[本編] 国重 昴正 編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【国重 昂正】
「春川さん」
【春川 樹生】
「すみません」
国重は春川をじっと見つめているが、春川は目線を下げたままだ。
【国重 昂正】
「……わかりました。何か思い出した事があったら、ご連絡下さい」
外へ出て裏路地に入ると、国重は苦々しい表情で煙草に火を点ける。
大した情報を得られなかったからだろうか。
……俺も、話術を使用した仕事は苦手だけど。
さっきの国重の喋り方は、相手を威圧しているように感じた。
あの場面では寧ろ、相手が情報を与えたくなるように仕向けるべきだろう。
リラックスさせるべきであって、萎縮させたり、警戒させる場面じゃない。
そのことに、国重は気付いていないのだろうか。
もしかして、気付いているのに実行できないのだろうか。
だとしたら……
【クロノ】
(不器用な奴)
背中を丸めて、今度はゆっくりと歩く国重の横顔を眺めながら、俺は不意にひらめいた。
―――この状況は、チャンスだ。
俺も国重も、仕事でリビドーについて調べているんだから。
もしかしたら、協力し合えるかもしれない。
事務所に戻った国重は、慣れない手つきでPCをいじっている。
慣れないどころじゃない。まるでボタンを押したら、パソコンが爆発するとでも思ってそうな手付きだ。
【クロノ】
(一応探偵だろ、こいつ…。なんでこんなに操作が拙いんだ?)
死神界にもパソコンはあるし、俺も人並みには使える。こんなたどたどしい操作を見てると、歯痒くて仕方がない。
手助けしたくなる気持ちを押さえて、我慢して見守る。
送られてきたメールに記載されているアドレスを見ながら。
国重は一本指でキーを押し、たっぷりと時間をかけて、URLの直打ちに成功した。
【クロノ】
(……クリックすれば一瞬だったんだけどな……)
震える手でエンターキーを押し、何かのサイトを表示させた。
【クロノ】
(サイトのタイトルは……『paraiso』)
モニターを見ている国重の目は、点になってるけど……
これはどうやら、チャットサイトのようだ。
【国重 昂正】
「……入口は、どこだ」
フラフラと彷徨うカーソルが、広告のエンターボタンの上で止まる。
【クロノ】
(うっ、そこじゃない…)
【国重 昂正】
「……これか?」
【クロノ】
(違う、それはいかがわしいサイトの入り口…)
【国重 昂正】
「……クソッ、なんで入れねえんだ!」
【クロノ】
(あんたが間違えてんだよ、おっさん…!)
俺まで、国重と一緒になって地団駄を踏みそうになった。
駄目だ。このままじゃ一日かかってもサイトの中に入れない。
俺はそっとマウスを動かし、国重の指を押して左クリックをさせた。
【国重 昂正】
「お? なにか表示されたぞ。…壊れたか?」
生ぬるい視線で国重を一瞥してから、俺はモニタを覗き込んだ。
入ってしまえば、paraisoはシンプルで使いやすそうなチャットサイトだった。
あの国重さえも、迷わずさくさくと読み進められている。
チャットは、リビドーの話題で持ちきりだ。
【クロノ】
(どうやら、リビドー関連のサイトらしいな…)
こんなチャットサイトがあるなんて情報、資料になかった。
……おかしくないか?
このアドレスは、メールに記載されていたものだ。
ということは、誰かがこのアドレスを国重に送ってきたという事だ。
誰が、死神の調査にも上がらないようなサイトを、国重に送ったんだ?
不審に思うが、それより今は、リビドーのこんな情報源を見逃す手はない。
更に詳しく見てみようと首を伸ばすと、今度はサイトを閉じられてしまった。
【国重 昂正】
「腹減った…。何か食うもんあったかな」
給湯室へ向かう背中を、思わず恨めしげな視線で見送る。
……まあ、コンビーフをくわえて戻ってきた姿を見たら、怒る気も失せたけど。
【クロノ】
(姿を消したままの調査も、そろそろ限界か……よし)
俺は一度、事務所の外に出てから人間の姿を取る。これで人間には俺の姿が見える。
壁抜けとか、死神の力が一部使えなくなるけど、人間に見られたまま壁抜けなんてどの道出来ないんだから同じだ。
【クロノ】
(この姿で、まずは依頼人を装って―――)
【クロノ】
(情報の共有と、……それとなくリビドーを使わないことを約束…いや)
それだけじゃ足りないな。リビドーを破棄させよう。
俺は「ひぐま探偵事務所」と書かれた、国重の事務所のドアを叩いた。
事務所のドアに、まだ鍵は掛かっていなかったので、遠慮なく開けさせてもらう。
【クロノ】
「夜遅くにすみません」
【国重 昂正】
「…っと、少々お待ちください」
国重は、机の下に屈んで、くわえてたコンビーフを噛み砕いてから……
真面目な顔を作って、すっくと立ち上がる。
【国重 昂正】
「申し訳ありません、こちら20時で―――」
そう言いかけて、顔を強ばらせる。
どうやら…
『依頼人』の顔に見覚えがあるらしい。
俺は含み笑いをしながら、国重の口元を指さす。
【クロノ】
「口の端に何かついてますよ。……コンビーフみたいな」
【国重 昂正】
「! これは失礼……っ」
再び机の下に引っ込んだ国重の口元は、綺麗になっていた。
【国重 昂正】
「あの、折角お越し下さったところ恐縮ですが……」
【クロノ】
「もう閉店時間ですか? あ…、閉店って言うんですか? こういうの」
【国重 昂正】
「あーいや、事務所を閉めるっていうくらいで良いと思―――じゃなくて」
【国重 昂正】
「……失礼ですが、以前どこかでお会いしたことはありませんか?」
国重は苦笑を浮かべ、自分と俺を交互に指差している。
俺は笑うと、国重の方へと数歩歩いた。狭い事務所なので、それだけでかなり近付けた。
【クロノ】
「会ったよ。夢の中でね」
国重が数歩こちらへ踏み込んだ、と思うや否や、胸倉を掴まれて、関節技をかけられそうになる。
警察官だった頃の名残だろうか。
だけど、そんな痛いもの、わざとかけられてやる程お人好しじゃない。
俺は身をかわし、逆に後ろから国重を羽交い絞めにした。
【国重 昂正】
「ぐっ……! このっ、お前、何のつもりだ…!?」
【クロノ】
「何のつもり、と言われても」
【クロノ】
「いきなり攻撃されそうになったから、正当防衛」
国重は、悔しそうに歯ぎしりしている。
俺も結構力を入れてるから、相当痛いだろうに……
離せとも、痛いとも言わない。
じっと痛みに耐えている男前の顔が、歪んでいるのが、ちょっとイイ。
【クロノ】
「悔しい? あっさりかわされて」
【国重 昂正】
「……」
そう言えばこの人、結構積極的な夢を見てたな。
もう少しイタズラしてやろうか。
顔を近付けて、耳にふっと息をかけてみるが――
生憎、可愛い反応は何もなかった……
【国重 昂正】
「生憎、そういうのは俺には効かない」
【国重 昂正】
「そろそろ離せ、クソガキ」
【クロノ】
「これでもあんたより年上だし、仕掛けてきた側の態度とは思えない」
【国重 昂正】
「悪かった」
「春川さん」
【春川 樹生】
「すみません」
国重は春川をじっと見つめているが、春川は目線を下げたままだ。
【国重 昂正】
「……わかりました。何か思い出した事があったら、ご連絡下さい」
外へ出て裏路地に入ると、国重は苦々しい表情で煙草に火を点ける。
大した情報を得られなかったからだろうか。
……俺も、話術を使用した仕事は苦手だけど。
さっきの国重の喋り方は、相手を威圧しているように感じた。
あの場面では寧ろ、相手が情報を与えたくなるように仕向けるべきだろう。
リラックスさせるべきであって、萎縮させたり、警戒させる場面じゃない。
そのことに、国重は気付いていないのだろうか。
もしかして、気付いているのに実行できないのだろうか。
だとしたら……
【クロノ】
(不器用な奴)
背中を丸めて、今度はゆっくりと歩く国重の横顔を眺めながら、俺は不意にひらめいた。
―――この状況は、チャンスだ。
俺も国重も、仕事でリビドーについて調べているんだから。
もしかしたら、協力し合えるかもしれない。
事務所に戻った国重は、慣れない手つきでPCをいじっている。
慣れないどころじゃない。まるでボタンを押したら、パソコンが爆発するとでも思ってそうな手付きだ。
【クロノ】
(一応探偵だろ、こいつ…。なんでこんなに操作が拙いんだ?)
死神界にもパソコンはあるし、俺も人並みには使える。こんなたどたどしい操作を見てると、歯痒くて仕方がない。
手助けしたくなる気持ちを押さえて、我慢して見守る。
送られてきたメールに記載されているアドレスを見ながら。
国重は一本指でキーを押し、たっぷりと時間をかけて、URLの直打ちに成功した。
【クロノ】
(……クリックすれば一瞬だったんだけどな……)
震える手でエンターキーを押し、何かのサイトを表示させた。
【クロノ】
(サイトのタイトルは……『paraiso』)
モニターを見ている国重の目は、点になってるけど……
これはどうやら、チャットサイトのようだ。
【国重 昂正】
「……入口は、どこだ」
フラフラと彷徨うカーソルが、広告のエンターボタンの上で止まる。
【クロノ】
(うっ、そこじゃない…)
【国重 昂正】
「……これか?」
【クロノ】
(違う、それはいかがわしいサイトの入り口…)
【国重 昂正】
「……クソッ、なんで入れねえんだ!」
【クロノ】
(あんたが間違えてんだよ、おっさん…!)
俺まで、国重と一緒になって地団駄を踏みそうになった。
駄目だ。このままじゃ一日かかってもサイトの中に入れない。
俺はそっとマウスを動かし、国重の指を押して左クリックをさせた。
【国重 昂正】
「お? なにか表示されたぞ。…壊れたか?」
生ぬるい視線で国重を一瞥してから、俺はモニタを覗き込んだ。
入ってしまえば、paraisoはシンプルで使いやすそうなチャットサイトだった。
あの国重さえも、迷わずさくさくと読み進められている。
チャットは、リビドーの話題で持ちきりだ。
【クロノ】
(どうやら、リビドー関連のサイトらしいな…)
こんなチャットサイトがあるなんて情報、資料になかった。
……おかしくないか?
このアドレスは、メールに記載されていたものだ。
ということは、誰かがこのアドレスを国重に送ってきたという事だ。
誰が、死神の調査にも上がらないようなサイトを、国重に送ったんだ?
不審に思うが、それより今は、リビドーのこんな情報源を見逃す手はない。
更に詳しく見てみようと首を伸ばすと、今度はサイトを閉じられてしまった。
【国重 昂正】
「腹減った…。何か食うもんあったかな」
給湯室へ向かう背中を、思わず恨めしげな視線で見送る。
……まあ、コンビーフをくわえて戻ってきた姿を見たら、怒る気も失せたけど。
【クロノ】
(姿を消したままの調査も、そろそろ限界か……よし)
俺は一度、事務所の外に出てから人間の姿を取る。これで人間には俺の姿が見える。
壁抜けとか、死神の力が一部使えなくなるけど、人間に見られたまま壁抜けなんてどの道出来ないんだから同じだ。
【クロノ】
(この姿で、まずは依頼人を装って―――)
【クロノ】
(情報の共有と、……それとなくリビドーを使わないことを約束…いや)
それだけじゃ足りないな。リビドーを破棄させよう。
俺は「ひぐま探偵事務所」と書かれた、国重の事務所のドアを叩いた。
事務所のドアに、まだ鍵は掛かっていなかったので、遠慮なく開けさせてもらう。
【クロノ】
「夜遅くにすみません」
【国重 昂正】
「…っと、少々お待ちください」
国重は、机の下に屈んで、くわえてたコンビーフを噛み砕いてから……
真面目な顔を作って、すっくと立ち上がる。
【国重 昂正】
「申し訳ありません、こちら20時で―――」
そう言いかけて、顔を強ばらせる。
どうやら…
『依頼人』の顔に見覚えがあるらしい。
俺は含み笑いをしながら、国重の口元を指さす。
【クロノ】
「口の端に何かついてますよ。……コンビーフみたいな」
【国重 昂正】
「! これは失礼……っ」
再び机の下に引っ込んだ国重の口元は、綺麗になっていた。
【国重 昂正】
「あの、折角お越し下さったところ恐縮ですが……」
【クロノ】
「もう閉店時間ですか? あ…、閉店って言うんですか? こういうの」
【国重 昂正】
「あーいや、事務所を閉めるっていうくらいで良いと思―――じゃなくて」
【国重 昂正】
「……失礼ですが、以前どこかでお会いしたことはありませんか?」
国重は苦笑を浮かべ、自分と俺を交互に指差している。
俺は笑うと、国重の方へと数歩歩いた。狭い事務所なので、それだけでかなり近付けた。
【クロノ】
「会ったよ。夢の中でね」
国重が数歩こちらへ踏み込んだ、と思うや否や、胸倉を掴まれて、関節技をかけられそうになる。
警察官だった頃の名残だろうか。
だけど、そんな痛いもの、わざとかけられてやる程お人好しじゃない。
俺は身をかわし、逆に後ろから国重を羽交い絞めにした。
【国重 昂正】
「ぐっ……! このっ、お前、何のつもりだ…!?」
【クロノ】
「何のつもり、と言われても」
【クロノ】
「いきなり攻撃されそうになったから、正当防衛」
国重は、悔しそうに歯ぎしりしている。
俺も結構力を入れてるから、相当痛いだろうに……
離せとも、痛いとも言わない。
じっと痛みに耐えている男前の顔が、歪んでいるのが、ちょっとイイ。
【クロノ】
「悔しい? あっさりかわされて」
【国重 昂正】
「……」
そう言えばこの人、結構積極的な夢を見てたな。
もう少しイタズラしてやろうか。
顔を近付けて、耳にふっと息をかけてみるが――
生憎、可愛い反応は何もなかった……
【国重 昂正】
「生憎、そういうのは俺には効かない」
【国重 昂正】
「そろそろ離せ、クソガキ」
【クロノ】
「これでもあんたより年上だし、仕掛けてきた側の態度とは思えない」
【国重 昂正】
「悪かった」
