[本編] 綾 上総 編
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【クロノ】
(そんなの……嫌に決まってる)
―――だけど。
自分が人間界にいられるのは長の温情のおかげだし。
人手が足りないと言われて尚、断るような不義理はできない。
【クロノ】
「……それって、命令ですよね」
【長】
「当たり前だ」
【クロノ】
「ですよねー…」
命令だって言われてるのに、恋人と離れたくないですなんて、我侭を言うわけにはいかない。
それでも、二つ返事で了承する気持ちには到底なれないのが本音だった。
【クロノ】
(ユリスが事件に絡んでるなら、俺に接触してくる可能性は大いにある)
【クロノ】
(それなら、俺がこの事件の調査をした方が尻尾を掴み易いか…?)
それによく考えれば、俺が傍にいると上総が狙われるかもしれない。
あいつが派手に動き始めたなら。
俺が死神界に戻ったと思わせた方が、上総の身は安全かもしれない。
【クロノ】
「仕事は受けます。だけど1日だけ待ってください」
【長】
「ふむ? 何をするのか知らんが、まあ、それくらいなら良かろう」
【アンク】
「では私は、しばらくはクロノ様のサポート役として復帰致しますので」
【アンク】
「当日、お迎えにあがります」
……………………
…………………………………………
【クロノ】
(面倒なことになったなぁ…)
久しぶりに俺と仕事が出来るのを喜んでいるらしいじいに、満面の笑みで見送られて。
俺はとぼとぼと死神界の街並みを歩いていた。
何年も上総と離れるなんてお断りだ。
できる限り早いうちに事件を解決して、とっとと人間界に戻ってやる。
そのために、俺は緻密な予定を立てながら人間界へ移動した。
この話を聞いたら、上総は何て言うかな。
……まあ、半分予想はついてるけど。
部屋に戻ると、上総はまだ起きていて。
ソファでまったりしながら、ウイスキーを飲んでいた。
【綾 上総】
「ん? 今日は死神の仕事遅かったんだな」
【クロノ】
「…んー。…そうなんだけど」
【綾 上総】
「久しぶりだよな。ここんとこ、あんま呼び出しかかってなかったみたいなのに」
【クロノ】
「ああ……」
【綾 上総】
「あんたを呼ぶくらいには人手が足りないってことか」
上総は額面通りに受け取って、死神も大変なんだなとだけ返してきた。
【綾 上総】
「んじゃ、お前も飲むか?」
【クロノ】
「え?じゃあ…ちょっとだけ」
隣に腰掛けて、ボトルを回してラベルを眺める。
【クロノ】
「これ、出張先でもらってきたやつ?」
【綾 上総】
「そう。25年のカスクストレングス。いい出来してるぜ。ほれ」
上総がショットグラスに薄く注いで差し出してきた。
【クロノ】
「いい酒はちゃんとしたグラスでゆっくり飲みたいんだけど。まあいいや」
今夜は悠長に晩酌を楽しむ余裕はない。
受け取った酒で喉を潤してから、俺は上総に向き直った。
【クロノ】
「上総に報告がある」
【綾 上総】
「なんだよ、改まって」
上総は不思議そうな視線を向けてから、ふっと小さく笑った。
【綾 上総】
「そっか。『相談』じゃなくて『報告』って辺りで、あんま良くなさそうな話だな」
【クロノ】
「…わかる…?」
【綾 上総】
「珍しく、まじめくさってるしな」
ピンと額を弾かれて、胸が痛くなった。
肩に腕を回して優しく抱き寄せる。
上総はのんびりと、グラスの氷を揺らして俺の言葉の続きを待っていた。
【クロノ】
「今日、長と話したんだけど」
【クロノ】
「しばらく、死神界に戻らなきゃいけなくなった」
【綾 上総】
「ふーん。どれくらい?」
【クロノ】
「……短いと数日。長いと10年単位になる」
【綾 上総】
「随分アバウトな話だな。しかも振り幅でかすぎねえか」
【クロノ】
「全ては、俺のやる気と運にかかってるっていうか…」
【綾 上総】
「なーんだ。じゃあやる気出して、ちゃちゃっと済ませて帰って来いよ」
【クロノ】
「……え」
【綾 上総】
「なんで向こうに戻るのか知らないけど、どうせ何かの事件の調査だろ? 前の時みたいに」
【クロノ】
「…ああ。詳しい事情は、ちょっと説明できないんだけど」
【綾 上総】
「いや、説明してもらわなくていい。どこの職場にも守秘義務ってもんがあるだろ」
【綾 上総】
「それに俺はどう足掻いても人間だし、自分の領分を越えてることにまで首突っ込もうと思わねえから」
【綾 上総】
「お前が早く戻って来んなら、それでいいし」
【綾 上総】
「というわけで、すぐ戻って来いよ。お前の仕事残しとくから」
【綾 上総】
「いつまでも他の奴に俺の補佐やらせてんなよ。いいな?」
【クロノ】
「……やっぱり、上総は上総だなぁ」
【綾 上総】
「なんだよ、悪いか」
その逆、と言って交わしたキスはウイスキーの味がした。
重たく受け止めてもらえなかったことは少し残念だったけど、
正に俺が予想していた通りの対応だった。
上総への愛がまた一つ深くなったことを噛み締めながら、夜は更けていく。
やっぱり、上総と10年近く離れるなんて無理。
翌日、俺は4日後からの5日間の有給休暇を取得した。
土日と合わせて9日間。
この期間に死神界に戻って事件の捜査をしつつ、死神界の仕事に専念する。
昼休みに、その旨を報告しに上総の元を訪ねたが。
何やら話し込んでいたので、部屋に帰ってから伝えることにした。
夕食を外で済ませてから、晩酌タイムを狙って話を切り出すと。
上総は、ビーフジャーキーを食いちぎって目を丸くする。
【綾 上総】
「9日間? お前昨日、長かったら10年単位って言ってたじゃん」
【クロノ】
「やる気出してちゃっちゃと済ませて戻ってこいって言うから、出したんだけど。やる気」
上総は俺の返事が気に入ったらしく、今夜は俺の分の酒も進んで作ってくれた。
【綾 上総】
「ははは! そうだな、お前なら何とかなるだろ」
【綾 上総】
「ささ、ぐいっと飲め。お代わりなら何杯でも作ってやるからな!」
【クロノ】
「どうも…」
(そんなの……嫌に決まってる)
―――だけど。
自分が人間界にいられるのは長の温情のおかげだし。
人手が足りないと言われて尚、断るような不義理はできない。
【クロノ】
「……それって、命令ですよね」
【長】
「当たり前だ」
【クロノ】
「ですよねー…」
命令だって言われてるのに、恋人と離れたくないですなんて、我侭を言うわけにはいかない。
それでも、二つ返事で了承する気持ちには到底なれないのが本音だった。
【クロノ】
(ユリスが事件に絡んでるなら、俺に接触してくる可能性は大いにある)
【クロノ】
(それなら、俺がこの事件の調査をした方が尻尾を掴み易いか…?)
それによく考えれば、俺が傍にいると上総が狙われるかもしれない。
あいつが派手に動き始めたなら。
俺が死神界に戻ったと思わせた方が、上総の身は安全かもしれない。
【クロノ】
「仕事は受けます。だけど1日だけ待ってください」
【長】
「ふむ? 何をするのか知らんが、まあ、それくらいなら良かろう」
【アンク】
「では私は、しばらくはクロノ様のサポート役として復帰致しますので」
【アンク】
「当日、お迎えにあがります」
……………………
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【クロノ】
(面倒なことになったなぁ…)
久しぶりに俺と仕事が出来るのを喜んでいるらしいじいに、満面の笑みで見送られて。
俺はとぼとぼと死神界の街並みを歩いていた。
何年も上総と離れるなんてお断りだ。
できる限り早いうちに事件を解決して、とっとと人間界に戻ってやる。
そのために、俺は緻密な予定を立てながら人間界へ移動した。
この話を聞いたら、上総は何て言うかな。
……まあ、半分予想はついてるけど。
部屋に戻ると、上総はまだ起きていて。
ソファでまったりしながら、ウイスキーを飲んでいた。
【綾 上総】
「ん? 今日は死神の仕事遅かったんだな」
【クロノ】
「…んー。…そうなんだけど」
【綾 上総】
「久しぶりだよな。ここんとこ、あんま呼び出しかかってなかったみたいなのに」
【クロノ】
「ああ……」
【綾 上総】
「あんたを呼ぶくらいには人手が足りないってことか」
上総は額面通りに受け取って、死神も大変なんだなとだけ返してきた。
【綾 上総】
「んじゃ、お前も飲むか?」
【クロノ】
「え?じゃあ…ちょっとだけ」
隣に腰掛けて、ボトルを回してラベルを眺める。
【クロノ】
「これ、出張先でもらってきたやつ?」
【綾 上総】
「そう。25年のカスクストレングス。いい出来してるぜ。ほれ」
上総がショットグラスに薄く注いで差し出してきた。
【クロノ】
「いい酒はちゃんとしたグラスでゆっくり飲みたいんだけど。まあいいや」
今夜は悠長に晩酌を楽しむ余裕はない。
受け取った酒で喉を潤してから、俺は上総に向き直った。
【クロノ】
「上総に報告がある」
【綾 上総】
「なんだよ、改まって」
上総は不思議そうな視線を向けてから、ふっと小さく笑った。
【綾 上総】
「そっか。『相談』じゃなくて『報告』って辺りで、あんま良くなさそうな話だな」
【クロノ】
「…わかる…?」
【綾 上総】
「珍しく、まじめくさってるしな」
ピンと額を弾かれて、胸が痛くなった。
肩に腕を回して優しく抱き寄せる。
上総はのんびりと、グラスの氷を揺らして俺の言葉の続きを待っていた。
【クロノ】
「今日、長と話したんだけど」
【クロノ】
「しばらく、死神界に戻らなきゃいけなくなった」
【綾 上総】
「ふーん。どれくらい?」
【クロノ】
「……短いと数日。長いと10年単位になる」
【綾 上総】
「随分アバウトな話だな。しかも振り幅でかすぎねえか」
【クロノ】
「全ては、俺のやる気と運にかかってるっていうか…」
【綾 上総】
「なーんだ。じゃあやる気出して、ちゃちゃっと済ませて帰って来いよ」
【クロノ】
「……え」
【綾 上総】
「なんで向こうに戻るのか知らないけど、どうせ何かの事件の調査だろ? 前の時みたいに」
【クロノ】
「…ああ。詳しい事情は、ちょっと説明できないんだけど」
【綾 上総】
「いや、説明してもらわなくていい。どこの職場にも守秘義務ってもんがあるだろ」
【綾 上総】
「それに俺はどう足掻いても人間だし、自分の領分を越えてることにまで首突っ込もうと思わねえから」
【綾 上総】
「お前が早く戻って来んなら、それでいいし」
【綾 上総】
「というわけで、すぐ戻って来いよ。お前の仕事残しとくから」
【綾 上総】
「いつまでも他の奴に俺の補佐やらせてんなよ。いいな?」
【クロノ】
「……やっぱり、上総は上総だなぁ」
【綾 上総】
「なんだよ、悪いか」
その逆、と言って交わしたキスはウイスキーの味がした。
重たく受け止めてもらえなかったことは少し残念だったけど、
正に俺が予想していた通りの対応だった。
上総への愛がまた一つ深くなったことを噛み締めながら、夜は更けていく。
やっぱり、上総と10年近く離れるなんて無理。
翌日、俺は4日後からの5日間の有給休暇を取得した。
土日と合わせて9日間。
この期間に死神界に戻って事件の捜査をしつつ、死神界の仕事に専念する。
昼休みに、その旨を報告しに上総の元を訪ねたが。
何やら話し込んでいたので、部屋に帰ってから伝えることにした。
夕食を外で済ませてから、晩酌タイムを狙って話を切り出すと。
上総は、ビーフジャーキーを食いちぎって目を丸くする。
【綾 上総】
「9日間? お前昨日、長かったら10年単位って言ってたじゃん」
【クロノ】
「やる気出してちゃっちゃと済ませて戻ってこいって言うから、出したんだけど。やる気」
上総は俺の返事が気に入ったらしく、今夜は俺の分の酒も進んで作ってくれた。
【綾 上総】
「ははは! そうだな、お前なら何とかなるだろ」
【綾 上総】
「ささ、ぐいっと飲め。お代わりなら何杯でも作ってやるからな!」
【クロノ】
「どうも…」