[本編] 綾 上総 編
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翌日。死神界に戻った俺は、今後のことや新しい情報について、じいと話をしていた。
【アンク】
「そうそう。今朝方、クロノ様が言っていたparaisoについて調べてみたのですが」
【クロノ】
「もうなにか分かったの?」
【アンク】
「paraisoを見るには、条件があることが分かりました」
【クロノ】
「どんな条件……?」
【アンク】
「はい。リビドーには『LIP』という、機能拡張プログラムが存在するようなのですが」
【アンク】
「LIPを使用する者のみが、このサイトを利用できるようです」
【クロノ】
「ふーん…」
【クロノ】
「本当、きな臭いサイトだな」
俺は少し考えてから、じいに訊ねた。
【クロノ】
「で、LIPって具体的に何が出来るの?」
【アンク】
「それについては……」
じいはPCのキーボードを叩き、ある画面を表示した。
【アンク】
「こちらのページをご覧ください」
モニタに表示されていたのは、『現代日本の若者の間に広がる噂20XX』という見出しの資料だった。
『LIP』 ―― Libido-inflate plug-in
――3時間以上連続した憧憬夢を見ることが可能なプログラム。
夢とは、その者が生きることのできる、もう1つの現実である。
リビドーは、夢というもう1つの現実において、その者に神の椅子を提供する。
己が現実世界の創造主となる代償は、決して小さくない。
人工的に脳波を調整することは、使用時間に比例して、脳に多大な負担を与える。
いずれ脳波に歪みが生じ、死に近づくことだろう。
忘れてはいけない―――。
貴方の望む夢の園の片隅には、死神が住んでいる。
【クロノ】
「……なるほどね」
【クロノ】
「昨日、綾の夢に侵入して、目が覚めたら、3時間以上経ってたからびっくりしたんだけど…」
【アンク】
「……paraisoにログイン出来ている、ということもありますし」
【アンク】
「まず間違いなく、綾さんは、LIPを使用しているのでしょうね」
【クロノ】
「リビドーの長期使用が、死に近づくことになるのなら……」
【クロノ】
「……今回の一連の事件、死んだ人間のほとんどが、LIP使用者ってことも考えられる」
資料には、リビドー使用者の死因は全て『突然死』とだけ記されている。
LIP使用の有無については書かれていないけれど…。
『LIP』という言葉自体が資料に載っていなかった以上、関連性を調べてみる価値はある。
【アンク】
「それにしても、変ですなぁ」
じいが、ひげを撫でながらぽつりと呟いた。
【クロノ】
「なにが?」
【アンク】
「paraisoです。今まで資料に、名前すら挙がらなかった、というのが気になりましてなあ…」
【クロノ】
「そう言われれば、そうだね。まだ、リビドー使用者とLIPの関連性も分かっていないし…」
【アンク】
「paraiso関連の情報は、何故今まで表に出なかったのでしょうなぁ…」
俺とじいは、並んで首を傾げたけど、分かる訳もなかった。
【クロノ】
「まあ、こんなところで考えてても仕方がない。じいは引き続き、paraiso関連の調査をお願い」
【アンク】
「かしこまりました」
【クロノ】
「それと、もう一つ。気になることがある」
【アンク】
「なんでございましょう?」
【クロノ】
「昨日、綾の夢がおかしくなった」
【アンク】
「夢がおかしく……。はて、どういうことでしょう?」
【クロノ】
「綾は、『偽者の綾が演じている劇を、本物の綾が見てる』っていう
ちょっと複雑な夢を見てるタイプだったんだけど」
【クロノ】
「途中で、夢が…、そうだな、悪夢に変わってしまったような感じだった」
【クロノ】
「夢主の綾を、追い詰めるような化物が出てきたりして」
【アンク】
「なるほど……。悪夢化についての情報は…」
じいはまたキーボードを叩き、PCに新しく掲示板を表示させた。
【アンク】
「……何らかのきっかけで、夢が悪夢に変わることもある、とありますが」
【アンク】
「これはリビドーの噂を集めた掲示板ですから、信憑性は定かではありません」
【クロノ】
「そういう噂があるって事は、綾にだけ偶々起こった事だとは考え難い」
【アンク】
「そうですね。paraiso関連とあわせ、詳しく調べてみます」
【クロノ】
「うん、お願い」
【クロノ】
「俺は引き続き、綾の見張りと、説得を続ける」
【アンク】
「かしこまりました」
じいは深々と一礼をすると、姿を消した。
俺は自宅を出て、少し調べ物をしておこうと図書館へ向かった。
綾のトラウマについて考えたかったので、歩いて行く事にした。
――愛されない、という言葉に、とても強く反応した綾。
【クロノ】
(……あいつ)
【クロノ】
(誰にも愛されないなんて、ある訳ないのに)
なんだか、俺まで気分が重くなり、溜息をついた時。
俺の思考を遮るほど強く。
頭上に誰かの気配を感じた。
頭上を見上げた俺は、思わず「うぇ」と変な声を出してしまった。
トップクラスに会いたくないヤツが、ニヤニヤしながら浮いていたんだから当然だ。
【ユリス】
「こないだぶり~! 元気してたかよ」
【クロノ】
「はいはい。元気だから、ほっといて」
【ユリス】
「なんだよ、それ。相変わらずつれないなー」
ユリスはクスクス笑いながら降りてきて、俺の隣に立った。
【ユリス】
「リビドーの事件の調査、してるんだって?」
【クロノ】
「機密事項なんで」
【ユリス】
「機密なのは内容だけだろ。ほとんどの死神が、お前の任務のこと知ってるって」
【ユリス】
「で?難航してるみたいだけど、大丈夫~?」
やけに気軽に聞いてくるから、ますます答えたくない気持ちになる。
【クロノ】
「別に。悪いけど一人にしてくれる?」
シカトして通り過ぎようとした俺の隣に無理矢理並ぶように歩きながら、ユリスが言う。
【ユリス】
「なんだよ。リビドーに関する耳寄りな情報を教えてやろうかと思ったのに」
【クロノ】
「…なに?耳寄りって」
【アンク】
「そうそう。今朝方、クロノ様が言っていたparaisoについて調べてみたのですが」
【クロノ】
「もうなにか分かったの?」
【アンク】
「paraisoを見るには、条件があることが分かりました」
【クロノ】
「どんな条件……?」
【アンク】
「はい。リビドーには『LIP』という、機能拡張プログラムが存在するようなのですが」
【アンク】
「LIPを使用する者のみが、このサイトを利用できるようです」
【クロノ】
「ふーん…」
【クロノ】
「本当、きな臭いサイトだな」
俺は少し考えてから、じいに訊ねた。
【クロノ】
「で、LIPって具体的に何が出来るの?」
【アンク】
「それについては……」
じいはPCのキーボードを叩き、ある画面を表示した。
【アンク】
「こちらのページをご覧ください」
モニタに表示されていたのは、『現代日本の若者の間に広がる噂20XX』という見出しの資料だった。
『LIP』 ―― Libido-inflate plug-in
――3時間以上連続した憧憬夢を見ることが可能なプログラム。
夢とは、その者が生きることのできる、もう1つの現実である。
リビドーは、夢というもう1つの現実において、その者に神の椅子を提供する。
己が現実世界の創造主となる代償は、決して小さくない。
人工的に脳波を調整することは、使用時間に比例して、脳に多大な負担を与える。
いずれ脳波に歪みが生じ、死に近づくことだろう。
忘れてはいけない―――。
貴方の望む夢の園の片隅には、死神が住んでいる。
【クロノ】
「……なるほどね」
【クロノ】
「昨日、綾の夢に侵入して、目が覚めたら、3時間以上経ってたからびっくりしたんだけど…」
【アンク】
「……paraisoにログイン出来ている、ということもありますし」
【アンク】
「まず間違いなく、綾さんは、LIPを使用しているのでしょうね」
【クロノ】
「リビドーの長期使用が、死に近づくことになるのなら……」
【クロノ】
「……今回の一連の事件、死んだ人間のほとんどが、LIP使用者ってことも考えられる」
資料には、リビドー使用者の死因は全て『突然死』とだけ記されている。
LIP使用の有無については書かれていないけれど…。
『LIP』という言葉自体が資料に載っていなかった以上、関連性を調べてみる価値はある。
【アンク】
「それにしても、変ですなぁ」
じいが、ひげを撫でながらぽつりと呟いた。
【クロノ】
「なにが?」
【アンク】
「paraisoです。今まで資料に、名前すら挙がらなかった、というのが気になりましてなあ…」
【クロノ】
「そう言われれば、そうだね。まだ、リビドー使用者とLIPの関連性も分かっていないし…」
【アンク】
「paraiso関連の情報は、何故今まで表に出なかったのでしょうなぁ…」
俺とじいは、並んで首を傾げたけど、分かる訳もなかった。
【クロノ】
「まあ、こんなところで考えてても仕方がない。じいは引き続き、paraiso関連の調査をお願い」
【アンク】
「かしこまりました」
【クロノ】
「それと、もう一つ。気になることがある」
【アンク】
「なんでございましょう?」
【クロノ】
「昨日、綾の夢がおかしくなった」
【アンク】
「夢がおかしく……。はて、どういうことでしょう?」
【クロノ】
「綾は、『偽者の綾が演じている劇を、本物の綾が見てる』っていう
ちょっと複雑な夢を見てるタイプだったんだけど」
【クロノ】
「途中で、夢が…、そうだな、悪夢に変わってしまったような感じだった」
【クロノ】
「夢主の綾を、追い詰めるような化物が出てきたりして」
【アンク】
「なるほど……。悪夢化についての情報は…」
じいはまたキーボードを叩き、PCに新しく掲示板を表示させた。
【アンク】
「……何らかのきっかけで、夢が悪夢に変わることもある、とありますが」
【アンク】
「これはリビドーの噂を集めた掲示板ですから、信憑性は定かではありません」
【クロノ】
「そういう噂があるって事は、綾にだけ偶々起こった事だとは考え難い」
【アンク】
「そうですね。paraiso関連とあわせ、詳しく調べてみます」
【クロノ】
「うん、お願い」
【クロノ】
「俺は引き続き、綾の見張りと、説得を続ける」
【アンク】
「かしこまりました」
じいは深々と一礼をすると、姿を消した。
俺は自宅を出て、少し調べ物をしておこうと図書館へ向かった。
綾のトラウマについて考えたかったので、歩いて行く事にした。
――愛されない、という言葉に、とても強く反応した綾。
【クロノ】
(……あいつ)
【クロノ】
(誰にも愛されないなんて、ある訳ないのに)
なんだか、俺まで気分が重くなり、溜息をついた時。
俺の思考を遮るほど強く。
頭上に誰かの気配を感じた。
頭上を見上げた俺は、思わず「うぇ」と変な声を出してしまった。
トップクラスに会いたくないヤツが、ニヤニヤしながら浮いていたんだから当然だ。
【ユリス】
「こないだぶり~! 元気してたかよ」
【クロノ】
「はいはい。元気だから、ほっといて」
【ユリス】
「なんだよ、それ。相変わらずつれないなー」
ユリスはクスクス笑いながら降りてきて、俺の隣に立った。
【ユリス】
「リビドーの事件の調査、してるんだって?」
【クロノ】
「機密事項なんで」
【ユリス】
「機密なのは内容だけだろ。ほとんどの死神が、お前の任務のこと知ってるって」
【ユリス】
「で?難航してるみたいだけど、大丈夫~?」
やけに気軽に聞いてくるから、ますます答えたくない気持ちになる。
【クロノ】
「別に。悪いけど一人にしてくれる?」
シカトして通り過ぎようとした俺の隣に無理矢理並ぶように歩きながら、ユリスが言う。
【ユリス】
「なんだよ。リビドーに関する耳寄りな情報を教えてやろうかと思ったのに」
【クロノ】
「…なに?耳寄りって」