本編
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《兆し》
【政親】
「さぁ、入りなさい」
【???】
「……はい」
【榎本公志郎】
「やだぁ、いいカラダ!この子どうしたの?」
【政親】
「急に時間が出来てしまい、使い道に悩んでいたようなので。
私がその時間を預かることにしたんです」
有村 直樹(アリムラ ナオキ)
元競泳選手で、怪我をきっかけにアイドルに転向。
普段は無口で強面だが根は真面目。猫によく好かれる。
【榎本公志郎】
「そう、怪我で……それは残念だったわね」
【有村 直樹】
「いえ、自分は……競泳という道を奪われたら、何をすればいいのか…」
口を開き答えようとする有村だが、中々その後の言葉が続きそうにない。
無理にして喋る必要はないと、榎本は口を開く。
【榎本公志郎】
「成程ね、なんとなく…わかったわ。
アイドルって素敵な職業よ。是非うちで頑張って頂戴!」
【有村 直樹】
「…お願いします」
口下手かもしれないが、頷いた目には強い意志が宿っている。
この顔が出来るのであれば通用すると榎本は確信を持った。
相変わらずこの敏腕プロデューサーは逸材を見つけてくる。
【榎本公志郎】
「じゃあ、後は任せるわね。うちのプロデューサーに全て任せておけば大丈夫。
なんてったって、カリスマなのよ?」
【政親】
「ご期待には添えるだけの力はあると自負していますよ。
さあ、行きましょうか。これから教えることは沢山あります」
自分に何が出来るのか。有村は拳を握り、一歩を踏み出したのだった。
《本番》
壁の一面が鏡になっているレッスン場をぐるりと見回す。
ジムに通うことが多かった有村でも、いつもマシンが置いてある場所しか利用してこなかった。
自分が、レッスンをしていくというのは、不思議な感覚だった。
【政親】
「座りなさい」
【有村 直樹】
「………?解りました」
政親は促され腰を下ろした有村の後ろに回るとしゃがみこんで足を開かせる。
背中をゆっくりと押し、前屈をさせた。
【政親】
「大方、予想通りですね。貴方の為の新しいメニューです。
暫くはこちらを中心にトレーニングを行ってください」
手渡された資料を見ると、細かなストレッチやトレーニングの内容が組まれている。
ざっと目を通しただけでも、以前渡されたリハビリ用のものではなく、
スポーツ医学的観点から体幹を鍛え、怪我をしにくい体を作り上げるメニューのようだった。
【有村 直樹】
「………ありがとうございます!」
有村は静かに感動していた。
怪我で目的を失い、呆然と立ち尽くしたまま動けなかった自分をここまで導いてくれたのは政親のおかげだ。
今ではすっかり怪我は癒え、違う形だが体を動かし生かせることが出来る。
新しい道が、開いている。
【政親】
「………感心していただいている場合ではありませんよ。
貴方はまだ鍛えなければいけないことがあります」
【有村 直樹】
「………」
なんだろうか。有村には、思いつく心当たりがない。
アイドルになる為に必要なことは何か。
じっと考え込んでいると、いつのまにか政親が目の前にまで距離を詰めている。
【政親】
「貴方の場合、課題は話術と…こちら、ですね」
【有村 直樹】
「っ…ん、ふ、う…!?」
気づいた時には、ぬるりとしたものが口内に侵入していた。
それが政親の舌と気づいた頃には、有村はレッスン場に転がされていて。
指導は長丁場に及んだ。
《絶頂》
【有村 直樹】
「………帰りました」
【政親】
「随分と信じられないような目をして帰ってきましたね」
アイドルの他にも、余計に開かなくてもいい新しい扉を
無理やりこじ開けられた気分だった。
長ったらしい指導の後、すぐに営業に向かわされたのだ。
営業相手は、仕切りに体格を褒め気持ち悪いなんてものでもなく。
思い出すだけで、おぞましい記憶だ。
【政親】
「貴方にはその価値があるのですよ。
自分の使いどころが理解するためにも、よく覚えておくように」
【有村 直樹】
「………」
有村には、何て答えていいのかわからない。
一日に衝撃的な出来事が多すぎて、思考が追いつかない。
畳み掛けるように、政親の言葉は降り注いでくる。
【政親】
「今日はあくまでも及第点だ。もう少し訓練が必要ですね。
体力だけは、自信があるのでしょう?」
混乱する中で、政親の声はハッキリと頭に入ってくる。
迷いのない眼差しと力強い意思に導かれるまま歩いていれば、
何も間違いはないのではないかと思わせるような説得力を感じる。
【政親】
「ついてきなさい」
有村はゆっくりと事務所を出る政親の後を追いかけたのだった。