[本編] 浅多 侑思 編
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あの事件から3年。
部長になった侑思の下で、俺は部長代理として働いている。
最初の頃は上手くいかなくて苦労もしたが、
自分でいうのもアレだけど俺はやればできる方なので。
今ではすっかり人間界での暮らしにも慣れて、会社では敏腕補佐として侑思の隣にいる。
侑思は、それまで俺に向かって敬語で話すようになっていた癖が抜けなくて、
会社でも敬語を覗かせることがあって。
それはそれで可愛かったんだけど、周囲に不自然に思われるから戻してもらった。
そして侑思は、31歳で部長になるという異例の出世が自信に繋がったのか、以前よりかなり落ち着いた。
俺がわざとペースを乱すようなことをすると、今でも慌ててくれたりするけど。
オフィスに皆がいる時になんかは、冷静にあしらわれることの方が多い。
2人きりの時にしか、可愛い部分を見せてくれなくなったのは少し残念だけど。
会社での仕事においては、そんな気持ちを上回る結果を出せている。
俺と侑思が率いるチームがメインで広報を担当していた商品が、半期の売上でナンバーワンを達成するヒット商品となった。
女性をターゲットにした新しいカクテルの小瓶には、侑思の繊細さが反映されているようで、
味もさることながら、見た目の美しさも人気の秘訣だったらしい。
そして今日は、その商品がヒットしたことを記念して。
ヨントリー・ホールディングス自社主催のパーティが開かれている。
もちろん主役は俺達のチーム。
【クロノ】
「ああ、わざわざすみません。いただきます」
差し出されたシャンパンを受け取りながら会場を見渡す。
さっきまでこの辺に侑思もいた筈なんだけど。
どこに行ったのやらと思っていると、女性社員に囲まれて苦笑を浮かべていた。
こっそり耳を澄ましてみると、どうやら優良物件としてお誘いを受けているようだ。
【クロノ】
(ほー。羨ましい限りですなぁ)
心の中で課長の真似をしながら、シャンパングラスを傾ける。
【他社役員A】
「それにしても、お酒強いですねぇ、黒乃さん」
【クロノ】
「ああ……、結構よく飲む方なので」
【他社役員A】
「なるほど。それでこそあのカクテルができたというわけですね」
【他社役員B】
「何をよく飲まれるんですか?」
【クロノ】
「焼酎の水割りとか好きですよ。あとは梅干しが入ってるのも」
【他社役員C】
「ははは、見掛けによらず渋いですねえ」
俺は他会社の社員に囲まれて、さっきからずっとこの調子。
グラスの酒が半分になればお代わりが出てきて、皿に取り分けたツマミまで勝手に出てくる。
便利だけどちょっとうざったい。
ヨントリーの取引相手だから、そんなことは口が裂けても言えないけど。
それから少しの間、適当に話をして、笑顔でその場を辞去した。
俺は、まだまだ挨拶回りをしなきゃいけない。
【クロノ】
「えーと、次は……。あ、あの人か」
【クロノ】
「えーと、長田さんが営業部長で、君川さんがマネージャー……よし」
死神界ではまったく使わなかった営業スマイルと名刺入れが、今の俺の必需品。
実体化させた死神の鎌よりも軽いけど、つくづく扱いが面倒くさくて肩が凝る代物だ。
人の顔を覚えるのは相変わらず苦手で。
名刺と顔写真をリンクさせたスマホアプリを起動しながら、スマートな振る舞いで声をかける。
これが黒乃としての、俺の日常だ。
同僚や取引先とも別れて2人きりになった後、俺達は並んで帰路につく。
【浅多 侑思】
「少し飲み過ぎたな……」
【クロノ】
「侑思……大丈夫?そんなに酒強くないよね」
【浅多 侑思】
「……そうやって心配してくれるのは有り難いが」
【浅多 侑思】
「付き合いだ、仕方ないだろ」
【クロノ】
「まあ、肝臓を壊さない程度に頑張って。確かに飲める男は格好いいし」
【浅多 侑思】
「お前、本当に酒豪だよな。昔からそうだったのか?」
【クロノ】
「人間界と死神界の酒を一緒に考えないで。ほんとに口から火ぃ吹くんだから」
【浅多 侑思】
「お、恐ろしいな……」
【浅多 侑思】
「というかお前、さっきの言葉は聞き捨てならんぞ。飲める男が格好いいだのなんだのと…」
【浅多 侑思】
「その理論で行くと、お前は格好いいことになるじゃないか」
【クロノ】
「その通りでしょ? 俺、顔も良いらしいし。実際侑思もぞっこんでしょ」
【クロノ】
「この、オーダーメイドのスーツも似合ってるだろ?」
【浅多 侑思】
「…っ、自惚れるな。その内墓穴を掘るぞ」
【クロノ】
「ははは、間があった。むしろ掘りたいー。侑思をここでー」
酒に強いと言っても、俺も少しはアルコールが回っていてホロ酔い気分。
ご機嫌ついでに、笑いながら侑思の肩に手を回すと、体が一段と熱くなったように感じた。
顔を寄せると、アルコールの匂いに混じってふわりと侑思の匂いがする。
そのままついでに腰を抱き寄せようとしたところで、その体がこわばる。
【浅多 侑思】
「こんなところでよせ。外だぞ」
【クロノ】
「さっき女の人達に言い寄られてたでしょ。ちょっと妬けちゃってさ」
【浅多 侑思】
「……それを言うなら、お前も性別に関係なく囲まれてたじゃないか」
【クロノ】
「仕事抜きでなら囲まれたかったね」
【クロノ】
「……なんて、侑思がいるから、そんなの必要ないけど」
【浅多 侑思】
「……まったく……。とにかく駄目だ。普通に家に帰るぞ」
【クロノ】
「えー? 面倒くさい。もうこんな時間だよ?」
【クロノ】
「タクシー捕まえるのだって一苦労」
【浅多 侑思】
「ああ、駅前までは少し歩かないと駄目だな」
【クロノ】
「でしょ? ここはやっぱホテルでしょ」
【浅多 侑思】
「おい、明日は休みだからお前は良いが、僕は家に持ち帰った仕事が…」
【クロノ】
「あー、ラブのつくホテルだと思ってる?」
【クロノ】
「残念、普通のシティホテルです」
【クロノ】
「仕事に差し支えるほど運動して、疲れさせたりなんかしません」
【浅多 侑思】
「……」
【クロノ】
「はは、可愛い。でもお察しの通り、やることはやらせていただきます」
【浅多 侑思】
「お前のスタミナはどうなってるんだ……いつもやる気なさそうな顔をして」
【クロノ】
「仕事のやる気とヤる気は別物ってことだね」
【クロノ】
「それに、折角のいい日なんだから、もっと素晴らしい日にしておきたいじゃない」
【クロノ】
「というわけで、もう予約しちゃったから」
【クロノ】
「というわけで、もう予約しちゃったから」
【浅多 侑思】
「…スマホの操作も手慣れたものだな」
【クロノ】
「文明の利器ってやっぱり便利。どの世界でも。うん」
【浅多 侑思】
「家に帰るだけだったら、テレポーテーションみたいなやつで済んだものを…」
【クロノ】
「侑思をつれて? まあ別にそれでもいいんだけどさ」
【クロノ】
「最近は特に、死神の能力はできるだけ使わないようにしてるの。人間界で地位を手に入れちゃったから」
【クロノ】
「軽い気持ちで迂闊なことして、侑思に迷惑かけたくないし」
【浅多 侑思】
「む、成長したな」
部長になった侑思の下で、俺は部長代理として働いている。
最初の頃は上手くいかなくて苦労もしたが、
自分でいうのもアレだけど俺はやればできる方なので。
今ではすっかり人間界での暮らしにも慣れて、会社では敏腕補佐として侑思の隣にいる。
侑思は、それまで俺に向かって敬語で話すようになっていた癖が抜けなくて、
会社でも敬語を覗かせることがあって。
それはそれで可愛かったんだけど、周囲に不自然に思われるから戻してもらった。
そして侑思は、31歳で部長になるという異例の出世が自信に繋がったのか、以前よりかなり落ち着いた。
俺がわざとペースを乱すようなことをすると、今でも慌ててくれたりするけど。
オフィスに皆がいる時になんかは、冷静にあしらわれることの方が多い。
2人きりの時にしか、可愛い部分を見せてくれなくなったのは少し残念だけど。
会社での仕事においては、そんな気持ちを上回る結果を出せている。
俺と侑思が率いるチームがメインで広報を担当していた商品が、半期の売上でナンバーワンを達成するヒット商品となった。
女性をターゲットにした新しいカクテルの小瓶には、侑思の繊細さが反映されているようで、
味もさることながら、見た目の美しさも人気の秘訣だったらしい。
そして今日は、その商品がヒットしたことを記念して。
ヨントリー・ホールディングス自社主催のパーティが開かれている。
もちろん主役は俺達のチーム。
【クロノ】
「ああ、わざわざすみません。いただきます」
差し出されたシャンパンを受け取りながら会場を見渡す。
さっきまでこの辺に侑思もいた筈なんだけど。
どこに行ったのやらと思っていると、女性社員に囲まれて苦笑を浮かべていた。
こっそり耳を澄ましてみると、どうやら優良物件としてお誘いを受けているようだ。
【クロノ】
(ほー。羨ましい限りですなぁ)
心の中で課長の真似をしながら、シャンパングラスを傾ける。
【他社役員A】
「それにしても、お酒強いですねぇ、黒乃さん」
【クロノ】
「ああ……、結構よく飲む方なので」
【他社役員A】
「なるほど。それでこそあのカクテルができたというわけですね」
【他社役員B】
「何をよく飲まれるんですか?」
【クロノ】
「焼酎の水割りとか好きですよ。あとは梅干しが入ってるのも」
【他社役員C】
「ははは、見掛けによらず渋いですねえ」
俺は他会社の社員に囲まれて、さっきからずっとこの調子。
グラスの酒が半分になればお代わりが出てきて、皿に取り分けたツマミまで勝手に出てくる。
便利だけどちょっとうざったい。
ヨントリーの取引相手だから、そんなことは口が裂けても言えないけど。
それから少しの間、適当に話をして、笑顔でその場を辞去した。
俺は、まだまだ挨拶回りをしなきゃいけない。
【クロノ】
「えーと、次は……。あ、あの人か」
【クロノ】
「えーと、長田さんが営業部長で、君川さんがマネージャー……よし」
死神界ではまったく使わなかった営業スマイルと名刺入れが、今の俺の必需品。
実体化させた死神の鎌よりも軽いけど、つくづく扱いが面倒くさくて肩が凝る代物だ。
人の顔を覚えるのは相変わらず苦手で。
名刺と顔写真をリンクさせたスマホアプリを起動しながら、スマートな振る舞いで声をかける。
これが黒乃としての、俺の日常だ。
同僚や取引先とも別れて2人きりになった後、俺達は並んで帰路につく。
【浅多 侑思】
「少し飲み過ぎたな……」
【クロノ】
「侑思……大丈夫?そんなに酒強くないよね」
【浅多 侑思】
「……そうやって心配してくれるのは有り難いが」
【浅多 侑思】
「付き合いだ、仕方ないだろ」
【クロノ】
「まあ、肝臓を壊さない程度に頑張って。確かに飲める男は格好いいし」
【浅多 侑思】
「お前、本当に酒豪だよな。昔からそうだったのか?」
【クロノ】
「人間界と死神界の酒を一緒に考えないで。ほんとに口から火ぃ吹くんだから」
【浅多 侑思】
「お、恐ろしいな……」
【浅多 侑思】
「というかお前、さっきの言葉は聞き捨てならんぞ。飲める男が格好いいだのなんだのと…」
【浅多 侑思】
「その理論で行くと、お前は格好いいことになるじゃないか」
【クロノ】
「その通りでしょ? 俺、顔も良いらしいし。実際侑思もぞっこんでしょ」
【クロノ】
「この、オーダーメイドのスーツも似合ってるだろ?」
【浅多 侑思】
「…っ、自惚れるな。その内墓穴を掘るぞ」
【クロノ】
「ははは、間があった。むしろ掘りたいー。侑思をここでー」
酒に強いと言っても、俺も少しはアルコールが回っていてホロ酔い気分。
ご機嫌ついでに、笑いながら侑思の肩に手を回すと、体が一段と熱くなったように感じた。
顔を寄せると、アルコールの匂いに混じってふわりと侑思の匂いがする。
そのままついでに腰を抱き寄せようとしたところで、その体がこわばる。
【浅多 侑思】
「こんなところでよせ。外だぞ」
【クロノ】
「さっき女の人達に言い寄られてたでしょ。ちょっと妬けちゃってさ」
【浅多 侑思】
「……それを言うなら、お前も性別に関係なく囲まれてたじゃないか」
【クロノ】
「仕事抜きでなら囲まれたかったね」
【クロノ】
「……なんて、侑思がいるから、そんなの必要ないけど」
【浅多 侑思】
「……まったく……。とにかく駄目だ。普通に家に帰るぞ」
【クロノ】
「えー? 面倒くさい。もうこんな時間だよ?」
【クロノ】
「タクシー捕まえるのだって一苦労」
【浅多 侑思】
「ああ、駅前までは少し歩かないと駄目だな」
【クロノ】
「でしょ? ここはやっぱホテルでしょ」
【浅多 侑思】
「おい、明日は休みだからお前は良いが、僕は家に持ち帰った仕事が…」
【クロノ】
「あー、ラブのつくホテルだと思ってる?」
【クロノ】
「残念、普通のシティホテルです」
【クロノ】
「仕事に差し支えるほど運動して、疲れさせたりなんかしません」
【浅多 侑思】
「……」
【クロノ】
「はは、可愛い。でもお察しの通り、やることはやらせていただきます」
【浅多 侑思】
「お前のスタミナはどうなってるんだ……いつもやる気なさそうな顔をして」
【クロノ】
「仕事のやる気とヤる気は別物ってことだね」
【クロノ】
「それに、折角のいい日なんだから、もっと素晴らしい日にしておきたいじゃない」
【クロノ】
「というわけで、もう予約しちゃったから」
【クロノ】
「というわけで、もう予約しちゃったから」
【浅多 侑思】
「…スマホの操作も手慣れたものだな」
【クロノ】
「文明の利器ってやっぱり便利。どの世界でも。うん」
【浅多 侑思】
「家に帰るだけだったら、テレポーテーションみたいなやつで済んだものを…」
【クロノ】
「侑思をつれて? まあ別にそれでもいいんだけどさ」
【クロノ】
「最近は特に、死神の能力はできるだけ使わないようにしてるの。人間界で地位を手に入れちゃったから」
【クロノ】
「軽い気持ちで迂闊なことして、侑思に迷惑かけたくないし」
【浅多 侑思】
「む、成長したな」