[本編] 日留川 凌央 編
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俺よりも長く死神界を駆け回ったはずの、じいの方がピンピンしている。
【クロノ】
「本当は、じいの方が俺より若いんじゃないの?」
【アンク】
「体力は、毎日の小さな努力の積み重ねですぞ。体力がないと、現場でチロルちゃ――!」
【クロノ】
「うわー。疲れたー」
なかったことにした記憶を呼び覚まされそうで、俺はじいの言葉を遮った。
【アンク】
「あまりお疲れでは、憧憬夢に入ったとしても、悪夢化した際、安全に対応出来ないかもしれません」
【アンク】
「今日はもう、お休みになってはいかがですか?」
【クロノ】
「そうする」
【アンク】
「ゆっくりおやすみなさいませ」
そういうことで俺は、今夜は床に就くことにした。
【クロノ】
「……あの菓子、甘かったな」
目を閉じると、思い出すのはコーヒーの香ばしさと、チョコの風味。
そしてあいつの、はにかんだような、小さな笑顔だった。
元々表情に乏しい奴だと思ってたから、少しの微笑みでも印象が強い。
俺があいつに会った時は、穏やかな寝顔すら珍しかったように思う。
今夜は日留川のもとへ行かないと、最終的に決めたのは、
もうあいつは、リビドーを使ったりはしないだろうと思えたからだった。
人が部屋を訪ねてくることを、捻くれながらも、素直に喜べるような奴なんだから……。
死神が去った後、俺はしばらく虚空を眺めていた。
さっきまであいつが座っていた場所を。あいつがさっきまで口をつけていた、コーヒーカップを。
あいつが食った分の菓子の包装は、カップの横に、全て畳んで置かれていた。
使ったティースプーンも、カップの飲み口も、なぜかキレイに拭かれてあった。
俺のもてなしに対する、あいつなりの気遣いなんだろうか。
そういえば、俺の様子を見てもあいつは黙って見守っているだけだった。
俺は、ガラにもなく浮かれてたし、見ていて滑稽だったろうに。
【日留川 凌央】
「………ああああああああ!!」
あいつが使っていたもの全てを、両手でがむしゃらに跳ね飛ばし、見えないところへ蹴散らした。
俺には、そんな優しい感情を向けられる資格がない。
―――お前と話しながら俺が何を考えていたか、何も知らない癖に。
俺がどんなこと考えながら、カップに絡んだお前の指を見ていたか……
カップに触れるお前の唇を、伏せられたお前のまぶたを見ていたか。
知ったらお前は軽蔑する。
お前を見ながら、今朝の快感を思い出していたなんて知ったら、お前は俺を嫌がる。
【ヤンキー風生徒】
「日留川キメェ」
【ヤンキー風生徒】
「こっち見んじゃねーよ、死ね!!」
あいつも、きっと同じ事を言う。
だって仕方ない。
俺が、俺自身に、今、そう思っているだから……。
【クロノ】
「……なんで」
日留川の様子を見に来た俺は、ベッドの前で立ち尽くしていた。
そこには、リビドーをつけて死んだように眠っている日留川の姿。
今までこいつは、夜にしかリビドーを使ってなかった。
夜にチャットをして、そのままの流れで眠りにつく。
その時にリビドーを使うという形がほとんどだった。
だけど、まだ昼だ。
まさかこんなことになってるとは思ってなくて、暫し呆然とした。
そして、俺は歯ぎしりをする。
【クロノ】
「もう、大丈夫かと思ったのに」
別に、もうリビドーを使わないと本人の口から聞いたわけじゃない。
大丈夫だと思ったのは、確かに俺の勝手な思い込みだ。
だけど。
最近の様子を見てたら、こいつなら大丈夫だと思えていた。
【クロノ】
「……」
……日留川ならきっと、こう言うだろうな。
『それは、こうあってほしいという、お前の勝手な幻想だろう』と。
【クロノ】
「…………ッ!!」
俺は眠っている日留川を乱暴にどけて。
狭いベッドの空いてるスペースに横たわり、リビドーを装着する。
そして目をつぶって、夢の中へと駆け出した。
目を開けると、そこはいつも来る学校だった。
人の声はどこからも聞こえなかったけど、過去に訪れたクラスを探す。
案の定、そこに日留川はいた。
そして今日は―――教師を嬲っているようだった。
【日留川 凌央】
「先生、そろそろ自分の罪を認めるつもりになった?」
【先生】
「う……ごめんよ、日留川……俺は、まさかお前がそんなに悩んでいるとは思ってなかったんだ」
【日留川 凌央】
「言い訳はいいよ。反省してるかどうなのかって聞いてんだ」
日留川は教壇に座り、教師をその前に立たせ、大きい三角定規で教師の頬をピタピタと叩いている。
【日留川 凌央】
「で、どうなの。反省してんの?」
【先生】
「……申し訳ないことをした……」
【日留川 凌央】
「じゃあ反省してんだね?自分が悪いって思ってるってことだね?」
【先生】
「……」
【日留川 凌央】
「……何で即答できないの」
【先生】
「……日留川には、本当に申し訳ないことをしたとは思ってる」
【先生】
「俺があの時、ぞうきんを投げ付けられているお前に手を差し伸べていれば」
【日留川 凌央】
「……なに言ってんの、お前」
【先生】
「他の奴らが、ただじゃれ合ってただけだっていうのを鵜呑みにしなければ」
【先生】
「お前は今も外に出て、引きこもったりはしなかった」
【先生】
「残飯やゴミを机に入れられたりしても、お前はいつも平気な顔をしていたから……」
【先生】
「お前なら大丈夫だと思ったんだ……お前ほど頭のいい生徒なら」
【日留川 凌央】
「黙れ!!」
【日留川 凌央】
「言い訳を聞きたいんじゃねえっつっただろ!!」
そう叫びながら、三角定規の角のところを教師の頬へ振り下ろした。歯か骨に当たる鈍い音がした。
すると教師の顔つきが変わった。
目からは理性的な光が失われ、虚空を見つめながら口を開く。
【先生】
「すみませんでした、日留川様」
【日留川 凌央】
「謝れ!!もっとだ!!」
【先生】
「申し訳ございませんでした、日留川様」
【日留川 凌央】
「謝れ!! 謝れ!! 謝れ!! 謝れ!!」
日留川が叫ぶたびに、角で叩かれ続け、教師の左頬の皮膚がぼろぼろになる。
破れた皮膚から濃い赤い血が重たげに垂れるが、教師は顔色一つ変えない。
日留川もまた、機械のように角を叩き付け続けている。
【日留川 凌央】
「信じてたのに!!信じてたから相談したのに!!」
【日留川 凌央】
「それなのにあんたは、HRでそのことを言いやがった!!」
【日留川 凌央】
「誰にも言わないって言ったのに!!ばれたら絶対仕返しされるって思ったから!!」
【日留川 凌央】
「そしたら見ろよ、案の定報復されたじゃねーかてめえのせいで!!」
【日留川 凌央】
「裏切ったんだ!!あんたは俺の信じてた気持ちを裏切ったんだ!!」
【日留川 凌央】
「大嫌いだ学校も大人もクソ生徒も同級生も!!学校に居る奴全員死んじまえ!!」
叩きながら大笑いしている日留川の目には、涙が滲んでいた。
今までの憧憬夢と、この夢は違う。日留川が振るう暴力に、快楽の要素がまるでない。
日留川を苦しめ続ける、今も消えない悲しみや怒りで殴っているのか。
もしくは。
俺にお茶を淹れてくれた時の日留川が、泣いているのかもしれない。
泣き叫びながら暴力をふるう日留川は、やはり俺の存在に気付かない。
また今回も、俺の存在を否定されてるのだろうかとも思った。
だけど、帰る事など出来ず、俺は、教室の隅に佇んで、その光景を眺めていた。
日留川の体からほとばしる憎悪の感情に、胸が痛んだ。
いつもなら、そんなことはやめろと無理やりでも、割り込んでいくところだけど、
今は……それができない。
【クロノ】
「本当は、じいの方が俺より若いんじゃないの?」
【アンク】
「体力は、毎日の小さな努力の積み重ねですぞ。体力がないと、現場でチロルちゃ――!」
【クロノ】
「うわー。疲れたー」
なかったことにした記憶を呼び覚まされそうで、俺はじいの言葉を遮った。
【アンク】
「あまりお疲れでは、憧憬夢に入ったとしても、悪夢化した際、安全に対応出来ないかもしれません」
【アンク】
「今日はもう、お休みになってはいかがですか?」
【クロノ】
「そうする」
【アンク】
「ゆっくりおやすみなさいませ」
そういうことで俺は、今夜は床に就くことにした。
【クロノ】
「……あの菓子、甘かったな」
目を閉じると、思い出すのはコーヒーの香ばしさと、チョコの風味。
そしてあいつの、はにかんだような、小さな笑顔だった。
元々表情に乏しい奴だと思ってたから、少しの微笑みでも印象が強い。
俺があいつに会った時は、穏やかな寝顔すら珍しかったように思う。
今夜は日留川のもとへ行かないと、最終的に決めたのは、
もうあいつは、リビドーを使ったりはしないだろうと思えたからだった。
人が部屋を訪ねてくることを、捻くれながらも、素直に喜べるような奴なんだから……。
死神が去った後、俺はしばらく虚空を眺めていた。
さっきまであいつが座っていた場所を。あいつがさっきまで口をつけていた、コーヒーカップを。
あいつが食った分の菓子の包装は、カップの横に、全て畳んで置かれていた。
使ったティースプーンも、カップの飲み口も、なぜかキレイに拭かれてあった。
俺のもてなしに対する、あいつなりの気遣いなんだろうか。
そういえば、俺の様子を見てもあいつは黙って見守っているだけだった。
俺は、ガラにもなく浮かれてたし、見ていて滑稽だったろうに。
【日留川 凌央】
「………ああああああああ!!」
あいつが使っていたもの全てを、両手でがむしゃらに跳ね飛ばし、見えないところへ蹴散らした。
俺には、そんな優しい感情を向けられる資格がない。
―――お前と話しながら俺が何を考えていたか、何も知らない癖に。
俺がどんなこと考えながら、カップに絡んだお前の指を見ていたか……
カップに触れるお前の唇を、伏せられたお前のまぶたを見ていたか。
知ったらお前は軽蔑する。
お前を見ながら、今朝の快感を思い出していたなんて知ったら、お前は俺を嫌がる。
【ヤンキー風生徒】
「日留川キメェ」
【ヤンキー風生徒】
「こっち見んじゃねーよ、死ね!!」
あいつも、きっと同じ事を言う。
だって仕方ない。
俺が、俺自身に、今、そう思っているだから……。
【クロノ】
「……なんで」
日留川の様子を見に来た俺は、ベッドの前で立ち尽くしていた。
そこには、リビドーをつけて死んだように眠っている日留川の姿。
今までこいつは、夜にしかリビドーを使ってなかった。
夜にチャットをして、そのままの流れで眠りにつく。
その時にリビドーを使うという形がほとんどだった。
だけど、まだ昼だ。
まさかこんなことになってるとは思ってなくて、暫し呆然とした。
そして、俺は歯ぎしりをする。
【クロノ】
「もう、大丈夫かと思ったのに」
別に、もうリビドーを使わないと本人の口から聞いたわけじゃない。
大丈夫だと思ったのは、確かに俺の勝手な思い込みだ。
だけど。
最近の様子を見てたら、こいつなら大丈夫だと思えていた。
【クロノ】
「……」
……日留川ならきっと、こう言うだろうな。
『それは、こうあってほしいという、お前の勝手な幻想だろう』と。
【クロノ】
「…………ッ!!」
俺は眠っている日留川を乱暴にどけて。
狭いベッドの空いてるスペースに横たわり、リビドーを装着する。
そして目をつぶって、夢の中へと駆け出した。
目を開けると、そこはいつも来る学校だった。
人の声はどこからも聞こえなかったけど、過去に訪れたクラスを探す。
案の定、そこに日留川はいた。
そして今日は―――教師を嬲っているようだった。
【日留川 凌央】
「先生、そろそろ自分の罪を認めるつもりになった?」
【先生】
「う……ごめんよ、日留川……俺は、まさかお前がそんなに悩んでいるとは思ってなかったんだ」
【日留川 凌央】
「言い訳はいいよ。反省してるかどうなのかって聞いてんだ」
日留川は教壇に座り、教師をその前に立たせ、大きい三角定規で教師の頬をピタピタと叩いている。
【日留川 凌央】
「で、どうなの。反省してんの?」
【先生】
「……申し訳ないことをした……」
【日留川 凌央】
「じゃあ反省してんだね?自分が悪いって思ってるってことだね?」
【先生】
「……」
【日留川 凌央】
「……何で即答できないの」
【先生】
「……日留川には、本当に申し訳ないことをしたとは思ってる」
【先生】
「俺があの時、ぞうきんを投げ付けられているお前に手を差し伸べていれば」
【日留川 凌央】
「……なに言ってんの、お前」
【先生】
「他の奴らが、ただじゃれ合ってただけだっていうのを鵜呑みにしなければ」
【先生】
「お前は今も外に出て、引きこもったりはしなかった」
【先生】
「残飯やゴミを机に入れられたりしても、お前はいつも平気な顔をしていたから……」
【先生】
「お前なら大丈夫だと思ったんだ……お前ほど頭のいい生徒なら」
【日留川 凌央】
「黙れ!!」
【日留川 凌央】
「言い訳を聞きたいんじゃねえっつっただろ!!」
そう叫びながら、三角定規の角のところを教師の頬へ振り下ろした。歯か骨に当たる鈍い音がした。
すると教師の顔つきが変わった。
目からは理性的な光が失われ、虚空を見つめながら口を開く。
【先生】
「すみませんでした、日留川様」
【日留川 凌央】
「謝れ!!もっとだ!!」
【先生】
「申し訳ございませんでした、日留川様」
【日留川 凌央】
「謝れ!! 謝れ!! 謝れ!! 謝れ!!」
日留川が叫ぶたびに、角で叩かれ続け、教師の左頬の皮膚がぼろぼろになる。
破れた皮膚から濃い赤い血が重たげに垂れるが、教師は顔色一つ変えない。
日留川もまた、機械のように角を叩き付け続けている。
【日留川 凌央】
「信じてたのに!!信じてたから相談したのに!!」
【日留川 凌央】
「それなのにあんたは、HRでそのことを言いやがった!!」
【日留川 凌央】
「誰にも言わないって言ったのに!!ばれたら絶対仕返しされるって思ったから!!」
【日留川 凌央】
「そしたら見ろよ、案の定報復されたじゃねーかてめえのせいで!!」
【日留川 凌央】
「裏切ったんだ!!あんたは俺の信じてた気持ちを裏切ったんだ!!」
【日留川 凌央】
「大嫌いだ学校も大人もクソ生徒も同級生も!!学校に居る奴全員死んじまえ!!」
叩きながら大笑いしている日留川の目には、涙が滲んでいた。
今までの憧憬夢と、この夢は違う。日留川が振るう暴力に、快楽の要素がまるでない。
日留川を苦しめ続ける、今も消えない悲しみや怒りで殴っているのか。
もしくは。
俺にお茶を淹れてくれた時の日留川が、泣いているのかもしれない。
泣き叫びながら暴力をふるう日留川は、やはり俺の存在に気付かない。
また今回も、俺の存在を否定されてるのだろうかとも思った。
だけど、帰る事など出来ず、俺は、教室の隅に佇んで、その光景を眺めていた。
日留川の体からほとばしる憎悪の感情に、胸が痛んだ。
いつもなら、そんなことはやめろと無理やりでも、割り込んでいくところだけど、
今は……それができない。
