本編
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《兆し》
『JAPAN IDOL FESTIVAL 20XX』が終わって既に数か月。
あの日以来ポラリスメンバーは毎日充実した日々を送り始めていた。
途中棄権をしたものの、その実力及び知名度は確実に芸能界に吹きつつあった。
ミニライブや営業を地道にこなし、以前よりも大きな仕事がポラリスに舞い込むようになる。
……が、その裏では何者かが暗躍しているのを政親は薄々感づいていた。
誰かがまだ蟻の穴程小さい不安を無理矢理こじ開けようと、狙っている気がするのだ。
【政親】
「……山口、ここ一カ月のスケジュールを改めて見せて下さい」
【山口 遼太】
「ふぇ、あっ、はいッ!!!」
事務所に入るなりそう告げる政親に山口は急いでスケジュール管理ファイルを立ち上げると、
慣れた手つきでプリンターを起動させた。
数分後にはみっちり詰ったスケジュール一覧が吐き出される。
【山口 遼太】
「念のため、前後一週間も含めてますッ!」
【政親】
「ああ」
手を上げて山口をねぎらった後、事務所のソファへと腰を落ち着けながら、一枚のプリントに目を通す。
取材、TV出演、CM撮影、雑誌インタビュー……特に目立って変な仕事はなく、政親は首を傾げた。
そんな時だった。
【政親】
「……果凛、どうしました」
何かの気配を感じ顔を挙げた政親。
そこには事務所の扉を音も立てずに一人入って来た、本村果凛の姿があった。

《本番》
【本村 果凛】
「……おはよ、山口、黒田さん。あの、ちょっといいかな」
いつもならば明るすぎるくらいの笑顔でやってくる果凛の顔色が浮かない事に二人とも即座に気づく。
素早く察した山口は、すぐに果凛をソファに座らせ暖かいお茶を手渡した。
おざなりなお礼を口にし、果凛はすぐにそのお茶に口を付ける。
それからゆっくり息を吐いて、大きな目を政親へと向けた。
その顔は色んな事が混ざってぐちゃぐちゃになったような、そんな感じだった。
【本村 果凛】
「……あの。多分なんだけど。……果凛、狙われてると思う」
【山口 遼太】
「へッ!?命ですかッ!?ひえええッ!くッ黒田さんッ!」
【政親】
「煩い。……貴方はどこか行ってなさい」
【山口 遼太】
「でっでもッ!!!」
全身から「心配している」と発信している山口をどうにか引っ込めて、改めて政親は果凛と向き合った。
【政親】
「狙われている、とはどういう意味ですか」
【本村 果凛】
「前に果凛、ゴシップですっぱ抜かれたでしょ?あの記者の人、ここ数日撮影場所で見たの」
【本村 果凛】
「……でも、もう果凛には美味しいネタがないでしょ?……だから、その」
言いよどむ果凛の顔はどんどんと歪んでいく。
政親は果凛が何を言いたいのかその時点で大分察しがついていたが、
自らの口で説明しようとする果凛を尊重し、その続きをゆっくりと待つ事にした。

《絶頂》
【政親】
「……以上、身の回りの不審者には十分気を付けるように」
レッスン場に集められたポラリスメンバーは政親、果凛の話に真摯に耳を傾ける。
政親はいつも通りの表情で淡々と説明をしていたのだが、
隣の果凛は居心地悪そうに身体を抱きしめていたのが、皆気になっていたのだ。
それもその筈、果凛はあのゴシップ記事以来、非常に注意深くなっていた。
毎日なんでもないように過ごしているが、言動、行動は一層に慎ましくなっていく。
誰かが誘い出さなければ外に出る事もなく、家に閉じこもり気味であった。
少しマズいよな、と誰もが思っていた矢先だ。
レッスン場のドアがゆっくりと開かれる。
出て来たのは山口だ。しかし顔色は優れない。
ぶるぶると持っている紙が震えていた。
今度は何事だ。皆がそう思った矢先に山口は口を開いた。
【山口 遼太】
「く、黒田しゃん……」
女々しく顔を歪ませる山口に、政親は苦々しい顔をしながら皆にレッスンを続けるよう促し、山口とレッスン場の外に出る。
【政親】
「なんです、そんな汚い顔をして……」
【山口 遼太】
「そ、あ、こ、これ……ッ!!!」
いまいち的を得ない山口に痺れを切らして、持っていた紙切れを奪い取る。
そしてそこに書いてあった大きな見出し【壱川咲十郎】の文字に政親は眉根を潜めるのだった。
