告白編 -吉川の場合-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
─プロローグ─
ザザーン…ザザーン…
──波の音だけが、俺たちを包んでいる。
【吉川】
「……」
【宮沢】
「……」
【宮沢】
(吉川先輩…、どうしたんだろう)
既にかれこれ10分以上…
2人並んで、黙って砂浜に座っている
初秋の平日の海岸には人気もなく…
遠くに、犬の散歩をしている老人が歩いているくらいだ
【宮沢】
「……風が気持ちいいですね」
【吉川】
「ん?……ああ」
【宮沢】
「…………」
話しかけても、心ここにあらずと言った様子で…
目を閉じたり、ぼんやりと水平線を眺めたりしている吉川先輩
―そもそも
俺がここに居るのは、吉川先輩に誘われたからだ
【吉川】
「…お前今日バイト休みだよな。
海見たいから、ちょっと付き合え」
そう言われて……
コマめの講義が終わった後…
電車に乗って、こうして2人で海までやってきたのだった
【宮沢】
もしかして先輩、何か悩みでもあるのかな……)
【宮沢】
あっ!最近ハードな遠征ばっかり提案してるからウンザリしちゃったとか……)
【宮沢】
だから吉川先輩…、俺に海の辛さを思い知らせるために、今日ここに……)
【吉川】
「………」
【吉川】
「…お前、相変わらず百面相だな」
【宮沢】
「…ハッ!?」
…目を閉じていた筈の先輩が、こちらに冷めた眼差しを投げかけている
【宮沢】
「ああッ!!いやその、ちょっと考え事をしていまして…」
【吉川】
「………」
じー………
【宮沢】
「あうあう……」
【吉川】
「………」
じー………
【宮沢】
「ううう……」
吉川先輩は、そのまま俺の顔を無言で見つめ続けている
【宮沢】
(視線が痛いよう…。
うう…、考え事するとすぐ顔に出ちゃうんだよな…、俺のバカー…)
【吉川】
「お前…さ、」
【宮沢】
「えっ?」
唐突に沈黙が破られ、驚いて顔を上げる
【吉川】
「お前……、
一体何なんだろうな」
【宮沢】
「……へ?」
まさかの、俺自身の存在を問われる言葉に…いっしゅん思考が止まった
【宮沢】
(…ハッ!?)
【宮沢】
「お…俺っ!…いつも無茶な遠征やトレーニングばかり…本当にごめんなさい……!」
【宮沢】
「これからはもっと気を付けますから、だから…消えろとまでは思わないで下さい……」
日頃の練習内容を思い返し、大変な申し訳なさが押し寄せて…シュンとなってしまう俺
【吉川】
「あ…悪ぃ、そうじゃねぇんだ。
別に普段の練習やお前の指導に全く不満はねぇよ」
吉川先輩はバツが悪そうにそう言うと、そのまま話を続けた
【吉川】
「最近…、お前のこと見てると…ワケ分かんなくなるっつうか……」
【吉川】
「デュエットの練習中とかによ、お前の身体に触れてると…頭ん中まっしろになっちまって…」
【吉川】
「せっかくお前が忙しい時間削って教えてくれてんのによ…」
そんな風に話す吉川先輩の顔は、なんだかとても辛そうで……
【宮沢】
「…吉川先輩、やっぱり最近ハードメニューだったから…お疲れなんじゃないですか?」
【宮沢】
「あ、脳の疲れにはブドウ糖が効きますから、お米やパンを……」
【吉川】
「…違ぇよ」
【吉川】
「そんなんじゃ……ねぇよ……」
【宮沢】
「…先…ぱい?……」
初めて見る、吉川先輩の悲痛な表情に…俺は何も言えなくなって……
そして再び、2人の間に沈黙が訪れた
―プロローグ終了
―第1話―
『吉川の苦悩』
元々…
出会った頃から、宮沢のことは気になっていた
だけどそれは…
いつもヘラヘラ笑ってる、危なっかしいけど憎めない後輩って感じで…
つい、手助けしてやりたくなっちまうような……、そんな感情の筈だった
―なのに
【宮沢】
「吉川先輩!来て下さったんですね!」
―いつも真っ直ぐに向けられる、あいつの笑顔……
【宮沢】
「吉川先輩……俺……」
―たまに見せる、落ち込んだ表情……
―そして………
【宮沢】
「吉川先輩!」
【宮沢】
「俺―、先輩とシンクロができて……嬉しいです」
【宮沢】
「………吉川先輩」
―シャワールームや更衣室での……あいつの………
【吉川】
(くそ…っ、どうしちまったんだ…俺……)
宮沢とシンクロの練習を続けるに従い……
個人レッスンで水着の宮沢の肌に触れるに従い……
日に日に…、自分の中の何かが乱れ始めているのが分かる
今日、こうして宮沢を強引に海に誘ったのは
そんな自分の気持ちの正体を確かめて
胸のモヤモヤに決着をつけるためだった
だけど…
いざとなると何も言葉にできないまま…、こうして時間ばかりが過ぎていく
隣を見ると
宮沢が所在なさげに膝を抱えて、波打ち際を見つめている
ザザーン…ザザーン…
──波の音だけが、俺たちを包んでいる。
【吉川】
「……」
【宮沢】
「……」
【宮沢】
(吉川先輩…、どうしたんだろう)
既にかれこれ10分以上…
2人並んで、黙って砂浜に座っている
初秋の平日の海岸には人気もなく…
遠くに、犬の散歩をしている老人が歩いているくらいだ
【宮沢】
「……風が気持ちいいですね」
【吉川】
「ん?……ああ」
【宮沢】
「…………」
話しかけても、心ここにあらずと言った様子で…
目を閉じたり、ぼんやりと水平線を眺めたりしている吉川先輩
―そもそも
俺がここに居るのは、吉川先輩に誘われたからだ
【吉川】
「…お前今日バイト休みだよな。
海見たいから、ちょっと付き合え」
そう言われて……
コマめの講義が終わった後…
電車に乗って、こうして2人で海までやってきたのだった
【宮沢】
もしかして先輩、何か悩みでもあるのかな……)
【宮沢】
あっ!最近ハードな遠征ばっかり提案してるからウンザリしちゃったとか……)
【宮沢】
だから吉川先輩…、俺に海の辛さを思い知らせるために、今日ここに……)
【吉川】
「………」
【吉川】
「…お前、相変わらず百面相だな」
【宮沢】
「…ハッ!?」
…目を閉じていた筈の先輩が、こちらに冷めた眼差しを投げかけている
【宮沢】
「ああッ!!いやその、ちょっと考え事をしていまして…」
【吉川】
「………」
じー………
【宮沢】
「あうあう……」
【吉川】
「………」
じー………
【宮沢】
「ううう……」
吉川先輩は、そのまま俺の顔を無言で見つめ続けている
【宮沢】
(視線が痛いよう…。
うう…、考え事するとすぐ顔に出ちゃうんだよな…、俺のバカー…)
【吉川】
「お前…さ、」
【宮沢】
「えっ?」
唐突に沈黙が破られ、驚いて顔を上げる
【吉川】
「お前……、
一体何なんだろうな」
【宮沢】
「……へ?」
まさかの、俺自身の存在を問われる言葉に…いっしゅん思考が止まった
【宮沢】
(…ハッ!?)
【宮沢】
「お…俺っ!…いつも無茶な遠征やトレーニングばかり…本当にごめんなさい……!」
【宮沢】
「これからはもっと気を付けますから、だから…消えろとまでは思わないで下さい……」
日頃の練習内容を思い返し、大変な申し訳なさが押し寄せて…シュンとなってしまう俺
【吉川】
「あ…悪ぃ、そうじゃねぇんだ。
別に普段の練習やお前の指導に全く不満はねぇよ」
吉川先輩はバツが悪そうにそう言うと、そのまま話を続けた
【吉川】
「最近…、お前のこと見てると…ワケ分かんなくなるっつうか……」
【吉川】
「デュエットの練習中とかによ、お前の身体に触れてると…頭ん中まっしろになっちまって…」
【吉川】
「せっかくお前が忙しい時間削って教えてくれてんのによ…」
そんな風に話す吉川先輩の顔は、なんだかとても辛そうで……
【宮沢】
「…吉川先輩、やっぱり最近ハードメニューだったから…お疲れなんじゃないですか?」
【宮沢】
「あ、脳の疲れにはブドウ糖が効きますから、お米やパンを……」
【吉川】
「…違ぇよ」
【吉川】
「そんなんじゃ……ねぇよ……」
【宮沢】
「…先…ぱい?……」
初めて見る、吉川先輩の悲痛な表情に…俺は何も言えなくなって……
そして再び、2人の間に沈黙が訪れた
―プロローグ終了
―第1話―
『吉川の苦悩』
元々…
出会った頃から、宮沢のことは気になっていた
だけどそれは…
いつもヘラヘラ笑ってる、危なっかしいけど憎めない後輩って感じで…
つい、手助けしてやりたくなっちまうような……、そんな感情の筈だった
―なのに
【宮沢】
「吉川先輩!来て下さったんですね!」
―いつも真っ直ぐに向けられる、あいつの笑顔……
【宮沢】
「吉川先輩……俺……」
―たまに見せる、落ち込んだ表情……
―そして………
【宮沢】
「吉川先輩!」
【宮沢】
「俺―、先輩とシンクロができて……嬉しいです」
【宮沢】
「………吉川先輩」
―シャワールームや更衣室での……あいつの………
【吉川】
(くそ…っ、どうしちまったんだ…俺……)
宮沢とシンクロの練習を続けるに従い……
個人レッスンで水着の宮沢の肌に触れるに従い……
日に日に…、自分の中の何かが乱れ始めているのが分かる
今日、こうして宮沢を強引に海に誘ったのは
そんな自分の気持ちの正体を確かめて
胸のモヤモヤに決着をつけるためだった
だけど…
いざとなると何も言葉にできないまま…、こうして時間ばかりが過ぎていく
隣を見ると
宮沢が所在なさげに膝を抱えて、波打ち際を見つめている
1/4ページ