[本編] 国重 昴正 編
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【アンク】
「そうですか…。そのような事が起きたのなら」
【アンク】
「夢主を目覚めさせ、夢を終える事が、最良の判断かと思われます」
【アンク】
「冷静な判断でしたな、クロノ様」
【クロノ】
「そう聞いて安心したよ。……けど、全然起きないんだけど」
深く目を閉じたままの国重の表情が、苦しそうに歪んでいく。
もっと強く頬を叩いてみたり、揺さぶってみたりしたけれど。
それでも覚醒する様子はない。
【クロノ】
「これ…大丈夫? 随分眠りが深いみたい」
頬を叩いても起きないのなら、殴るくらいはしないといけないのだろうか。
無抵抗な人間に暴力をふるうのはちょっと…、などと考えていると、鋭い視線を感じた。
……じいに睨まれている。
【アンク】
「本気で親身になって考えていますか? クロノ様」
【アンク】
「貴方には、まだまだ余裕がありそうですぞ」
【アンク】
「いや、むしろ危機感が足りていないように思えますが、私の考えすぎでしょうか」
【クロノ】
「……じいの考えすぎですとも…」
【クロノ】
「とにかく、何としてでも起こしてみせるよ。うん」
迷いを振りきって、殴ろう。
固く握りしめた拳を構えた時。
国重の口が震えて、何かを呟いた。
【クロノ】
(寝言…?)
随分必死に呟いているので、耳を近付けてみる。
【国重 昂正】
「悪かった…。許してくれ…」
【クロノ】
「……」
夢で危ない目に遭って、咄嗟に謝っている――、という感じではなかった。
国重の表情は、後悔や無念に染め上げられた人間特有の、ある種の透明感とも虚無感ともつかないものだった。
国重の目尻から、一筋の涙が零れて落ちる。
……悪かった、許してくれ?
そう言って涙を流す程、国重に何があったんだろう。
悪かったと、何度懺悔しても届かない。
許してくれと言っても、聞き届ける者はいない。
俺は遅すぎた。俺の声は虚しく響くだけ。
俺は今まで、自分以外の誰かの罪を暴く事を生業としていた。
では俺の罪は、誰が暴いてくれるのだろうか。
誰が俺の罪を暴いて、罰してくれるのか。
―――誰か、俺を―――殺してくれ。
【クロノ】
「起きた」
【国重 昂正】
「……」
【クロノ】
「俺が解る? 国重」
【国重 昂正】
「……」
【アンク】
「目は覚めたようですが…。まだ、ぼんやりしていますね」
【アンク】
「水などを摂るよう勧めては如何でしょう」
【クロノ】
「そうだね。……ちょっと待ってて、確かこの辺に水が…。あった」
【クロノ】
「はい、コレ。飲める?」
国重は視線を動かして、差し出された水のボトルを見る。
【国重 昂正】
「……俺は、どうなった……?」
【クロノ】
「無事に覚醒した。おめでとう」
【国重 昂正】
「おめでとう…?」
眉間に深い皺が刻まれたのを見て、俺は素直に頭を下げる。
【クロノ】
「無神経だった? ごめん」
【国重 昂正】
「……」
【クロノ】
「でも、あのまま夢の中にいたら、きっと無事じゃ済まなかったと思う」
【クロノ】
「目覚めるのを手伝ってあげた人にすごむのは、あまり良くないんじゃない?」
【国重 昂正】
「―――そうだ、何でお前がここにいる!?」
突然起き上がった国重は、バランスを崩して倒れそうになる。
それを支えてやったってのに、迷惑だと言わんばかりに手を払われた。
【クロノ】
「何でって。だから死神だっていったじゃない」
【国重 昂正】
「……それは、聞いたが……」
聞いたし認めざるを得ない状況にはなりつつあるけど、まだ納得はできないらしい。
言い淀んで唸る国重に、俺は小さく溜息をついた。
【クロノ】
「とりあえず、あんたにとっての楽園が」
【クロノ】
「急にあんな地獄絵図と化した原因に、何か心当たりは?」
【クロノ】
「夏透サンも、なんか呪われたみたいになっちゃって」
【クロノ】
「思い出すのもショックかもしれないけど、何か思い出せることがあるなら…」
【国重 昂正】
「……LIP」
【クロノ】
「LIP? それがどうしたの?」
俺の声にはっとしたのか、国重は口を噤んで立ち上がる。
【国重 昂正】
「寝汗が酷いから着替えたい。悪いがちょっと出ていってくれ」
【クロノ】
「助けてやったお礼に、着替えの一つくらい見せてくれてもいいんじゃない?」
【国重 昂正】
「おっさんの着替えなんか見て楽しいか?」
【クロノ】
「少なくとも俺は楽しいけど。……ま、時間もないし、そろそろお暇しようかな」
国重の死角に入って、静かに俺達を見守っていたじいに視線を送ると。
了解したというように頷き、じいは一足先に死神界へと消えた。
続いて俺も帰ろうと、国重に背を向けた時。
『ありがとう』と、声をかけられた気がした。
「そうですか…。そのような事が起きたのなら」
【アンク】
「夢主を目覚めさせ、夢を終える事が、最良の判断かと思われます」
【アンク】
「冷静な判断でしたな、クロノ様」
【クロノ】
「そう聞いて安心したよ。……けど、全然起きないんだけど」
深く目を閉じたままの国重の表情が、苦しそうに歪んでいく。
もっと強く頬を叩いてみたり、揺さぶってみたりしたけれど。
それでも覚醒する様子はない。
【クロノ】
「これ…大丈夫? 随分眠りが深いみたい」
頬を叩いても起きないのなら、殴るくらいはしないといけないのだろうか。
無抵抗な人間に暴力をふるうのはちょっと…、などと考えていると、鋭い視線を感じた。
……じいに睨まれている。
【アンク】
「本気で親身になって考えていますか? クロノ様」
【アンク】
「貴方には、まだまだ余裕がありそうですぞ」
【アンク】
「いや、むしろ危機感が足りていないように思えますが、私の考えすぎでしょうか」
【クロノ】
「……じいの考えすぎですとも…」
【クロノ】
「とにかく、何としてでも起こしてみせるよ。うん」
迷いを振りきって、殴ろう。
固く握りしめた拳を構えた時。
国重の口が震えて、何かを呟いた。
【クロノ】
(寝言…?)
随分必死に呟いているので、耳を近付けてみる。
【国重 昂正】
「悪かった…。許してくれ…」
【クロノ】
「……」
夢で危ない目に遭って、咄嗟に謝っている――、という感じではなかった。
国重の表情は、後悔や無念に染め上げられた人間特有の、ある種の透明感とも虚無感ともつかないものだった。
国重の目尻から、一筋の涙が零れて落ちる。
……悪かった、許してくれ?
そう言って涙を流す程、国重に何があったんだろう。
悪かったと、何度懺悔しても届かない。
許してくれと言っても、聞き届ける者はいない。
俺は遅すぎた。俺の声は虚しく響くだけ。
俺は今まで、自分以外の誰かの罪を暴く事を生業としていた。
では俺の罪は、誰が暴いてくれるのだろうか。
誰が俺の罪を暴いて、罰してくれるのか。
―――誰か、俺を―――殺してくれ。
【クロノ】
「起きた」
【国重 昂正】
「……」
【クロノ】
「俺が解る? 国重」
【国重 昂正】
「……」
【アンク】
「目は覚めたようですが…。まだ、ぼんやりしていますね」
【アンク】
「水などを摂るよう勧めては如何でしょう」
【クロノ】
「そうだね。……ちょっと待ってて、確かこの辺に水が…。あった」
【クロノ】
「はい、コレ。飲める?」
国重は視線を動かして、差し出された水のボトルを見る。
【国重 昂正】
「……俺は、どうなった……?」
【クロノ】
「無事に覚醒した。おめでとう」
【国重 昂正】
「おめでとう…?」
眉間に深い皺が刻まれたのを見て、俺は素直に頭を下げる。
【クロノ】
「無神経だった? ごめん」
【国重 昂正】
「……」
【クロノ】
「でも、あのまま夢の中にいたら、きっと無事じゃ済まなかったと思う」
【クロノ】
「目覚めるのを手伝ってあげた人にすごむのは、あまり良くないんじゃない?」
【国重 昂正】
「―――そうだ、何でお前がここにいる!?」
突然起き上がった国重は、バランスを崩して倒れそうになる。
それを支えてやったってのに、迷惑だと言わんばかりに手を払われた。
【クロノ】
「何でって。だから死神だっていったじゃない」
【国重 昂正】
「……それは、聞いたが……」
聞いたし認めざるを得ない状況にはなりつつあるけど、まだ納得はできないらしい。
言い淀んで唸る国重に、俺は小さく溜息をついた。
【クロノ】
「とりあえず、あんたにとっての楽園が」
【クロノ】
「急にあんな地獄絵図と化した原因に、何か心当たりは?」
【クロノ】
「夏透サンも、なんか呪われたみたいになっちゃって」
【クロノ】
「思い出すのもショックかもしれないけど、何か思い出せることがあるなら…」
【国重 昂正】
「……LIP」
【クロノ】
「LIP? それがどうしたの?」
俺の声にはっとしたのか、国重は口を噤んで立ち上がる。
【国重 昂正】
「寝汗が酷いから着替えたい。悪いがちょっと出ていってくれ」
【クロノ】
「助けてやったお礼に、着替えの一つくらい見せてくれてもいいんじゃない?」
【国重 昂正】
「おっさんの着替えなんか見て楽しいか?」
【クロノ】
「少なくとも俺は楽しいけど。……ま、時間もないし、そろそろお暇しようかな」
国重の死角に入って、静かに俺達を見守っていたじいに視線を送ると。
了解したというように頷き、じいは一足先に死神界へと消えた。
続いて俺も帰ろうと、国重に背を向けた時。
『ありがとう』と、声をかけられた気がした。