[本編] 綾 上総 編
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【アンク】
「なら宜しいんですがね」
【アンク】
「クロノ様。注意していただきたいことがあります」
じいが、俺に向かって手をかざす。
それを合図に、俺は軽く目を閉じた。
【アンク】
「夢に引きずられないように、お気をつけて」
どういう意味だと訊こうとした時、深い闇へと沈んでいく様な感覚に襲われた。
【クロノ】
「うわっ……!」
まるで、高所から落下したような衝撃を感じる。
他人の夢に入るって、どんな気分なんだろうとは思ってたけど。
あまり気持ちのいいものじゃなかった。
目を開けると、そこには予想だにしていなかった景色が広がっていた。
【クロノ】
「ここは……遊園地?」
観覧車にジェットコースター、くるくる回るコーヒーカップ、メリーゴーランド。
遊具は賑やかな音楽に合わせて動いているのに、人の姿は一切ない。
……夢に引きずられるな、か。
じいの忠告の真意はわからない。
けれど、俺にとってここまで馴染みのない夢に引きずられるなんて、ないと思う。
それより、綾を探さなければ話にならない。
俺は辺りを見回しながら、遊園地の中を歩いていく。
立ち並ぶ飲食店も覗いてみるが…、やはり誰もいない。
陽気な音楽を奏でる遊具達は、無人の状況じゃ不気味なだけだ。
ここは……
ここには、上っ面の華やかさしかない。
【クロノ】
「華やかな世界なのに誰も居ない。空虚だね」
【クロノ】
「夢がそいつの本質を現すってことも、あるのかもしれないな」
その時、誰かの話し声が聞こえた。
はしゃいでいるような、待ちきれないって感じの、カン高い声だった。
【クロノ】
「子供の…声?」
声のした方へ急ぐと、そこにいたのは。
【子供の上総】
「パパ!次はねー、次はねー!」
【綾 一輝】
「上総、ゆっくり歩きなさい。今日は貸切だから、誰も上総の邪魔はしないよ」
―――子供の姿をした綾と、父親らしき男の姿だった。
【子供の上総】
「だって、パパと一緒に遊園地で遊べるのが楽しくて!」
綾は幸せそうに笑い、父親がそんな綾を抱き締める。
【綾 一輝】
「最近は忙しくて、ゆっくり構ってやれなかったしな。そうだ、クレープを食べようか」
【クロノ】
「…意外というか、なんというか…」
【クロノ】
「わざわざ父親の夢を見るなんて、ファザコンってやつか?」
【子供の上総】
「やった! クレープ大好きなんだ!ありがとうパパ!」
【子供の上総】
「ねえねえパパ。クレープ食べたら、次はおばけ屋敷に入りたい!」
【綾 一輝】
「おばけ屋敷? 上総は怖くないのか?」
【子供の上総】
「平気だよ。俺はおばけなんか怖くないんだ。パパもいるし!」
子供の姿の上総は、嬉しそうに父親の腕へ顔をすり寄せている。
【綾 一輝】
「さすが私の自慢の息子だな」
【子供の上総】
「へへ! その次はね、観覧車に乗ってー、それからねえ…」
顔の造りは現実世界の綾をそのまま小さくしただけで、変わらないままなのに。
その笑顔は無邪気で、本当に幸せそうだ。
【綾 一輝】
「ほら上総、慌てると転んでしまうぞ」
【子供の上総】
「平気だよ! 転んでも痛くないし」
【綾 一輝】
「頼もしいな。まだこんなに小さいのに」
【子供の上総】
「えへへ……。俺、パパみたいな大人になるのが夢なんだ」
【子供の上総】
「頭が良くて、強くて、会社の社長で、かっこいい大人に!」
俺はそのやりとりを眺めながら、ずっと、漠然とした違和感を覚えていた。
二人の様子を観察しながら、ちょっと考えてみる。
子供の綾に接触したとして……、普通の会話は出来るんだろうか。
精神的にも子供に戻ってしまっているなら、言われている事をちゃんと理解出来ないかもしれない。
【クロノ】
「まあ、考えても埒が開かないか」
【クロノ】
「話してみなきゃ分からないよな」
俺はベンチに腰かけている二人の前に立ち、声を掛けた。
【クロノ】
「綾上総」
呼び掛けると、丁度クレープを食べ終わった綾が、驚いたように顔を上げた。
そして、首から提げていたボトルをぎゅっと握ると、キッと俺を睨んだ。
【子供の上総】
「あんた、誰?」
俺は横目で父親の様子を窺ったが、父親は俺の顔を見つめたまま、何も言わない。
【子供の上総】
「今日は、この遊園地は貸切なんだぜ?俺とパパだけの貸切。分かる?」
【子供の上総】
「だから、勝手に入ってきたらダメなんですけど」
【子供の上総】
「あんた、不法侵入者だ。警察に逮捕されて、罰金払うんだぞ。
あんた、払えるのかよ」
まだ高い子供の声で話す綾は、口調も発想も子供っぽい。
もしかすると本当に精神的に子供になってるのかもしれない。
それにしても……。
【クロノ】
「子供の姿でも態度は大きいままなんだ」
【子供の上総】
「はあ?なんだこいつ、何言ってるの?」
これが夢だと言う自覚も、自分が現実では大人だと言う事も、
今は忘れているらしい。
なら、ここでどんなに説明しても理解出来ないかもしれない。
だから俺は、簡潔に告げる事に決めた。
【クロノ】
「俺は、あんたに忠告しに来ただけ」
【クロノ】
「このままだと死ぬよ、綾上総」
綾は露骨に不愉快そうな顔で、俺を睨みつける。
【子供の上総】
「ねえ、パパ。コイツなんとかしてよ」
【子供の上総】
「俺の言う事聞かないし、訳わかんない事ばっか言うし、ありえないんだけど!」
【綾 一輝】
「全くだ。お前、どこから入って来た?」
【綾 一輝】
「家族団欒を邪魔しないでもらおう」
綾に話を振られて、ようやく父親が話し始める。
その様子に違和感を覚えたけど……、とりあえず、今日は綾との会話を優先する。
【クロノ】
「俺は忠告しに来ただけだから」
【クロノ】
「用事が済んだから、もう帰るよ」
【子供の上総】
「さっきから意味わかんねーんだよ!俺が帰れって言ってんだから、とっとと帰れ!!」
【子供の上総】
「おい係員!早くコイツをつまみ出せ!」
【クロノ】
「はあ……。想像通り、せっかちで我儘だな、あんた」
【子供の上総】
「はあ?!」
「なら宜しいんですがね」
【アンク】
「クロノ様。注意していただきたいことがあります」
じいが、俺に向かって手をかざす。
それを合図に、俺は軽く目を閉じた。
【アンク】
「夢に引きずられないように、お気をつけて」
どういう意味だと訊こうとした時、深い闇へと沈んでいく様な感覚に襲われた。
【クロノ】
「うわっ……!」
まるで、高所から落下したような衝撃を感じる。
他人の夢に入るって、どんな気分なんだろうとは思ってたけど。
あまり気持ちのいいものじゃなかった。
目を開けると、そこには予想だにしていなかった景色が広がっていた。
【クロノ】
「ここは……遊園地?」
観覧車にジェットコースター、くるくる回るコーヒーカップ、メリーゴーランド。
遊具は賑やかな音楽に合わせて動いているのに、人の姿は一切ない。
……夢に引きずられるな、か。
じいの忠告の真意はわからない。
けれど、俺にとってここまで馴染みのない夢に引きずられるなんて、ないと思う。
それより、綾を探さなければ話にならない。
俺は辺りを見回しながら、遊園地の中を歩いていく。
立ち並ぶ飲食店も覗いてみるが…、やはり誰もいない。
陽気な音楽を奏でる遊具達は、無人の状況じゃ不気味なだけだ。
ここは……
ここには、上っ面の華やかさしかない。
【クロノ】
「華やかな世界なのに誰も居ない。空虚だね」
【クロノ】
「夢がそいつの本質を現すってことも、あるのかもしれないな」
その時、誰かの話し声が聞こえた。
はしゃいでいるような、待ちきれないって感じの、カン高い声だった。
【クロノ】
「子供の…声?」
声のした方へ急ぐと、そこにいたのは。
【子供の上総】
「パパ!次はねー、次はねー!」
【綾 一輝】
「上総、ゆっくり歩きなさい。今日は貸切だから、誰も上総の邪魔はしないよ」
―――子供の姿をした綾と、父親らしき男の姿だった。
【子供の上総】
「だって、パパと一緒に遊園地で遊べるのが楽しくて!」
綾は幸せそうに笑い、父親がそんな綾を抱き締める。
【綾 一輝】
「最近は忙しくて、ゆっくり構ってやれなかったしな。そうだ、クレープを食べようか」
【クロノ】
「…意外というか、なんというか…」
【クロノ】
「わざわざ父親の夢を見るなんて、ファザコンってやつか?」
【子供の上総】
「やった! クレープ大好きなんだ!ありがとうパパ!」
【子供の上総】
「ねえねえパパ。クレープ食べたら、次はおばけ屋敷に入りたい!」
【綾 一輝】
「おばけ屋敷? 上総は怖くないのか?」
【子供の上総】
「平気だよ。俺はおばけなんか怖くないんだ。パパもいるし!」
子供の姿の上総は、嬉しそうに父親の腕へ顔をすり寄せている。
【綾 一輝】
「さすが私の自慢の息子だな」
【子供の上総】
「へへ! その次はね、観覧車に乗ってー、それからねえ…」
顔の造りは現実世界の綾をそのまま小さくしただけで、変わらないままなのに。
その笑顔は無邪気で、本当に幸せそうだ。
【綾 一輝】
「ほら上総、慌てると転んでしまうぞ」
【子供の上総】
「平気だよ! 転んでも痛くないし」
【綾 一輝】
「頼もしいな。まだこんなに小さいのに」
【子供の上総】
「えへへ……。俺、パパみたいな大人になるのが夢なんだ」
【子供の上総】
「頭が良くて、強くて、会社の社長で、かっこいい大人に!」
俺はそのやりとりを眺めながら、ずっと、漠然とした違和感を覚えていた。
二人の様子を観察しながら、ちょっと考えてみる。
子供の綾に接触したとして……、普通の会話は出来るんだろうか。
精神的にも子供に戻ってしまっているなら、言われている事をちゃんと理解出来ないかもしれない。
【クロノ】
「まあ、考えても埒が開かないか」
【クロノ】
「話してみなきゃ分からないよな」
俺はベンチに腰かけている二人の前に立ち、声を掛けた。
【クロノ】
「綾上総」
呼び掛けると、丁度クレープを食べ終わった綾が、驚いたように顔を上げた。
そして、首から提げていたボトルをぎゅっと握ると、キッと俺を睨んだ。
【子供の上総】
「あんた、誰?」
俺は横目で父親の様子を窺ったが、父親は俺の顔を見つめたまま、何も言わない。
【子供の上総】
「今日は、この遊園地は貸切なんだぜ?俺とパパだけの貸切。分かる?」
【子供の上総】
「だから、勝手に入ってきたらダメなんですけど」
【子供の上総】
「あんた、不法侵入者だ。警察に逮捕されて、罰金払うんだぞ。
あんた、払えるのかよ」
まだ高い子供の声で話す綾は、口調も発想も子供っぽい。
もしかすると本当に精神的に子供になってるのかもしれない。
それにしても……。
【クロノ】
「子供の姿でも態度は大きいままなんだ」
【子供の上総】
「はあ?なんだこいつ、何言ってるの?」
これが夢だと言う自覚も、自分が現実では大人だと言う事も、
今は忘れているらしい。
なら、ここでどんなに説明しても理解出来ないかもしれない。
だから俺は、簡潔に告げる事に決めた。
【クロノ】
「俺は、あんたに忠告しに来ただけ」
【クロノ】
「このままだと死ぬよ、綾上総」
綾は露骨に不愉快そうな顔で、俺を睨みつける。
【子供の上総】
「ねえ、パパ。コイツなんとかしてよ」
【子供の上総】
「俺の言う事聞かないし、訳わかんない事ばっか言うし、ありえないんだけど!」
【綾 一輝】
「全くだ。お前、どこから入って来た?」
【綾 一輝】
「家族団欒を邪魔しないでもらおう」
綾に話を振られて、ようやく父親が話し始める。
その様子に違和感を覚えたけど……、とりあえず、今日は綾との会話を優先する。
【クロノ】
「俺は忠告しに来ただけだから」
【クロノ】
「用事が済んだから、もう帰るよ」
【子供の上総】
「さっきから意味わかんねーんだよ!俺が帰れって言ってんだから、とっとと帰れ!!」
【子供の上総】
「おい係員!早くコイツをつまみ出せ!」
【クロノ】
「はあ……。想像通り、せっかちで我儘だな、あんた」
【子供の上総】
「はあ?!」