告白編 -志賀の場合-
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【志賀】
(…指定登校日、か。そんなもの、もはや俺には意味のないものに過ぎないのだが…)
心の中で悪態を吐きながら…教室へと続く廊下を歩く
ガラガラ
扉を開けて教室へと脚を踏み入れると、既に顔も忘れかけていたクラスメイトたち数人が、こちらへ振り向いた
【志賀】
「…………」
【志賀】
(見覚えのあるようなないような奴らだな。確か、梅野…いや、夢野だったか…?他の2人も、思い出せん…)
特に親しい間柄な訳でもなく、名前すらおぼろげなクラスメイトの横を、無言で取り過ぎようとすると…
【梅野だか夢野】
「……チ。
推薦組がスカしやがって」
うっすらと、しかし明らかに…こちらに敵意を向けた発言が、耳に届く
【たぶん吉田】
「余裕の上から目線でヤツじゃね?こっちは毎日予備校に通い詰めだってのにさぁ」
【おそらく小林】
「あ?あ、俺も家が金持ちだったらな?。裏口入学とかで、イイとこ潜り込めたかもなぁ?」
ちらちらとこちらを意識しながら、しかし俺に直接話しかけるでもない中傷
【志賀】
「……まったく、くだらんな」
深く溜息を吐きながら、こちらも…誰にともなく呟く
【梅野だか夢野】
「……志賀てめぇ。
それ、俺らに向かって言ったのかよ」
馬鹿なりに思うところがあったのだろう。何やら色めきだつ梅…もしくは夢野
【志賀】
「辛いのなら入試などやめれば良いだろう。どうせ、学びたいものもなかろうに」
【おそらく小林】
「……ンだと?」
【志賀】
「そもそも、大学入試など、高校卒業程度の学力が身について居れば、自然と受かるものだ」
【志賀】
「つまり、現状それに足る学力が身についていないのなら、貴様らが勉学を怠ってきたということになる」
【志賀】
「学ぶのが嫌いなのなら、何のために大学へ進学するというのだ?」
―それは素朴な疑問だった
しかし、俺の発言は少なからず、クラスメイトの粗末なプライドを傷つけたのだろう
【たぶん吉田】
「……おい、行こうぜ
こんなクソつまんねー奴と会話してらんねーよ」
おぼろげな3人組は、俺の記憶に甦る前に…、捨て台詞と共に教室を出て、どこかに消えていった
【志賀】
(………これからHRが始まると言うのに)
ようやく自席に腰を下ろし、改めて教室内を見渡す
【志賀】
(似たような奴らばかりだな…)
単語帳、参考書、予備校…毎日、眉間にしわを寄せ、試験のためだけに、苦しそうに勉強している
【志賀】
(こいつら全員……泳げぬ魚だ。
死んだ魚のような、血走った眼(まなこ)で…)
濁った水の中で、無残に水面(みなも)に浮かび、潮の流れに漂い腐ってゆく─
腐敗した身体は、やがて海の藻屑と消え……
忘却の彼方へと去る
【志賀】
(哀れな奴らだ。
既に自分が死んでいるとも気付かずに…)
HRが終わり、少し図書館に寄ってから校舎を出ると…
既に日は西に傾いていた
【志賀】
(冬の日というのは、どうにもせわしいな…)
【志賀】
「…………」
ヒヤリと肌を刺す、黄昏時の空気を肌に感じながら―、俺の脚は…帰路とは別の方角へと向かっていた
高校から、駅と反対方向に5分ほど歩いたところに、その並木道はあった―
冬…とはいえ、都内の初冬は、まだ街路樹の葉も落ちずに紅葉を留めている
―くだらない見合い話が持ち上がっていて、家に帰りたくないとき
―教師の愚かしい発言に、心がささくれ立ったとき
1人になりたくて訪れた、この道
【志賀】
(卒業したら―、もうここに来ることもない……か)
そんなことを思いつつ…歩き出そうとした時、靴の先に何かが当たった
【志賀】
(なんだ……?)
拾い上げてみると、それは…小さな水中眼鏡で……
【志賀】
(何故この季節に、こんなモノがこんな所に…?)
しばらくぼんやりと、その拾得物を見つめていると……
【???】
「あの…、すみません」
脚元から、声が聞こえた
【志賀】
「ん?………子ども?」
下方へ視線を移すと……、いつの間に現れたのか、
俺の胸より低い位置から、黒髪の…小学生と思しき少年が、俺を見上げていた
【少年】
「それ、僕のなんです。
拾って下さってありがとうございます」
【志賀】
「え?ああ…これか」
子供のくせに、ずいぶんしっかりとした物言いだなと思いつつ…水中眼鏡を少年に手渡す
【少年】
「わあ、良かった!
これ、大切なものなんです。本当にありがとうございます」
少年は、大事そうにそれを握り締め、再び礼の言葉を口にした
【志賀】
「いや…、偶然拾っただけだ。
それより、冬に水泳とは珍しいな」
普段は、必要最低限の会話以外は、するのもされるのも煩わしく思うのに…
何故か俺は、その少年に話しかけていた
【志賀】
(………!)
―一瞬、今いる場所が、満開の桜並木の下かのような錯覚に陥る
【少年】
「俺、水泳が大好きなんです
冬は室内プールですけど、毎日だって泳ぎたいくらい大好きで!」
そう言って見せた少年の微笑みは、それくらい温かく、眩しくて―
暗く湿っていた俺の心の奥底まで…、暖かな光が降り注いだ気がした
―第4話―
『告白』
【志賀】
「もう10年以上も前の出来事で…、記憶の奥底に紛れていたのだが…」
(あの時、俺の心を救ってくれた―あの生命の喜びに溢れた…眩しい笑顔)
【志賀】
「貴様をこの大学で初めて見た時、その少年の笑顔を思い出した」
【志賀】
「それからずっと、貴様を見てきた」
【志賀】
「見ているうちに、傍に置いておきたくなった」
【志賀】
「傍に置いているうちに、その身に触れたくなった」
【志賀】
「その身に触れるうちに、他の誰にも触れさせたくなくなった。
もっと、奥まで触れたくなった」
【宮沢】
「志賀、助教……」
宮沢が、俺の名を呼ぶ
―その声で名を呼ばれるだけで、心がざわめく
【志賀】
(世間一般の言葉を使えば
これは、宮沢に恋愛感情を抱いているという事になるのだろうが…)
そんな、有り体の言葉では片付けたくなかった
(…指定登校日、か。そんなもの、もはや俺には意味のないものに過ぎないのだが…)
心の中で悪態を吐きながら…教室へと続く廊下を歩く
ガラガラ
扉を開けて教室へと脚を踏み入れると、既に顔も忘れかけていたクラスメイトたち数人が、こちらへ振り向いた
【志賀】
「…………」
【志賀】
(見覚えのあるようなないような奴らだな。確か、梅野…いや、夢野だったか…?他の2人も、思い出せん…)
特に親しい間柄な訳でもなく、名前すらおぼろげなクラスメイトの横を、無言で取り過ぎようとすると…
【梅野だか夢野】
「……チ。
推薦組がスカしやがって」
うっすらと、しかし明らかに…こちらに敵意を向けた発言が、耳に届く
【たぶん吉田】
「余裕の上から目線でヤツじゃね?こっちは毎日予備校に通い詰めだってのにさぁ」
【おそらく小林】
「あ?あ、俺も家が金持ちだったらな?。裏口入学とかで、イイとこ潜り込めたかもなぁ?」
ちらちらとこちらを意識しながら、しかし俺に直接話しかけるでもない中傷
【志賀】
「……まったく、くだらんな」
深く溜息を吐きながら、こちらも…誰にともなく呟く
【梅野だか夢野】
「……志賀てめぇ。
それ、俺らに向かって言ったのかよ」
馬鹿なりに思うところがあったのだろう。何やら色めきだつ梅…もしくは夢野
【志賀】
「辛いのなら入試などやめれば良いだろう。どうせ、学びたいものもなかろうに」
【おそらく小林】
「……ンだと?」
【志賀】
「そもそも、大学入試など、高校卒業程度の学力が身について居れば、自然と受かるものだ」
【志賀】
「つまり、現状それに足る学力が身についていないのなら、貴様らが勉学を怠ってきたということになる」
【志賀】
「学ぶのが嫌いなのなら、何のために大学へ進学するというのだ?」
―それは素朴な疑問だった
しかし、俺の発言は少なからず、クラスメイトの粗末なプライドを傷つけたのだろう
【たぶん吉田】
「……おい、行こうぜ
こんなクソつまんねー奴と会話してらんねーよ」
おぼろげな3人組は、俺の記憶に甦る前に…、捨て台詞と共に教室を出て、どこかに消えていった
【志賀】
(………これからHRが始まると言うのに)
ようやく自席に腰を下ろし、改めて教室内を見渡す
【志賀】
(似たような奴らばかりだな…)
単語帳、参考書、予備校…毎日、眉間にしわを寄せ、試験のためだけに、苦しそうに勉強している
【志賀】
(こいつら全員……泳げぬ魚だ。
死んだ魚のような、血走った眼(まなこ)で…)
濁った水の中で、無残に水面(みなも)に浮かび、潮の流れに漂い腐ってゆく─
腐敗した身体は、やがて海の藻屑と消え……
忘却の彼方へと去る
【志賀】
(哀れな奴らだ。
既に自分が死んでいるとも気付かずに…)
HRが終わり、少し図書館に寄ってから校舎を出ると…
既に日は西に傾いていた
【志賀】
(冬の日というのは、どうにもせわしいな…)
【志賀】
「…………」
ヒヤリと肌を刺す、黄昏時の空気を肌に感じながら―、俺の脚は…帰路とは別の方角へと向かっていた
高校から、駅と反対方向に5分ほど歩いたところに、その並木道はあった―
冬…とはいえ、都内の初冬は、まだ街路樹の葉も落ちずに紅葉を留めている
―くだらない見合い話が持ち上がっていて、家に帰りたくないとき
―教師の愚かしい発言に、心がささくれ立ったとき
1人になりたくて訪れた、この道
【志賀】
(卒業したら―、もうここに来ることもない……か)
そんなことを思いつつ…歩き出そうとした時、靴の先に何かが当たった
【志賀】
(なんだ……?)
拾い上げてみると、それは…小さな水中眼鏡で……
【志賀】
(何故この季節に、こんなモノがこんな所に…?)
しばらくぼんやりと、その拾得物を見つめていると……
【???】
「あの…、すみません」
脚元から、声が聞こえた
【志賀】
「ん?………子ども?」
下方へ視線を移すと……、いつの間に現れたのか、
俺の胸より低い位置から、黒髪の…小学生と思しき少年が、俺を見上げていた
【少年】
「それ、僕のなんです。
拾って下さってありがとうございます」
【志賀】
「え?ああ…これか」
子供のくせに、ずいぶんしっかりとした物言いだなと思いつつ…水中眼鏡を少年に手渡す
【少年】
「わあ、良かった!
これ、大切なものなんです。本当にありがとうございます」
少年は、大事そうにそれを握り締め、再び礼の言葉を口にした
【志賀】
「いや…、偶然拾っただけだ。
それより、冬に水泳とは珍しいな」
普段は、必要最低限の会話以外は、するのもされるのも煩わしく思うのに…
何故か俺は、その少年に話しかけていた
【志賀】
(………!)
―一瞬、今いる場所が、満開の桜並木の下かのような錯覚に陥る
【少年】
「俺、水泳が大好きなんです
冬は室内プールですけど、毎日だって泳ぎたいくらい大好きで!」
そう言って見せた少年の微笑みは、それくらい温かく、眩しくて―
暗く湿っていた俺の心の奥底まで…、暖かな光が降り注いだ気がした
―第4話―
『告白』
【志賀】
「もう10年以上も前の出来事で…、記憶の奥底に紛れていたのだが…」
(あの時、俺の心を救ってくれた―あの生命の喜びに溢れた…眩しい笑顔)
【志賀】
「貴様をこの大学で初めて見た時、その少年の笑顔を思い出した」
【志賀】
「それからずっと、貴様を見てきた」
【志賀】
「見ているうちに、傍に置いておきたくなった」
【志賀】
「傍に置いているうちに、その身に触れたくなった」
【志賀】
「その身に触れるうちに、他の誰にも触れさせたくなくなった。
もっと、奥まで触れたくなった」
【宮沢】
「志賀、助教……」
宮沢が、俺の名を呼ぶ
―その声で名を呼ばれるだけで、心がざわめく
【志賀】
(世間一般の言葉を使えば
これは、宮沢に恋愛感情を抱いているという事になるのだろうが…)
そんな、有り体の言葉では片付けたくなかった