[本編] 綾 上総 編
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さっそく、次の日から行動を開始する。
ユリスは堪え性がないから、煽られたらわりとすぐに行動を開始するはずだし。
正面切ってケンカを売って来たくらいなんだから、慎重になることもないだろう。
決着が着くまでに、そう時間はかからないと思う。
――――ということで、俺は一つの計画をたてた。
俺はまだ有給休暇中ということになっていることもあるし。
姿を消していた方が動き易いため、死神の姿でオフィスに忍び込む。
上総と浅多が仲良く働いているのを確認した後、目的地へ向かう。
少し前まで、上総にこき使われていた男、岩下がデスクでせっせと資料を作っていた。
上総本人に確認を取ったところ、岩下だけでなく他の社員にも、以前ほど辛辣な対応をしていないという。
俺は、岩下が作成中の資料を背後から眺めて。
それが、副社長へ提出するものであることを確認した後、岩下が席を立つのをじっと待つ。
【岩下】
「ふう……、やっと終わった」
【岩下】
「さー、便所便所。あと一服っと」
【クロノ】
(ご機嫌だな、岩下)
そして岩下が席を立った時、周囲に人がいないことを確認して。
パソコンに手を伸ばして資料を開き直し――。
【クロノ】
(すまん。死んでくれ、岩下…!)
資料を全削除した。
【クロノ】
(この事件が解決したら、ちゃんと手伝ってやるからな)
ご機嫌でデスクに戻ってきた岩下とすれ違う。
程なくして聞こえてきた悲鳴を背中で受け止め、さっそうとその場を後にした。
岩下の資料を全削除という鬼の所業には理由がある。
まずは、岩下を残業させる必要があったからだ。
『お前の周りの奴をじわじわ不幸にしてって』
『最後にはお前のこと絶望させてやるよ』
この言葉の通り受け止めるなら、最初に狙われるのはヨントリーの社員だ。
今回の事件は、液晶端末を見せるという手順があるため。
ユリスは一度、被害者の前に姿を現さなければならない。
だから動くなら、絶対に夜だ。
そして周囲に人が少ない程、そいつはターゲットになり易い――はず。
というわけで、まずは様子を見るために岩下に犠牲になってもらった。
【岩下】
「うう、ううう……」
岩下は、半泣きになりながら残業していた。
他のデスクに人はいないし、絶好の機会だろう。
【クロノ】
(ごめんな。終わらなかったら、俺から上総に理由を話しておくから)
遠くから岩下に労いの言葉をかけながら、姿を消して見守ること1時間。
なかなか現れないなと思った時、オフィスに誰かが入ってきて。
それがユリスだと気付いて身を乗り出した時、目が合った。
【ユリス】
「バーカ」
【ユリス】
「下らねえ罠しかけやがって。この代償は高くつくぜ」
【ユリス】
「ターゲットは、てめえの恋人の父親に変更だ」
一方的にそう言うと、笑顔を残して消え去った。
俺は急いで上総に連絡を取り、掻い摘んで事情を説明して。
テレポートを使って、一緒に上総の実家まで移動した。
そこには倒れている上総の父親の姿があって、傍らにはユリスが立っていた。
床には、ノイズが流れている液晶端末が落ちている。
上総は暫し呆然としていたが、すぐに血相を変えてユリスを睨みつけ、殴りかかる。
【綾 上総】
「てめえ……!!」
【クロノ】
「上総、待……っ」
上総の拳が届く前に、ユリスは鎌を錬成して。
父親の魂を刈り取ってしまった。
上総は、父親が一瞬痙攣したのを見て動きを止める。
【綾 上総】
「……何しやがった、お前」
ユリスは体から煙を上げて蒸発しながら、狂気じみた笑顔を浮かべて上総を指さす。
【ユリス】
「忘れるな」
【ユリス】
「お前がクロノと関わったせいで、親父は死んだんだぜ」
そして、絶句している上総に視線を向けたまま、消滅した。
それからしばらくして。
俺は今日も死神として魂狩りに精を出している。
通りかかった大きな建物に『ヨントリー』と書いてあるのを見て懐かしく思う。
父親の葬儀の後、上総は俺に言った。
【綾 上総】
『親父が死んだのは、お前のせいじゃない』
【綾 上総】
『そうやって割り切ろうとしてんのに、……無理なんだ』
【綾 上総】
『悪い。……お前とは、もう無理だ』
上総は父の後を継いで会社を維持する道を選び、俺は上総の前に姿を現さない約束をして。
死神界に戻り、今もこうして働いている。
社長として元気に働いている元恋人の姿と。
俺がかつて座っていたデスクを、たまに空から見下ろしながら。
―綾4章 BLACKEND―
ユリスは堪え性がないから、煽られたらわりとすぐに行動を開始するはずだし。
正面切ってケンカを売って来たくらいなんだから、慎重になることもないだろう。
決着が着くまでに、そう時間はかからないと思う。
――――ということで、俺は一つの計画をたてた。
俺はまだ有給休暇中ということになっていることもあるし。
姿を消していた方が動き易いため、死神の姿でオフィスに忍び込む。
上総と浅多が仲良く働いているのを確認した後、目的地へ向かう。
少し前まで、上総にこき使われていた男、岩下がデスクでせっせと資料を作っていた。
上総本人に確認を取ったところ、岩下だけでなく他の社員にも、以前ほど辛辣な対応をしていないという。
俺は、岩下が作成中の資料を背後から眺めて。
それが、副社長へ提出するものであることを確認した後、岩下が席を立つのをじっと待つ。
【岩下】
「ふう……、やっと終わった」
【岩下】
「さー、便所便所。あと一服っと」
【クロノ】
(ご機嫌だな、岩下)
そして岩下が席を立った時、周囲に人がいないことを確認して。
パソコンに手を伸ばして資料を開き直し――。
【クロノ】
(すまん。死んでくれ、岩下…!)
資料を全削除した。
【クロノ】
(この事件が解決したら、ちゃんと手伝ってやるからな)
ご機嫌でデスクに戻ってきた岩下とすれ違う。
程なくして聞こえてきた悲鳴を背中で受け止め、さっそうとその場を後にした。
岩下の資料を全削除という鬼の所業には理由がある。
まずは、岩下を残業させる必要があったからだ。
『お前の周りの奴をじわじわ不幸にしてって』
『最後にはお前のこと絶望させてやるよ』
この言葉の通り受け止めるなら、最初に狙われるのはヨントリーの社員だ。
今回の事件は、液晶端末を見せるという手順があるため。
ユリスは一度、被害者の前に姿を現さなければならない。
だから動くなら、絶対に夜だ。
そして周囲に人が少ない程、そいつはターゲットになり易い――はず。
というわけで、まずは様子を見るために岩下に犠牲になってもらった。
【岩下】
「うう、ううう……」
岩下は、半泣きになりながら残業していた。
他のデスクに人はいないし、絶好の機会だろう。
【クロノ】
(ごめんな。終わらなかったら、俺から上総に理由を話しておくから)
遠くから岩下に労いの言葉をかけながら、姿を消して見守ること1時間。
なかなか現れないなと思った時、オフィスに誰かが入ってきて。
それがユリスだと気付いて身を乗り出した時、目が合った。
【ユリス】
「バーカ」
【ユリス】
「下らねえ罠しかけやがって。この代償は高くつくぜ」
【ユリス】
「ターゲットは、てめえの恋人の父親に変更だ」
一方的にそう言うと、笑顔を残して消え去った。
俺は急いで上総に連絡を取り、掻い摘んで事情を説明して。
テレポートを使って、一緒に上総の実家まで移動した。
そこには倒れている上総の父親の姿があって、傍らにはユリスが立っていた。
床には、ノイズが流れている液晶端末が落ちている。
上総は暫し呆然としていたが、すぐに血相を変えてユリスを睨みつけ、殴りかかる。
【綾 上総】
「てめえ……!!」
【クロノ】
「上総、待……っ」
上総の拳が届く前に、ユリスは鎌を錬成して。
父親の魂を刈り取ってしまった。
上総は、父親が一瞬痙攣したのを見て動きを止める。
【綾 上総】
「……何しやがった、お前」
ユリスは体から煙を上げて蒸発しながら、狂気じみた笑顔を浮かべて上総を指さす。
【ユリス】
「忘れるな」
【ユリス】
「お前がクロノと関わったせいで、親父は死んだんだぜ」
そして、絶句している上総に視線を向けたまま、消滅した。
それからしばらくして。
俺は今日も死神として魂狩りに精を出している。
通りかかった大きな建物に『ヨントリー』と書いてあるのを見て懐かしく思う。
父親の葬儀の後、上総は俺に言った。
【綾 上総】
『親父が死んだのは、お前のせいじゃない』
【綾 上総】
『そうやって割り切ろうとしてんのに、……無理なんだ』
【綾 上総】
『悪い。……お前とは、もう無理だ』
上総は父の後を継いで会社を維持する道を選び、俺は上総の前に姿を現さない約束をして。
死神界に戻り、今もこうして働いている。
社長として元気に働いている元恋人の姿と。
俺がかつて座っていたデスクを、たまに空から見下ろしながら。
―綾4章 BLACKEND―
