[本編] 日留川 凌央 編
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【クロノ】
「……そうだ」
そう決めたんだ。あの時に。
彼が死んだあの時に、もう誰にも感情移入しないし、深く付き合うこともしない。
そう決めたんだ。傷つくのが嫌だから。
押しつぶされそうなほど後悔するのは、もうこりごりだったから。
―――その時、どこからか、俺を呼ぶ小さな声がした。
申し訳無さそうに。ぶっきらぼうに俺を呼ぶ……日留川の声が。
【クロノ】
「……そうか」
お前も同じだな。
傷つくのが嫌だから、誰も近寄らせない。
何もしない。何も見ない。何も感じない。そうしていれば楽だから。
俺達はお互い1人ぼっちの世界にいた。
だけど1人は嫌だよな、日留川。―――2人でいる方がきっと楽しい。
【クロノ】
「は……」
映っているのは、日留川の部屋の天井。
痛むこめかみを押さえながら起き上がって、辺りを見渡して。
深呼吸して、隣に寝ている日留川の姿を見とめて。
それでようやく、ここが夢ではないことを実感する。
【クロノ】
(そうだ……起こしてやらないと)
手首を見ると、アザはうっすらだが残っていて、目を背ける。
あれは、紛れも無く悪夢だった。
夢に引きずられて、俺まであんな夢を見たんだから、日留川も今頃、辛い目にあってるかもしれない。
今まで通り、キスして起こそうと身を屈めて……躊躇する。
【クロノ】
(……これ以上深入りするのは)
【クロノ】
(俺もこいつも、辛くなるかもしれない)
他人と触れ合うことを嫌い、他人と距離を置き続けてきた俺達。
こいつが必死に守ってきたパーソナルスペースを、俺は今まで無神経に蹂躙してただけなのかもしれない。
それが、こいつのためになるとも思っていたが……。
そこで思った。
こいつのため?俺が当初掲げていたのはそんなことじゃない。
あくまで仕事と割りきってきたはずだ。任務遂行の為に、もっと知る必要があると思って…。
面白い奴と思って。もっと知りたくなって…。
……いつの間にか、仕事の枠を超えてしまっている。
なら、引き返すなら今しかない。
―――こいつのことを、まだ分かりきっていない今のうちしか。
リビドーを使用させないようにする為には、依存している理由を明確にする必要があると思った。
だけどいつの間にか、目的を逸脱してしまったのなら……この方法はもうやめるべきだ。
【日留川 凌央】
「……う……ん……」
日留川が目を開ける。間近に俺の顔を見ても、もう取り乱したりはしなかった。
悶々と考え込んでいた俺は、ぼんやり日留川を見返した。
【日留川 凌央】
「なに?」
【クロノ】
「……なんでもない」
【日留川 凌央】
「なんか悲しそうな顔してる。珍しい」
【クロノ】
「……別に。おはよう」
この調子なら、俺が去った後に酷い目にあったということはなさそうだ
体を起こし、日留川の上から退けると、おはようという不思議そうな声が返ってきた。
俺はそのまま膝を立てて床に座り、日留川に背を向ける。
今は何となく、顔を見られたい気分じゃない。
頭の中で、彼の顔と日留川の顔が交互に浮かんでは消えている。
夢のことを思い出すたび、手首のアザが痛むから。
仕事のことだけを考えろと自分に言い聞かせながら、目をつむる。
【クロノ】
「……今日、なんでリビドーを使った?」
【日留川 凌央】
「……は」
嘲笑に顔を上げて、わずかに振り返ると。
顔を歪めるような笑みの日留川が、だらしなく足を開いて座っている。
【日留川 凌央】
「そういや、何度か言われたね。リビドーを使うと死ぬってね」
【日留川 凌央】
「でもそんなの関係ない。俺は別に死んでも構わない」
【日留川 凌央】
「生に執着するのなんて、馬鹿げてる」
生に執着するのなんて、馬鹿げてる。
以前にも日留川は同じようなことを言った。
あの時も、今と同じ、その1言に耐えがたいほど腹が立った。
だけど今は、死神界へ帰ってやる気にはならなかった。
―――生きたいと泣いている彼の姿が、脳裏に浮かんで消えた。
【クロノ】
「……今、何て言った」
【日留川 凌央】
「は? 聞こえなかったの。そんなに生きることにしがみつくのがみっともないって言ったんだよ」
【日留川 凌央】
「あんた死神だろ?今すぐ俺の魂取っていってもいいぜ」
【クロノ】
「……お前を救うのが、俺の仕事だって言ったろ」
【日留川 凌央】
「そんな仕事放り出しちまえ。お前らの本来の仕事は魂を奪うことだろっての」
【クロノ】
「……運ぶだけだ」
【日留川 凌央】
「あーじゃあそれでいいよ。運びなよ。俺の魂をさ。ほら、とっとと」
【日留川 凌央】
「もう生きててもどうしようもないし」
俺は顔を上げる。
薄っぺらい、冗談めいていた声が、急にトーンを下げたから。
日留川の顔は、とても儚げに見えた。
……今まで見たきた、日留川の夢の内容を思い出す。
同級生には仲間外れにされ、教師には裏切られて。
でも、ふと思った。
こいつ、引きこもりだけど、収入はあるんだよな。
親の脛はかじらずに、ちゃんと自分で食っていってる。
……こいつもこいつなりに
重いトラウマを抱えながらも生きていこうとしてたんだ。
それに疲れたといって、希望が失せるのも、仕方ないのかもしれない。
俺が黙っていると、日留川は気持ちを切り替えるようにこちらを向いて。
馬鹿にするような嫌な笑い方で口を開いた。
【日留川 凌央】
「もう死にたいんだ、俺」
【日留川 凌央】
「生きていたくない。なにもかもどうでもいい」
【日留川 凌央】
「だって考えてみろよ。俺が死んで、誰が悲しむ?」
俺が黙ってるのを良いことに、日留川は立て続けに喋り続けた。
【日留川 凌央】
「親だってさ。何だかんだ言って俺のこと邪魔に思ってたって絶対」
【日留川 凌央】
「だって、俺のせいで同じ学校通ってる奴らの親にも、口聞いてもらえなかったんだぜ?」
【日留川 凌央】
「結構良い学校通わせてもらってたからさ。そういうのうるせえんだよ、よそのちの保護者ってさ」
【日留川 凌央】
「成績トップで表彰されたとか、誰が何の賞取ったとか……下らねえよ、俺に言わせれば」
【日留川 凌央】
「だって俺、全部余裕でできたもん」
そう言って笑った日留川の目から、大粒の涙が溢れる。
【日留川 凌央】
「なのになんでだ。なんで幸せになれない?なんで俺はこんな苦しい思いをして」
【日留川 凌央】
「なんで生き続けなきゃならないんだよ。なんであの脳天気なバカ面下げて俺のこと蹴ったり殴ったり」
【日留川 凌央】
「無視したり嫌がらせしたりする、あいつらの方が楽しく生活してんだよ」
【日留川 凌央】
「なあ、なんでだよ。なんで俺が悪ぃんだよ」
ゆらりと立ち上がった日留川が、俺の胸ぐらを掴み上げ、突然声を荒げた。
【日留川 凌央】
「大嫌いだ……みんなみんな……大嫌いだ!!」
【日留川 凌央】
「どいつもこいつも死んじまえ!!あいつらも……俺も……みんなみんな死ねばいいんだ!」
【クロノ】
「……れ」
【日留川 凌央】
「あ!?」
【クロノ】
「もう黙れ!!」
そして俺は、転がるように、日留川を床に押し倒した。
【日留川 凌央】
「なっ……なんだよ、放せ!!」
俺の腕の中で、日留川は泣き喚きながら暴れている。
自分の感情を吐露したことで、感情が高ぶっているのだろう。
無茶苦茶に暴れた。
目覚まし時計で殴られて、血が流れたが、そんなことどうでも良かった。
……痛い。
胸が痛い。
こいつの痛みがわかる。
こいつの叫びが、理解できる。
1人でいる事を選んだ理由も、他人から離れた理由も。
【日留川 凌央】
「嫌いだ、お前もどいつもこいつも……っ嫌いだ!!死ね!!」
【日留川 凌央】
「殺せ……早く殺せ!!殺してくれぇえああああああ!!」
【クロノ】
「黙れ……もう黙れ、このっ……」
血を吐くような叫びを聞いていられなくて、無理やりキスで塞ぐ。
すると一瞬だけ止まったが、正気に戻るような気配は無かった。
俺は―――暴れる日留川の服を握っている自分の手を見下ろす。
夢でつけられたアザを見たら、ぐっと腹の中が重くなった。
ああ、嫌だ。
俺はまた、人に干渉しようとしている。こいつを放っておけないと思ってる。
例え、良かれと思ってやったことでも、取り返しのつかない不幸に繋がるかもしれないのに。
「……そうだ」
そう決めたんだ。あの時に。
彼が死んだあの時に、もう誰にも感情移入しないし、深く付き合うこともしない。
そう決めたんだ。傷つくのが嫌だから。
押しつぶされそうなほど後悔するのは、もうこりごりだったから。
―――その時、どこからか、俺を呼ぶ小さな声がした。
申し訳無さそうに。ぶっきらぼうに俺を呼ぶ……日留川の声が。
【クロノ】
「……そうか」
お前も同じだな。
傷つくのが嫌だから、誰も近寄らせない。
何もしない。何も見ない。何も感じない。そうしていれば楽だから。
俺達はお互い1人ぼっちの世界にいた。
だけど1人は嫌だよな、日留川。―――2人でいる方がきっと楽しい。
【クロノ】
「は……」
映っているのは、日留川の部屋の天井。
痛むこめかみを押さえながら起き上がって、辺りを見渡して。
深呼吸して、隣に寝ている日留川の姿を見とめて。
それでようやく、ここが夢ではないことを実感する。
【クロノ】
(そうだ……起こしてやらないと)
手首を見ると、アザはうっすらだが残っていて、目を背ける。
あれは、紛れも無く悪夢だった。
夢に引きずられて、俺まであんな夢を見たんだから、日留川も今頃、辛い目にあってるかもしれない。
今まで通り、キスして起こそうと身を屈めて……躊躇する。
【クロノ】
(……これ以上深入りするのは)
【クロノ】
(俺もこいつも、辛くなるかもしれない)
他人と触れ合うことを嫌い、他人と距離を置き続けてきた俺達。
こいつが必死に守ってきたパーソナルスペースを、俺は今まで無神経に蹂躙してただけなのかもしれない。
それが、こいつのためになるとも思っていたが……。
そこで思った。
こいつのため?俺が当初掲げていたのはそんなことじゃない。
あくまで仕事と割りきってきたはずだ。任務遂行の為に、もっと知る必要があると思って…。
面白い奴と思って。もっと知りたくなって…。
……いつの間にか、仕事の枠を超えてしまっている。
なら、引き返すなら今しかない。
―――こいつのことを、まだ分かりきっていない今のうちしか。
リビドーを使用させないようにする為には、依存している理由を明確にする必要があると思った。
だけどいつの間にか、目的を逸脱してしまったのなら……この方法はもうやめるべきだ。
【日留川 凌央】
「……う……ん……」
日留川が目を開ける。間近に俺の顔を見ても、もう取り乱したりはしなかった。
悶々と考え込んでいた俺は、ぼんやり日留川を見返した。
【日留川 凌央】
「なに?」
【クロノ】
「……なんでもない」
【日留川 凌央】
「なんか悲しそうな顔してる。珍しい」
【クロノ】
「……別に。おはよう」
この調子なら、俺が去った後に酷い目にあったということはなさそうだ
体を起こし、日留川の上から退けると、おはようという不思議そうな声が返ってきた。
俺はそのまま膝を立てて床に座り、日留川に背を向ける。
今は何となく、顔を見られたい気分じゃない。
頭の中で、彼の顔と日留川の顔が交互に浮かんでは消えている。
夢のことを思い出すたび、手首のアザが痛むから。
仕事のことだけを考えろと自分に言い聞かせながら、目をつむる。
【クロノ】
「……今日、なんでリビドーを使った?」
【日留川 凌央】
「……は」
嘲笑に顔を上げて、わずかに振り返ると。
顔を歪めるような笑みの日留川が、だらしなく足を開いて座っている。
【日留川 凌央】
「そういや、何度か言われたね。リビドーを使うと死ぬってね」
【日留川 凌央】
「でもそんなの関係ない。俺は別に死んでも構わない」
【日留川 凌央】
「生に執着するのなんて、馬鹿げてる」
生に執着するのなんて、馬鹿げてる。
以前にも日留川は同じようなことを言った。
あの時も、今と同じ、その1言に耐えがたいほど腹が立った。
だけど今は、死神界へ帰ってやる気にはならなかった。
―――生きたいと泣いている彼の姿が、脳裏に浮かんで消えた。
【クロノ】
「……今、何て言った」
【日留川 凌央】
「は? 聞こえなかったの。そんなに生きることにしがみつくのがみっともないって言ったんだよ」
【日留川 凌央】
「あんた死神だろ?今すぐ俺の魂取っていってもいいぜ」
【クロノ】
「……お前を救うのが、俺の仕事だって言ったろ」
【日留川 凌央】
「そんな仕事放り出しちまえ。お前らの本来の仕事は魂を奪うことだろっての」
【クロノ】
「……運ぶだけだ」
【日留川 凌央】
「あーじゃあそれでいいよ。運びなよ。俺の魂をさ。ほら、とっとと」
【日留川 凌央】
「もう生きててもどうしようもないし」
俺は顔を上げる。
薄っぺらい、冗談めいていた声が、急にトーンを下げたから。
日留川の顔は、とても儚げに見えた。
……今まで見たきた、日留川の夢の内容を思い出す。
同級生には仲間外れにされ、教師には裏切られて。
でも、ふと思った。
こいつ、引きこもりだけど、収入はあるんだよな。
親の脛はかじらずに、ちゃんと自分で食っていってる。
……こいつもこいつなりに
重いトラウマを抱えながらも生きていこうとしてたんだ。
それに疲れたといって、希望が失せるのも、仕方ないのかもしれない。
俺が黙っていると、日留川は気持ちを切り替えるようにこちらを向いて。
馬鹿にするような嫌な笑い方で口を開いた。
【日留川 凌央】
「もう死にたいんだ、俺」
【日留川 凌央】
「生きていたくない。なにもかもどうでもいい」
【日留川 凌央】
「だって考えてみろよ。俺が死んで、誰が悲しむ?」
俺が黙ってるのを良いことに、日留川は立て続けに喋り続けた。
【日留川 凌央】
「親だってさ。何だかんだ言って俺のこと邪魔に思ってたって絶対」
【日留川 凌央】
「だって、俺のせいで同じ学校通ってる奴らの親にも、口聞いてもらえなかったんだぜ?」
【日留川 凌央】
「結構良い学校通わせてもらってたからさ。そういうのうるせえんだよ、よそのちの保護者ってさ」
【日留川 凌央】
「成績トップで表彰されたとか、誰が何の賞取ったとか……下らねえよ、俺に言わせれば」
【日留川 凌央】
「だって俺、全部余裕でできたもん」
そう言って笑った日留川の目から、大粒の涙が溢れる。
【日留川 凌央】
「なのになんでだ。なんで幸せになれない?なんで俺はこんな苦しい思いをして」
【日留川 凌央】
「なんで生き続けなきゃならないんだよ。なんであの脳天気なバカ面下げて俺のこと蹴ったり殴ったり」
【日留川 凌央】
「無視したり嫌がらせしたりする、あいつらの方が楽しく生活してんだよ」
【日留川 凌央】
「なあ、なんでだよ。なんで俺が悪ぃんだよ」
ゆらりと立ち上がった日留川が、俺の胸ぐらを掴み上げ、突然声を荒げた。
【日留川 凌央】
「大嫌いだ……みんなみんな……大嫌いだ!!」
【日留川 凌央】
「どいつもこいつも死んじまえ!!あいつらも……俺も……みんなみんな死ねばいいんだ!」
【クロノ】
「……れ」
【日留川 凌央】
「あ!?」
【クロノ】
「もう黙れ!!」
そして俺は、転がるように、日留川を床に押し倒した。
【日留川 凌央】
「なっ……なんだよ、放せ!!」
俺の腕の中で、日留川は泣き喚きながら暴れている。
自分の感情を吐露したことで、感情が高ぶっているのだろう。
無茶苦茶に暴れた。
目覚まし時計で殴られて、血が流れたが、そんなことどうでも良かった。
……痛い。
胸が痛い。
こいつの痛みがわかる。
こいつの叫びが、理解できる。
1人でいる事を選んだ理由も、他人から離れた理由も。
【日留川 凌央】
「嫌いだ、お前もどいつもこいつも……っ嫌いだ!!死ね!!」
【日留川 凌央】
「殺せ……早く殺せ!!殺してくれぇえああああああ!!」
【クロノ】
「黙れ……もう黙れ、このっ……」
血を吐くような叫びを聞いていられなくて、無理やりキスで塞ぐ。
すると一瞬だけ止まったが、正気に戻るような気配は無かった。
俺は―――暴れる日留川の服を握っている自分の手を見下ろす。
夢でつけられたアザを見たら、ぐっと腹の中が重くなった。
ああ、嫌だ。
俺はまた、人に干渉しようとしている。こいつを放っておけないと思ってる。
例え、良かれと思ってやったことでも、取り返しのつかない不幸に繋がるかもしれないのに。
