめられなくなった。
あの世界では、あいつは昔と同じように俺に微笑みかけてくれる。
例え化物になったとしたって、たった二度じゃないか。
きっと、あれは何かの間違いだったんだ。
次こそは大丈夫だ。次こそはいつも通りのあいつでいてくれる筈だ。
【国重 昂正】
「……使うと死ぬ、か」
あの死神の言ってることを、信じてないわけじゃない。
人間じゃないということは、認めざるを得ないし。
死神という立場だからこそ、リビドーが人の死に繋がってると断言できるのだろう。
だが、俺はまた、こうしてリビドーを手にしている。
現実では孤独だが、夢の中にはあいつがいる。
それに甘えている自分にも気付いてるし、死神の言ってることが正しいこともわかる。
だけど―――。俺はリビドーを装着し、起動させる。
夢の中で、あいつは両手を広げて俺を迎えてくれた。
こいつに会うことで死ぬというなら、それでも構わない。
こうして夏透を抱きしめていると、心の底からそう思う。
実は俺は死神界に戻らず、姿を消して、ずっと国重を観察していた。
案の定、国重はリビドーを装着して眠りに就いた。
【クロノ】
「こうなるとは思ってたけど…ね」
いつも思うけど、このオッサンは、俺の話を聞かない。
自分の信念や考え方の方が先に立って、人の意見は二の次だ。
【クロノ】
「年をとると頑固になるってのは、こういうことなのかも」
【クロノ】
(まあ、俺も歳はとってるけど。頑固でいられるほど気力のある時期は、もう過ぎたし)
溜息混じりに横になり、リビドーを装着する。
人の忠告も聞かず、自ら死に急ぐバカな奴を救うのが、俺の仕事である限り。
ムカつこうが何だろうが、やるしかないわけで。
そう、俺はイライラしていた。
国重が、夢の中で恋人といちゃこらしてると思うだけで、何故かイライラする。
目を開けると、いつもの庭園だった。
今日もベンチで、国重が夏透と仲良く語り合ってる様子が見える。
だけど俺と国重を隔てている膜が、かなり濃くなっている。
辛うじて向こうの景色が見えるくらい、膜は分厚くなっているようだ。
目を細めて、国重の様子を探ると。
夏透を押し倒していたが、夏透の首筋に顔を埋める姿が、縋りついているようにも見えた。
夏透も聖母の様な笑顔で、国重の頭を抱いている。
国重の優しげな笑顔と丁寧な接し方に、またムカッとしたけど、まずは仕事だ。
【クロノ】
(今のところ、悪夢化する様子はないけど……)
【クロノ】
(やっぱり悪夢化のスイッチって俺なのか? ていうかこの膜はなんだ?)
【クロノ】
(膜の話なんてparaisoで見たことないから、リビドーと関係ないのか? …わからない)
とりあえず、悪夢化していないなら、この場はおいておこうと、夢から出ることにした。
姿を消して様子を見ていると、国重はすっと目を覚ますことができたようだった。
満たされているような、それでいて夢に未練がありそうな。
そんな国重の表情を見て、何故かイラッとしたけど。
【クロノ】
(とにかく、色々調べてみる必要があるな。…時間がない、急がなきゃ)
ひと眠りしてから、俺は眠い目を擦りながら身支度を整えた。
もうすぐじいが来る時間だ。色々調べてくれてると良いんだけど。
【アンク】
「おはようございます、クロノ様。お疲れのご様子ですな」
【クロノ】
「まぁ、それなりにね。じい、朝早くに呼び出してごめん」
【アンク】
「いえいえ、とんでもない。それにしても、早急に相談したいこととは…?」
【クロノ】
「うん。リビドーで見る夢が、悪夢化することについてなんだけど」
【クロノ】
「あれって、脳の働きとしては、リビドーを使わずに悪夢を見るのと同じだよな?」
【アンク】
「左様でございます。LIPを使うことで、悪夢化しやすくなるということです」
【アンク】
「ですが、どうやって悪夢化しやすくさせてるのまではわかっておりません」
【クロノ】
「ああ、うん。そこまで専門的な知識はいいや」
【クロノ】
「じゃあ今は、何が悪夢化のトリガーになってるのかは不明なんだな?」
【アンク】
「と言われますと?」
【クロノ】
「国重の夢は、俺が国重に関わると悪夢化してる気がする。だから俺が原因かと思ったんだけど」
【アンク】
「夢主の想定外の出来事に、動揺すると悪夢化する……、という可能性は?」
【クロノ】
「……つまり、国重が見ようとした夢とずれる事で悪夢化する、てこと?」
【アンク】
「そういうことになりますな。…あくまで私の見立てですが」
【クロノ】
(俺が入ると、国重が動揺して、悪夢化するとして…)
【クロノ】
(夢の中に入って助け出してやらなきゃいけないし…。悪夢化させずにどうやって…)
【クロノ】
「……まあわかった、何とかする。じいは仕事に戻って」
【アンク】
「何かあったらまた連絡を下さいませ。それでは失礼致します」
じいが去った後、俺は図書館へ行くことにした。
図書館で、夢についての文献を読み漁ってみたけど。
今回の事件に役立ちそうなものは無くて、頭を抱えていると―――。
【ユリス】
「何か困ってるみたいだけど、手伝ってやろうか」
【クロノ】
「なんでお前がこんなところに…」
こんな忙しい時に…、と思い、しっしっと手で追い払いかけて。
以前ユリスと会話した時、その内容に違和感を覚えたことを思い出す。
ユリスに……交換条件を出そう。
【クロノ】
(知ってること教えてくれたらキスしてやるとか…。やめた。カマかけてみるか)
【クロノ】
「調べてるんだけど、よく解らない。どうして、悪夢を見るんだろうな」
【ユリス】
「悪夢見んのは、基本LIP使用者だろ? リビドーは脳波に直接作用して憧憬夢を見せてるから」
【ユリス】
「それが長時間になると、脳の負担はハンパじゃない。脳はギリギリの状態で夢を保ってる」
【ユリス】
「だから、ちょっとした刺激でキャパオーバーになって、悪夢化するって訳」
【クロノ】
「へえ、リビドーの悪夢化は、そういう仕組みなんだ……」
ユリスが露骨に、しまったという表情を浮かべる。
【クロノ】
(俺は一言も『憧憬夢の悪夢化』なんて言ってないって気付いたか)
【ユリス】
「…もしかして、リビドーの話じゃなかった? お前調査中だから、それかと思ったけど」
【クロノ】
「ううん、あたり。でもお前詳しいな。なんでそんなに知ってるの?」
【ユリス】
「……」
【クロノ】
「……まあいいや。俺、もう行くから」
追及の余地はあったけれど、警戒しているユリスに、これ以上なにか喋らせようとするのは時間の無駄だと思って。
俺はさっさとその場を後にし、人間界へ向かった。
――あの時の、ユリスの表情の意味を、俺はもっと考えるべきだった。
手遅れになる前に、俺は気付くべきだった。
ユリスの、焦りとも怒りともつかない、けれど覚悟を決めたようにも見えた、あの静かな表情の意味に。
【国重 昂正】
「……はぁ」
最近、仕事が休みの日でも、調査の為にあちこち飛び回っていた。
今日くらいは家でゆっくりするかと思い、ゴロゴロしているわけだが……。
俺はまたこうして布団に横たわり、リビドーを手にしている。
だけどなかなか、夢の中に入る気持ちにはならない。
【国重 昂正】
(昨日、ケンカ別れみたいになっちまったな…。あいつと)
あれから、そのことばかり気にかけている自分がいる。
今まではこんな時、夏透のことしか考えられなかったのに。
それだけ、昨日は俺が悪かったってことを、理解してるってことだろうか。
【国重 昂正】
「ならリビドー使うのやめりゃいいんだがな…」
それでもこの、夢見る機械を手放せない。
【国重 昂正】
「女々しいな、俺も」
そして夢の中であいつに出会って―――やめられなくなった。
あの世界では、あいつは昔と同じように俺に微笑みかけてくれる。
例え化物になったとしたって、たった二度じゃないか。
きっと、あれは何かの間違いだったんだ。
次こそは大丈夫だ。次こそはいつも通りのあいつでいてくれる筈だ。
【国重 昂正】
「……使うと死ぬ、か」
あの死神の言ってることを、信じてないわけじゃない。
人間じゃないということは、認めざるを得ないし。
死神という立場だからこそ、リビドーが人の死に繋がってると断言できるのだろう。
だが、俺はまた、こうしてリビドーを手にしている。
現実では孤独だが、夢の中にはあいつがいる。
それに甘えている自分にも気付いてるし、死神の言ってることが正しいこともわかる。
だけど―――。俺はリビドーを装着し、起動させる。
夢の中で、あいつは両手を広げて俺を迎えてくれた。
こいつに会うことで死ぬというなら、それでも構わない。
こうして夏透を抱きしめていると、心の底からそう思う。
実は俺は死神界に戻らず、姿を消して、ずっと国重を観察していた。
案の定、国重はリビドーを装着して眠りに就いた。
【クロノ】
「こうなるとは思ってたけど…ね」
いつも思うけど、このオッサンは、俺の話を聞かない。
自分の信念や考え方の方が先に立って、人の意見は二の次だ。
【クロノ】
「年をとると頑固になるってのは、こういうことなのかも」
【クロノ】
(まあ、俺も歳はとってるけど。頑固でいられるほど気力のある時期は、もう過ぎたし)
溜息混じりに横になり、リビドーを装着する。
人の忠告も聞かず、自ら死に急ぐバカな奴を救うのが、俺の仕事である限り。
ムカつこうが何だろうが、やるしかないわけで。
そう、俺はイライラしていた。
国重が、夢の中で恋人といちゃこらしてると思うだけで、何故かイライラする。
目を開けると、いつもの庭園だった。
今日もベンチで、国重が夏透と仲良く語り合ってる様子が見える。
だけど俺と国重を隔てている膜が、かなり濃くなっている。
辛うじて向こうの景色が見えるくらい、膜は分厚くなっているようだ。
目を細めて、国重の様子を探ると。
夏透を押し倒していたが、夏透の首筋に顔を埋める姿が、縋りついているようにも見えた。
夏透も聖母の様な笑顔で、国重の頭を抱いている。
国重の優しげな笑顔と丁寧な接し方に、またムカッとしたけど、まずは仕事だ。
【クロノ】
(今のところ、悪夢化する様子はないけど……)
【クロノ】
(やっぱり悪夢化のスイッチって俺なのか? ていうかこの膜はなんだ?)
【クロノ】
(膜の話なんてparaisoで見たことないから、リビドーと関係ないのか? …わからない)
とりあえず、悪夢化していないなら、この場はおいておこうと、夢から出ることにした。
姿を消して様子を見ていると、国重はすっと目を覚ますことができたようだった。
満たされているような、それでいて夢に未練がありそうな。
そんな国重の表情を見て、何故かイラッとしたけど。
【クロノ】
(とにかく、色々調べてみる必要があるな。…時間がない、急がなきゃ)
ひと眠りしてから、俺は眠い目を擦りながら身支度を整えた。
もうすぐじいが来る時間だ。色々調べてくれてると良いんだけど。
【アンク】
「おはようございます、クロノ様。お疲れのご様子ですな」
【クロノ】
「まぁ、それなりにね。じい、朝早くに呼び出してごめん」
【アンク】
「いえいえ、とんでもない。それにしても、早急に相談したいこととは…?」
【クロノ】
「うん。リビドーで見る夢が、悪夢化することについてなんだけど」
【クロノ】
「あれって、脳の働きとしては、リビドーを使わずに悪夢を見るのと同じだよな?」
【アンク】
「左様でございます。LIPを使うことで、悪夢化しやすくなるということです」
【アンク】
「ですが、どうやって悪夢化しやすくさせてるのまではわかっておりません」
【クロノ】
「ああ、うん。そこまで専門的な知識はいいや」
【クロノ】
「じゃあ今は、何が悪夢化のトリガーになってるのかは不明なんだな?」
【アンク】
「と言われますと?」
【クロノ】
「国重の夢は、俺が国重に関わると悪夢化してる気がする。だから俺が原因かと思ったんだけど」
【アンク】
「夢主の想定外の出来事に、動揺すると悪夢化する……、という可能性は?」
【クロノ】
「……つまり、国重が見ようとした夢とずれる事で悪夢化する、てこと?」
【アンク】
「そういうことになりますな。…あくまで私の見立てですが」
【クロノ】
(俺が入ると、国重が動揺して、悪夢化するとして…)
【クロノ】
(夢の中に入って助け出してやらなきゃいけないし…。悪夢化させずにどうやって…)
【クロノ】
「……まあわかった、何とかする。じいは仕事に戻って」
【アンク】
「何かあったらまた連絡を下さいませ。それでは失礼致します」
じいが去った後、俺は図書館へ行くことにした。
図書館で、夢についての文献を読み漁ってみたけど。
今回の事件に役立ちそうなものは無くて、頭を抱えていると―――。
【ユリス】
「何か困ってるみたいだけど、手伝ってやろうか」
【クロノ】
「なんでお前がこんなところに…」
こんな忙しい時に…、と思い、しっしっと手で追い払いかけて。
以前ユリスと会話した時、その内容に違和感を覚えたことを思い出す。
ユリスに……交換条件を出そう。
【クロノ】
(知ってること教えてくれたらキスしてやるとか…。やめた。カマかけてみるか)
【クロノ】
「調べてるんだけど、よく解らない。どうして、悪夢を見るんだろうな」
【ユリス】
「悪夢見んのは、基本LIP使用者だろ? リビドーは脳波に直接作用して憧憬夢を見せてるから」
【ユリス】
「それが長時間になると、脳の負担はハンパじゃない。脳はギリギリの状態で夢を保ってる」
【ユリス】
「だから、ちょっとした刺激でキャパオーバーになって、悪夢化するって訳」
【クロノ】
「へえ、リビドーの悪夢化は、そういう仕組みなんだ……」
ユリスが露骨に、しまったという表情を浮かべる。
【クロノ】
(俺は一言も『憧憬夢の悪夢化』なんて言ってないって気付いたか)
【ユリス】
「…もしかして、リビドーの話じゃなかった? お前調査中だから、それかと思ったけど」
【クロノ】
「ううん、あたり。でもお前詳しいな。なんでそんなに知ってるの?」
【ユリス】
「……」
【クロノ】
「……まあいいや。俺、もう行くから」
追及の余地はあったけれど、警戒しているユリスに、これ以上なにか喋らせようとするのは時間の無駄だと思って。
俺はさっさとその場を後にし、人間界へ向かった。
――あの時の、ユリスの表情の意味を、俺はもっと考えるべきだった。
手遅れになる前に、俺は気付くべきだった。
ユリスの、焦りとも怒りともつかない、けれど覚悟を決めたようにも見えた、あの静かな表情の意味に。
【国重 昂正】
「……はぁ」
最近、仕事が休みの日でも、調査の為にあちこち飛び回っていた。
今日くらいは家でゆっくりするかと思い、ゴロゴロしているわけだが……。
俺はまたこうして布団に横たわり、リビドーを手にしている。
だけどなかなか、夢の中に入る気持ちにはならない。
【国重 昂正】
(昨日、ケンカ別れみたいになっちまったな…。あいつと)
あれから、そのことばかり気にかけている自分がいる。
今まではこんな時、夏透のことしか考えられなかったのに。
それだけ、昨日は俺が悪かったってことを、理解してるってことだろうか。
【国重 昂正】
「ならリビドー使うのやめりゃいいんだがな…」
それでもこの、夢見る機械を手放せない。
【国重 昂正】
「女々しいな、俺も」