[本編] 国重 昴正 編
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【クロノ】
「とにかく、ありがと。早速使ってみる」
じいは調査の続きがあるので、俺一人で、長に定例報告に向かう。
その途中で、ユリスに出会ってうんざりした。無視して通り過ぎようとしたのに、懲りずについてくるし。
【ユリス】
「露骨に避けてんじゃねーよ! なあなあ、昨日のことだけど」
【クロノ】
「俺の部屋の、ベッドの下と本棚と机の中漁って、俺の布団を使った話?」
【ユリス】
「は……、はあ!? してねーし!! なにそれ!! お前って自意識過剰!?」
【クロノ】
「まあ、それ以上の事は追及しないでやるよ。昨日、部屋中の掃除ついでに模様替えしたから疲れたし」
【ユリス】
「そ、そんなに、俺がいた痕跡消さなくてもいいだろ!? …て、その話じゃなくて!」
【クロノ】
「俺の部屋に不法侵入した時に言ってた、LIPがどうのとか、オッサンがどうのって話?」
【ユリス】
「いっちいちトゲがあるな、お前…。でも、そう。別に俺は男が男を好きでも構わないんだけどさあ」
【クロノ】
「だったらなに」
【ユリス】
「あんなオッサンがさあ、わざわざリビドー使ってホモ欲求解消とか、気持ち悪くね?」
【クロノ】
「俺はお前の考え方の方が気持ち悪いけど」
【ユリス】
「なっ……」
【クロノ】
「誰が何を思っていようと、お前には関係ないのに、そうやっていちいち口出すところが」
【ユリス】
「……随分でかい口叩くんだな。LIPのこと、教えてやろうと思ってたのに」
【クロノ】
「その件ならもう調べてもらったから、必要ない」
【ユリス】
「……あっそ。あんなオッサンの為によくやるね」
無視して歩く速度を上げると、ユリスはもうついてこようとはしなかったが。
【ユリス】
「なんだよっ、昔を懐かしんだりとかって。フン」
ユリスが小声で言った言葉に、違和感を覚える。
【クロノ】
(さっき、俺がparaisoで話してたことじゃないか?)
【クロノ】
(ということは、さっきの『イクシード』がユリスか?)
【クロノ】
(それにしては雰囲気が違ったけど…。…どうであれ、ユリスはparaisoを見ている)
人間界へ行き、探偵事務所に入ると、国重は仕事に追われていた。
たまたま最近、ちょっと静かなだけだったようだ。客の出入りは少ないが、電話がよく掛かってくる。
電話を受けているのは、初めて見る助手らしき男だ。
ホワイトボードを見ると「出張」の文字が消えているので、こいつが唯一の社員の「古林」だろう。
因みに古林は、なかなかの美形だけど、童顔すぎるというか、頼りなげで、俺の好みではない。
受話器に耳を近付けて内容を聞いてみると、やはり依頼の電話がほとんどだった。
だがその都度、今は手が足りないと、古林が断っている。
【クロノ】
(どうやら、リビドーの事件に絞ってるみたいだ)
よほどリビドーの案件に、思い入れでもあるのだろうか。
思えば、最初の警告の時に、国重はわかったと言って考え込んだけれど――、翌日リビドーを使ってたし。
……国重の考えてることが、よくわからない。
今日も、黙々と調べ物をしている横顔を見つめながら……
まずは夜を待つことにした。
【クロノ】
(国重探偵事務所が閉店するのは……、じゃなかった。事務所が閉まるまでは)
【クロノ】
(あと、5時間くらいか…)
事務所の明かりが消えた。
国重は、戸締まりをして事務所を出て―――、自宅のある隣のアパートへ向かう。
昨夜の悪夢の影響で、もしかしたら、今夜はリビドーを使わないかもしれないと思ったけど。
着替えを済ませた国重は、布団に横たわり―――、リビドーを装着した。
あんな悪夢を見て。寿命を縮めてまで。
【クロノ】
(国重はどうして、リビドーを使うんだろう)
今日も二人は庭園で過ごしていた。
【クロノ】
(あんなことがあった後なのに…。よく夏透と一緒にいられるな)
いつ化物に変わるのかと、考えないんだろうか。
ふと、昨日より更に膜が濃くなっていることに気づく。
今までは触れれば消えたけど、今日はびくともしない。
少し強めに押してみても、押し返す感触しかない。
死神の鎌を生成して斬りつけると、ようやく消えた。
膜が消えた瞬間、国重がこっちを見た。
―――目が合った。
途端、夢の景色がぐにゃりと歪み、空が真っ赤に変色した。
【クロノ】
「なんでまた……!」
じいは、LIPを使うと悪夢を見ることもあるって言ってたけど。
今、こんな風になったのは、もしかして俺が原因じゃないのか?
国重が俺を見た瞬間に、急に悪夢化が進んだのだから。
こうしている間にも、夏透は化物へと変貌を遂げてしまった。
その姿は、昨日よりも禍々しい。
夏透の顔は変わらないまま、全身緑色に変色し膨れ上がる。
その体には、どう見ても男を受け入れるソレの形をした穴が、無数にあいていた。
【クロノ】
「何してる、早く覚醒しろ!」
【国重 昂正】
「……」
恐怖に捕われているわけでも、聞こえてないわけでもなさそうだが、国重は動かない。
痺れを切らした俺は、死神の鎌を構えて化物へと向き直った。
その瞬間――。
【国重 昂正】
「やめろ! 夏透を傷つけるな!」
突然、国重が弾かれた様に動き、俺と化物の間に立ちはだかった。
【クロノ】
「はあ!? このままで、無事に目覚められると言い切れるのか?」
【国重 昂正】
「……っ」
【化物】
「優しいね、昂正。守ってくれるんだ?」
夏透の声で、まともな言葉を喋ったから、やはり意識はあるんだろうか。
すぐに鎌を振り下ろすつもりだったけど、ためらいが生まれた。
【化物】
「こんな姿になっても、昂正は愛してくれるんだ?」
【化物】
「あ、違う。愛してなんかいなかったから、誕生日も祝ってくれなかったんだっけ」
【国重 昂正】
「……」
国重の顔から、また表情が抜け落ちて――、動かなくなる。
化物は国重に顔を近付けて、どこまでも綺麗な笑顔を作る。
【化物】
「ほら、てめえが捨てた奴に突っ込もうとしてねえで、新しい恋人とさっさとヤってみせろよ」
【化物】
「ヤるだけヤった緩い穴なんて、もう用済みなんだろ? 刑事さん」
目に見えて、国重の全身が強張った。
その瞬間、化物の腹がぱっくりと割れ、剣山のような歯が生えた大口が開いた―――。
【クロノ】
「どけ、オッサン!」
国重に体当たりし、化物の体の一部の綻びのような部分を、鎌の柄で突いてみた。
【国重 昂正】
「―――っ、てめえ! 何すんだ馬鹿野郎!」
【クロノ】
「殺してないから問題ないだろ!? いいからあんたは後ろに―――」
【国重 昂正】
「手ぇ上げんなって言ってんだよ!! クソガキはさっさと先に戻って……」
【化物】
「う……アアああああ……」
【クロノ】
「…あれ、消えるっぽい…?」
化物は、徐々に姿を薄くしていって、やがて消えた。
【国重 昂正】
「……てめえ」
【クロノ】
「……怒るなよ。とりあえず助かったんだから」
【クロノ】
「説教なら目が覚めてから聞くから。先行ってるよ」
現実世界に戻って、国重の覚醒を待ったが、目覚める気配がない。
なんでだろう。
また化物でも出て、襲われたりしているのだろうか。
とにかく早く起こさないと、と考えているとじいが現れた。
【アンク】
「緊急事態とお見受けしたので、参りました! 地獄のセバスチャン登場ですぞ!」
【クロノ】
「そういうのは今は良いから。質問に答えて」
【クロノ】
「悪夢を撃退する仕掛けを、俺のリビドーに仕込んだって言ってたよね?」
【クロノ】
「何かわかんないけど、化物の体の綻びみたいな所を突いたら、撃退できたんだけど」
【アンク】
「それはリビドーの装置とは関係ないのですが、撃退できたとは流石です!」
【クロノ】
「……関係ないなら、それはいいや。今、別の肝心な部分で困ってて」
【クロノ】
「国重の目が覚めないみたいなんだけど」
「とにかく、ありがと。早速使ってみる」
じいは調査の続きがあるので、俺一人で、長に定例報告に向かう。
その途中で、ユリスに出会ってうんざりした。無視して通り過ぎようとしたのに、懲りずについてくるし。
【ユリス】
「露骨に避けてんじゃねーよ! なあなあ、昨日のことだけど」
【クロノ】
「俺の部屋の、ベッドの下と本棚と机の中漁って、俺の布団を使った話?」
【ユリス】
「は……、はあ!? してねーし!! なにそれ!! お前って自意識過剰!?」
【クロノ】
「まあ、それ以上の事は追及しないでやるよ。昨日、部屋中の掃除ついでに模様替えしたから疲れたし」
【ユリス】
「そ、そんなに、俺がいた痕跡消さなくてもいいだろ!? …て、その話じゃなくて!」
【クロノ】
「俺の部屋に不法侵入した時に言ってた、LIPがどうのとか、オッサンがどうのって話?」
【ユリス】
「いっちいちトゲがあるな、お前…。でも、そう。別に俺は男が男を好きでも構わないんだけどさあ」
【クロノ】
「だったらなに」
【ユリス】
「あんなオッサンがさあ、わざわざリビドー使ってホモ欲求解消とか、気持ち悪くね?」
【クロノ】
「俺はお前の考え方の方が気持ち悪いけど」
【ユリス】
「なっ……」
【クロノ】
「誰が何を思っていようと、お前には関係ないのに、そうやっていちいち口出すところが」
【ユリス】
「……随分でかい口叩くんだな。LIPのこと、教えてやろうと思ってたのに」
【クロノ】
「その件ならもう調べてもらったから、必要ない」
【ユリス】
「……あっそ。あんなオッサンの為によくやるね」
無視して歩く速度を上げると、ユリスはもうついてこようとはしなかったが。
【ユリス】
「なんだよっ、昔を懐かしんだりとかって。フン」
ユリスが小声で言った言葉に、違和感を覚える。
【クロノ】
(さっき、俺がparaisoで話してたことじゃないか?)
【クロノ】
(ということは、さっきの『イクシード』がユリスか?)
【クロノ】
(それにしては雰囲気が違ったけど…。…どうであれ、ユリスはparaisoを見ている)
人間界へ行き、探偵事務所に入ると、国重は仕事に追われていた。
たまたま最近、ちょっと静かなだけだったようだ。客の出入りは少ないが、電話がよく掛かってくる。
電話を受けているのは、初めて見る助手らしき男だ。
ホワイトボードを見ると「出張」の文字が消えているので、こいつが唯一の社員の「古林」だろう。
因みに古林は、なかなかの美形だけど、童顔すぎるというか、頼りなげで、俺の好みではない。
受話器に耳を近付けて内容を聞いてみると、やはり依頼の電話がほとんどだった。
だがその都度、今は手が足りないと、古林が断っている。
【クロノ】
(どうやら、リビドーの事件に絞ってるみたいだ)
よほどリビドーの案件に、思い入れでもあるのだろうか。
思えば、最初の警告の時に、国重はわかったと言って考え込んだけれど――、翌日リビドーを使ってたし。
……国重の考えてることが、よくわからない。
今日も、黙々と調べ物をしている横顔を見つめながら……
まずは夜を待つことにした。
【クロノ】
(国重探偵事務所が閉店するのは……、じゃなかった。事務所が閉まるまでは)
【クロノ】
(あと、5時間くらいか…)
事務所の明かりが消えた。
国重は、戸締まりをして事務所を出て―――、自宅のある隣のアパートへ向かう。
昨夜の悪夢の影響で、もしかしたら、今夜はリビドーを使わないかもしれないと思ったけど。
着替えを済ませた国重は、布団に横たわり―――、リビドーを装着した。
あんな悪夢を見て。寿命を縮めてまで。
【クロノ】
(国重はどうして、リビドーを使うんだろう)
今日も二人は庭園で過ごしていた。
【クロノ】
(あんなことがあった後なのに…。よく夏透と一緒にいられるな)
いつ化物に変わるのかと、考えないんだろうか。
ふと、昨日より更に膜が濃くなっていることに気づく。
今までは触れれば消えたけど、今日はびくともしない。
少し強めに押してみても、押し返す感触しかない。
死神の鎌を生成して斬りつけると、ようやく消えた。
膜が消えた瞬間、国重がこっちを見た。
―――目が合った。
途端、夢の景色がぐにゃりと歪み、空が真っ赤に変色した。
【クロノ】
「なんでまた……!」
じいは、LIPを使うと悪夢を見ることもあるって言ってたけど。
今、こんな風になったのは、もしかして俺が原因じゃないのか?
国重が俺を見た瞬間に、急に悪夢化が進んだのだから。
こうしている間にも、夏透は化物へと変貌を遂げてしまった。
その姿は、昨日よりも禍々しい。
夏透の顔は変わらないまま、全身緑色に変色し膨れ上がる。
その体には、どう見ても男を受け入れるソレの形をした穴が、無数にあいていた。
【クロノ】
「何してる、早く覚醒しろ!」
【国重 昂正】
「……」
恐怖に捕われているわけでも、聞こえてないわけでもなさそうだが、国重は動かない。
痺れを切らした俺は、死神の鎌を構えて化物へと向き直った。
その瞬間――。
【国重 昂正】
「やめろ! 夏透を傷つけるな!」
突然、国重が弾かれた様に動き、俺と化物の間に立ちはだかった。
【クロノ】
「はあ!? このままで、無事に目覚められると言い切れるのか?」
【国重 昂正】
「……っ」
【化物】
「優しいね、昂正。守ってくれるんだ?」
夏透の声で、まともな言葉を喋ったから、やはり意識はあるんだろうか。
すぐに鎌を振り下ろすつもりだったけど、ためらいが生まれた。
【化物】
「こんな姿になっても、昂正は愛してくれるんだ?」
【化物】
「あ、違う。愛してなんかいなかったから、誕生日も祝ってくれなかったんだっけ」
【国重 昂正】
「……」
国重の顔から、また表情が抜け落ちて――、動かなくなる。
化物は国重に顔を近付けて、どこまでも綺麗な笑顔を作る。
【化物】
「ほら、てめえが捨てた奴に突っ込もうとしてねえで、新しい恋人とさっさとヤってみせろよ」
【化物】
「ヤるだけヤった緩い穴なんて、もう用済みなんだろ? 刑事さん」
目に見えて、国重の全身が強張った。
その瞬間、化物の腹がぱっくりと割れ、剣山のような歯が生えた大口が開いた―――。
【クロノ】
「どけ、オッサン!」
国重に体当たりし、化物の体の一部の綻びのような部分を、鎌の柄で突いてみた。
【国重 昂正】
「―――っ、てめえ! 何すんだ馬鹿野郎!」
【クロノ】
「殺してないから問題ないだろ!? いいからあんたは後ろに―――」
【国重 昂正】
「手ぇ上げんなって言ってんだよ!! クソガキはさっさと先に戻って……」
【化物】
「う……アアああああ……」
【クロノ】
「…あれ、消えるっぽい…?」
化物は、徐々に姿を薄くしていって、やがて消えた。
【国重 昂正】
「……てめえ」
【クロノ】
「……怒るなよ。とりあえず助かったんだから」
【クロノ】
「説教なら目が覚めてから聞くから。先行ってるよ」
現実世界に戻って、国重の覚醒を待ったが、目覚める気配がない。
なんでだろう。
また化物でも出て、襲われたりしているのだろうか。
とにかく早く起こさないと、と考えているとじいが現れた。
【アンク】
「緊急事態とお見受けしたので、参りました! 地獄のセバスチャン登場ですぞ!」
【クロノ】
「そういうのは今は良いから。質問に答えて」
【クロノ】
「悪夢を撃退する仕掛けを、俺のリビドーに仕込んだって言ってたよね?」
【クロノ】
「何かわかんないけど、化物の体の綻びみたいな所を突いたら、撃退できたんだけど」
【アンク】
「それはリビドーの装置とは関係ないのですが、撃退できたとは流石です!」
【クロノ】
「……関係ないなら、それはいいや。今、別の肝心な部分で困ってて」
【クロノ】
「国重の目が覚めないみたいなんだけど」