[本編] 綾 上総 編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
俺に肩を掴まれた綾は、敵意をむき出しに振り返る。
【クロノ】
(……現実逃避をしているなら、まずは、これが夢だと分からせないと)
【クロノ】
「こうやって夢に逃げ込んで、愛されてる自分になりきっても」
【クロノ】
「本当に愛されたことにはならないだろ」
綾は、今にも噛み付きそうな顔で俺を睨んでいる。
【クロノ】
「リビドーでこんなことしてるから、あんたの寿命は短くなったって言ったよね」
【クロノ】
「こんなことしてても、なんにもならないんだから、早くやめなよ」
淡々と、事実のみを告げてみたが――。
【子供の上総】
「うるさいうるさいうるさい!」
【子供の上総】
「訳分かんねーことばっか言いやがって!」
【子供の上総】
「お前、なんなんだよ!もうどっか行っちまえ!」
何を言っても拒絶されるだろうとは思っていたけど、こんなに頑なだとは思わなかった。
性格が軽い分、もっと柔軟性のあるヤツなんじゃないかと、少し期待していた。
【クロノ】
「聞き分けろよ、本当はもういい大人のくせして」
【クロノ】
「こんな子供になりきって、意味あるの?」
【クロノ】
「そんなにあんたの現実って辛いの?」
【子供の上総】
「…………さい」
【クロノ】
「金もあって、友達もいて、何不自由ない生活をしてるのに」
【クロノ】
「あんたがこんなに深く、夢に逃避するのは――」
【クロノ】
「親に愛されなかったから?」
【子供の上総】
「うるさいいいいいい!」
綾は顔を真っ赤にして、お化け屋敷から飛び出した。
ひとり残された父親は、まるで人形のように無表情なまま、フラフラと綾の後を追いかけて行く。
俺も綾を追いかけて、お化け屋敷から飛び出した。
遊具の間を縫うように走って、ようやく追いついた。
綾は、俺に背中を向けたまま、立ち止まっていた。
その背中に、なにか違和感を覚え、俺は声を掛けていた。
【クロノ】
「おい、綾」
肩を叩いてみるけど、反応がない。
【クロノ】
「綾、どうした?」
顔を覗き込むと、目が虚ろになっていた。
【クロノ】
「しっかりしろよ。今度はどうしたの?」
柔らかな子供の頬をピタピタと叩いてみるけど、反応はない。
よく見ると、瞬きすらしていない。
【クロノ】
「……これって」
何を言っても反応がなく、まるで人形のようだ。
動かなくなってしまった綾の隣で、父親が立ち止まった。
そして、綾と同じく瞬き一つしなくなる。
立ち止まった父親も、糸の切れた操り人形のようだった。
二人からは、全く意思が感じられなかった。
【クロノ】
「まるで……」
【クロノ】
「誰かからの指示を待っているみたいな…」
俺が呟いたその瞬間。
【???】
「何しに来た?」
背後から、声を掛けられた。
背後にいた人物を見て。
【クロノ】
「へ?」
俺は思わず、目が点になった。
【綾 上総】
「つーか、マジで誰だよ、あんた」
【綾 上総】
「昨日の夢で、死神だとか言ってたけどさ」
振り返った先にいたのは、大人の姿の綾だった。
【クロノ】
「……え?」
もう一度振り返り、子供の綾がいた場所を見る。
そこには子供の姿の綾が、父親と並んで立っていた。
【クロノ】
「綾が……、二人?」
【クロノ】
「子供の綾と、大人の綾が……。これってどういうこと?」
【綾 上総】
「質問は俺がしてる。誰の許可を得て、ここにいるのかって訊いてるんだよ」
【綾 上総】
「ここは俺の夢の中だ。あんたみたいな登場人物、設定してねーよ」
【綾 上総】
「つーか死神ってなんだそれ。アホか」
大人の綾が、皮肉めいた口調で俺に詰め寄る。
胸倉を掴まれそうになったのでさっと避けると、綾は歯噛みして睨んできた。
【クロノ】
「……もしかして、本物の綾はあんた?」
【クロノ】
「こっちの子供は、偽者?」
【綾 上総】
「……」
【クロノ】
「答えないってことは、そうなんだ」
【クロノ】
「あんたが、『リビドーを操作して、夢を見てる綾』なんだ」
【綾 上総】
「……」
綾は俺を睨みつけたまま、なにも言わない。
【クロノ】
「どういうことか、ようやく分かった」
大人の姿の綾が現れたことで、全ての合点がいく。
【クロノ】
「この夢は…、
子供の自分が父親に愛されている姿を、大人である本当の自分が眺めている、っていう
ややこしい事態になってたのか」
【綾 上総】
「うるせえ、文句あるのか」
【クロノ】
「文句は無いけど……」
【クロノ】
「あんたって相当ややこしいヤツなんだってことは理解した」
【綾 上総】
「知った口きくんじゃねーよ、ばあか」
俺は綾に構わず、少し振り返って、チラリと背後を見てみた。
子供の綾と父親は、やはりピクリとも動かない。
俺は、自分の考えが正しいことを確信した。
そして、本物の綾に向き直る。
【クロノ】
「本物さんに自己紹介が遅れたけど、本当に俺は死神。
それで、あんたを助けにきた」
【クロノ】
「あんたはリビドーを使いすぎて、あと12日で、死ぬ」
【クロノ】
「だから俺は、あんたがリビドーを使うのを、やめさせたい」
【クロノ】
「こうやって夢の中に入ってでも、あんたのトラウマを暴いてでも」
【クロノ】
(……現実逃避をしているなら、まずは、これが夢だと分からせないと)
【クロノ】
「こうやって夢に逃げ込んで、愛されてる自分になりきっても」
【クロノ】
「本当に愛されたことにはならないだろ」
綾は、今にも噛み付きそうな顔で俺を睨んでいる。
【クロノ】
「リビドーでこんなことしてるから、あんたの寿命は短くなったって言ったよね」
【クロノ】
「こんなことしてても、なんにもならないんだから、早くやめなよ」
淡々と、事実のみを告げてみたが――。
【子供の上総】
「うるさいうるさいうるさい!」
【子供の上総】
「訳分かんねーことばっか言いやがって!」
【子供の上総】
「お前、なんなんだよ!もうどっか行っちまえ!」
何を言っても拒絶されるだろうとは思っていたけど、こんなに頑なだとは思わなかった。
性格が軽い分、もっと柔軟性のあるヤツなんじゃないかと、少し期待していた。
【クロノ】
「聞き分けろよ、本当はもういい大人のくせして」
【クロノ】
「こんな子供になりきって、意味あるの?」
【クロノ】
「そんなにあんたの現実って辛いの?」
【子供の上総】
「…………さい」
【クロノ】
「金もあって、友達もいて、何不自由ない生活をしてるのに」
【クロノ】
「あんたがこんなに深く、夢に逃避するのは――」
【クロノ】
「親に愛されなかったから?」
【子供の上総】
「うるさいいいいいい!」
綾は顔を真っ赤にして、お化け屋敷から飛び出した。
ひとり残された父親は、まるで人形のように無表情なまま、フラフラと綾の後を追いかけて行く。
俺も綾を追いかけて、お化け屋敷から飛び出した。
遊具の間を縫うように走って、ようやく追いついた。
綾は、俺に背中を向けたまま、立ち止まっていた。
その背中に、なにか違和感を覚え、俺は声を掛けていた。
【クロノ】
「おい、綾」
肩を叩いてみるけど、反応がない。
【クロノ】
「綾、どうした?」
顔を覗き込むと、目が虚ろになっていた。
【クロノ】
「しっかりしろよ。今度はどうしたの?」
柔らかな子供の頬をピタピタと叩いてみるけど、反応はない。
よく見ると、瞬きすらしていない。
【クロノ】
「……これって」
何を言っても反応がなく、まるで人形のようだ。
動かなくなってしまった綾の隣で、父親が立ち止まった。
そして、綾と同じく瞬き一つしなくなる。
立ち止まった父親も、糸の切れた操り人形のようだった。
二人からは、全く意思が感じられなかった。
【クロノ】
「まるで……」
【クロノ】
「誰かからの指示を待っているみたいな…」
俺が呟いたその瞬間。
【???】
「何しに来た?」
背後から、声を掛けられた。
背後にいた人物を見て。
【クロノ】
「へ?」
俺は思わず、目が点になった。
【綾 上総】
「つーか、マジで誰だよ、あんた」
【綾 上総】
「昨日の夢で、死神だとか言ってたけどさ」
振り返った先にいたのは、大人の姿の綾だった。
【クロノ】
「……え?」
もう一度振り返り、子供の綾がいた場所を見る。
そこには子供の姿の綾が、父親と並んで立っていた。
【クロノ】
「綾が……、二人?」
【クロノ】
「子供の綾と、大人の綾が……。これってどういうこと?」
【綾 上総】
「質問は俺がしてる。誰の許可を得て、ここにいるのかって訊いてるんだよ」
【綾 上総】
「ここは俺の夢の中だ。あんたみたいな登場人物、設定してねーよ」
【綾 上総】
「つーか死神ってなんだそれ。アホか」
大人の綾が、皮肉めいた口調で俺に詰め寄る。
胸倉を掴まれそうになったのでさっと避けると、綾は歯噛みして睨んできた。
【クロノ】
「……もしかして、本物の綾はあんた?」
【クロノ】
「こっちの子供は、偽者?」
【綾 上総】
「……」
【クロノ】
「答えないってことは、そうなんだ」
【クロノ】
「あんたが、『リビドーを操作して、夢を見てる綾』なんだ」
【綾 上総】
「……」
綾は俺を睨みつけたまま、なにも言わない。
【クロノ】
「どういうことか、ようやく分かった」
大人の姿の綾が現れたことで、全ての合点がいく。
【クロノ】
「この夢は…、
子供の自分が父親に愛されている姿を、大人である本当の自分が眺めている、っていう
ややこしい事態になってたのか」
【綾 上総】
「うるせえ、文句あるのか」
【クロノ】
「文句は無いけど……」
【クロノ】
「あんたって相当ややこしいヤツなんだってことは理解した」
【綾 上総】
「知った口きくんじゃねーよ、ばあか」
俺は綾に構わず、少し振り返って、チラリと背後を見てみた。
子供の綾と父親は、やはりピクリとも動かない。
俺は、自分の考えが正しいことを確信した。
そして、本物の綾に向き直る。
【クロノ】
「本物さんに自己紹介が遅れたけど、本当に俺は死神。
それで、あんたを助けにきた」
【クロノ】
「あんたはリビドーを使いすぎて、あと12日で、死ぬ」
【クロノ】
「だから俺は、あんたがリビドーを使うのを、やめさせたい」
【クロノ】
「こうやって夢の中に入ってでも、あんたのトラウマを暴いてでも」