告白編 -井上の場合-
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―帰宅した俺は
既に夕飯を食べ終えていた弟妹たちと共に…食器を片づけ、風呂の支度をし…
雨戸や勝手口の戸締りを確認してから、明日の朝食用に米を研ぎ、炊飯器のタイマーをセットした
そして―
【井上】
「兄ちゃんちょっと先輩のとこ行ってくるから、朝戻ってなかったらカレーの残り食っとけよ!」
そう言って、制服も着替えないまま家を飛び出した
電車の中で、両親にメールを送る
『今から宮沢先輩のところに行ってきます。戸締りと風呂と、明日の朝食の準備はしてあるから』
【井上】
(俺…、馬鹿なことしようとしてるかなあ…。
先輩、怒るかな……)
俺は今、先輩のバイト先に引き返して…先輩に告白をしに行こうとしている……
【井上】
(たくさん好きって言ってきたけど、先輩は…俺が本気だって、きっと信じてくれてないから…)
いつもは…、練習後の見送りは、夏目さんと宮沢先輩が2人でしてくれる
―そんな2人を残して家に帰るのは、いつもちょっぴり辛くて……
だって、先輩はすごく夏目さんを尊敬してて…
夏目さんと話しているときの先輩は、すごく嬉しそうで…
【井上】
「ずりぃよ…」
ポツリと、独り言が漏れた
【井上】
(俺だって…、先輩より年上だったら…先輩に頼られて…、いつも守って……)
【井上】
(でも…
年齢なんて関係なく、俺は先輩が好きだし!守りたいし!)
―夏目さんが居ない今日は、先輩に2人きりで話ができるチャンスだ
【井上】
(今日こそ…、俺の気持ちを真剣に聞いて貰うんだ!)
そんな決意を胸に、ダッシュでフィットネスプールに向かった俺を……
宮沢先輩は―、
俺の身を案じて少し叱ってくれたあと…
いつもの優しい笑顔を見せて…、自分の部屋に連れて帰ってくれた…
―第2話―
『心配』
【宮沢】
「どうしたんだ?遠慮しないで早くあがれよ」
何故だか玄関でまごまごしている井上を促しつつ、部屋の明かりを点ける
【宮沢】
「ワンルームだから狭いけどさ、話くらいならゆっくりできるだろ?」
【井上】
「お…おじゃまします……」
【宮沢】
「うん?そんな緊張しなくていんだぞ?
誰がいる訳でもないんだからさ」
いつも天真爛漫な井上なのに、何故だか今日は…妙に元気がないというか、ぎこちないというか…
【宮沢】
(よっぽど大きな悩みなのかな…
あ、もしかして競泳の…、部活の方で何かあったとか……)
―元々、井上は競泳の方でインハイ優勝の有力候補として期待されている、高校水泳界屈指の選手だ
【宮沢】
(なのに…、故障した俺なんかを追いかけて、シンクロの道を選ぶなんて…)
いくら本人が希望しての結論とはいえ、その結論を出すのは相当の覚悟がいった筈だ
………元々俺だって競泳出身だ。
道半ばであきらめる…覚悟の重さや辛さは、痛いほどに分かる
【宮沢】
(ましてや井上は、俺みたいに『選手で居られなくなった』訳じゃないんだから……)
【宮沢】
(―でもそれは、他人がどうこういえる話じゃないから……)
俺は気を取り直して、井上の方を振り向いて言った
【宮沢】
「井上、さっき随分汗かいてたろ?先に風呂入って来いよ」
【宮沢】
「ユニットバスだからあんまり寛げないと思うけど。
着替えは俺のを貸すからさ」
ピクリと、井上の肩が小さく揺れた
【井上】
「あ、はい……お借りします」
……パタン
タオルと着替え一式を手渡すと、井上は浴室へと入っていった
………シャアアアアアアア
ほどなく、シャワーの音が聞こえてくる
井上のご両親には、アパートへの道すがら井上が電話をかけ…
そこに俺が出て、軽い状況説明と共に…、息子さんを一晩責任持ってお預かりします…とご挨拶をした
【宮沢】
「さてと、潤司にも連絡しないと……」
『潤司へ、ごめん…今日はちょっと寝不足みたい。明日早く大学行くから、今夜はもう寝るね』
……井上だって、『悩んで先輩に頼りに来ました』なんて、人に知られたくはないだろう
俺は…井上のことには触れずに
約束していた、スカイプでの新メニュー相談ができなくなった旨を、潤司に送信した
ピロピロ…♪
ほどなくして着信があった。
―この音は潤司だ
『了解した。―寝不足だけならいいが、体調が悪い場合は、すぐ連絡しろよ?』
【宮沢】
―ありがと、潤司。…嘘ついてごめんね)
親友に嘘をつく罪悪感を感じつつ、メールを閉じる
【宮沢】
あ…、そういえば志賀助教からもメール来てたっけ)
【宮沢】
「…………」
覚悟を決めてメールを開く
『明日、朝8時に研究室に来い。1分たりとも遅れるな』
【宮沢】
「うあ…、また20本分のテープ起こしとか手伝わされるのかな……」
【宮沢】
「それとも、長時間かかる検証や、遠くのフィールドワークに付き合わされたり……」
……パタン
志賀助教のメールを見ながら、不穏な予感を心に巡らせていると、井上が浴室から戻ってきた
【井上】
「先輩、シャワーお借りしてありがとうございました。
あと…着替えも」
【宮沢】
「おかえり、井上。
それじゃ、俺もシャワーあびてくるから、話はそれからしようか」
【井上】
「は…はい!」
……パタン
井上を部屋に残し、浴室へ移動する
シャアアアアアアア……
【宮沢】
……今日の井上は、本当におかしいな。
いつだって元気な井上が、あんな…)
笑顔がトレードマークのような井上なのに、練習が終わってからずっと、笑い顔を見ていない気がする…
そんなことを思いながら手早くシャワーを済ませ、部屋着に着替える
【宮沢】
「待たせてごめん。お茶淹れるから、そこの座布団に座っててよ」
タオルで髪を拭きながら、キッチンに向かおうと部屋を横切る
【井上】
「………」
井上から返事がないことを特に気にするでもなく、ヤカンに水を入れようと蛇口に手を伸ばして………
―ハシッ
その、伸ばしかけた手首を……井上の手が、背後から掴んだ
【宮沢】
「…?、井上?」
『日本茶より、冷たい飲み物の方が良かった―?』
振り向いて…、そう聞こうと口を開きかけた、矢先の出来事だった
グイ……ッ!
掴まれた手首を支点に、身体が大きく回転し……
ドサ…ッ
俺は、床に倒れて―
馬乗りになった井上を見上げていた
既に夕飯を食べ終えていた弟妹たちと共に…食器を片づけ、風呂の支度をし…
雨戸や勝手口の戸締りを確認してから、明日の朝食用に米を研ぎ、炊飯器のタイマーをセットした
そして―
【井上】
「兄ちゃんちょっと先輩のとこ行ってくるから、朝戻ってなかったらカレーの残り食っとけよ!」
そう言って、制服も着替えないまま家を飛び出した
電車の中で、両親にメールを送る
『今から宮沢先輩のところに行ってきます。戸締りと風呂と、明日の朝食の準備はしてあるから』
【井上】
(俺…、馬鹿なことしようとしてるかなあ…。
先輩、怒るかな……)
俺は今、先輩のバイト先に引き返して…先輩に告白をしに行こうとしている……
【井上】
(たくさん好きって言ってきたけど、先輩は…俺が本気だって、きっと信じてくれてないから…)
いつもは…、練習後の見送りは、夏目さんと宮沢先輩が2人でしてくれる
―そんな2人を残して家に帰るのは、いつもちょっぴり辛くて……
だって、先輩はすごく夏目さんを尊敬してて…
夏目さんと話しているときの先輩は、すごく嬉しそうで…
【井上】
「ずりぃよ…」
ポツリと、独り言が漏れた
【井上】
(俺だって…、先輩より年上だったら…先輩に頼られて…、いつも守って……)
【井上】
(でも…
年齢なんて関係なく、俺は先輩が好きだし!守りたいし!)
―夏目さんが居ない今日は、先輩に2人きりで話ができるチャンスだ
【井上】
(今日こそ…、俺の気持ちを真剣に聞いて貰うんだ!)
そんな決意を胸に、ダッシュでフィットネスプールに向かった俺を……
宮沢先輩は―、
俺の身を案じて少し叱ってくれたあと…
いつもの優しい笑顔を見せて…、自分の部屋に連れて帰ってくれた…
―第2話―
『心配』
【宮沢】
「どうしたんだ?遠慮しないで早くあがれよ」
何故だか玄関でまごまごしている井上を促しつつ、部屋の明かりを点ける
【宮沢】
「ワンルームだから狭いけどさ、話くらいならゆっくりできるだろ?」
【井上】
「お…おじゃまします……」
【宮沢】
「うん?そんな緊張しなくていんだぞ?
誰がいる訳でもないんだからさ」
いつも天真爛漫な井上なのに、何故だか今日は…妙に元気がないというか、ぎこちないというか…
【宮沢】
(よっぽど大きな悩みなのかな…
あ、もしかして競泳の…、部活の方で何かあったとか……)
―元々、井上は競泳の方でインハイ優勝の有力候補として期待されている、高校水泳界屈指の選手だ
【宮沢】
(なのに…、故障した俺なんかを追いかけて、シンクロの道を選ぶなんて…)
いくら本人が希望しての結論とはいえ、その結論を出すのは相当の覚悟がいった筈だ
………元々俺だって競泳出身だ。
道半ばであきらめる…覚悟の重さや辛さは、痛いほどに分かる
【宮沢】
(ましてや井上は、俺みたいに『選手で居られなくなった』訳じゃないんだから……)
【宮沢】
(―でもそれは、他人がどうこういえる話じゃないから……)
俺は気を取り直して、井上の方を振り向いて言った
【宮沢】
「井上、さっき随分汗かいてたろ?先に風呂入って来いよ」
【宮沢】
「ユニットバスだからあんまり寛げないと思うけど。
着替えは俺のを貸すからさ」
ピクリと、井上の肩が小さく揺れた
【井上】
「あ、はい……お借りします」
……パタン
タオルと着替え一式を手渡すと、井上は浴室へと入っていった
………シャアアアアアアア
ほどなく、シャワーの音が聞こえてくる
井上のご両親には、アパートへの道すがら井上が電話をかけ…
そこに俺が出て、軽い状況説明と共に…、息子さんを一晩責任持ってお預かりします…とご挨拶をした
【宮沢】
「さてと、潤司にも連絡しないと……」
『潤司へ、ごめん…今日はちょっと寝不足みたい。明日早く大学行くから、今夜はもう寝るね』
……井上だって、『悩んで先輩に頼りに来ました』なんて、人に知られたくはないだろう
俺は…井上のことには触れずに
約束していた、スカイプでの新メニュー相談ができなくなった旨を、潤司に送信した
ピロピロ…♪
ほどなくして着信があった。
―この音は潤司だ
『了解した。―寝不足だけならいいが、体調が悪い場合は、すぐ連絡しろよ?』
【宮沢】
―ありがと、潤司。…嘘ついてごめんね)
親友に嘘をつく罪悪感を感じつつ、メールを閉じる
【宮沢】
あ…、そういえば志賀助教からもメール来てたっけ)
【宮沢】
「…………」
覚悟を決めてメールを開く
『明日、朝8時に研究室に来い。1分たりとも遅れるな』
【宮沢】
「うあ…、また20本分のテープ起こしとか手伝わされるのかな……」
【宮沢】
「それとも、長時間かかる検証や、遠くのフィールドワークに付き合わされたり……」
……パタン
志賀助教のメールを見ながら、不穏な予感を心に巡らせていると、井上が浴室から戻ってきた
【井上】
「先輩、シャワーお借りしてありがとうございました。
あと…着替えも」
【宮沢】
「おかえり、井上。
それじゃ、俺もシャワーあびてくるから、話はそれからしようか」
【井上】
「は…はい!」
……パタン
井上を部屋に残し、浴室へ移動する
シャアアアアアアア……
【宮沢】
……今日の井上は、本当におかしいな。
いつだって元気な井上が、あんな…)
笑顔がトレードマークのような井上なのに、練習が終わってからずっと、笑い顔を見ていない気がする…
そんなことを思いながら手早くシャワーを済ませ、部屋着に着替える
【宮沢】
「待たせてごめん。お茶淹れるから、そこの座布団に座っててよ」
タオルで髪を拭きながら、キッチンに向かおうと部屋を横切る
【井上】
「………」
井上から返事がないことを特に気にするでもなく、ヤカンに水を入れようと蛇口に手を伸ばして………
―ハシッ
その、伸ばしかけた手首を……井上の手が、背後から掴んだ
【宮沢】
「…?、井上?」
『日本茶より、冷たい飲み物の方が良かった―?』
振り向いて…、そう聞こうと口を開きかけた、矢先の出来事だった
グイ……ッ!
掴まれた手首を支点に、身体が大きく回転し……
ドサ…ッ
俺は、床に倒れて―
馬乗りになった井上を見上げていた