[本編] 綾 上総 編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
このまま穏便に夢から覚めようとしていた俺は、綾が空を見上げて、体を強張らせたのに気付いた。
綾に言われるままに空を見上げる。……亀裂があった。
【クロノ】
「やばいな」
【綾 上総】
「あれは、一体なんなんだ?」
【クロノ】
「悪夢化の兆候だと思う。急いで目覚めないと」
【綾 上総】
「どうやって目覚めるんだよ?」
【クロノ】
「いつも通りでいいんじゃない?」
【綾 上総】
「目ェ覚まそうとして、起きてたわけじゃねーぞ、俺は」
【クロノ】
「え」
【綾 上総】
「時間がきたら、勝手に目が覚めてた」
【クロノ】
「……自力で覚醒できないってこと?」
【綾 上総】
「そうだ」
【クロノ】
「…そう。それなら俺が先に起きて、
あんたを起こす流れになるのか」
【クロノ】
「俺が起こすまで、少しの間、悪夢に耐えてて……
……、なに?」
綾が、俺の背後に視線を固定したまま、顔を恐怖に歪めている。
振り返ろうとした瞬間、体に何か蛇のようなものが巻きついてきた。
【クロノ】
「なっ?!」
【綾 上総】
「うわあああっ!」
【クロノ】
「なにコレ、触手?!」
真っ黒で、ネバネバした粘液に濡れた触手が、俺と綾の自由を奪う。
【クロノ】
(油断した……!)
死神の鎌を生成した時、触手が頬に触れたのが、ぬるりとした感触で分かった。
触手はぬるぬると顔を這い回ると、俺の目許へ執拗に這い上ろうとする。
【クロノ】
「?!」
まぶたを閉じさせるように、触手が覆い被さってくる。
【クロノ】
(何をする気だ……?!)
鎌を持った腕も、絡め取られてしまう。
【クロノ】
「綾! 綾!! ……上総!!!」
暗闇の中で綾を……、上総を呼ぶが、返事は聞こえない。
けど、上総の声の代わりに、別の声が聞こえた。
【???】
「いつ、連れて行ってくれる?」
【クロノ】
「……?!」
その声は、その言葉は、聞き覚えがあるもので。
俺にとっては、一番聞きたくない――、だけど懐かしい声で。
【クロノ】
(ただの幻聴だ。……飲まれるな)
【クロノ】
「……触手さんの仕業?随分、悪趣味なことするね」
その言葉に答えるように、目の前に光が満ちる――。
気付いたら、俺は見慣れた病院の廊下に立っていた。
病気のせいで生きるのが辛く、それでも心のどこかで生きたいと願っていた『彼』が……。
俺なんかが深く関わったせいで、死期を早めてしまった彼が、入院していた病院だった。
【???】
「来てくれたんだね、クロノ」
【クロノ】
「……お前」
【???】
「会いたかった……!!」
そう言って、『彼』が俺に抱きついてきた。
【???】
「どうしたの?なんだか複雑な表情してる」
【クロノ】
「あ、ああ……、そう?」
【???】
「うん。心ここにあらずって感じ。ほら、ちゃんと仕事しなきゃ駄目だろ?」
【???】
「俺の魂を運んでくれるのは、君なんだからさ」
屈託のない、まるで日向に咲くたんぽぽみたいな彼の笑顔。
大丈夫だよと伝える為に、頭を撫でて安心させてやる。
けど、どうして……。
どうして俺は、こんなところにいるんだろう。
さっきまで俺は別のことをしていて、別の奴のことを考えていたはずだ。
―――あれ。
それって、誰だっけ?
【???】
「ふふふふ!今日もお話してくれるんだろ?
こっちに来てよ!」
彼が俺へと手を伸ばす。
その手は黒く変色していて、彼の手から溢れ出す粘液でヌルついていたんだけど。
俺は特に何も感じないまま、ぼんやりとその手を掴んだ。
彼に手を引かれるまま病院を出て、金木犀の並木道を歩いていく。
【クロノ】
「どこに行くんだ?」
【???】
「どこだろうね?内緒って言ったら、怒る?」
【クロノ】
「別に怒らないよ」
【???】
「良かった。手を離さないで付いて来てね」
ヌルヌルとした手は握っているのが難しく、何度も抜けてしまう。
【クロノ】
「このヌルヌルしたもの、なんだ?」
【???】
「これ? 俺の血だよ」
【クロノ】
「駄目だ……。駄目だ、早く病室に戻ろう」
だけど彼は首を横に振る。
【???】
「やだよ。あそこに戻ったら、クロノともう会えなくなる」
【クロノ】
「会えなくなんてならない。俺は今まで通り、お前の病室に行く」
だけど彼は、頑なに首を振る。
【???】
「約束してくれる?いつでも俺の傍にいてくれるって」
その時、突然照明が落ちたように、一面真っ暗になった。
【???】
「ねぇ、クロノ。約束してよ」
【???】
「あいつなんかより、俺を選ぶって」
見ると、彼の体から生えた真っ黒な触手が、俺の全身に絡み付いていた。
それは、俺を繋ぐ鎖のように思えた。
【クロノ】
「あいつって、誰?」
【???】
「あいつだよ。あいつ」
【クロノ】
「名前は?」
【???】
「×××くん。お金持ちのボンボンで、それから…」
【クロノ】
「×××?」
どこかで聞いたことがある名前だと思った。
けど、次の瞬間には名前を忘れてしまう。
綾に言われるままに空を見上げる。……亀裂があった。
【クロノ】
「やばいな」
【綾 上総】
「あれは、一体なんなんだ?」
【クロノ】
「悪夢化の兆候だと思う。急いで目覚めないと」
【綾 上総】
「どうやって目覚めるんだよ?」
【クロノ】
「いつも通りでいいんじゃない?」
【綾 上総】
「目ェ覚まそうとして、起きてたわけじゃねーぞ、俺は」
【クロノ】
「え」
【綾 上総】
「時間がきたら、勝手に目が覚めてた」
【クロノ】
「……自力で覚醒できないってこと?」
【綾 上総】
「そうだ」
【クロノ】
「…そう。それなら俺が先に起きて、
あんたを起こす流れになるのか」
【クロノ】
「俺が起こすまで、少しの間、悪夢に耐えてて……
……、なに?」
綾が、俺の背後に視線を固定したまま、顔を恐怖に歪めている。
振り返ろうとした瞬間、体に何か蛇のようなものが巻きついてきた。
【クロノ】
「なっ?!」
【綾 上総】
「うわあああっ!」
【クロノ】
「なにコレ、触手?!」
真っ黒で、ネバネバした粘液に濡れた触手が、俺と綾の自由を奪う。
【クロノ】
(油断した……!)
死神の鎌を生成した時、触手が頬に触れたのが、ぬるりとした感触で分かった。
触手はぬるぬると顔を這い回ると、俺の目許へ執拗に這い上ろうとする。
【クロノ】
「?!」
まぶたを閉じさせるように、触手が覆い被さってくる。
【クロノ】
(何をする気だ……?!)
鎌を持った腕も、絡め取られてしまう。
【クロノ】
「綾! 綾!! ……上総!!!」
暗闇の中で綾を……、上総を呼ぶが、返事は聞こえない。
けど、上総の声の代わりに、別の声が聞こえた。
【???】
「いつ、連れて行ってくれる?」
【クロノ】
「……?!」
その声は、その言葉は、聞き覚えがあるもので。
俺にとっては、一番聞きたくない――、だけど懐かしい声で。
【クロノ】
(ただの幻聴だ。……飲まれるな)
【クロノ】
「……触手さんの仕業?随分、悪趣味なことするね」
その言葉に答えるように、目の前に光が満ちる――。
気付いたら、俺は見慣れた病院の廊下に立っていた。
病気のせいで生きるのが辛く、それでも心のどこかで生きたいと願っていた『彼』が……。
俺なんかが深く関わったせいで、死期を早めてしまった彼が、入院していた病院だった。
【???】
「来てくれたんだね、クロノ」
【クロノ】
「……お前」
【???】
「会いたかった……!!」
そう言って、『彼』が俺に抱きついてきた。
【???】
「どうしたの?なんだか複雑な表情してる」
【クロノ】
「あ、ああ……、そう?」
【???】
「うん。心ここにあらずって感じ。ほら、ちゃんと仕事しなきゃ駄目だろ?」
【???】
「俺の魂を運んでくれるのは、君なんだからさ」
屈託のない、まるで日向に咲くたんぽぽみたいな彼の笑顔。
大丈夫だよと伝える為に、頭を撫でて安心させてやる。
けど、どうして……。
どうして俺は、こんなところにいるんだろう。
さっきまで俺は別のことをしていて、別の奴のことを考えていたはずだ。
―――あれ。
それって、誰だっけ?
【???】
「ふふふふ!今日もお話してくれるんだろ?
こっちに来てよ!」
彼が俺へと手を伸ばす。
その手は黒く変色していて、彼の手から溢れ出す粘液でヌルついていたんだけど。
俺は特に何も感じないまま、ぼんやりとその手を掴んだ。
彼に手を引かれるまま病院を出て、金木犀の並木道を歩いていく。
【クロノ】
「どこに行くんだ?」
【???】
「どこだろうね?内緒って言ったら、怒る?」
【クロノ】
「別に怒らないよ」
【???】
「良かった。手を離さないで付いて来てね」
ヌルヌルとした手は握っているのが難しく、何度も抜けてしまう。
【クロノ】
「このヌルヌルしたもの、なんだ?」
【???】
「これ? 俺の血だよ」
【クロノ】
「駄目だ……。駄目だ、早く病室に戻ろう」
だけど彼は首を横に振る。
【???】
「やだよ。あそこに戻ったら、クロノともう会えなくなる」
【クロノ】
「会えなくなんてならない。俺は今まで通り、お前の病室に行く」
だけど彼は、頑なに首を振る。
【???】
「約束してくれる?いつでも俺の傍にいてくれるって」
その時、突然照明が落ちたように、一面真っ暗になった。
【???】
「ねぇ、クロノ。約束してよ」
【???】
「あいつなんかより、俺を選ぶって」
見ると、彼の体から生えた真っ黒な触手が、俺の全身に絡み付いていた。
それは、俺を繋ぐ鎖のように思えた。
【クロノ】
「あいつって、誰?」
【???】
「あいつだよ。あいつ」
【クロノ】
「名前は?」
【???】
「×××くん。お金持ちのボンボンで、それから…」
【クロノ】
「×××?」
どこかで聞いたことがある名前だと思った。
けど、次の瞬間には名前を忘れてしまう。