本編
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《兆し》
【芦沢 由臣】
「……っくそ……」
芦沢はあの果凛を追いかけていた記者の一件以来、落ち着かない日々を過ごしていた。
なんとか記者の素性を掴めないかと色々探りを入れていたが、該当記者はフリーだった為専属の所属はなく、
ようやく知っている関係者を捕まえてはみたが、ここ最近の足取りは全く掴めないと言う事だった。
携帯も切れているらしく、目の前で逃がしてしまった事を悔やむ日が続く。
少しでも尻尾を掴めたと思ったのだが……
しかしそこで思わぬ事態が転がってきた。
仕事を終え、自宅に戻った芦沢は郵便受けに一通の手紙が入っているのを見つける。
宛先は間違いなく芦沢だが、切手も貼っておらず裏返しても何も書いていないものだった。
【芦沢 由臣】
「……これは」
嫌な予感と期待が一気に芦沢へ押し寄せる。
間違いなく先日の記者だろうという勘が働き、自室に入る前にその場で手紙を開封した。
中には一筆箋に乱暴な字で日付と一文が書かれ、そして地図が入っているのを確認する。
『必ず一人で来い』
【芦沢 由臣】
「……漸く、我が悲願を果たす時が来たようだ」
芦沢はその手紙を握りしめると、暫くの間その場から動く事が出来なかった。

《本番》
『必ず一人で来い』
そう書かれた手紙を握りしめ、指定された時間と場所に芦沢が足を踏み入れる。
指定された場所はシャッターで閉ざされ、開店している店はごく少数に見受けられた。
どこから来る。
手紙を握りしめ、芦沢は息を飲む。
ここから一気に芦沢の追いかけていた物が転がり込んでくる可能性がある。
夢を叩き壊され、心身を病んだ妹の敵が分かる日が来るかもしれない。
【芦沢 由臣】
「……早く!」
そう声に出して、呟いた時。
後ろから靴音が鳴り響いた。
……が、靴音が複数存在する事に芦沢が気づき、焦り後ろを振り向くと……。
そこには政親と果凛の姿があった。
【芦沢 由臣】
「……何故」
【政親】
「由臣、事務所に戻りますよ。山口に車を出してもらっています」
【芦沢 由臣】
「何故だ!貴様……っ!我が悲願を閉ざす気か!?」
【政親】
「流石に罠だと分かっていたのでしょう?その通りです。時間がもったいないので早く戻ります」
【芦沢 由臣】
「待て!!納得がいかん、貴様、何故この場所が…」
【本村 果凛】
「……ユージン戻ろう?ちゃんと説明するから」
政親は突然の事態に混乱をしている芦沢の腕を掴んで、無理矢理車に乗せる。
車内は終始静かだった。

《絶頂》
【政親】
「記者はあなたが来る前に捕まえました」
【芦沢 由臣】
「……っ何……」
事務所に戻った芦沢は政親と果凛の前に座らされ、事の顛末を聞かされる事となる。
【政親】
「当たり前ですよ、ストーカー行為は立派な犯罪ですからね」
【本村 果凛】
「ユージンの様子がおかしかったでしょ……で、黒田さん別ルートで記者の人探してて……」
芦沢に接触する前に捕まえる事が出来たという。
一気に気が抜けてしまった芦沢はまた1からと言う事実に打ちのめされそうになった。
ようやく妹に関する情報に進展があると期待していたのに。
目を伏せ歯を食いしばる芦沢に政親は封筒を差しだす。
【政親】
「貴方の妹さんですが、JIFの主催関係者と少々関わりがあったようです」
【芦沢 由臣】
「……どういう事だ?」
【政親】
「アイドルフェスですからね、男女関係なく出場する権利があります。
……貴方の妹さんが所属していたグループも出場していたようですが?」
【芦沢 由臣】
「!?何……っ!」
【政親】
「あの記者が持っていた情報は妹さんが所属していたグループのメンバー全員の今の所属先及び住所。
以前の事務所が潰れてますからね。今では全て抹消されている情報です」
【芦沢 由臣】
「貴様、何故そんな情報……」
【本村 果凛】
「記者の人が持ってたのを黒田さんがうちの芦沢のですよねって。
更に恐喝するならば考えがあるって言って無理矢理引き取ったの。
けっこー強引だったよ?ドキドキしちゃった!」
【政親】
「貴方に渡す予定の物だったならば受け取っても問題ないでしょう。
なお貴方が追いかけているであろう人物まではあの記者は特定していませんでした」
【芦沢 由臣】
「……そうか。……そうか……アレは虚言であったか」
芦沢は書類の一覧を見て数年前の日付の入ったJIFのチラシに妹の名前が載っているのを確認する。こんなもの、妹の部屋からは出てこなかった。
隠していたか、事実を消されたか。
しかし望んでいた進展はあった。芦沢の目には精気が宿る。
【芦沢 由臣】
「今回で我が復讐が成就されれば、アイドルなんぞという偶像も終焉を迎える頃かと思っていたが……
まだ暫く関わりを持たねばならなそうだ」
芦沢は固く拳を握り、封筒を睨みつける。
政親と果凛はその様子を黙って見続けていた。
