[本編] 浅多 侑思 編
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【浅多 侑思】
『ただいま、父さん、母さん』
【浅多母】
『お帰り、侑思』
【浅多父】
『おお、戻ってきたのか、侑思』
【浅多 侑思】
『これお土産。戻ってくるのが、夜遅くてすみません』
【浅多母】
『いいのよ、そんなことは気にしないで』
【浅多母】
『それよりもお見合い写真、見てくれた? きれいな方でしょう?』
【浅多父】
『父さんのお得意先の社長の娘さんなんだ。お前の話をしたら是非一度と……』
【浅多 侑思】
『そ、その話なんだけど。……あの、僕には……もう、恋人がいて』
【浅多父】
『恋人? いないって言ってたじゃないか』
【浅多母】
『そうよねえ。だからお見合い写真を送ったのよ』
【浅多 侑思】
『あの……。僕は……ゲイ、なんです』
【浅多父】
『ははは、笑えない冗談だな。ゲイの息子なんて、いらないぞ?』
【浅多母】
『そうよねえ。何のために、お腹を痛めて産んだのかわからないじゃない』
【浅多 侑思】
『え……』
【浅多父】
『見合いが嫌なら嫌と、はっきり言えばいいんだ。そんな汚らわしい嘘までついて』
【浅多 侑思】
『う、嘘ではありません!』
【浅多母】
『嘘に決まってるわ、ゲイだなんて。そんな浅慮な嘘をつくなんて、本当にあなたは昔から変わってないのね』
【浅多父】
『何から何まで出来損ないの上に、遺伝子まで出来損ないなのか!!』
【浅多母】
『ゲイの息子なんて、浅多家の恥です!!』
【綾の妹】
『ねえ、黒乃さん。浅多さんとお付き合いしてるって、本当かしら?』
【クロノ】
『お付き合いって。変な言い方しないでくださいよ』
【クロノ】
『飲みに付き合うこともある、息抜きに付き合うこともあるって意味じゃないですか』
【綾の妹】
『いやだわ、私ったら。噂話を真に受けて。そうですよね、冗談ですよね』
【綾 上総】
『黒乃みたいなイケメンが、あんな冴えないメガネを選ぶわけねえじゃん、なあ?』
【クロノ】
『その通りですよ、副社長。ああ、折角の機会ですから』
【クロノ】
『この場を借りて、妹さんに正式にお付き合いを申し込んでも宜しいでしょうか』
【綾の妹】
『まあ……! 嬉しい!』
【綾 上総】
『いいに決まってんだろ! つかもう結婚しちまえ!』
【綾の妹】
『黒乃さんと一緒なら、私、どんな困難も乗り越えていけると思います……』
【クロノ】
『はい、俺もです。ずっと一緒に……』
【浅多 侑思】
「……っ、……」
目を開けると、包帯の男はいなくなっていた。
地面が見えたことでぼんやりと、自分が目眩を感じてうずくまったことを思い出す。
だけど、それよりも。
心にぽっかりと穴が開いたような感覚を抱えたまま、僕は歩き始めた。
さっき見せられた映像はきっと、途中までは真実で途中からはでっち上げだろう。
そう、わかっているのに、体を絶望が支配している。
あの男がしたかったことは明確ではないが、
けして僕とクロノを幸せにするために現れたわけではない。
おそらく、破滅してほしかったのだろう。
あいつの思うようにはさせたくない。
だけど物事は、あの男の考える通りに動き始める予感がする。
だって僕は、残酷な現実を受け入れ始めている。
……気付かせてくれたことに、感謝しないとな。
茨の道は僕が思っていた以上に険しく、きっと魂まで引き裂いても抜けられない道だったのだろう。
クロノも僕も、やはり互いを選べない。
【クロノ】
(あれ、侑思はまだ戻ってないのか……)
オフィスに戻った俺は、無人の侑思のデスクを見やりながら、自分の席へ向かう。
そこへ入り口から侑思が現れて声をかけようとした時、女子社員が駆け寄る。
【女子社員】
「あのっ、お仕事、最近お忙しそうですよね」
【浅多 侑思】
「……ああ」
【クロノ】
(? なんだろ)
【クロノ】
(侑思の表情が妙に暗いけど…俺が、侑思を置いて行ったから?)
仕事を理由に断られたけれど、きっとそれは言い訳で。俺とのことでまた考え込んでるんだろうか。
【浅多 侑思】
「……それで、君は僕に何か用が?」
そのまま侑思と女子社員とのやりとりを、少し離れたところで見守る。
やっぱり、綾にくっついて出て行ったのがまずかっただろうか。
副社長の誘いを断るのは、人間界のマナーに反してると思っての判断だったんだけど。
できるだけ早いうちに謝ってフォローしないと。
それでなくても、見合いの件でナーバスになってる筈だから。
【女子社員】
「あの。あの……ラ、ランチはもうお済みでしたか?」
【浅多 侑思】
「……まだだ」
【女子社員】
「じゃあ、あの。ご一緒、しませんか……!?」
【浅多 侑思】
「……構わない」
【女子社員】
「! あ、ありがとうございます」
【クロノ】
(おや…)
連れ立って出て行く2人の背中を見送る。
まあ、そんなこともあるだろう。
寧ろ侑思の場合、今までが素っ気なさすぎだったと思うしな。
部下とのコミュニケーション頑張れと内心微笑ましく思いつつ、久し振りの仕事に手をつけようとした時。
再び現れた綾にPVの件で呼ばれて、侑思達を追いかける形で、綾と共にエスカレーターを下る。
するとエントランスですれ違ったので、軽く茶化してやろうと思い立った。
【綾 上総】
「お、珍しいツーショットだな」
【クロノ】
「なにー。これから2人でお昼なの?」
女子社員は恥ずかしそうに頬を染めて、ペコリと頭を下げる。
侑思はやけに暗い瞳で俺を見やった。
【浅多 侑思】
「まあな。いつもお前とべったりだと」
【浅多 侑思】
「ホモだと思われて、お互いろくに恋愛もできないしな」
【クロノ】
「……は?」
【綾 上総】
「だよなー。浅多も独身だろ? モテたいお年頃だよなー」
【クロノ】
(どういうこと…?)
問い質そうとしたが、綾に笑い飛ばされていた隙に、2人は連れ立って外へ出て行ってしまった。
あの後、仕事が手につかなかった。
侑思がデスクに戻ったら話そうと待っていたけど、
急遽PVのお披露目パーティーへの出席が決まってしまったのだ。
慌ただしく荷物をまとめて、上層部と共にパーティー会場に向かって。
帰宅は、深夜になった。
玄関のドアを開けるなり、俺はまっすぐ寝室に向かう。
案の定、侑思はもうベッドに横になっていた。
疲れてる時だけじゃなく、機嫌が悪い時や気まずいことがあった時なんかも大体こんな感じだ。
バサッと、有無を言わさず布団を剥ぎ取ったけど。
侑思は寝付けなかったらしく、ちっとも驚いた顔をしていない。
むしろ挑みかかるような目つきだ。
『ただいま、父さん、母さん』
【浅多母】
『お帰り、侑思』
【浅多父】
『おお、戻ってきたのか、侑思』
【浅多 侑思】
『これお土産。戻ってくるのが、夜遅くてすみません』
【浅多母】
『いいのよ、そんなことは気にしないで』
【浅多母】
『それよりもお見合い写真、見てくれた? きれいな方でしょう?』
【浅多父】
『父さんのお得意先の社長の娘さんなんだ。お前の話をしたら是非一度と……』
【浅多 侑思】
『そ、その話なんだけど。……あの、僕には……もう、恋人がいて』
【浅多父】
『恋人? いないって言ってたじゃないか』
【浅多母】
『そうよねえ。だからお見合い写真を送ったのよ』
【浅多 侑思】
『あの……。僕は……ゲイ、なんです』
【浅多父】
『ははは、笑えない冗談だな。ゲイの息子なんて、いらないぞ?』
【浅多母】
『そうよねえ。何のために、お腹を痛めて産んだのかわからないじゃない』
【浅多 侑思】
『え……』
【浅多父】
『見合いが嫌なら嫌と、はっきり言えばいいんだ。そんな汚らわしい嘘までついて』
【浅多 侑思】
『う、嘘ではありません!』
【浅多母】
『嘘に決まってるわ、ゲイだなんて。そんな浅慮な嘘をつくなんて、本当にあなたは昔から変わってないのね』
【浅多父】
『何から何まで出来損ないの上に、遺伝子まで出来損ないなのか!!』
【浅多母】
『ゲイの息子なんて、浅多家の恥です!!』
【綾の妹】
『ねえ、黒乃さん。浅多さんとお付き合いしてるって、本当かしら?』
【クロノ】
『お付き合いって。変な言い方しないでくださいよ』
【クロノ】
『飲みに付き合うこともある、息抜きに付き合うこともあるって意味じゃないですか』
【綾の妹】
『いやだわ、私ったら。噂話を真に受けて。そうですよね、冗談ですよね』
【綾 上総】
『黒乃みたいなイケメンが、あんな冴えないメガネを選ぶわけねえじゃん、なあ?』
【クロノ】
『その通りですよ、副社長。ああ、折角の機会ですから』
【クロノ】
『この場を借りて、妹さんに正式にお付き合いを申し込んでも宜しいでしょうか』
【綾の妹】
『まあ……! 嬉しい!』
【綾 上総】
『いいに決まってんだろ! つかもう結婚しちまえ!』
【綾の妹】
『黒乃さんと一緒なら、私、どんな困難も乗り越えていけると思います……』
【クロノ】
『はい、俺もです。ずっと一緒に……』
【浅多 侑思】
「……っ、……」
目を開けると、包帯の男はいなくなっていた。
地面が見えたことでぼんやりと、自分が目眩を感じてうずくまったことを思い出す。
だけど、それよりも。
心にぽっかりと穴が開いたような感覚を抱えたまま、僕は歩き始めた。
さっき見せられた映像はきっと、途中までは真実で途中からはでっち上げだろう。
そう、わかっているのに、体を絶望が支配している。
あの男がしたかったことは明確ではないが、
けして僕とクロノを幸せにするために現れたわけではない。
おそらく、破滅してほしかったのだろう。
あいつの思うようにはさせたくない。
だけど物事は、あの男の考える通りに動き始める予感がする。
だって僕は、残酷な現実を受け入れ始めている。
……気付かせてくれたことに、感謝しないとな。
茨の道は僕が思っていた以上に険しく、きっと魂まで引き裂いても抜けられない道だったのだろう。
クロノも僕も、やはり互いを選べない。
【クロノ】
(あれ、侑思はまだ戻ってないのか……)
オフィスに戻った俺は、無人の侑思のデスクを見やりながら、自分の席へ向かう。
そこへ入り口から侑思が現れて声をかけようとした時、女子社員が駆け寄る。
【女子社員】
「あのっ、お仕事、最近お忙しそうですよね」
【浅多 侑思】
「……ああ」
【クロノ】
(? なんだろ)
【クロノ】
(侑思の表情が妙に暗いけど…俺が、侑思を置いて行ったから?)
仕事を理由に断られたけれど、きっとそれは言い訳で。俺とのことでまた考え込んでるんだろうか。
【浅多 侑思】
「……それで、君は僕に何か用が?」
そのまま侑思と女子社員とのやりとりを、少し離れたところで見守る。
やっぱり、綾にくっついて出て行ったのがまずかっただろうか。
副社長の誘いを断るのは、人間界のマナーに反してると思っての判断だったんだけど。
できるだけ早いうちに謝ってフォローしないと。
それでなくても、見合いの件でナーバスになってる筈だから。
【女子社員】
「あの。あの……ラ、ランチはもうお済みでしたか?」
【浅多 侑思】
「……まだだ」
【女子社員】
「じゃあ、あの。ご一緒、しませんか……!?」
【浅多 侑思】
「……構わない」
【女子社員】
「! あ、ありがとうございます」
【クロノ】
(おや…)
連れ立って出て行く2人の背中を見送る。
まあ、そんなこともあるだろう。
寧ろ侑思の場合、今までが素っ気なさすぎだったと思うしな。
部下とのコミュニケーション頑張れと内心微笑ましく思いつつ、久し振りの仕事に手をつけようとした時。
再び現れた綾にPVの件で呼ばれて、侑思達を追いかける形で、綾と共にエスカレーターを下る。
するとエントランスですれ違ったので、軽く茶化してやろうと思い立った。
【綾 上総】
「お、珍しいツーショットだな」
【クロノ】
「なにー。これから2人でお昼なの?」
女子社員は恥ずかしそうに頬を染めて、ペコリと頭を下げる。
侑思はやけに暗い瞳で俺を見やった。
【浅多 侑思】
「まあな。いつもお前とべったりだと」
【浅多 侑思】
「ホモだと思われて、お互いろくに恋愛もできないしな」
【クロノ】
「……は?」
【綾 上総】
「だよなー。浅多も独身だろ? モテたいお年頃だよなー」
【クロノ】
(どういうこと…?)
問い質そうとしたが、綾に笑い飛ばされていた隙に、2人は連れ立って外へ出て行ってしまった。
あの後、仕事が手につかなかった。
侑思がデスクに戻ったら話そうと待っていたけど、
急遽PVのお披露目パーティーへの出席が決まってしまったのだ。
慌ただしく荷物をまとめて、上層部と共にパーティー会場に向かって。
帰宅は、深夜になった。
玄関のドアを開けるなり、俺はまっすぐ寝室に向かう。
案の定、侑思はもうベッドに横になっていた。
疲れてる時だけじゃなく、機嫌が悪い時や気まずいことがあった時なんかも大体こんな感じだ。
バサッと、有無を言わさず布団を剥ぎ取ったけど。
侑思は寝付けなかったらしく、ちっとも驚いた顔をしていない。
むしろ挑みかかるような目つきだ。