[本編] 浅多 侑思 編
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俺はPV制作への協力、侑思は別の新規案件で忙しくなって、すれ違いの日々が続いた。
日中、送られてくるメールを楽しみにしてるけど、
互いに忙しくて、短くてそっけないやり取りしかしていない。
お見合いのことについても悩んでるだろうから相談に乗ってあげたいけど。
一緒に部屋に帰りついても、どちらも疲れていて眠るだけで話し合いの場がない。
折角じいがいるんだから、わざと目の前でイタズラして慌てさせたりもしたかったのに。
そんなことをしている余裕もなくなってきた。
なぜなら、俺がいないことで業務の負担が増えたのか、最近は特に侑思の元気がないように思えるからだ。
【クロノ】
(侑思、待っててね)
【クロノ】
(早く終わらせて戻るから…!)
そして俺は今日も、一刻も早く撮影が終わるように気合いを入れてスタジオに向かった。
そして数日後、無事にPVが完成した。
【綾 上総】
「よし。ご苦労さん、黒乃」
【綾 上総】
「明日、俺が最終チェックして納品だ。お前はもう向こうに戻っていいぞ」
【クロノ】
「はい。お疲れ様でした」
【クロノ】
(やった……ようやく終わった……)
【アンク】
「お疲れ様でございました」
姿を消したままのじいが、隣で笑いかけてくる。
俺は壁に寄りかかってスマホを耳にあてて、通話しているフリで答える。
【クロノ】
「無事に終わって良かった。とりあえず、じいもこれでお役目終了?」
【アンク】
「そうですな。履歴を提出しないという約束も、綾さんはきちんと守られましたし」
【アンク】
「浅多さんに挨拶をしてから、このまま死神界に戻ることに致します」
【クロノ】
「そう? なら、長によろしく言っておいて」
【アンク】
「ふふふ、本当は小躍りしたいくらいなのでしょう? わかっております」
【クロノ】
「当たり前だろ……。ようやくかって感じ」
【アンク】
「いつまでも若者2人の邪魔をするのは心が痛みますからな」
【アンク】
「私の仕事はここまでですが、本番は世間に映像が出てからですぞ」
【アンク】
「くれぐれも、油断されませんよう」
【アンク】
「もし何か異変があったら、すぐにじいめにご連絡ください」
【クロノ】
「……わかってる」
【アンク】
「ならば結構。それではまた」
侑思と2人きりになることの方が重要で、じいに言われるまで忘れてた。
世間に映像が出るのはもう少し先の筈だ。
それまで気は抜けないってことか……。
うきうきと部屋に戻ると、侑思はもう眠っていた。
撮影が終わった旨を報告して軽くお祝いなんかしてから、甘い夜を過ごすつもりだったのに。
残念に思いつつ寝顔を覗き込むと、辛そうな顔で眠っていた。
【クロノ】
(…どうしようかな)
【クロノ】
(今日はそっとしておいてあげよう)
侑思だって疲れてるんだし、無理させたいわけじゃないから。少しの間、寝顔を眺めるだけにしておいた。
明日から元のチームに戻ることは、おそらく侑思の耳にも届いているだろう。
色々溜め込んでいたことは、今度の休日にでもゆっくり話そう。
俺は侑思の頬にそっとキスをして、隣に寝転がって眠った。
【浅多 侑思】
「…………」
翌日、僕はデスクでいつも通り仕事をこなしていた。
綾さんの部下から、午前中にはクロノを戻すという報告を受けていたが。
戻ってきて会話を交わす間もなく外出の用事が入って、奴は昼まで帰社しない。
【浅多 侑思】
(仕事だ。仕方ない……)
最近疲れが溜まっていて、どうも気分が塞ぎ込む。
【浅多 侑思】
(それに……あの件もまだ片付いていない)
着物を着た女性が微笑んでいる写真が脳裏に浮かぶ。
しかし、失礼だとは思うが顔も思い出せない。
断るべきだとは思うのに、両親への上手い返答も浮かばないまま。
仕事にかかりきりになることで、考えを先送りにしていた。
【浅多 侑思】
「はあ……」
溜息をついてから、無理矢理気持ちを入れ替える。
午前中からこんな風でどうするんだと目頭を揉んで気持ちを高めようとしていると、後ろから肩を叩かれた。
【浅多 侑思】
「わっ……っ、はい! ……ふ、副社長」
【綾 上総】
「よっ。例のPVが出来上がったんでな、見せに来たんだよ。ついでに黒乃も呼んで来い」
【浅多 侑思】
「黒乃は今、外出中でして…」
【綾 上総】
「あらら、なら仕方ねえな。先にお前だけでも目ぇ通しとけ」
綾さんに渡されたDVDをPCに入れて起動させる。
【綾 上総】
「なかなかいい出来だぜ。お前んとこのイケメン部下はいい仕事するじゃねえか」
【浅多 侑思】
「……ありがとうございます」
読み込みが終わって流れ始めた映像は、
クロノが美しい女性タレントと親密な様子で寄り添って。
優雅なテラスでシャンパンを傾けるというものだった。
それはただの、意図的に作られた図でしかない。
だけど僕の心には、得体の知れない黒い靄のようなものが広がる。
クロノは、僕と一緒にいて本当に幸せなんだろうか。
僕が女性と結婚して、子供を作ることを願っている両親と同じように。
彼もまた、女性と結ばれた方が、或いは――――。
【浅多 侑思】
「…………」
たまたま僕がリビドーのターゲットだから、情が移って一緒にいるだけで。
そもそも、女性がターゲットだった方が良かったんじゃないだろうか。
俺もクロノと出会うまで、恋愛対象は女性だった。
死神は性の対象には拘らないとクロノは言ってたけど、
それなら尚更、女性相手の方がいいじゃないか。
【浅多 侑思】
(僕だってクロノが好きだし、離れたくない)
【浅多 侑思】
(クロノだって、僕を愛していると言ってくれた)
――――それは、本当に互いのためになるのか?
そんなことを考えているうちに映像は終わって、満足そうな顔の綾さんがDVDをケースに戻す。
その後ろから、外出先から戻ってきたクロノがやって来た。
綾さんはすぐに気付いて、手を上げてクロノを呼んだ。
【綾 上総】
「おーちょうど良かった。こないだのPV出来上がったんだよ」
【綾 上総】
「凄ぇいい出来でよ、お前にも見せようと思って来たんだ」
【クロノ】
「そうでしたか。駄目出しされるんじゃないかと心配だったので、気に入ってもらえて良かったです」
【綾 上総】
「つか、お前独身なんだろ? うちの妹にもこれ見せたんだけどよー」
【クロノ】
「妹さん……?」
【浅多 侑思】
「……ヨントリーの秘書課で働いてる」
【クロノ】
「へえ、そうでしたか」
【クロノ】
「きっと副社長似の可愛らしい女性なんでしょうね」
【綾 上総】
「ははは、副社長に向かって可愛いって、言える奴ぁお前以外にはいねえな!」
【浅多 侑思】
「……」
【綾 上総】
「で、そしたらお前のこと紹介してほしいって言われたんだけど、どうだ?」
思わず、肩が揺れたのが自分でもわかった。
気付かれただろうかと思った矢先、クロノが一歩前へ出る。
日中、送られてくるメールを楽しみにしてるけど、
互いに忙しくて、短くてそっけないやり取りしかしていない。
お見合いのことについても悩んでるだろうから相談に乗ってあげたいけど。
一緒に部屋に帰りついても、どちらも疲れていて眠るだけで話し合いの場がない。
折角じいがいるんだから、わざと目の前でイタズラして慌てさせたりもしたかったのに。
そんなことをしている余裕もなくなってきた。
なぜなら、俺がいないことで業務の負担が増えたのか、最近は特に侑思の元気がないように思えるからだ。
【クロノ】
(侑思、待っててね)
【クロノ】
(早く終わらせて戻るから…!)
そして俺は今日も、一刻も早く撮影が終わるように気合いを入れてスタジオに向かった。
そして数日後、無事にPVが完成した。
【綾 上総】
「よし。ご苦労さん、黒乃」
【綾 上総】
「明日、俺が最終チェックして納品だ。お前はもう向こうに戻っていいぞ」
【クロノ】
「はい。お疲れ様でした」
【クロノ】
(やった……ようやく終わった……)
【アンク】
「お疲れ様でございました」
姿を消したままのじいが、隣で笑いかけてくる。
俺は壁に寄りかかってスマホを耳にあてて、通話しているフリで答える。
【クロノ】
「無事に終わって良かった。とりあえず、じいもこれでお役目終了?」
【アンク】
「そうですな。履歴を提出しないという約束も、綾さんはきちんと守られましたし」
【アンク】
「浅多さんに挨拶をしてから、このまま死神界に戻ることに致します」
【クロノ】
「そう? なら、長によろしく言っておいて」
【アンク】
「ふふふ、本当は小躍りしたいくらいなのでしょう? わかっております」
【クロノ】
「当たり前だろ……。ようやくかって感じ」
【アンク】
「いつまでも若者2人の邪魔をするのは心が痛みますからな」
【アンク】
「私の仕事はここまでですが、本番は世間に映像が出てからですぞ」
【アンク】
「くれぐれも、油断されませんよう」
【アンク】
「もし何か異変があったら、すぐにじいめにご連絡ください」
【クロノ】
「……わかってる」
【アンク】
「ならば結構。それではまた」
侑思と2人きりになることの方が重要で、じいに言われるまで忘れてた。
世間に映像が出るのはもう少し先の筈だ。
それまで気は抜けないってことか……。
うきうきと部屋に戻ると、侑思はもう眠っていた。
撮影が終わった旨を報告して軽くお祝いなんかしてから、甘い夜を過ごすつもりだったのに。
残念に思いつつ寝顔を覗き込むと、辛そうな顔で眠っていた。
【クロノ】
(…どうしようかな)
【クロノ】
(今日はそっとしておいてあげよう)
侑思だって疲れてるんだし、無理させたいわけじゃないから。少しの間、寝顔を眺めるだけにしておいた。
明日から元のチームに戻ることは、おそらく侑思の耳にも届いているだろう。
色々溜め込んでいたことは、今度の休日にでもゆっくり話そう。
俺は侑思の頬にそっとキスをして、隣に寝転がって眠った。
【浅多 侑思】
「…………」
翌日、僕はデスクでいつも通り仕事をこなしていた。
綾さんの部下から、午前中にはクロノを戻すという報告を受けていたが。
戻ってきて会話を交わす間もなく外出の用事が入って、奴は昼まで帰社しない。
【浅多 侑思】
(仕事だ。仕方ない……)
最近疲れが溜まっていて、どうも気分が塞ぎ込む。
【浅多 侑思】
(それに……あの件もまだ片付いていない)
着物を着た女性が微笑んでいる写真が脳裏に浮かぶ。
しかし、失礼だとは思うが顔も思い出せない。
断るべきだとは思うのに、両親への上手い返答も浮かばないまま。
仕事にかかりきりになることで、考えを先送りにしていた。
【浅多 侑思】
「はあ……」
溜息をついてから、無理矢理気持ちを入れ替える。
午前中からこんな風でどうするんだと目頭を揉んで気持ちを高めようとしていると、後ろから肩を叩かれた。
【浅多 侑思】
「わっ……っ、はい! ……ふ、副社長」
【綾 上総】
「よっ。例のPVが出来上がったんでな、見せに来たんだよ。ついでに黒乃も呼んで来い」
【浅多 侑思】
「黒乃は今、外出中でして…」
【綾 上総】
「あらら、なら仕方ねえな。先にお前だけでも目ぇ通しとけ」
綾さんに渡されたDVDをPCに入れて起動させる。
【綾 上総】
「なかなかいい出来だぜ。お前んとこのイケメン部下はいい仕事するじゃねえか」
【浅多 侑思】
「……ありがとうございます」
読み込みが終わって流れ始めた映像は、
クロノが美しい女性タレントと親密な様子で寄り添って。
優雅なテラスでシャンパンを傾けるというものだった。
それはただの、意図的に作られた図でしかない。
だけど僕の心には、得体の知れない黒い靄のようなものが広がる。
クロノは、僕と一緒にいて本当に幸せなんだろうか。
僕が女性と結婚して、子供を作ることを願っている両親と同じように。
彼もまた、女性と結ばれた方が、或いは――――。
【浅多 侑思】
「…………」
たまたま僕がリビドーのターゲットだから、情が移って一緒にいるだけで。
そもそも、女性がターゲットだった方が良かったんじゃないだろうか。
俺もクロノと出会うまで、恋愛対象は女性だった。
死神は性の対象には拘らないとクロノは言ってたけど、
それなら尚更、女性相手の方がいいじゃないか。
【浅多 侑思】
(僕だってクロノが好きだし、離れたくない)
【浅多 侑思】
(クロノだって、僕を愛していると言ってくれた)
――――それは、本当に互いのためになるのか?
そんなことを考えているうちに映像は終わって、満足そうな顔の綾さんがDVDをケースに戻す。
その後ろから、外出先から戻ってきたクロノがやって来た。
綾さんはすぐに気付いて、手を上げてクロノを呼んだ。
【綾 上総】
「おーちょうど良かった。こないだのPV出来上がったんだよ」
【綾 上総】
「凄ぇいい出来でよ、お前にも見せようと思って来たんだ」
【クロノ】
「そうでしたか。駄目出しされるんじゃないかと心配だったので、気に入ってもらえて良かったです」
【綾 上総】
「つか、お前独身なんだろ? うちの妹にもこれ見せたんだけどよー」
【クロノ】
「妹さん……?」
【浅多 侑思】
「……ヨントリーの秘書課で働いてる」
【クロノ】
「へえ、そうでしたか」
【クロノ】
「きっと副社長似の可愛らしい女性なんでしょうね」
【綾 上総】
「ははは、副社長に向かって可愛いって、言える奴ぁお前以外にはいねえな!」
【浅多 侑思】
「……」
【綾 上総】
「で、そしたらお前のこと紹介してほしいって言われたんだけど、どうだ?」
思わず、肩が揺れたのが自分でもわかった。
気付かれただろうかと思った矢先、クロノが一歩前へ出る。
