[本編] 綾 上総 編
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どかない俺の背を、上総がぽんぽんと叩いてくれた。
俺は、思わずぎゅっと上総を抱きしめたが…。
上総は落ち着かない様子で、きょろきょろと辺りを見回していた。
【クロノ】
「どうしたの?」
【綾 上総】
「いや、アンクさんに見られてねーかと思って。…あんた、さっきまたキスしてたろ」
【クロノ】
「あはは。じいは紳士だから、こういう時はちゃんと出てってくれるよ」
目覚めてすぐ、そういうことを気にする上総が可愛くて、俺は思わず笑ってしまった。
あれから、ユリスを見た者はない。
捜索はまだ続いているが、行方は一切わからない。
――リビドーは全て動かなくなっていた。サイトも消え、痕跡すら残っていない。
全てユリスが消える時に消して行ったのだろうと、長は言う。
人間界でも、リビドー使用者の死亡ニュースはなくなり―――。
誰それが結婚しただの、どこそこのお肉が絶品だの、幸せなニュースばかりやるようになった。
【綾 上総】
「なんだ、結構キマってるじゃん」
【クロノ】
「……すごく窮屈なんだけど」
【綾 上総】
「新入社員、黒乃くんの初出勤だろ。もっとシャキっとしねえと、クビにすんぞ」
【クロノ】
「ちょっと上総の会社を歩いてみたいって言っただけなのに…」
【綾 上総】
「怪しまれないようにしてやったんだろ?ありがたく思え」
【クロノ】
(言葉遣いは以前と変わってないけど、表情からは高慢な感じがなくなったな)
二人で部屋を出ながら、そんなことを思った。
――上総は、リビドーの呪縛から解き放たれた後。
今まで通り、副社長としての生活に戻った。
【綾 上総】
「『最近、部下に優しくなった』とか言われてよー」
この前、そう言って上総が嬉しそうに笑っていたから。
【クロノ】
「仕事してる姿、見せてよ」
とお願いしてみたところ。
【綾 上総】
「いつもみたいに勝手に見ればいいだろ」
【クロノ】
「それじゃ面白くない」
【綾 上総】
「じゃあ、クロノもウチで働いてみろよ」
……そうして、新入社員、黒乃清人(くろの きよひと)が誕生したわけなんだけど……。
副社長室で、上総の代わりに書類に判子を押す。
……退屈で仕方がない仕事だった。
上総の方をチラリと見やると、真剣な顔でPCになにかを入力している。
【クロノ】
「上総はなにしてるの?」
【綾 上総】
「『美味ログ』のくっだらねー口コミを、全否定する口コミ書いてる」
【クロノ】
「俺に働かせといて、なにやってんの」
【綾 上総】
「嘘に決まってんだろ」
【綾 上総】
「新しく契約した会社の重役とミーティングすっから、必要事項を確認してんだよ」
【クロノ】
「最初からそう言えば誉めてあげたのに」
【綾 上総】
「それじゃ面白くねーだろ、バカ」
【綾 上総】
「……それより」
【クロノ】
「なに?」
【綾 上総】
「そろそろ話せよ。なんで突然、俺の働いてるとこ見たいとか言い出した?」
【クロノ】
「それは……」
【クロノ】
「純粋な興味」
【綾 上総】
「嘘だろ。大体いっつも、隠れて俺のこと見てるじゃねーか」
【クロノ】
「嘘じゃない。純粋な興味もあった。……さっきも思ったけど、今まで見てたのばれてた?」
【綾 上総】
「バレバレ」
【クロノ】
「そっか」
少しだけ、沈黙の時間が流れる。
……上総は変わった。
前みたく、バカみたいに金を使ったり、サボりまくったりしなくなった。
自分の地位を理由に、好き勝手やることもなくなった。
愛に飢えていた子供が、満たされ始めているのだ。
俺は死神で、上総は人間。
今まで一緒にいて……、共に生きるには世界が違い過ぎると、本当は何度も思っていた。
この違いが、もしも上総を追い詰めてしまったらどうしようと、何度も思った。
……俺は、上総と一緒にいてはいけないんじゃないかって。
けど、それでも俺は上総と一緒にいたくて。
――もし、ずっと一緒にいられないのなら、せめて、上総がもっと、幸せになるまでは。
そう思っていたけど。
上総がしっかりと生きていけるようになれば、俺が人間界にいられる理由はなくなる。
それを、長から告げられる日が、いつかは分からない。
――今、この瞬間に、別れなければならなくなるかもしれない。
【クロノ】
「……一度、上総が働いてる会社を、自分の足で歩きたいなと思ってたから」
【綾 上総】
「そうじゃねーだろ?」
上総の声が真剣なものに変わる。
【綾 上総】
「あんたもしかして、そろそろ死神界に帰るんじゃねーの?」
【綾 上総】
「だから最後の記念に、ってことで、こうやってるんじゃねーの?」
【クロノ】
「……」
上総は椅子から立って、俺のもとへと歩いてくる。
【綾 上総】
「答えろよ」
上総の視線と、俺の視線がぶつかる。
【綾 上総】
「これからどうするんだ? 死神界に帰るのか?」
【綾 上総】
「俺を一人残して?」
……俺は何も言えないまま、上総を見つめるしかなかった。
俺は、思わずぎゅっと上総を抱きしめたが…。
上総は落ち着かない様子で、きょろきょろと辺りを見回していた。
【クロノ】
「どうしたの?」
【綾 上総】
「いや、アンクさんに見られてねーかと思って。…あんた、さっきまたキスしてたろ」
【クロノ】
「あはは。じいは紳士だから、こういう時はちゃんと出てってくれるよ」
目覚めてすぐ、そういうことを気にする上総が可愛くて、俺は思わず笑ってしまった。
あれから、ユリスを見た者はない。
捜索はまだ続いているが、行方は一切わからない。
――リビドーは全て動かなくなっていた。サイトも消え、痕跡すら残っていない。
全てユリスが消える時に消して行ったのだろうと、長は言う。
人間界でも、リビドー使用者の死亡ニュースはなくなり―――。
誰それが結婚しただの、どこそこのお肉が絶品だの、幸せなニュースばかりやるようになった。
【綾 上総】
「なんだ、結構キマってるじゃん」
【クロノ】
「……すごく窮屈なんだけど」
【綾 上総】
「新入社員、黒乃くんの初出勤だろ。もっとシャキっとしねえと、クビにすんぞ」
【クロノ】
「ちょっと上総の会社を歩いてみたいって言っただけなのに…」
【綾 上総】
「怪しまれないようにしてやったんだろ?ありがたく思え」
【クロノ】
(言葉遣いは以前と変わってないけど、表情からは高慢な感じがなくなったな)
二人で部屋を出ながら、そんなことを思った。
――上総は、リビドーの呪縛から解き放たれた後。
今まで通り、副社長としての生活に戻った。
【綾 上総】
「『最近、部下に優しくなった』とか言われてよー」
この前、そう言って上総が嬉しそうに笑っていたから。
【クロノ】
「仕事してる姿、見せてよ」
とお願いしてみたところ。
【綾 上総】
「いつもみたいに勝手に見ればいいだろ」
【クロノ】
「それじゃ面白くない」
【綾 上総】
「じゃあ、クロノもウチで働いてみろよ」
……そうして、新入社員、黒乃清人(くろの きよひと)が誕生したわけなんだけど……。
副社長室で、上総の代わりに書類に判子を押す。
……退屈で仕方がない仕事だった。
上総の方をチラリと見やると、真剣な顔でPCになにかを入力している。
【クロノ】
「上総はなにしてるの?」
【綾 上総】
「『美味ログ』のくっだらねー口コミを、全否定する口コミ書いてる」
【クロノ】
「俺に働かせといて、なにやってんの」
【綾 上総】
「嘘に決まってんだろ」
【綾 上総】
「新しく契約した会社の重役とミーティングすっから、必要事項を確認してんだよ」
【クロノ】
「最初からそう言えば誉めてあげたのに」
【綾 上総】
「それじゃ面白くねーだろ、バカ」
【綾 上総】
「……それより」
【クロノ】
「なに?」
【綾 上総】
「そろそろ話せよ。なんで突然、俺の働いてるとこ見たいとか言い出した?」
【クロノ】
「それは……」
【クロノ】
「純粋な興味」
【綾 上総】
「嘘だろ。大体いっつも、隠れて俺のこと見てるじゃねーか」
【クロノ】
「嘘じゃない。純粋な興味もあった。……さっきも思ったけど、今まで見てたのばれてた?」
【綾 上総】
「バレバレ」
【クロノ】
「そっか」
少しだけ、沈黙の時間が流れる。
……上総は変わった。
前みたく、バカみたいに金を使ったり、サボりまくったりしなくなった。
自分の地位を理由に、好き勝手やることもなくなった。
愛に飢えていた子供が、満たされ始めているのだ。
俺は死神で、上総は人間。
今まで一緒にいて……、共に生きるには世界が違い過ぎると、本当は何度も思っていた。
この違いが、もしも上総を追い詰めてしまったらどうしようと、何度も思った。
……俺は、上総と一緒にいてはいけないんじゃないかって。
けど、それでも俺は上総と一緒にいたくて。
――もし、ずっと一緒にいられないのなら、せめて、上総がもっと、幸せになるまでは。
そう思っていたけど。
上総がしっかりと生きていけるようになれば、俺が人間界にいられる理由はなくなる。
それを、長から告げられる日が、いつかは分からない。
――今、この瞬間に、別れなければならなくなるかもしれない。
【クロノ】
「……一度、上総が働いてる会社を、自分の足で歩きたいなと思ってたから」
【綾 上総】
「そうじゃねーだろ?」
上総の声が真剣なものに変わる。
【綾 上総】
「あんたもしかして、そろそろ死神界に帰るんじゃねーの?」
【綾 上総】
「だから最後の記念に、ってことで、こうやってるんじゃねーの?」
【クロノ】
「……」
上総は椅子から立って、俺のもとへと歩いてくる。
【綾 上総】
「答えろよ」
上総の視線と、俺の視線がぶつかる。
【綾 上総】
「これからどうするんだ? 死神界に帰るのか?」
【綾 上総】
「俺を一人残して?」
……俺は何も言えないまま、上総を見つめるしかなかった。
