本編
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《兆し》
事務所を飛び出した梓乃は、色々考えた結果自分の原点である実家へと足を向けていた。
家を出て結構経つが一度も実家に戻っていなかった事を思い出す。
母は節目節目に電話をくれていたが、忙しかった所為で折り返して連絡する事は少なく
大体のやりとりをメールで行っていた事を梓乃は少しだけ悔いていた。
何かもうちょっと話しておけば良かったかもしれない。
何を?と思うが、色々だ。
こうやって思ってもいない所から探していた真実を告げられてしまったかもしれない不安と、
それを確定させなければいけない恐怖。
そうであっても、違っていても……どちらにしろ色々思う所が増えてしまった。
【二條 榛貴】
『俺と萌美が付き合ってて……』
【日月 梓乃】
「……ちくしょう」
暫くして家の前まで辿り着いた梓乃は、ドアノブを握りしめようとして……
そのまま手をひっこめた。
家には誰かが居る気配があるものの、そこを開ける勇気が出ない。
梓乃は一度諦め、近所の公園へと足を向ける事にした。

《本番》
昔はよく来ていた懐かしい公園。
梓乃は複雑な気持ちを抱えたまま古ぼけたベンチへ腰を下ろす。
大きく息をして、それからどうしようかと考えた。
今から事務所に戻り、あれはどういう話だったのかと素直に聞いた方が良いだろうか。
しかし今二條と顔を合わせても上手く話せる気がしない。
そういえば、清明と侑生を置いてきてしまった。スポーツドリンクも転がしたままだ。
どうでもいい事と聞かなきゃいけない事が押し寄せて、梓乃は鼻を啜る。
【???】
「梓乃!」
【日月 梓乃】
「!オッサン!?なんで……」
静かな公園に木霊した自分の名前に梓乃は慌てて立ちあがった。
公園入口に見えた人影、間違いなく二條だ。
梓乃は即座に逃げようと走りだすが、真っ直ぐに走り込んできた二條にあっと言う間に追いつかれ、お縄となる。
【日月 梓乃】
「んだよ!なんでここ……」
【二條 榛貴】
「……良かった、ここに居て…!セイメイとういにメールで聞いたんだ」
汗だくの二條を見て、梓乃は一瞬だけ絆される。
こんなに必死になって探しに来てくれたのかと思う反面、あの時の二條が思い出された。
―俺と萌美の……
掴まれた腕を振り払うと、梓乃は再度逃げようと試みる。
しかし二條はしっかりと捕まえると梓乃と真剣に向き合った。
【二條 榛貴】
「悪い、しっかり梓乃ちゃんに聞くべき話だった」
【日月 梓乃】
「……っ!あんた、俺の母さん知ってたのかよ、知ってて……俺の事も……」
【二條 榛貴】
「待ってくれ。……俺は萌美に子供が居たのを知らなかった。知らされなかった。
……いや知ろうとも思わなかった」
話が核心に迫り、梓乃は耳を塞ぎたい一心で二條を見つめる。
心の準備が出来ていない。こんな風にわかる日が来るなんて思っていなかった。
もっとちゃんと……

《絶頂》
静まり返った公園に、不意に二人以外の声が降り注ぐ。
【政親】
「お二人とも。話はそこまでです。貴方方、一応売り出し中のアイドルなんですよ。
自覚して下さい。こんなところじゃなくて、ちゃんと話し合って来るんです」
【日月 梓乃】
「……黒田さん……セイメイ、うい…」
【笹雨 清明】
「お母さん、待ってますよ」
【大須賀 侑生】
「二條さんも、行ってください!」
【二條 榛貴】
「お前ら……」
三人にせかされ、二人は足取り重く梓乃の実家へ向かう事になった。
玄関先では明るい光と共に、梓乃の母親が顔を覗かせる。
突然の事に驚いた顔を見せたが、すぐに笑顔に戻った。
二人を招き入れたところで扉が閉まり、外からは様子を窺う事が出来なくなる。
【笹雨 清明】
「……落ちつくところに落ち着くといいんですが」
【大須賀 侑生】
「ほんとだね」
【笹雨 清明】
「実際のところ……二條さんは本当に梓乃の……」
多分独り言ついでに本音が出てしまったであろう清明の呟きは、閑静な住宅街の中に掻き消えてしまう。
しまったと慌てる清明だったが、侑生は相槌を打つこともなく梓乃の家を見つめていた。
【政親】
「私には分かりかねますので、お二人にお聞きして下さい」
【笹雨 清明】
「……それはその通りなんですが」
なかなか複雑な面持ちの清明と侑生。
政親は二人に声をかけると事務所に戻るよう促して、梓乃の実家を後にした。
