[本編] 国重 昴正 編
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翌朝、身支度を整えた後、なんとなく布団でゴロゴロしていたら、じいが部屋に現れた。
【クロノ】
「相変わらず神出鬼没だね、じい。何か新しい情報でも掴んだ?」
布団から顔を出して告げると。
じいは、手に持った資料をぱらぱらとめくり、何かを確認しているところだった。
【アンク】
「昨日得た情報を、クロノ様にご説明しようと思いましてな」
俺が上体を起こすと、じいは得意気に笑った。
【アンク】
「お渡ししたリビドーの説明は昨夜致しましたから」
【アンク】
「悪夢を撃退する方法と、何故国重さんが、口付けで目覚めたのか」
【アンク】
「その二点の、詳細な説明を致しましょう」
じいは書類を丁寧に持ち直すと、俺の前に座って。
ベッドの上に書類を広げ、図を示しながら口を開く。
【アンク】
「順を追って説明致しましょう。これは私が作成した、LIP使用者についての報告書なのですが」
【アンク】
「悪夢化は、夢の登場人物が『化物』になるケースが多いことがわかりました」
【アンク】
「そして、その化物には弱点があることも」
【クロノ】
「それが、あの時に見た『綻び』か。なら、次も『綻び』を見つけて突けばいいんだな?」
【アンク】
「はい。悪夢が進行した場合、化物――、悪夢を斬らなければ、夢主は目覚めなくなるケースすらあるようです」
【クロノ】
「わかった。……でも、思えば、なんで昨日の朝、リビドーの使い方説明しなかったの?」
【アンク】
「いやあ、クロノ様なら、説明しなくても気付いて下さると思いまして」
俺は、じいに冷たい視線を向けた。
じいはあさっての方を向いて、そらぞらしく口笛なんか吹いていた。
【クロノ】
「…要するに、これからも同じ方法で悪夢を撃退できるんだな?」
【アンク】
「はい。悪夢の中で化け物を斬り、クロノ様が目覚めた後は、リビドーで正常な脳波を送って下さいませ」
【アンク】
「また、クロノ様の体にも、ちょっとした仕掛けをさせていただきました」
【クロノ】
「……は!?」
【アンク】
「何を驚いているのです? 被害者を口付けで目覚めさせることができたのは」
【アンク】
「私が施した、その仕掛けのためなのですぞ」
【クロノ】
「ちょっと待って…。いつの間にそんなことした?」
自分の体を抱きながら身震いすると、じいは大げさなと肩を竦めた。
【アンク】
「何も腹を開いて装置を組み込んだわけではございません」
【アンク】
「ちょっとしたおまじないの様なものですよ。死神流の」
【クロノ】
「信用できない…。それ、俺には無害なんだろうな?」
【アンク】
「もちろんでございます」
【アンク】
「姫を目覚めさせるキスが、王子様に有害なはずございません」
【クロノ】
「まわりくどい言い方するな。つまりどういうまじない?」
【アンク】
「それは、秘密でございます。とにかく、綻びを突いて悪夢を消し去り、正常な脳波を送っても」
【アンク】
「それでも夢主が目覚めない場合は、王子のキスを。以上でございます」
それだけ言って立ち去ろうとしたじいを、慌てて引き止める。
【クロノ】
「待って、どう考えても説明が不十分なんだけど」
【アンク】
「考えるよりも行動、習うより慣れろ、でございます。良い夢を。アディオス」
【クロノ】
「……」
キザな挨拶と不敵な笑みを残して、じいは消えた。
なんだあのキャラ。『地獄のセバスチャン』をイメージしているのだろうか。
俺は苛立ちを感じ……、勢い良く布団に潜り込む。
理不尽なことがあった時は、不貞寝に限る。
昼前、国重の様子を見に探偵事務所に行ってみたが、古林含め誰もいなかったので、国重の部屋へ行ってみた。
突如目の前に現れた俺の姿に驚いて、国重は持っていたカップを落として割った。
【国重 昂正】
「……あああ!!」
【クロノ】
「ドジだな。注意力散漫」
【国重 昂正】
「誰のせいだと思ってんだ…」
【クロノ】
「昨夜、夢でも現実でも会ったから、もう俺には慣れたと思って」
【国重 昂正】
「知った相手でも突然目の前に現れたら、驚くに決まってんだろうが」
【クロノ】
「わざと驚かせようとした訳じゃないから、まあ許してよ」
【クロノ】
「で、どう。調子は」
そう言って顔を近付けると、国重は目を見開いて後ずさる。
【クロノ】
「……もしかして……」
【クロノ】
「キスされると思った? 可愛い反応」
【国重 昂正】
「うるせぇな。可愛いとか、男に言ってんじゃねえ」
そう呟いて、国重は出勤の準備を始めた。
あっさりと俺に背中を向けてるところを見ると、昨日まであった不信感は薄れているようだ。
かといって信頼されているのかは知らないけど。
【国重 昂正】
「お前は本当に、いつでもどこでも現れるな。どうやってんだ、それ」
【クロノ】
「もしかして、まだトリックだと思ってる?」
【国重 昂正】
「いや……。そろそろお前の言い分を認めてやってもいいかもしれん」
国重はネクタイを締め直すと、俺へ視線だけ向けた。
【国重 昂正】
「死神、なんだったな」
俺は肯定の意味を込めて、微笑んだ。
国重は俺の仕草を見て、一つ溜息を吐いた。
反論したり、問い詰めたりする気はないらしい。
【クロノ】
「やっと認めてくれたか。……思えばここまで長かった」
【国重 昂正】
「夢の中とは言え、命まで救われたからな」
【国重 昂正】
「一つ訊きたいんだが、アイツを追い払ったあの鎌……、どっから出した」
【クロノ】
「見る? こうやって出した」
両掌を上に向けて、死神の鎌を生成する。
国重はポカンと口を開けたまま、鎌を見詰め、もういいと目を閉じた。
【クロノ】
「…今のあんたを見て、ちょっとほっとした」
【国重 昂正】
「あ? 何でだ」
【クロノ】
「夢の中で、この鎌を振るった時。あんた、『夏透(かおる)を傷つけるな』って、凄い怒ってたから」
【国重 昂正】
「……」
【クロノ】
「……『夏透』は……、あんな姿になったとしても、あんたの恋人だろ」
【クロノ】
「相変わらず神出鬼没だね、じい。何か新しい情報でも掴んだ?」
布団から顔を出して告げると。
じいは、手に持った資料をぱらぱらとめくり、何かを確認しているところだった。
【アンク】
「昨日得た情報を、クロノ様にご説明しようと思いましてな」
俺が上体を起こすと、じいは得意気に笑った。
【アンク】
「お渡ししたリビドーの説明は昨夜致しましたから」
【アンク】
「悪夢を撃退する方法と、何故国重さんが、口付けで目覚めたのか」
【アンク】
「その二点の、詳細な説明を致しましょう」
じいは書類を丁寧に持ち直すと、俺の前に座って。
ベッドの上に書類を広げ、図を示しながら口を開く。
【アンク】
「順を追って説明致しましょう。これは私が作成した、LIP使用者についての報告書なのですが」
【アンク】
「悪夢化は、夢の登場人物が『化物』になるケースが多いことがわかりました」
【アンク】
「そして、その化物には弱点があることも」
【クロノ】
「それが、あの時に見た『綻び』か。なら、次も『綻び』を見つけて突けばいいんだな?」
【アンク】
「はい。悪夢が進行した場合、化物――、悪夢を斬らなければ、夢主は目覚めなくなるケースすらあるようです」
【クロノ】
「わかった。……でも、思えば、なんで昨日の朝、リビドーの使い方説明しなかったの?」
【アンク】
「いやあ、クロノ様なら、説明しなくても気付いて下さると思いまして」
俺は、じいに冷たい視線を向けた。
じいはあさっての方を向いて、そらぞらしく口笛なんか吹いていた。
【クロノ】
「…要するに、これからも同じ方法で悪夢を撃退できるんだな?」
【アンク】
「はい。悪夢の中で化け物を斬り、クロノ様が目覚めた後は、リビドーで正常な脳波を送って下さいませ」
【アンク】
「また、クロノ様の体にも、ちょっとした仕掛けをさせていただきました」
【クロノ】
「……は!?」
【アンク】
「何を驚いているのです? 被害者を口付けで目覚めさせることができたのは」
【アンク】
「私が施した、その仕掛けのためなのですぞ」
【クロノ】
「ちょっと待って…。いつの間にそんなことした?」
自分の体を抱きながら身震いすると、じいは大げさなと肩を竦めた。
【アンク】
「何も腹を開いて装置を組み込んだわけではございません」
【アンク】
「ちょっとしたおまじないの様なものですよ。死神流の」
【クロノ】
「信用できない…。それ、俺には無害なんだろうな?」
【アンク】
「もちろんでございます」
【アンク】
「姫を目覚めさせるキスが、王子様に有害なはずございません」
【クロノ】
「まわりくどい言い方するな。つまりどういうまじない?」
【アンク】
「それは、秘密でございます。とにかく、綻びを突いて悪夢を消し去り、正常な脳波を送っても」
【アンク】
「それでも夢主が目覚めない場合は、王子のキスを。以上でございます」
それだけ言って立ち去ろうとしたじいを、慌てて引き止める。
【クロノ】
「待って、どう考えても説明が不十分なんだけど」
【アンク】
「考えるよりも行動、習うより慣れろ、でございます。良い夢を。アディオス」
【クロノ】
「……」
キザな挨拶と不敵な笑みを残して、じいは消えた。
なんだあのキャラ。『地獄のセバスチャン』をイメージしているのだろうか。
俺は苛立ちを感じ……、勢い良く布団に潜り込む。
理不尽なことがあった時は、不貞寝に限る。
昼前、国重の様子を見に探偵事務所に行ってみたが、古林含め誰もいなかったので、国重の部屋へ行ってみた。
突如目の前に現れた俺の姿に驚いて、国重は持っていたカップを落として割った。
【国重 昂正】
「……あああ!!」
【クロノ】
「ドジだな。注意力散漫」
【国重 昂正】
「誰のせいだと思ってんだ…」
【クロノ】
「昨夜、夢でも現実でも会ったから、もう俺には慣れたと思って」
【国重 昂正】
「知った相手でも突然目の前に現れたら、驚くに決まってんだろうが」
【クロノ】
「わざと驚かせようとした訳じゃないから、まあ許してよ」
【クロノ】
「で、どう。調子は」
そう言って顔を近付けると、国重は目を見開いて後ずさる。
【クロノ】
「……もしかして……」
【クロノ】
「キスされると思った? 可愛い反応」
【国重 昂正】
「うるせぇな。可愛いとか、男に言ってんじゃねえ」
そう呟いて、国重は出勤の準備を始めた。
あっさりと俺に背中を向けてるところを見ると、昨日まであった不信感は薄れているようだ。
かといって信頼されているのかは知らないけど。
【国重 昂正】
「お前は本当に、いつでもどこでも現れるな。どうやってんだ、それ」
【クロノ】
「もしかして、まだトリックだと思ってる?」
【国重 昂正】
「いや……。そろそろお前の言い分を認めてやってもいいかもしれん」
国重はネクタイを締め直すと、俺へ視線だけ向けた。
【国重 昂正】
「死神、なんだったな」
俺は肯定の意味を込めて、微笑んだ。
国重は俺の仕草を見て、一つ溜息を吐いた。
反論したり、問い詰めたりする気はないらしい。
【クロノ】
「やっと認めてくれたか。……思えばここまで長かった」
【国重 昂正】
「夢の中とは言え、命まで救われたからな」
【国重 昂正】
「一つ訊きたいんだが、アイツを追い払ったあの鎌……、どっから出した」
【クロノ】
「見る? こうやって出した」
両掌を上に向けて、死神の鎌を生成する。
国重はポカンと口を開けたまま、鎌を見詰め、もういいと目を閉じた。
【クロノ】
「…今のあんたを見て、ちょっとほっとした」
【国重 昂正】
「あ? 何でだ」
【クロノ】
「夢の中で、この鎌を振るった時。あんた、『夏透(かおる)を傷つけるな』って、凄い怒ってたから」
【国重 昂正】
「……」
【クロノ】
「……『夏透』は……、あんな姿になったとしても、あんたの恋人だろ」