告白編 -谷崎の場合-
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【谷崎】
(バイト以外の時間も、毎日遅くまでチームの事を考えて、昼間は授業と、課題のレポート…)
【谷崎】
(最近では…、夏目さんに、スポーツマッサージの指導も受けていると聞く……)
【谷崎】
「…宮沢、お前…最近、無理をし過ぎではないのか?」
【宮沢】
「……ん」
俺の呼びかけに応えるように、声を上げた宮沢。…だが、目を覚ました訳ではないらしい
【谷崎】
(…宮沢)
机に伏して寝ている宮沢の前髪を、そっと指ですくう
【谷崎】
(……穏やかな、寝顔だな)
あどけない寝顔で、ゆるやかに肩を上下させる親友の姿に…、思わず頬を緩ませる
―こいつが、再びこんな風に…穏やかな日々を過ごせるようになるなんて
【谷崎】
(…本当に、お前が希望を取り戻してくれて…良かった。
…宮沢)
この、幸せな刻を噛みしめながら
俺は…、2年前のあの日を思い出していた
―宮沢の顔から笑顔が消えた、あの日
―俺の命と引き換えにしてでも、宮沢の笑顔を取り戻したいと願った……あの、夏
……………
その日、宮沢は高校最後のインターハイに向けて、最後の追い込みをしていた宮沢が部活に出ている間
俺はいつも通り図書室で、自身の受験勉強と並行して、宮沢のための受験対策ノートを作っていた
―しかし
そんな日常は、突然終わりを遂げたのだ
【谷崎】
(…そろそろ、宮沢の部活が終わる時間か
………ん?)
……図書室の静寂を破る、耳障りなサイレンの音が響いてきたのは…15時を回った頃だった
【谷崎】
(……近いな。
…これは、うちの学校の敷地内に停まった……のか?)
ダダダダダダ……
ガラッ!
程なく、校則など一切無視して廊下を駆け、図書室に飛び込んできた級友の第一声は―信じ難いものだった
【クラスメイト】
「谷崎!聞いたか!?
宮沢がさっき、プールで事故って病院に運ばれたって…!!」
……………
―その後、病院で知らされた
『もう…競泳選手として、第一線での活躍は望めない』という事実
―中学から、全国トップクラスの実力があり、インターハイ2連覇の……
将来、日本の競泳界を背負って立つ存在になると、期待されていた選手の―突然の事故による引退宮沢自身の状態などお構いなしに押し寄せるマスコミの群れ宮沢の入学時から、多大な期待を寄せていた―校長や学校関係者たちの落胆の声宮沢を歴代最高の部長として、そして憧れの選手として慕っていた―部員達の涙宮沢はそれらを―
ただベッドの上で、黙って受け止めていた
―あんなに輝いていた瞳に
何も映さなくなった親友を前に……
俺は、何一つ言葉を発することもできず………
ただ―
黙って、傍に居る事しかできなかった
代われるものなら、喜んでこの身を差し出したかった
引き換えにできるものなら、命ですら惜しげもなく投げ出して…、宮沢の笑顔を取り戻したかった
だが―
現実の俺には、何の力もなく……
くる日もくる日も
俺はただ、宮沢の傍に居続けた
―宮沢のご両親が、俺の身体や、目前に迫る受験のことを心配してくれたが…
俺は、授業が終わるとすぐ…面会時間が終わるまで、1日も欠かさず…宮沢の傍に居続けた
放っておくと何も食べない宮沢の口に、食事を運び…
目の下に濃いクマができているのを見つけては、無理にでも枕に頭を預けさせ…、
眠りに落ちるまで手を握っていた
【谷崎】
(データなど、何にも役に立たない事象というのは……あるものなのだな)
己の無力を噛みしめながら、宮沢の傍に居続けて……数週間が経過した、ある日
【宮沢】
「―潤司」宮沢が、不意に口を開いた
―第2話―
『キミのぬくもり』
………
…………
【宮沢】
「…………」
【宮沢】
「―潤司」
目を開けているのに、己の掌さえ見えないような闇の中……
気が付くと、彼だけが…そこに居た
【谷崎】
「―何だ?宮沢」
―世界中の優しい気持ちを集めたみたいな表情と声で
彼は―
俺の名を呼んだ
【谷崎】
「今日は、風が気持ちいいぞ。
寒いなら、窓を閉めるが…」
―ああ、この声だ
長く深い暗闇の中……
この声だけは…意識の彼方からだけど、確かにずっと聞こえていて……
時折、温かな掌で…、俺の手を握ってくれて……
【宮沢】
(そうだ…。彼は俺の親友で…
いつも俺の部活が終わるのを、図書室で待っていてくれて…)
……部活?
―図書室?
【宮沢】
「…潤司。ここ…どこ?
……俺、どうしたのかな」
全体的に白っぽい部屋。
何故かベッドの上にいる俺
………ギシ
【宮沢】
「…うぁっ!」
ベッドから降りようと、身体を動かそうとした瞬間―
脚に激痛が走った
【谷崎】
「!!
宮沢っ!」
潤司が咄嗟に腕を伸ばし、俺の上体を抱き止める
【宮沢】
「……………
………俺の……脚?」
…包帯に巻かれ、動かさないよう、何かの器具で固定された脚は…確かに、俺の腰から伸びているもので…
【宮沢】
「………―あ」
その直後、俺は全てを思い出した
―部活動中、プールサイドで…
ふざけて前を見ずに走っていた…後輩の身体が、変な角度から、強くぶつかってきて…
バランスを崩して飛び込み台に激突した俺の脚に、熱の塊のような衝撃が奔って……
スローモーションのように、周りの景色が、コマ送りで回転したのを覚えている
そして―、薄れゆく意識の中で聞いた
けたたましいサイレンの音
眩しいフラッシュと、禍々しく黒光りする―無数のカメラやマイク
―ドアの向こうから聞こえてきた、『再起不能』という言葉
―啜り泣く級友や、後輩たちの声
―大声で謝罪の言葉を繰り返す―、俺に激突した後輩のものと思われる慟哭
―その後、おぼろげな意識の中で
常に傍に感じていた……目の前に居る親友の気配
【宮沢】
「あ……あ…、潤司……」
震える声で名を呼びながら…、その胸にすがりつく
【谷崎】
「………宮沢」
そんな俺の肩を、潤司は……
いたわるように、両手で抱きとめてくれて……
【宮沢】
「潤司…、潤司……
うええ…、うえぇぇ…
じゅんじ……潤司ぃ……うぁぁ…」
(バイト以外の時間も、毎日遅くまでチームの事を考えて、昼間は授業と、課題のレポート…)
【谷崎】
(最近では…、夏目さんに、スポーツマッサージの指導も受けていると聞く……)
【谷崎】
「…宮沢、お前…最近、無理をし過ぎではないのか?」
【宮沢】
「……ん」
俺の呼びかけに応えるように、声を上げた宮沢。…だが、目を覚ました訳ではないらしい
【谷崎】
(…宮沢)
机に伏して寝ている宮沢の前髪を、そっと指ですくう
【谷崎】
(……穏やかな、寝顔だな)
あどけない寝顔で、ゆるやかに肩を上下させる親友の姿に…、思わず頬を緩ませる
―こいつが、再びこんな風に…穏やかな日々を過ごせるようになるなんて
【谷崎】
(…本当に、お前が希望を取り戻してくれて…良かった。
…宮沢)
この、幸せな刻を噛みしめながら
俺は…、2年前のあの日を思い出していた
―宮沢の顔から笑顔が消えた、あの日
―俺の命と引き換えにしてでも、宮沢の笑顔を取り戻したいと願った……あの、夏
……………
その日、宮沢は高校最後のインターハイに向けて、最後の追い込みをしていた宮沢が部活に出ている間
俺はいつも通り図書室で、自身の受験勉強と並行して、宮沢のための受験対策ノートを作っていた
―しかし
そんな日常は、突然終わりを遂げたのだ
【谷崎】
(…そろそろ、宮沢の部活が終わる時間か
………ん?)
……図書室の静寂を破る、耳障りなサイレンの音が響いてきたのは…15時を回った頃だった
【谷崎】
(……近いな。
…これは、うちの学校の敷地内に停まった……のか?)
ダダダダダダ……
ガラッ!
程なく、校則など一切無視して廊下を駆け、図書室に飛び込んできた級友の第一声は―信じ難いものだった
【クラスメイト】
「谷崎!聞いたか!?
宮沢がさっき、プールで事故って病院に運ばれたって…!!」
……………
―その後、病院で知らされた
『もう…競泳選手として、第一線での活躍は望めない』という事実
―中学から、全国トップクラスの実力があり、インターハイ2連覇の……
将来、日本の競泳界を背負って立つ存在になると、期待されていた選手の―突然の事故による引退宮沢自身の状態などお構いなしに押し寄せるマスコミの群れ宮沢の入学時から、多大な期待を寄せていた―校長や学校関係者たちの落胆の声宮沢を歴代最高の部長として、そして憧れの選手として慕っていた―部員達の涙宮沢はそれらを―
ただベッドの上で、黙って受け止めていた
―あんなに輝いていた瞳に
何も映さなくなった親友を前に……
俺は、何一つ言葉を発することもできず………
ただ―
黙って、傍に居る事しかできなかった
代われるものなら、喜んでこの身を差し出したかった
引き換えにできるものなら、命ですら惜しげもなく投げ出して…、宮沢の笑顔を取り戻したかった
だが―
現実の俺には、何の力もなく……
くる日もくる日も
俺はただ、宮沢の傍に居続けた
―宮沢のご両親が、俺の身体や、目前に迫る受験のことを心配してくれたが…
俺は、授業が終わるとすぐ…面会時間が終わるまで、1日も欠かさず…宮沢の傍に居続けた
放っておくと何も食べない宮沢の口に、食事を運び…
目の下に濃いクマができているのを見つけては、無理にでも枕に頭を預けさせ…、
眠りに落ちるまで手を握っていた
【谷崎】
(データなど、何にも役に立たない事象というのは……あるものなのだな)
己の無力を噛みしめながら、宮沢の傍に居続けて……数週間が経過した、ある日
【宮沢】
「―潤司」宮沢が、不意に口を開いた
―第2話―
『キミのぬくもり』
………
…………
【宮沢】
「…………」
【宮沢】
「―潤司」
目を開けているのに、己の掌さえ見えないような闇の中……
気が付くと、彼だけが…そこに居た
【谷崎】
「―何だ?宮沢」
―世界中の優しい気持ちを集めたみたいな表情と声で
彼は―
俺の名を呼んだ
【谷崎】
「今日は、風が気持ちいいぞ。
寒いなら、窓を閉めるが…」
―ああ、この声だ
長く深い暗闇の中……
この声だけは…意識の彼方からだけど、確かにずっと聞こえていて……
時折、温かな掌で…、俺の手を握ってくれて……
【宮沢】
(そうだ…。彼は俺の親友で…
いつも俺の部活が終わるのを、図書室で待っていてくれて…)
……部活?
―図書室?
【宮沢】
「…潤司。ここ…どこ?
……俺、どうしたのかな」
全体的に白っぽい部屋。
何故かベッドの上にいる俺
………ギシ
【宮沢】
「…うぁっ!」
ベッドから降りようと、身体を動かそうとした瞬間―
脚に激痛が走った
【谷崎】
「!!
宮沢っ!」
潤司が咄嗟に腕を伸ばし、俺の上体を抱き止める
【宮沢】
「……………
………俺の……脚?」
…包帯に巻かれ、動かさないよう、何かの器具で固定された脚は…確かに、俺の腰から伸びているもので…
【宮沢】
「………―あ」
その直後、俺は全てを思い出した
―部活動中、プールサイドで…
ふざけて前を見ずに走っていた…後輩の身体が、変な角度から、強くぶつかってきて…
バランスを崩して飛び込み台に激突した俺の脚に、熱の塊のような衝撃が奔って……
スローモーションのように、周りの景色が、コマ送りで回転したのを覚えている
そして―、薄れゆく意識の中で聞いた
けたたましいサイレンの音
眩しいフラッシュと、禍々しく黒光りする―無数のカメラやマイク
―ドアの向こうから聞こえてきた、『再起不能』という言葉
―啜り泣く級友や、後輩たちの声
―大声で謝罪の言葉を繰り返す―、俺に激突した後輩のものと思われる慟哭
―その後、おぼろげな意識の中で
常に傍に感じていた……目の前に居る親友の気配
【宮沢】
「あ……あ…、潤司……」
震える声で名を呼びながら…、その胸にすがりつく
【谷崎】
「………宮沢」
そんな俺の肩を、潤司は……
いたわるように、両手で抱きとめてくれて……
【宮沢】
「潤司…、潤司……
うええ…、うえぇぇ…
じゅんじ……潤司ぃ……うぁぁ…」