本編
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《兆し》
【壱川 咲十郎】
「おはようございます、果凛さん」
【本村 果凛】
「!お、おはよう、咲ちゃん」
あの騒動から一週間経っただろうか。
最近気分の優れなそうな壱川に果凛が心配をしていた矢先。
壱川の顔から迷いがなくなっていたのに、真っ先に果凛が気がついた。
【本村 果凛】
「咲ちゃんも今日は撮影だっけ?」
【壱川 咲十郎】
「そうなんです。男性用の着物なんですが、とてもモダンな柄で……」
嬉しそうに鞄から資料を引っ張り出す壱川の様子に果凛は心底ほっとしていた。
そもそもポラリスのゴシップを嗅ぎまわっていた記者は、最初果凛を狙っていたのだ。
まんまとスッパ抜かれ、その後壱川に照準をあてられたのは記憶に新しい。
咲ちゃんを落ち込ませたのは果凛かもしれない。
そんな気持ちで居たのが嘘のように晴れてしまった。
とにかく良かった。
果凛は山口に送られて、撮影場所に指定されていた所で下してもらい、
久しぶりに軽やかな気持ちで現場へ向かう最中だった。
【不審者】
「……か、果凛ちゃん」
【本村 果凛】
「……え、ちょ……あっ!あんた!」

《本番》
【本村 果凛】
「……果凛、あんたの事知ってる……あの記事書いたヤツでしょ!」
【記者】
「あはは……嬉しいな、果凛ちゃん……俺は果凛ちゃんの事が調べられたらそれで良かったんだけど……
まぁ仕事ってそういうのだけじゃ続けていけないしな」
……果凛のついで!?
愕然とする。
壱川をあんな風に貶めて、世間には出なかったものの、あんなに取り乱す壱川を見て果凛は心を痛めていたのに。
【本村 果凛】
「……果凛の所為だって言うの……」
【記者】
「果凛ちゃん、ねぇ、俺、果凛ちゃんの事もっと知りたくてさあ……
もっと派手な記事いっぱい出してあげるから、俺の専属アイドルになってよ」
【本村 果凛】
「バカ言わないで……誰があんたなんか…!」
【記者】
「咲十郎さんの記事、あれだけだと思ってないよね?
それにねえ、まだまだ色々あるんだよー果凛ちゃんの為にもなるからさぁ」
【本村 果凛】
「やだ……僕にさわんな!」
果凛の腕を掴み、追いつめようとする記者。
ギリギリと掴む腕が痛いし、胸も頭も目も痛い。
罪悪感から思いっきり泣きだしそうな所で、記者は何故か派手に転倒し、果凛はその場から一歩退避する事が出来た。
驚いた果凛が顔を上げるとそこには見知った人が立ち塞がっている。
【本村 果凛】
「ゆ、由臣!」
【芦沢 由臣】
「底辺は底辺な所業しか想像出来ぬようだな。いっそ清々しい処だが、視界に入れるのもなかなかの苦痛だ。
これに懲りて疾くと消え失せろよ、下衆」
【芦沢 由臣】
「本村、何をしている。こんな処で下衆と戯れている余裕はあるまい」
【本村 果凛】
「あっありがと…っ!でも、こいつ……!」
無様に転がる記者を一瞥し、芦沢は鼻で笑ってみせる。
【芦沢 由臣】
「この愚民がどうした。自ら首を絞めるような真似をし、挙句の果てにこの様だ」
【記者】
「……ってて……芦沢……ああ、芦沢由臣ね。
あんたもなかなかのネタがあるよね、お兄様」

《絶頂》
【芦沢 由臣】
「……っ!」
芦沢の後ろに隠れていた果凛は目を見開く。
記者が何を言い出したかと思った事と、それに対して明らかに動揺した芦沢が居たからだ。
果凛には即座にその関係性が理解出来なかった。
【記者】
「俺、知ってるんだぜ?名前は、凜子。……苗字は知らなかったんだけどね?
今心神喪失状態で反応もしないんだって?お気の毒だなぁ」
【芦沢 由臣】
「貴様のような!!!豚がッ!!凜子の名前を口に出すな!!」
【本村 果凛】
「ゆ、由臣!ちょっと!マズいよ!!」
倒れ込んでいた記者に馬乗りになり、芦沢は胸倉を掴む。
今にも首筋を食いちぎりそうな形相で芦沢は記者を絞め上げる。
【芦沢 由臣】
「貴様……何の情報も置いて行かずに、この俺から逃げられると思うなよ…っ!!!」
【記者】
「ぐ……うぇ…っ!」
【本村 果凛】
「由臣ってば!!やめてぇ!!由臣!!誰か!」
ギリギリと遠慮なく首を締め上げていた芦沢は果凛の悲鳴で我に返る。
少しだけ手を緩めると、よつんばいになりながら記者はその場から逃げ去ってしまう。
咳き込み唾液を垂れ流す相手に、芦沢は舌打ちをした。
が、帰り際、記者は喉元を抑えながらダミ声で呪詛のような捨て台詞を吐いて行った。
【記者】
「……俺は、あんたが探している相手も知ってるんだからな!!」
【芦沢 由臣】
「……っ!!!な、おい!」
言い捨てるようにそう叫ぶと記者は脱兎のごとくその場からいなくなってしまい、
茫然と立ち尽くす芦沢、果凛だけが取り残されたのだった。
