告白編 -谷崎の場合-
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―プロローグ―
―ああ、神様
時間を戻してください
分前―………
いや、むしろ12年前…。俺が、宮沢と出会う前の時間に
………………
…………………
―あいつと出会ったのは、俺たちが小学校3年のときだった
新潟から転入してきた俺は、
地方訛りと、感情の出にくい顔のせいで、すぐにはクラスメイトと打ち解けられずにいた
【谷崎】
(現状大きな問題はないが…。
早く周囲に馴染むに越したことはないだろう)
【谷崎】
(―まずはクラスメイトの名前、それから大まかな人となりを調査・分析してリスト化するか…)
その日の内に、クラスメイト分析データ用のノートを購入した俺は…
次の日から早速、名前の暗記と、データ取得を開始したのだった
【谷崎】
(―ふむ。今日の授業中や掃除中の様子からすると、佐藤は比較的お調子者のようだ)
【谷崎】
(そして、佐藤とよく行動を共にしている高木…。あいつは無類の犬好きだな)
―クラスメイト分析は、毎週水曜日の放課後に、教室でデータをまとめるのが定例となっていた
そして―、その結果が功を奏してか
俺は徐々にクラスメイトとの会話に切り込み、打ち解けていった
【谷崎】
(やはり、裏打ちされたデータと、それに基づく仮説から起こされる行動は、理に適っているな)
己のデータ収集から得られた結果に満足しつつ、窓の外を眺めていると―
ガラガラッ
【???】
「あっ…!」
教室の後ろのドアが音を立てて開き、見知った顔の生徒が飛び込んできた
【谷崎】
「………お前は
……宮沢、だったか」
宮沢宮沢―
出席番号18番
転入以来―、俺はこいつの笑顔しか見たことがなかった……だが
【谷崎】
「………泣いて、いるのか?」
右手で頬をこする宮沢の瞳は、表面に湛えられた水分が、いまにも零れ落ちそうで……
【宮沢】
「…この時間ならもう、誰も居ないかなって思ったんだけど…。谷崎くん、忘れ物でも………あ」
口を開いた途端、宮沢の両目から、ポロポロと涙が転がり落ちる
【宮沢】
「わ…わ…、ご…ごめんね。…男のクセに泣くなんて、みっともないよね。もう中学年なのにさ…」
ぐしぐしと、涙を袖で拭いながら、何故か謝る宮沢
【谷崎】
「問題ない。
それより、俺で良ければ話してみるといい」
【谷崎】
「解決案は出せないかもしれないが、人に話すだけでも楽になるものだと、本に書いてあった」
【宮沢】
「………」
宮沢はしばらく俺の顔を見つめていたが…やがて、口を開いた
【宮沢】
「ふふ。谷崎くんて、おとなの人みたいだね」
【宮沢】
「…………あのね
ボクが泣いてたこと、誰にも言わないでくれる?」
俺が無言でコクリと頷くと、
宮沢は、隣の席に腰を下ろし…
静かに、涙の理由を話し始めた
―泳ぐのが何より大好きなこと
―なのに
最近思うように泳げなくなってしまったこと
―そして
その所為で、スイミングスクールのリレーの選手から、
外されてしまったこと
【宮沢】
「…ボク、もう…ぇっ、一生…、上手に…泳げ…泳げなかったら…て…うくっ、泳ぐの…好き…のに…えっ」
喋っているうちに、辛い気持ちを思い出してしまったのだろう
大粒の涙を流して、しゃくりあげながら話す宮沢
―傍から見れば、ただの…よくあるスランプに過ぎない
【谷崎】
(こいつは、心の底から泳ぐのが好きなのだな)
【谷崎】
(普段はただ、ヘラヘラしている奴だと思っていたが…、こんなにも懸命で、ひたむきに……)
【谷崎】
「心配は無用だ
だから、もう泣き止むといい」
ポケットからハンカチを取り出して、宮沢に手渡す
【宮沢】
「ふぇ……?」
宮沢が反応したのを確認してから、俺は話を続けた
【谷崎】
「今日から俺が、お前の身体能力、フォーム、食事などのデータを取り、それに基づく練習メニューを作ろう」
【谷崎】
「正しいデータに基づいて、基礎から練習を重ねれば、必ず良い結果が得られる」
【谷崎】
「…お前の水泳にかける情熱が、本物なら―な」
【宮沢】
「…………」
俺を見上げる、まだ濡れたままの…大きな一対の瞳が、
2、3度瞬きをしたかと思うと……
【宮沢】
「ありがとう
谷崎くんて、本当にすごいね!」
【宮沢】
「ボク、がんばるよ!
だから…協力、してくれる?」
大輪の向日葵のような笑顔で答えた宮沢に、俺は…力強く頷いて見せた
それから3ヶ月も経つ頃には―
宮沢はすっかり調子を取り戻し、そして順調にタイムを伸ばしていった
………俺はその後も
ずっと…宮沢のサポートをし続けた
―そして
【宮沢】
「潤司!
えへへ…。高校でも、また3年間よろしくね!」
【谷崎】
「ああ。よろしく宮沢」
―俺たちはいつも一緒にいる、無二の親友同士になっていて
―宮沢は、全国大会で連勝を重ねる、ジュニアトップクラスの競泳選手へと、成長を遂げていたのだった
プロローグ終了
―第1話―
『無力』
【谷崎】
「宮沢、来週からの、井伏さんの陸上トレーニングだが…」
【宮沢】
「………」
【谷崎】
「……宮沢?」
【宮沢】
スー…スー……
机の上のシンクロ入門に頭を預け、目を閉じた宮沢の口から、静かな呼吸音が漏れている
【谷崎】
「…………
寝て、しまったのか」
【谷崎】
「……………」
【谷崎】
「……そうだな。
お前は、しばらく眠ったほうがいい…」
―宮沢のバイトの入っていない放課後
俺たちはよく、授業の終わった空き教室で、チームの進捗報告ミーティングを行っていた
……だが
―ああ、神様
時間を戻してください
分前―………
いや、むしろ12年前…。俺が、宮沢と出会う前の時間に
………………
…………………
―あいつと出会ったのは、俺たちが小学校3年のときだった
新潟から転入してきた俺は、
地方訛りと、感情の出にくい顔のせいで、すぐにはクラスメイトと打ち解けられずにいた
【谷崎】
(現状大きな問題はないが…。
早く周囲に馴染むに越したことはないだろう)
【谷崎】
(―まずはクラスメイトの名前、それから大まかな人となりを調査・分析してリスト化するか…)
その日の内に、クラスメイト分析データ用のノートを購入した俺は…
次の日から早速、名前の暗記と、データ取得を開始したのだった
【谷崎】
(―ふむ。今日の授業中や掃除中の様子からすると、佐藤は比較的お調子者のようだ)
【谷崎】
(そして、佐藤とよく行動を共にしている高木…。あいつは無類の犬好きだな)
―クラスメイト分析は、毎週水曜日の放課後に、教室でデータをまとめるのが定例となっていた
そして―、その結果が功を奏してか
俺は徐々にクラスメイトとの会話に切り込み、打ち解けていった
【谷崎】
(やはり、裏打ちされたデータと、それに基づく仮説から起こされる行動は、理に適っているな)
己のデータ収集から得られた結果に満足しつつ、窓の外を眺めていると―
ガラガラッ
【???】
「あっ…!」
教室の後ろのドアが音を立てて開き、見知った顔の生徒が飛び込んできた
【谷崎】
「………お前は
……宮沢、だったか」
宮沢宮沢―
出席番号18番
転入以来―、俺はこいつの笑顔しか見たことがなかった……だが
【谷崎】
「………泣いて、いるのか?」
右手で頬をこする宮沢の瞳は、表面に湛えられた水分が、いまにも零れ落ちそうで……
【宮沢】
「…この時間ならもう、誰も居ないかなって思ったんだけど…。谷崎くん、忘れ物でも………あ」
口を開いた途端、宮沢の両目から、ポロポロと涙が転がり落ちる
【宮沢】
「わ…わ…、ご…ごめんね。…男のクセに泣くなんて、みっともないよね。もう中学年なのにさ…」
ぐしぐしと、涙を袖で拭いながら、何故か謝る宮沢
【谷崎】
「問題ない。
それより、俺で良ければ話してみるといい」
【谷崎】
「解決案は出せないかもしれないが、人に話すだけでも楽になるものだと、本に書いてあった」
【宮沢】
「………」
宮沢はしばらく俺の顔を見つめていたが…やがて、口を開いた
【宮沢】
「ふふ。谷崎くんて、おとなの人みたいだね」
【宮沢】
「…………あのね
ボクが泣いてたこと、誰にも言わないでくれる?」
俺が無言でコクリと頷くと、
宮沢は、隣の席に腰を下ろし…
静かに、涙の理由を話し始めた
―泳ぐのが何より大好きなこと
―なのに
最近思うように泳げなくなってしまったこと
―そして
その所為で、スイミングスクールのリレーの選手から、
外されてしまったこと
【宮沢】
「…ボク、もう…ぇっ、一生…、上手に…泳げ…泳げなかったら…て…うくっ、泳ぐの…好き…のに…えっ」
喋っているうちに、辛い気持ちを思い出してしまったのだろう
大粒の涙を流して、しゃくりあげながら話す宮沢
―傍から見れば、ただの…よくあるスランプに過ぎない
【谷崎】
(こいつは、心の底から泳ぐのが好きなのだな)
【谷崎】
(普段はただ、ヘラヘラしている奴だと思っていたが…、こんなにも懸命で、ひたむきに……)
【谷崎】
「心配は無用だ
だから、もう泣き止むといい」
ポケットからハンカチを取り出して、宮沢に手渡す
【宮沢】
「ふぇ……?」
宮沢が反応したのを確認してから、俺は話を続けた
【谷崎】
「今日から俺が、お前の身体能力、フォーム、食事などのデータを取り、それに基づく練習メニューを作ろう」
【谷崎】
「正しいデータに基づいて、基礎から練習を重ねれば、必ず良い結果が得られる」
【谷崎】
「…お前の水泳にかける情熱が、本物なら―な」
【宮沢】
「…………」
俺を見上げる、まだ濡れたままの…大きな一対の瞳が、
2、3度瞬きをしたかと思うと……
【宮沢】
「ありがとう
谷崎くんて、本当にすごいね!」
【宮沢】
「ボク、がんばるよ!
だから…協力、してくれる?」
大輪の向日葵のような笑顔で答えた宮沢に、俺は…力強く頷いて見せた
それから3ヶ月も経つ頃には―
宮沢はすっかり調子を取り戻し、そして順調にタイムを伸ばしていった
………俺はその後も
ずっと…宮沢のサポートをし続けた
―そして
【宮沢】
「潤司!
えへへ…。高校でも、また3年間よろしくね!」
【谷崎】
「ああ。よろしく宮沢」
―俺たちはいつも一緒にいる、無二の親友同士になっていて
―宮沢は、全国大会で連勝を重ねる、ジュニアトップクラスの競泳選手へと、成長を遂げていたのだった
プロローグ終了
―第1話―
『無力』
【谷崎】
「宮沢、来週からの、井伏さんの陸上トレーニングだが…」
【宮沢】
「………」
【谷崎】
「……宮沢?」
【宮沢】
スー…スー……
机の上のシンクロ入門に頭を預け、目を閉じた宮沢の口から、静かな呼吸音が漏れている
【谷崎】
「…………
寝て、しまったのか」
【谷崎】
「……………」
【谷崎】
「……そうだな。
お前は、しばらく眠ったほうがいい…」
―宮沢のバイトの入っていない放課後
俺たちはよく、授業の終わった空き教室で、チームの進捗報告ミーティングを行っていた
……だが
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