[本編] 国重 昴正 編
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【国重 昂正】
「なんでお前は、されるがままになってるんだよ…!」
【クロノ】
「前を揉まれてたら、ちょっとは動揺したと思うけど」
【国重 昂正】
「そういう問題じゃねえだろ!? ……ああいう場所では、もう少し気ぃ張ってろ」
【クロノ】
「……わかった」
【クロノ】
(なんで怒ってるんだろう、このオッサン…)
振り払うように俺の手を解放して、国重は踵を返した。
掴まれた手首を見ると、赤くなっていた。
まだ不機嫌そうに歩いている国重について、繁華街を後にした。
事務所に戻ってくると、国重は机に向かいパソコンを起動する。
モニタに向かう表情に覇気はない。虚ろな目で煙草を吸っている。
情報を得られなかったことに落ち込んでいるのだろう。
机の端に腰掛け、パソコンを見下ろすとparaisoが表示されていた。
【クロノ】
「もしかして、今夜もリビドーを使う気でいる?」
【国重 昂正】
「ああ」
俺はさっと身を起こした。
【クロノ】
「最初に会った時、余命13日だって言ったよな? あれから5日たってる」
【国重 昂正】
「……あの時、余命の事はわかったと返事はしたが、リビドーをやめるなんて言ってない」
国重は俺の方を見もせずに、何かメッセージを入力し始めた。
【クロノ】
「死にたいのか? 寿命が縮まるって言っただろ」
【国重 昂正】
「これも調査の一環なんだ」
【クロノ】
「調査なのに、夢の中で、あんなに幸せそうに恋人といちゃついてたわけ?」
キーを叩く音がピタリと止まり、鋭い視線が向けられた。
【クロノ】
「そんな顔しても無駄。言いたいことは言わせてもらう」
【クロノ】
「あんたのやってることは調査の域を超えてる」
【クロノ】
「そんなことやってるうちに、あんたの方が先に死ぬよ」
【国重 昂正】
「お前に何がわかる」
【クロノ】
「何もわからないけど。夢の恋人が偽物だってことはわかる」
【クロノ】
「そしてあんたの寿命を奪ってるんだってこともね」
【国重 昂正】
「……っ」
国重は拳を握りしめ、俺の胸倉を掴み上げる。
けれど、不意に怒りが抜けてしまったように脱力する。
【国重 昂正】
「俺は……あいつがいないと……」
俺は目を細める。
今まで、その部分だけは感情を押し込めて、何も語らなかった男の本音が―――。
少しだけ、垣間見えた様な気がした。
【クロノ】
「淋しいの?」
俯いたままの国重から、答えは返ってこない。黙って唇を噛んでいるだけだ。
【クロノ】
「……そうか、あんたは淋しいんだ」
【クロノ】
「好きな奴と、現実では抱き合えなくて」
【国重 昂正】
「……黙ってくれ」
【クロノ】
「淋しくて仕方ないから、夢に頼るんだ」
【国重 昂正】
「頼むから、もう黙れ……!」
耐えかねたように国重が立ち上がり、乱暴に俺を押し倒した。
机に後頭部をうちつけて、痛みに顔をしかめる。
だけど国重は硬い表情のまま、俺に覆いかぶさっている。
もし俺がお前を押し倒していたら、今頃、驚いて言葉を失ってるはずなのに。
【クロノ】
「されるがままじゃダメなんだっけ?」
【クロノ】
「だから言うよ。退いて」
力任せに両手を押さえつけられていて、手首の骨が軋んでいる。
一応どけとは言ってはみたけど、国重に届いている気はしない。
国重の顔からは、衝動的に動いてしまった自分に対する驚きと。
怒りによって引っ込みがつかない意地のようなものが感じられた。
【クロノ】
「淋しいなら、誰かを傍に置けばいいのに」
【クロノ】
「なんで夏透じゃなきゃ、嫌なわけ?」
さっきまで激情に歪んでいた目元が、切なげに細められる。
【国重 昂正】
「……もう、あいつ以上に愛せる奴は……現れない」
告げられた瞬間、胸の奥がズキリと痛んだ。
【クロノ】
(なんか……面白くない)
黙って見つめていると、国重は俺の上から退いてイスに座り直した。
すぐにキーを叩く音が聞こえたので、俺もゆっくりと体を起こす。
こちらを見ようとは……、しないらしい。
【クロノ】
「とにかく、もう使うな。あんた、本当に死ぬよ」
手短かに伝えて、返事を待たずに部屋を出る。
閉まったドアの向こうから聞こえていた、キーを打つ音は。
俺が部屋を出てすぐに、止まったようだった。
「なんでお前は、されるがままになってるんだよ…!」
【クロノ】
「前を揉まれてたら、ちょっとは動揺したと思うけど」
【国重 昂正】
「そういう問題じゃねえだろ!? ……ああいう場所では、もう少し気ぃ張ってろ」
【クロノ】
「……わかった」
【クロノ】
(なんで怒ってるんだろう、このオッサン…)
振り払うように俺の手を解放して、国重は踵を返した。
掴まれた手首を見ると、赤くなっていた。
まだ不機嫌そうに歩いている国重について、繁華街を後にした。
事務所に戻ってくると、国重は机に向かいパソコンを起動する。
モニタに向かう表情に覇気はない。虚ろな目で煙草を吸っている。
情報を得られなかったことに落ち込んでいるのだろう。
机の端に腰掛け、パソコンを見下ろすとparaisoが表示されていた。
【クロノ】
「もしかして、今夜もリビドーを使う気でいる?」
【国重 昂正】
「ああ」
俺はさっと身を起こした。
【クロノ】
「最初に会った時、余命13日だって言ったよな? あれから5日たってる」
【国重 昂正】
「……あの時、余命の事はわかったと返事はしたが、リビドーをやめるなんて言ってない」
国重は俺の方を見もせずに、何かメッセージを入力し始めた。
【クロノ】
「死にたいのか? 寿命が縮まるって言っただろ」
【国重 昂正】
「これも調査の一環なんだ」
【クロノ】
「調査なのに、夢の中で、あんなに幸せそうに恋人といちゃついてたわけ?」
キーを叩く音がピタリと止まり、鋭い視線が向けられた。
【クロノ】
「そんな顔しても無駄。言いたいことは言わせてもらう」
【クロノ】
「あんたのやってることは調査の域を超えてる」
【クロノ】
「そんなことやってるうちに、あんたの方が先に死ぬよ」
【国重 昂正】
「お前に何がわかる」
【クロノ】
「何もわからないけど。夢の恋人が偽物だってことはわかる」
【クロノ】
「そしてあんたの寿命を奪ってるんだってこともね」
【国重 昂正】
「……っ」
国重は拳を握りしめ、俺の胸倉を掴み上げる。
けれど、不意に怒りが抜けてしまったように脱力する。
【国重 昂正】
「俺は……あいつがいないと……」
俺は目を細める。
今まで、その部分だけは感情を押し込めて、何も語らなかった男の本音が―――。
少しだけ、垣間見えた様な気がした。
【クロノ】
「淋しいの?」
俯いたままの国重から、答えは返ってこない。黙って唇を噛んでいるだけだ。
【クロノ】
「……そうか、あんたは淋しいんだ」
【クロノ】
「好きな奴と、現実では抱き合えなくて」
【国重 昂正】
「……黙ってくれ」
【クロノ】
「淋しくて仕方ないから、夢に頼るんだ」
【国重 昂正】
「頼むから、もう黙れ……!」
耐えかねたように国重が立ち上がり、乱暴に俺を押し倒した。
机に後頭部をうちつけて、痛みに顔をしかめる。
だけど国重は硬い表情のまま、俺に覆いかぶさっている。
もし俺がお前を押し倒していたら、今頃、驚いて言葉を失ってるはずなのに。
【クロノ】
「されるがままじゃダメなんだっけ?」
【クロノ】
「だから言うよ。退いて」
力任せに両手を押さえつけられていて、手首の骨が軋んでいる。
一応どけとは言ってはみたけど、国重に届いている気はしない。
国重の顔からは、衝動的に動いてしまった自分に対する驚きと。
怒りによって引っ込みがつかない意地のようなものが感じられた。
【クロノ】
「淋しいなら、誰かを傍に置けばいいのに」
【クロノ】
「なんで夏透じゃなきゃ、嫌なわけ?」
さっきまで激情に歪んでいた目元が、切なげに細められる。
【国重 昂正】
「……もう、あいつ以上に愛せる奴は……現れない」
告げられた瞬間、胸の奥がズキリと痛んだ。
【クロノ】
(なんか……面白くない)
黙って見つめていると、国重は俺の上から退いてイスに座り直した。
すぐにキーを叩く音が聞こえたので、俺もゆっくりと体を起こす。
こちらを見ようとは……、しないらしい。
【クロノ】
「とにかく、もう使うな。あんた、本当に死ぬよ」
手短かに伝えて、返事を待たずに部屋を出る。
閉まったドアの向こうから聞こえていた、キーを打つ音は。
俺が部屋を出てすぐに、止まったようだった。
