本編
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《兆し》
【墨代 睡蓮】
「ふぁ!黒田ひぁん……」
控え室に入った政親の目に、頬いっぱいに何かをつめた墨代が映る。
手に持っている弁当を見ると、ため息をつき額を押さえながら注意をする。
【政親】
「挨拶は大事ですが口に詰めたまま挨拶するのは行儀が悪い。
また、目上の者が来たら弁当は机に戻しなさい」
【墨代 睡蓮】
「ふぁい」
【政親】
「今の話聞いていましたか」
【墨代 睡蓮】
「……………んぐ、すみません。ふう、しょうが焼き美味しかった」
黙々と咀嚼し、飲み込む。
弁当が空になると満腹になったようでにこにこと機嫌が良い。
冴島の一件があっても、墨代の態度は変わりなかった。
【墨代 睡蓮】
「ところで、なんで"目"上、と言うんでしょう。
頭上、とかの方が偉そうだと思いませんか?」
【政親】
「心底、どうでもいいです」
【墨代 睡蓮】
「そうですか……」
政親の冷淡とした態度や物言いも全く気にしない様子で、
自分から問いかけたというのに既に墨代の関心は無くなっている。
自分もどうでもいいのではないか、と怒っていたら墨代と話していられないので政親も別段気にすることはなかった。
【墨代 睡蓮】
「黒田さん、お弁当食べないならもらっていいですか?」
【政親】
「……………どうぞ」
墨代は、よく食べる。
だが、肌が荒れることもなければ、スタイルを崩したところも見かけない。
【政親】
「この身体のどこに消えるんでしょうか」
【墨代 睡蓮】
「んっ……」
墨代のシャツの間に指を割り込ませ、腰骨をなぞる。
エンジェル営業と政親の手によって育てられた身体はいとも簡単に熱が灯る。
【政親】
「ほら、弁当を落としますよ」
【墨代 睡蓮】
「……ン、黒田さんが…、触る…から…ぁっ……」
【政親】
「人のせいにしてはいけませんね」
かろうじて弁当は持ちながらも、墨代の手から箸が落ちる。
【墨代 睡蓮】
(新しい割り箸、もらってこなきゃだ……)
畳に倒れこみながら、墨代は最後まで弁当のことを考えていた。
《本番》
【墨代 睡蓮】
「うーん」
【政親】
「どうしたんです」
改めてシャツを着なおしながら考え込む墨代を見て、政親が問う。
【墨代 睡蓮】
「俺が黒田さんのお弁当を頂いたわけだから、
黒田さんは俺を美味しく頂いたというわけですね!」
【政親】
「…、違います。
それに、この程度はつまみ食いと言えるでしょう」
【墨代 睡蓮】
「黒田さん、うまい!」
呆れることには変わりないが、このかみ合わない会話を少し楽しみ始めている自分に気づいた政親は
少し驚きながらも表情にはおくびにも出さず、墨代を楽屋に出るようにと促す。
【政親】
「……いいから、そろそろエンジェル営業の時間です」
【墨代 睡蓮】
「はーい」
この奇妙な快感は墨代でしか味わえない。
今からエンジェル営業の相手となる先方は
この魅力に惹き込まれ何度も墨代を指名し仕事を入れ続けている。
強い個性はアイドルの一番の武器だ―
冴島もことだ、どうせスパイとして送り込んだあたりだろうが…
喜ばしい豪華なプレゼントを受け取った―そんな気分だった。
《絶頂》
【墨代 睡蓮】
「ただいま帰りました」
【榎本 公志郎】
「お帰りなさい!あら、早くない?」
政親と別れてから2時間も経たないうちに、墨代が事務所に帰って来たのだ。
【墨代 睡蓮】
「最近は、食べてる君が好きって、お食事だけのときもあるんです。
それで、今度はグルメレポーターやってみないかって言ってました」
―♪―
【榎本 公志郎】
「あら、さっそく先方から電話よ!
きっと睡蓮のスケジュールを押さえにきたのね」
榎本は機嫌良く電話を取り、先方に営業後の礼を告げると仕事の打ち合わせに入っていった。
【政親】
「睡蓮、上出来ですね」
【墨代 睡蓮】
「ありがとうございます。
あ、でもコメント俺に出来るでしょうか……
黒田さんの言葉責め、ていうんですよね?言葉のレパートリー?
グルメレポートの言葉責め、教えてください」
【政親】
「………」
黙り込んだ政親を不思議に思った墨代は、目の前で手を振ってみせ腕をひいた。
【墨代 睡蓮】
「…あの、黒田さん?」
【政親】
「知りたいというなら、実践で教えるしかありません。行きましょうか」
【墨代 睡蓮】
「えっと、こっちって営業の勉強する建物に向かう道では?」
【政親】
「言葉責め、味わいたいのでしょう?」
墨代は、まず言葉の選び方が大事だということを学んだ。