本編
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《兆し》
売り出し中のアイドルは、とにかくライブをこなさなければならない。
少しずつキャパも大きくなってきていてはいるが、人手は足りない現状だ。
今日も、事務所では山口が走り回っている。
【山口 遼太】
「すみませんッッ!衣装通りますーッ!」
【榎本 公志郎】
「やっと届いたのね~!」
大きな段ボールを抱えて山口が事務所へ入ってくる。
何箱か積み上げ、最後の一つを運び終えるとバンダナで汗を拭う。
【山口 遼太】
「社長、是非チェックをお願いしますッ!」
【榎本 公志郎】
「言われなくても拝見するわ!私も楽しみだったんだもの!」
榎本がいそいそと気分よく広げているのには理由があった。
デビュー衣装から、ポラリスのライブ衣装は榎本がデザインに協力しているのだ。
ベース案から、個人のアレンジまで口を出している。
手塩にかけたアイドル達の晴れ姿を自分の手で一層盛り上げたい。
その考えからデザインされた衣装達は、ファンにも人気が高いものばかりだ。
【榎本 公志郎】
「さあ、これから着せ替えを始めるわよ!
山口、あの子達を呼んできて?まだまだ試作段階なんだから」
【山口 遼太】
「……手尺のボディタッチは、程々にしてくださいね?」
【榎本 公志郎】
「言うわね、アンタ。そんなにして欲しかったらアンタからしてあげるわよ?」
【山口 遼太】
「ふぁっ……もう、だからやめてくださいってば~ッッ!」
叫び声を上げながら逃げ惑い、なんとかしてアイドルを呼びに行く山口であった。

《本番》
慌しい準備の日々は過ぎ去り、ライブ当日。
リハーサルを終えた控え室でアイドル達は黙々と下を向き、ペンを走らせていた。
【大須賀 侑生】
「うーん、ボールって書きにくいです……」
【葛城 雄眞】
「色紙とは違って、球体だからな…
文字数多いとバランスが取りづらいぞ」
【大須賀 侑生】
「あっ…そうか!
どうしても一人ひとり特別にメッセージを書きたいなって思うと…」
お互いの手元を覗き込み、葛城からアドバイスを貰うと
大須賀は机の上にサイン済みのボールを並べて大きく唸った。
【壱川 咲十郎】
「由臣さん流石アーティストですねえ…!」
【芦沢 由臣】
「このぐらい描けないでどうする」
【大須賀 侑生】
「わっ…僕も見たいです!!」
わっと壱川から声があがり、大須賀が駆け寄ると
葛城も後ろにまわり感嘆の声を上げる。
【葛城 雄眞】
「これはアイドルのサインボール以上の価値が生まれそうだ」
【大須賀 侑生】
「早くお客さんにお渡ししたいですね!」
【壱川 咲十郎】
「そうですねぇ。喜ぶ姿が拝見できるんやろか」
穏やかな空気が控え室を包んでいく。
時計の針は、ライブの開始時間へと一刻ずつ近づいていた。

《絶頂》
ライブは無事盛況に終わり、楽屋での打ち上げを終え
着替え終わると店に会場を移し大打ち上げとなった。
記録用で撮影したビデオを回しながら、
ライブスタッフ全員を含めた大きなお疲れ様会となる。
映像を見ながら囃し立てたり、ペンライトを降ってみたりと盛り上がる中
政親は奥の席に座り、静かにグラスを傾けながら映像を確認している。
そこへ、真っ赤な顔をした山口が隣の席に陣取った。
【山口 遼太】
「おおおおおお疲れ様でええッッす、黒田しゃんッ……!」
【政親】
「……………、お疲れ様です」
【山口 遼太】
「黒田しゃんも一緒に、ペンライト、回しますかッ回しませんかッッ!」
【政親】
「回しません」
【山口 遼太】
「そうでしか……」
ろくに呂律も回らず、テンションはいつも以上に上がり
面倒くさい絡み酒に政親は眉間の皺を深くして訊ねる。
【政親】
「……貴方、誰にこんなになるまで飲まされたんですか」
【山口 遼太】
「榛貴さんでしッッ!ですが、ちゃんと片付けはひます!!
俺はッ、みなさんの、成長が……素晴らしくッこれからも、支えたいと……ッッ
心の底から、思っているンです黒田しゃんッ!」
【政親】
「今日ぐらい休んでもいいでしょう。貴方もよく頑張って居ますから」
【山口 遼太】
「………ひゃいっ!すみません!……………え、あの、今、なんて……?」
【政親】
「それと、うるさいのでもう私の席には来ないように。戻りなさい」
【山口 遼太】
「ええ~~!?あの、黒田さんッッ」
【政親】
「二度同じことは……」
【山口 遼太】
「言わせマセン………」
とぼとぼと席に戻る山口に目もくれず、記録用のビデオに視線を移す。
政親は家に帰ってからもう一度、一人きりでじっくりと
ビデオに目に通すことを決め、グラスに口を付けたのだった。
