[本編] 日留川 凌央 編
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毎朝行っている朝礼の間、社員は一様にそわそわしていた。
そして俺の号令と共に一日の始まりが告げられると、
社員はこぞって凌央に食らいついた。
【白鳥】
「社長ぅうううぅおお!! 自分小耳に挟んでしまったんですううう!!」
【白鳥】
「今朝、拙者、聞いてしまったんでございますよぉおおお!」
【日留川 凌央】
「は……?」
【菅原】
「じじじ自分も聞いてしまったんですけどっ」
【菅原】
「是非本当のところを社長から直接お訊きしたいところなんですけどっ」
【日留川 凌央】
「な、何の話……、あ」
【日留川 凌央】
「もしかして……あの、…雑誌の取材の…こと?」
【東海林】
「昨日受付の人達が話してるのを偶然聞いてしまったのです」
【東海林】
「俺がずっと昔から読んできた雑誌ですので、まさか自分の職場が載るなんて夢のようです」
【菅原】
「あっはい今地雷踏まれたんですけどハイ! ここに毎週欠かさず買ってる人居るんですけど!」
【白鳥】
「あっあっあっ発見!」
【白鳥】
「自分だけ読んでるアピールする香具師センサーにビビッと反応アリ!! 逮捕でござるよー!!」
【菅原】
「はいはいこちらにも反応あったんですけどっ、速やかに捕縛願います、どうぞっ」
【白鳥】
「ピーピー! こちら司令部! 捕縛後、直ちに弁解及び謝罪を要求する! どうぞっ」
【東海林】
「別に俺一人のものだなんて言っていません。誤解はやめてください。迷惑です。どうぞ」
【白鳥】
「あっ……あ……、ぐふ、東海林殿と初めての無線通信でござるぅ」
謎の団結を見せている連中を無視して凌央を見やると、険しい表情で視線を落としている。
昨日はなし崩し的にあんなことになっちゃったから、
どうせなら考え事ができないくらい疲れさせてあげようと思って激しめにしたけど。
やっぱり熟睡することはできなかったみたいで、凌央は浅い眠りを繰り返していた。
…その上で答えが出たならいいんだけど。
【東海林】
「それで社長。何とお返事されたのでしょうか」
【日留川 凌央】
「……」
【クロノ】
「……」
【日留川 凌央】
「未定だ」
凌央はそう言い残して、逃げるように社長室へと向かっていく。
えー、と何だか不満気な社員達を宥めながら、俺もその後を追う。
凌央は、今日はこの部屋で仕事するからと言ってノートパソコンを開いて。
夢中でキーを叩いていて、口をきこうとはしなかった。
無理に話させることもできるけど、
凌央が何を考えてるかわかるだけにそっとしておいてやりたい気もする。
【クロノ】
(……だけど、社長補佐も俺の役目だからな)
昨夜の、凌央の母親からの手紙のこともあるし。
ここは恋人としてもフォローするべき時だろうな。
【クロノ】
「あのさ、凌央……そんなに嫌がるのはどうして?」
【日留川 凌央】
「どうしてって、……………」
【クロノ】
「もしかして、雑誌に載りたくないのって、母親のことと関係してるの」
俺がそう告げるとキーを叩く音が止まった。
それからすぐに再開するタイプ音を聞きながら、急かさずにじっと返事を待つ。
【日留川 凌央】
「もう親との縁は切ってるから、母親じゃない」
【クロノ】
「……」
そう言うわりには、表情は辛そうだ。
そっと近付いて、キーボードの上に掌を被せてタイピングを止めさせて。
頬に手を添えて上を向かせてから、軽く唇を重ねてやった。
それから背中に手を回して優しく抱き寄せながら髪を梳いてやる。
【クロノ】
「今の凌央は一人じゃないんだから」
【クロノ】
「背負ってるものがあるなら、俺にも分けてほしいな」
【日留川 凌央】
「……」
凌央はしばらく迷ったように目線を彷徨わせて。
ポツリポツリと家庭の事情を話してくれた。
【日留川 凌央】
「うちの両親は、俺が中学にあがった頃に離婚してて」
【日留川 凌央】
「父親とは、浮気相手と出て行ったきり会ってないけど」
【日留川 凌央】
「それからずっと、俺は母親と2人暮らしだった」
【クロノ】
「……うん」
【日留川 凌央】
「俺は一応、母親には迷惑かけないようにって、それまで以上に勉強とかも頑張ったけど」
【日留川 凌央】
「……母親から距離を置かれてて」
【クロノ】
「…なんで」
【日留川 凌央】
「知らないよ。訊いたこともないし……訊けないし」
【クロノ】
「……そっか」
【日留川 凌央】
「それで俺もだんだん、母親に必要とされてないって思う風になって」
【日留川 凌央】
「不登校になって、……ある日、聞いたんだ」
【日留川 凌央】
「母親が誰かと電話してる時に、喋ってたんだ」
【日留川 凌央】
「多分俺の育て方について誰かに相談してたんじゃないかなと思うんだけど」
【日留川 凌央】
「『育て方が間違ってたのかな』って」
【クロノ】
「……」
【日留川 凌央】
「それから、母親とはほとんど喋らない関係が続いてた」
【日留川 凌央】
「不登校になって、部屋に引き篭もり始めてから、自作のプログラムを作ったりして」
【日留川 凌央】
「細々と金を貯めてたから……それが一定にの金額に達した時、俺は家を出た」
【日留川 凌央】
「それから、実家への連絡は一切してなかった」
【クロノ】
「……向こうに、ここの連絡先が割れてたのは?」
【日留川 凌央】
「引っ越しした時、俺が未成年だったから」
【日留川 凌央】
「どうしても血縁者の連帯保証人が必要で……それで」
【クロノ】
「なるほど……」
一区切りついた時、凌央は相当消耗したように項垂れたから。
飲み物とお茶菓子を用意してやって、軽く背中を撫でながら回復を待つ。
【日留川 凌央】
「……だから、この場所のことまで知られたくないんだ」
カップを両手で握りしめて、凌央は呟くように告げた。
【日留川 凌央】
「家は引っ越せばいいけど、この場所はそうはいかないだろ」
【日留川 凌央】
「もう親だとは思ってないし、あの人とは今後一切、連絡取りたくないんだ」
そして俺の号令と共に一日の始まりが告げられると、
社員はこぞって凌央に食らいついた。
【白鳥】
「社長ぅうううぅおお!! 自分小耳に挟んでしまったんですううう!!」
【白鳥】
「今朝、拙者、聞いてしまったんでございますよぉおおお!」
【日留川 凌央】
「は……?」
【菅原】
「じじじ自分も聞いてしまったんですけどっ」
【菅原】
「是非本当のところを社長から直接お訊きしたいところなんですけどっ」
【日留川 凌央】
「な、何の話……、あ」
【日留川 凌央】
「もしかして……あの、…雑誌の取材の…こと?」
【東海林】
「昨日受付の人達が話してるのを偶然聞いてしまったのです」
【東海林】
「俺がずっと昔から読んできた雑誌ですので、まさか自分の職場が載るなんて夢のようです」
【菅原】
「あっはい今地雷踏まれたんですけどハイ! ここに毎週欠かさず買ってる人居るんですけど!」
【白鳥】
「あっあっあっ発見!」
【白鳥】
「自分だけ読んでるアピールする香具師センサーにビビッと反応アリ!! 逮捕でござるよー!!」
【菅原】
「はいはいこちらにも反応あったんですけどっ、速やかに捕縛願います、どうぞっ」
【白鳥】
「ピーピー! こちら司令部! 捕縛後、直ちに弁解及び謝罪を要求する! どうぞっ」
【東海林】
「別に俺一人のものだなんて言っていません。誤解はやめてください。迷惑です。どうぞ」
【白鳥】
「あっ……あ……、ぐふ、東海林殿と初めての無線通信でござるぅ」
謎の団結を見せている連中を無視して凌央を見やると、険しい表情で視線を落としている。
昨日はなし崩し的にあんなことになっちゃったから、
どうせなら考え事ができないくらい疲れさせてあげようと思って激しめにしたけど。
やっぱり熟睡することはできなかったみたいで、凌央は浅い眠りを繰り返していた。
…その上で答えが出たならいいんだけど。
【東海林】
「それで社長。何とお返事されたのでしょうか」
【日留川 凌央】
「……」
【クロノ】
「……」
【日留川 凌央】
「未定だ」
凌央はそう言い残して、逃げるように社長室へと向かっていく。
えー、と何だか不満気な社員達を宥めながら、俺もその後を追う。
凌央は、今日はこの部屋で仕事するからと言ってノートパソコンを開いて。
夢中でキーを叩いていて、口をきこうとはしなかった。
無理に話させることもできるけど、
凌央が何を考えてるかわかるだけにそっとしておいてやりたい気もする。
【クロノ】
(……だけど、社長補佐も俺の役目だからな)
昨夜の、凌央の母親からの手紙のこともあるし。
ここは恋人としてもフォローするべき時だろうな。
【クロノ】
「あのさ、凌央……そんなに嫌がるのはどうして?」
【日留川 凌央】
「どうしてって、……………」
【クロノ】
「もしかして、雑誌に載りたくないのって、母親のことと関係してるの」
俺がそう告げるとキーを叩く音が止まった。
それからすぐに再開するタイプ音を聞きながら、急かさずにじっと返事を待つ。
【日留川 凌央】
「もう親との縁は切ってるから、母親じゃない」
【クロノ】
「……」
そう言うわりには、表情は辛そうだ。
そっと近付いて、キーボードの上に掌を被せてタイピングを止めさせて。
頬に手を添えて上を向かせてから、軽く唇を重ねてやった。
それから背中に手を回して優しく抱き寄せながら髪を梳いてやる。
【クロノ】
「今の凌央は一人じゃないんだから」
【クロノ】
「背負ってるものがあるなら、俺にも分けてほしいな」
【日留川 凌央】
「……」
凌央はしばらく迷ったように目線を彷徨わせて。
ポツリポツリと家庭の事情を話してくれた。
【日留川 凌央】
「うちの両親は、俺が中学にあがった頃に離婚してて」
【日留川 凌央】
「父親とは、浮気相手と出て行ったきり会ってないけど」
【日留川 凌央】
「それからずっと、俺は母親と2人暮らしだった」
【クロノ】
「……うん」
【日留川 凌央】
「俺は一応、母親には迷惑かけないようにって、それまで以上に勉強とかも頑張ったけど」
【日留川 凌央】
「……母親から距離を置かれてて」
【クロノ】
「…なんで」
【日留川 凌央】
「知らないよ。訊いたこともないし……訊けないし」
【クロノ】
「……そっか」
【日留川 凌央】
「それで俺もだんだん、母親に必要とされてないって思う風になって」
【日留川 凌央】
「不登校になって、……ある日、聞いたんだ」
【日留川 凌央】
「母親が誰かと電話してる時に、喋ってたんだ」
【日留川 凌央】
「多分俺の育て方について誰かに相談してたんじゃないかなと思うんだけど」
【日留川 凌央】
「『育て方が間違ってたのかな』って」
【クロノ】
「……」
【日留川 凌央】
「それから、母親とはほとんど喋らない関係が続いてた」
【日留川 凌央】
「不登校になって、部屋に引き篭もり始めてから、自作のプログラムを作ったりして」
【日留川 凌央】
「細々と金を貯めてたから……それが一定にの金額に達した時、俺は家を出た」
【日留川 凌央】
「それから、実家への連絡は一切してなかった」
【クロノ】
「……向こうに、ここの連絡先が割れてたのは?」
【日留川 凌央】
「引っ越しした時、俺が未成年だったから」
【日留川 凌央】
「どうしても血縁者の連帯保証人が必要で……それで」
【クロノ】
「なるほど……」
一区切りついた時、凌央は相当消耗したように項垂れたから。
飲み物とお茶菓子を用意してやって、軽く背中を撫でながら回復を待つ。
【日留川 凌央】
「……だから、この場所のことまで知られたくないんだ」
カップを両手で握りしめて、凌央は呟くように告げた。
【日留川 凌央】
「家は引っ越せばいいけど、この場所はそうはいかないだろ」
【日留川 凌央】
「もう親だとは思ってないし、あの人とは今後一切、連絡取りたくないんだ」
