[本編] 日留川 凌央 編
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【日留川 凌央】
「あっははは! お前マジキモい!これだけの事にこんなに手間取らせてさー、なんか言うことあんだろ?」
【ヤンキー風生徒1】
「ひ、日留川様……!ごめんなさ、ごめ、ぁあっ!」
【日留川 凌央】
「『ごめんなさい』? はあ?タメ口きかれた、ムカつく。お前、俺の許可なく出すんじゃねえぞ」
【ヤンキー風生徒1】
「そ、そんな……、も、ムリムリ、
出る、出る―――ッ!」
【日留川 凌央】
「あはは! もう出たんだ、みっともねえ! ほんと言うこと聞けねえな、お前。罰を与えねえとな……」
そこまで見て、俺は顔をしかめた。
別に他人の性的嗜好なんか人それぞれだし、口出しする気もないけど。
双方の同意を得られていないSMゴッコはどうかと思う。
まあ、目の前で繰り広げられている光景は、性的な意味よりも精神的な意味合いの方が強いのだろうけど。
思春期特有の青臭い残酷さがそこかしこから滲み出ていて、見ているこっちが恥ずかしくなってくる。
俺にもこういう時代があったなあ……とか考えてかけて、ふと我に返る。
呑気にしてる場合じゃなかったな、そう言えば。
教室のドアを開けて、彼らに近寄る。
だけど、誰1人として俺を見ない。
【クロノ】
「おい」
自分が出したモノを舐めさせられている生徒も、それを笑いながら眺めている日留川も―――
俺の存在に気付いていないようだ。
どちらも夢中になってる、なんてことはないだろう。
こんな至近距離にいるのに気付かないとか、どんな集中力だって話だ。
吐きそうになりながら自分のモノを飲んでいる生徒の前を通り過ぎ、日留川の肩に手を置こうと伸ばしたが―――
俺の手は、その体をすり抜けてしまった。
俺は自分の手を見下ろして、ぐっと握る。
思った通りに体は動くし、爪が掌に当たる感触もある。
―という事は、問題はこの夢だ。
俺の実体が、ここでは極端に希薄になってるというところか。となれば、粘る必要もない。
じいに教わった通り、地面を蹴って宙に上がり、そのまま天を目指した。
するとやがて、視界が白く霞んでいき……。
【アンク】
「おかえりなさいませ。いかがでしたか?」
俺はむくりと体を起こし、日留川を睨みつけた。
【クロノ】
「収穫はなし。俺の存在が薄くなってるみたいで、夢の中じゃ何もできなかった」
【クロノ】
「手は透けるし、声は届かないし」
【アンク】
「……妙ですな」
【アンク】
「日留川さんの夢に、クロノ様の夢を接続しておりますから、夢の中での存在は対等になるはずなのですが」
【アンク】
「ですから、存在が認識されないなぞということはないはずです」
【クロノ】
「そういうものなの?じゃあ、どうして接触出来なかったんだろう」
【アンク】
「憧憬夢も、心の産物ですからなぁ。精神的な何かが作用しているとか……?」
俺とじいは顔を見合わせる。
【クロノ】
「………」
【クロノ】
「よっぽど他人と関わりたくない、とか?」
【アンク】
「うーむ……。今言えるのは、そのくらいですな」
俺は、相変わらず眠り続けている日留川に視線を落とす。
…相変わらず、悪だくみが成功したような顔で笑っている。
呑気に呼吸をしてる鼻を、摘んでやりたい気分だった。
【クロノ】
「あの後どんな展開になって、こんな顔してるんだ。このエスエムっつり」
【アンク】
「エスエむっつり?」
【クロノ】
「なんでもない」
くだらない事を言ってしまったので、とりあえず流す。
【クロノ】
「それにしても、内弁慶も極まれりだ。夢の中では、強そうで奔放だったよ、こいつ。こんな閉じこもってるくせに」
【クロノ】
「まるで殻の中の雛みたいだ」
翌日。昨夜のことがあったから、じいの夢に入れるか確認をしてみた。
……じいは、女性アイドルグループのライブの夢を見ていた。
【アンク】
「チロルちゃーん! チロルちゃん!
あ、クロノ様どいて下さい。次は飛び曲ですからな! 怪我をしますぞ!!」
【クロノ】
「……うん。ごめん」
とにかく、じいは俺を認識出来たし、会話も出来た。それで充分だ。
俺は、見なかったことにした。
【アンク】
「私とクロノ様は意思の疎通が取れましたな。
【アンク】
「これはやはり、何らかの精神的なものが作用しているのでしょうなあ」
【クロノ】
「やっぱりそういうことになるか」
俺とじいは腕組みをして考えこんでしまった。
だけど現段階で良い案も出るわけもなく。
俺は早々に諦めて、事件についての資料に目を通していた。
【クロノ】
「あ、そういえば」
【クロノ】
「昨日、日留川を観察していて気になったんだけど」
【クロノ】
「リビドーは3時間だけ自分の好きな夢を見れるっていう装置だったはず」
【クロノ】
「なのにあいつは3時間以上も夢を見てた」
【アンク】
「なんですと?」
昨日夢から出たときに見た時計は、大体4時間くらい経過していたことを思い出しながら言う。
【アンク】
「リビドーの使用時間を越えて夢を見ていた……。ふーむ…」
【アンク】
「それはですな……」
じいは、腕を組んで考えこんでから、うんと頷いた。
【アンク】
「調べてみる必要がありそうですな!」
……どうやら何も知らないらしい事がわかった。
俺はため息をつきながら、明日からの計画を練ることにした。
姿を消して日留川の部屋に侵入すると。
日留川はパソコンに向かって、もの凄い勢いで文字を打ち込んでいる。
汚い部屋なのにパソコンの前だけ物がなかったから、パソコンはよく使うのだろうと思ってたけど。
真っ暗な部屋に響いているのがキーを叩く音だけってのが、何だか不気味だ。
モニターを覗きこむと、誰かとチャットをしているようだ。
サイトの名前は……『paraiso』。
日留川の肩越しにモニターを見ていると、会話の中には『LIP』という言葉がしきりに出てくる。
その使い方や、夢の感じ、接続時間などが主な話題になっている。
【クロノ】
「LIP? みんなで理想の唇について語り合ってる訳じゃないよな」
【アンク】
「また、そんな適当な事を。ここに、Libido-inflate plug-in─―と。
通称LIPと呼ばれているようですな」
【アンク】
「チャットを見た感じでは、夢を3時間以上持続させる事が出来るシステムのようですな」
【クロノ】
「ああなるほど。追加でインストールできるデータがLIPっていうのか」
【クロノ】
「……ということは、昨日も3時間以上の使用が出来た日留川も、LIPを使ってる」
【アンク】
「そういうことになりますな」
チャットに書き込みをしている日留川は、なんだか生き生きとして見える。
集中しきった瞳にモニターの青色が映って、水面のようにゆらめいていた。
夢の中でもそうだったけど、無気力そうなこいつが何にそんなに燃え上がるのか。
―――ちょっとだけ興味がある。
【クロノ】
「このまま話しかけよう」
【アンク】
「彼と、でございますか?」
【クロノ】
「じゃ、今から現実で日留川と話してみる」
【アンク】
「え!?い、今からでございますか!?」
【クロノ】
「だって他に方法ないし。……会話すんの得意じゃないけど」
そして俺は―――日留川の背後で自分の姿を実体化した。
「あっははは! お前マジキモい!これだけの事にこんなに手間取らせてさー、なんか言うことあんだろ?」
【ヤンキー風生徒1】
「ひ、日留川様……!ごめんなさ、ごめ、ぁあっ!」
【日留川 凌央】
「『ごめんなさい』? はあ?タメ口きかれた、ムカつく。お前、俺の許可なく出すんじゃねえぞ」
【ヤンキー風生徒1】
「そ、そんな……、も、ムリムリ、
出る、出る―――ッ!」
【日留川 凌央】
「あはは! もう出たんだ、みっともねえ! ほんと言うこと聞けねえな、お前。罰を与えねえとな……」
そこまで見て、俺は顔をしかめた。
別に他人の性的嗜好なんか人それぞれだし、口出しする気もないけど。
双方の同意を得られていないSMゴッコはどうかと思う。
まあ、目の前で繰り広げられている光景は、性的な意味よりも精神的な意味合いの方が強いのだろうけど。
思春期特有の青臭い残酷さがそこかしこから滲み出ていて、見ているこっちが恥ずかしくなってくる。
俺にもこういう時代があったなあ……とか考えてかけて、ふと我に返る。
呑気にしてる場合じゃなかったな、そう言えば。
教室のドアを開けて、彼らに近寄る。
だけど、誰1人として俺を見ない。
【クロノ】
「おい」
自分が出したモノを舐めさせられている生徒も、それを笑いながら眺めている日留川も―――
俺の存在に気付いていないようだ。
どちらも夢中になってる、なんてことはないだろう。
こんな至近距離にいるのに気付かないとか、どんな集中力だって話だ。
吐きそうになりながら自分のモノを飲んでいる生徒の前を通り過ぎ、日留川の肩に手を置こうと伸ばしたが―――
俺の手は、その体をすり抜けてしまった。
俺は自分の手を見下ろして、ぐっと握る。
思った通りに体は動くし、爪が掌に当たる感触もある。
―という事は、問題はこの夢だ。
俺の実体が、ここでは極端に希薄になってるというところか。となれば、粘る必要もない。
じいに教わった通り、地面を蹴って宙に上がり、そのまま天を目指した。
するとやがて、視界が白く霞んでいき……。
【アンク】
「おかえりなさいませ。いかがでしたか?」
俺はむくりと体を起こし、日留川を睨みつけた。
【クロノ】
「収穫はなし。俺の存在が薄くなってるみたいで、夢の中じゃ何もできなかった」
【クロノ】
「手は透けるし、声は届かないし」
【アンク】
「……妙ですな」
【アンク】
「日留川さんの夢に、クロノ様の夢を接続しておりますから、夢の中での存在は対等になるはずなのですが」
【アンク】
「ですから、存在が認識されないなぞということはないはずです」
【クロノ】
「そういうものなの?じゃあ、どうして接触出来なかったんだろう」
【アンク】
「憧憬夢も、心の産物ですからなぁ。精神的な何かが作用しているとか……?」
俺とじいは顔を見合わせる。
【クロノ】
「………」
【クロノ】
「よっぽど他人と関わりたくない、とか?」
【アンク】
「うーむ……。今言えるのは、そのくらいですな」
俺は、相変わらず眠り続けている日留川に視線を落とす。
…相変わらず、悪だくみが成功したような顔で笑っている。
呑気に呼吸をしてる鼻を、摘んでやりたい気分だった。
【クロノ】
「あの後どんな展開になって、こんな顔してるんだ。このエスエムっつり」
【アンク】
「エスエむっつり?」
【クロノ】
「なんでもない」
くだらない事を言ってしまったので、とりあえず流す。
【クロノ】
「それにしても、内弁慶も極まれりだ。夢の中では、強そうで奔放だったよ、こいつ。こんな閉じこもってるくせに」
【クロノ】
「まるで殻の中の雛みたいだ」
翌日。昨夜のことがあったから、じいの夢に入れるか確認をしてみた。
……じいは、女性アイドルグループのライブの夢を見ていた。
【アンク】
「チロルちゃーん! チロルちゃん!
あ、クロノ様どいて下さい。次は飛び曲ですからな! 怪我をしますぞ!!」
【クロノ】
「……うん。ごめん」
とにかく、じいは俺を認識出来たし、会話も出来た。それで充分だ。
俺は、見なかったことにした。
【アンク】
「私とクロノ様は意思の疎通が取れましたな。
【アンク】
「これはやはり、何らかの精神的なものが作用しているのでしょうなあ」
【クロノ】
「やっぱりそういうことになるか」
俺とじいは腕組みをして考えこんでしまった。
だけど現段階で良い案も出るわけもなく。
俺は早々に諦めて、事件についての資料に目を通していた。
【クロノ】
「あ、そういえば」
【クロノ】
「昨日、日留川を観察していて気になったんだけど」
【クロノ】
「リビドーは3時間だけ自分の好きな夢を見れるっていう装置だったはず」
【クロノ】
「なのにあいつは3時間以上も夢を見てた」
【アンク】
「なんですと?」
昨日夢から出たときに見た時計は、大体4時間くらい経過していたことを思い出しながら言う。
【アンク】
「リビドーの使用時間を越えて夢を見ていた……。ふーむ…」
【アンク】
「それはですな……」
じいは、腕を組んで考えこんでから、うんと頷いた。
【アンク】
「調べてみる必要がありそうですな!」
……どうやら何も知らないらしい事がわかった。
俺はため息をつきながら、明日からの計画を練ることにした。
姿を消して日留川の部屋に侵入すると。
日留川はパソコンに向かって、もの凄い勢いで文字を打ち込んでいる。
汚い部屋なのにパソコンの前だけ物がなかったから、パソコンはよく使うのだろうと思ってたけど。
真っ暗な部屋に響いているのがキーを叩く音だけってのが、何だか不気味だ。
モニターを覗きこむと、誰かとチャットをしているようだ。
サイトの名前は……『paraiso』。
日留川の肩越しにモニターを見ていると、会話の中には『LIP』という言葉がしきりに出てくる。
その使い方や、夢の感じ、接続時間などが主な話題になっている。
【クロノ】
「LIP? みんなで理想の唇について語り合ってる訳じゃないよな」
【アンク】
「また、そんな適当な事を。ここに、Libido-inflate plug-in─―と。
通称LIPと呼ばれているようですな」
【アンク】
「チャットを見た感じでは、夢を3時間以上持続させる事が出来るシステムのようですな」
【クロノ】
「ああなるほど。追加でインストールできるデータがLIPっていうのか」
【クロノ】
「……ということは、昨日も3時間以上の使用が出来た日留川も、LIPを使ってる」
【アンク】
「そういうことになりますな」
チャットに書き込みをしている日留川は、なんだか生き生きとして見える。
集中しきった瞳にモニターの青色が映って、水面のようにゆらめいていた。
夢の中でもそうだったけど、無気力そうなこいつが何にそんなに燃え上がるのか。
―――ちょっとだけ興味がある。
【クロノ】
「このまま話しかけよう」
【アンク】
「彼と、でございますか?」
【クロノ】
「じゃ、今から現実で日留川と話してみる」
【アンク】
「え!?い、今からでございますか!?」
【クロノ】
「だって他に方法ないし。……会話すんの得意じゃないけど」
そして俺は―――日留川の背後で自分の姿を実体化した。