[本編] 日留川 凌央 編
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彼に手を引かれながら、金木犀の並木道を歩いていく。
その道はどこまでも続いているように思えた。
【クロノ】
「どこ行くの……?」
【???】
「どこって。君もよく知ってるところだよ」
俺もよく知ってるところってどこだろう。
ふと振り返ると、彼が歩いてきた道に赤い痕が点々とついていた。
それは、赤い足あとだった。
【クロノ】
「血が、出てる」
【???】
「俺?ああ、確かに出てるかもね」
そう言って、俺の手を引いている方の手を持ち上げて、掌を開く。
確かにべっとりと赤く濡れていた。
まだ温かく濡れている……。
まだ出血しているのだろう。
【クロノ】
「大変だ……病室に戻らないと」
だけど彼は首を振る。
【???】
「やだよ。あそこに戻ったらクロノともう会えなくなる」
【クロノ】
「会えなくなんてならない。俺は今まで通り、お前の部屋に行く」
だけど彼は、頑なに首を振る。
【???】
「ううん。来ないよ。だって―――」
【???】
「俺がいつまでもあそこにいたら、君をあいつにとられてしまう」
自分の手首を見ると、彼の手が食い込んでいた。
10本に分かれた指が、ぎっちりと俺の手首に巻き付いていた。
手首に巻き付いている肉の鎖。
だけど俺はなぜか驚かなかった。
頭の中が白く霞んでいて、何の感情も沸かない。
【クロノ】
「とられるって誰に……」
【???】
「誰にって。×××に決まってるじゃない」
【クロノ】
「ごめん、なに?聞き取れなかった」
【???】
「だから×××。……もしかしてやっぱり聞こえてない?」
【クロノ】
「ああ……。悪い、なんでだろう。お前が何を言ってるのかわからない……」
すると彼は嬉しそうに笑って、寄り添ってくる。
【???】
「嬉しいなあ、思い出せないんだね。じゃあもう、クロノは俺だけのものだね!」
【クロノ】
「……?」
【???】
「そんな不思議そうな顔しないでよ。だって当然のことだもん」
【クロノ】
「どういうことだ……」
【???】
「君が拒否してるんだよ。その×××のことをさ」
【クロノ】
「拒否……」
なんだろう、前にも同じようなことがあったような気がする。
【???】
「君が×××の存在を否定してるから思い出せないんだよ」
【クロノ】
「存在を否定……」
【???】
「そう、だから名前も呼べないし姿も見えないし、触れない」
その時突然、頭に激痛が走り、俺はその場にうずくまる。
どうしてだろう。
とても大事なことを忘れてる気がする。
【???】
「どうしたの……?大丈夫?」
うずくまった俺を、彼がもの凄い力で引き上げて、無理やり手を引いて歩き出す。
【???】
「ねえほら。ちゃんと歩いてよ。そしたら俺のこと好きにしていいからさ」
【???】
「ほらあ、しっかりして。下らないことは忘れて責任とってよ」
【クロノ】
「責任って……なんのこと」
【???】
「忘れちゃったの?君が俺にしたこと」
頭が痛い。頭が痛い……。
【???】
「聞きたいの?俺の口から、君が俺にしたことを」
【クロノ】
「き……」
俺は、目を見開き、彼の顔を見上げていた。
その後ろにある太陽は、日食の時のように黒かった。
それを背にした彼の顔もまた、真っ黒だった。
笑みを貼り付けた口だけが、切り裂いたように赤かった。
【クロノ】
「……聞きたく、ない」
【???】
「ふふふ、本当にいいのー?」
【???】
「だけどダメ。君はもう×××のところに帰ろうとしてる」
【???】
「だから笑って見送ってなんてやらない。呪ってあげる」
【???】
「だって俺は、君のせいで自殺したんだから」
目を開けると、そこは教室の中のように思えた。
今まで俺の体を包んでいた暗闇は消え失せ、彼の姿もなくなっている。
……それより、今のはなんだったんだ?
今まで見ていた光景を思い出して、俺は身震いした。
彼の声が、姿が、あまりに生々しくて。
そしてふと自分の手首を見て、絶句した。
―――10本の指に掴まれた時のアザが、くっきりと残っていた。
【クロノ】
「……っ!!」
再び景色が歪んで見えて、俺は自分の頬を思い切り叩き、目をきつく閉じる。
今のが、じいが言っていた『夢に引きずられる』という現象だということに、ようやく気付いた。
だったらさっき夢の中で言われたことは全て、俺の幻であり……夢。
日留川が望んで見ているように、自分の心の中に秘めたトラウマ。
【クロノ】
「……」
呪ってあげる―――その言葉を現すかのように、手首のアザが痛んだ。
あの時、日留川の名前を……
思い出せなかったのは…
本心では、日留川をどうでもいいと思っているから……?
【クロノ】
「違う」
思い出せたから、戻ってこれた。
―――違うよ。
彼のことを愛してないし、大切に思ってないから思い出せなかったんだよ。
【クロノ】
「……違う」
頭の中で彼の声が響くたび、眼前の世界はドロドロと溶け落ちる。
―――違わないよ。君は俺のことの方が大事だから……
ふふふ、違うよね、本当はね。
―――俺、知ってるんだ。君は本当は、誰よりも自分のことが大事だってこと。
世界は溶け落ち――金木犀の香りとともに、『彼』の世界が現れた。
【クロノ】
「俺が……、本当は、誰よりも自分のことが大事……」
―――そうだよ。だから日留川のことも俺のこともどうでもいいんだよ。
今度の名前ははっきり聞こえた。『日留川』と。
すると、世界が少しはっきりと見えた。
だけどまだ、手をついている地面がブヨブヨと実感がない。
ひらり、目の前に金木犀の花が舞い落ちる。
―――だから本当は、他人のことなんてどうでもいいんだよね。
その道はどこまでも続いているように思えた。
【クロノ】
「どこ行くの……?」
【???】
「どこって。君もよく知ってるところだよ」
俺もよく知ってるところってどこだろう。
ふと振り返ると、彼が歩いてきた道に赤い痕が点々とついていた。
それは、赤い足あとだった。
【クロノ】
「血が、出てる」
【???】
「俺?ああ、確かに出てるかもね」
そう言って、俺の手を引いている方の手を持ち上げて、掌を開く。
確かにべっとりと赤く濡れていた。
まだ温かく濡れている……。
まだ出血しているのだろう。
【クロノ】
「大変だ……病室に戻らないと」
だけど彼は首を振る。
【???】
「やだよ。あそこに戻ったらクロノともう会えなくなる」
【クロノ】
「会えなくなんてならない。俺は今まで通り、お前の部屋に行く」
だけど彼は、頑なに首を振る。
【???】
「ううん。来ないよ。だって―――」
【???】
「俺がいつまでもあそこにいたら、君をあいつにとられてしまう」
自分の手首を見ると、彼の手が食い込んでいた。
10本に分かれた指が、ぎっちりと俺の手首に巻き付いていた。
手首に巻き付いている肉の鎖。
だけど俺はなぜか驚かなかった。
頭の中が白く霞んでいて、何の感情も沸かない。
【クロノ】
「とられるって誰に……」
【???】
「誰にって。×××に決まってるじゃない」
【クロノ】
「ごめん、なに?聞き取れなかった」
【???】
「だから×××。……もしかしてやっぱり聞こえてない?」
【クロノ】
「ああ……。悪い、なんでだろう。お前が何を言ってるのかわからない……」
すると彼は嬉しそうに笑って、寄り添ってくる。
【???】
「嬉しいなあ、思い出せないんだね。じゃあもう、クロノは俺だけのものだね!」
【クロノ】
「……?」
【???】
「そんな不思議そうな顔しないでよ。だって当然のことだもん」
【クロノ】
「どういうことだ……」
【???】
「君が拒否してるんだよ。その×××のことをさ」
【クロノ】
「拒否……」
なんだろう、前にも同じようなことがあったような気がする。
【???】
「君が×××の存在を否定してるから思い出せないんだよ」
【クロノ】
「存在を否定……」
【???】
「そう、だから名前も呼べないし姿も見えないし、触れない」
その時突然、頭に激痛が走り、俺はその場にうずくまる。
どうしてだろう。
とても大事なことを忘れてる気がする。
【???】
「どうしたの……?大丈夫?」
うずくまった俺を、彼がもの凄い力で引き上げて、無理やり手を引いて歩き出す。
【???】
「ねえほら。ちゃんと歩いてよ。そしたら俺のこと好きにしていいからさ」
【???】
「ほらあ、しっかりして。下らないことは忘れて責任とってよ」
【クロノ】
「責任って……なんのこと」
【???】
「忘れちゃったの?君が俺にしたこと」
頭が痛い。頭が痛い……。
【???】
「聞きたいの?俺の口から、君が俺にしたことを」
【クロノ】
「き……」
俺は、目を見開き、彼の顔を見上げていた。
その後ろにある太陽は、日食の時のように黒かった。
それを背にした彼の顔もまた、真っ黒だった。
笑みを貼り付けた口だけが、切り裂いたように赤かった。
【クロノ】
「……聞きたく、ない」
【???】
「ふふふ、本当にいいのー?」
【???】
「だけどダメ。君はもう×××のところに帰ろうとしてる」
【???】
「だから笑って見送ってなんてやらない。呪ってあげる」
【???】
「だって俺は、君のせいで自殺したんだから」
目を開けると、そこは教室の中のように思えた。
今まで俺の体を包んでいた暗闇は消え失せ、彼の姿もなくなっている。
……それより、今のはなんだったんだ?
今まで見ていた光景を思い出して、俺は身震いした。
彼の声が、姿が、あまりに生々しくて。
そしてふと自分の手首を見て、絶句した。
―――10本の指に掴まれた時のアザが、くっきりと残っていた。
【クロノ】
「……っ!!」
再び景色が歪んで見えて、俺は自分の頬を思い切り叩き、目をきつく閉じる。
今のが、じいが言っていた『夢に引きずられる』という現象だということに、ようやく気付いた。
だったらさっき夢の中で言われたことは全て、俺の幻であり……夢。
日留川が望んで見ているように、自分の心の中に秘めたトラウマ。
【クロノ】
「……」
呪ってあげる―――その言葉を現すかのように、手首のアザが痛んだ。
あの時、日留川の名前を……
思い出せなかったのは…
本心では、日留川をどうでもいいと思っているから……?
【クロノ】
「違う」
思い出せたから、戻ってこれた。
―――違うよ。
彼のことを愛してないし、大切に思ってないから思い出せなかったんだよ。
【クロノ】
「……違う」
頭の中で彼の声が響くたび、眼前の世界はドロドロと溶け落ちる。
―――違わないよ。君は俺のことの方が大事だから……
ふふふ、違うよね、本当はね。
―――俺、知ってるんだ。君は本当は、誰よりも自分のことが大事だってこと。
世界は溶け落ち――金木犀の香りとともに、『彼』の世界が現れた。
【クロノ】
「俺が……、本当は、誰よりも自分のことが大事……」
―――そうだよ。だから日留川のことも俺のこともどうでもいいんだよ。
今度の名前ははっきり聞こえた。『日留川』と。
すると、世界が少しはっきりと見えた。
だけどまだ、手をついている地面がブヨブヨと実感がない。
ひらり、目の前に金木犀の花が舞い落ちる。
―――だから本当は、他人のことなんてどうでもいいんだよね。
