交際半年 梶井編
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【梶井】
(……宮沢さんは、誰とも違う)
……物心ついたときから存在した、おおきな空洞
それを埋めたくて、男も…女も…片端から手を出してきた
しかし、穴は大きくなるばかりで、薬に頼る機会もどんどん増えて行き………
―そんな中で出会ったのが、宮沢さんだったのだ
宮沢さんは、私の立場や容姿目当てにすり寄ってきた、下衆な男とも女とも…全く違った
ふわりと温かな笑顔、真っ直ぐで透明な眼差し、柳のようにしなやかな精神…
決して私に依存することなく、させようとすることもない、温かな水の流れのような彼は
―ただ黙って、温かな腕(かいな)で…私を抱きとめてくれるのだ
初めは、逃げられるのが怖くて…
拒絶して突き飛ばされるのが
怖くて…
腕を拘束することも、度々あった
だけど、そんな私の行為を暴力などと捕えることも無く
宮沢さんは私を受け容れ、そして…縛(いましめ)を解く度に、決まって私の背中に腕を回してくれた
宮沢さんの肌に触れる度、宮沢さんの瞳を覗き込む度…
何か、高次元な魂に触れている気持ちになる
豊かな心の持ち主に囲まれて、愛され、健全に、健やかに生きてきた人間の証
そして、絶望的な苦難を乗り越えて、再び立ち直った人間の証
広さと深さを併せ持った、透明で深淵な魂
…しかし、そんな彼と向き合う己に、負い目を感じて
最近は行為の際に、彼の目や口を塞いでしまうことが増えた
【梶井】
「…五感を2つ以上奪ってしまうのは可哀想だから、いつも1箇所だけですけどね。…フフ」
【梶井】
「だって宮沢さんは、私の大事な……」
―ポツリ
【梶井】
「―?」
突如、天からの雫が、手の甲を濡らした
【梶井】
「………雨?」
見上げると、先程まで晴れていた筈の空には、薄暗い雲が分厚く立ち込めている
【梶井】
「…なんとも、無粋な天気ですね」
重く湿気を孕んだ雲を見つめながら、忌々しさ込めて呟く
先程宮沢さんに宛てて送ったメールには、程なく20分ほどで出られますと返信があった
宮沢さんが、待ち合わせ場所である、この公園に現れるのに…早くともあと15分はかかるだろう
【梶井】
(このままここに居ては、濡れてしまうでしょうね……)
まったく…、私と宮沢さんの逢瀬に水を差そうなどと、気が利かないにも程がある
【梶井】
(あまり人の集まる場所には居たくないのですが、カフェにでも入っていましょうか…)
―なんて思った、矢先だった
カッ!
ザアアアアアア―
世界は一瞬で、雨のベールに包まれた
抗いようもなく、服が…髪が…肌が濡れそぼっていく…
―しかし
【梶井】
「………………―宮沢、さん?」
その暖かな奔流は、まるで愛しい人の抱擁のようで…
【梶井】
「クスクス……
……………ふふ」
―第2話―
『濡れた恋人』
【宮沢】
(外に出た途端に夕立なんて…
折り畳み傘、入れておいて良かったよ)
突然の豪雨に驚きながらも、待ち合わせ場所の公園を目指す
【宮沢】
(でもあそこ、雨宿りする場所あったかなあ。梶井さん、濡れてないといいけど…)
バシャバシャと、靴や脚に雨水が跳ねるのも気にせず公園を目指す
人通りの多い場所が苦手な梶井さんとの待ち合わせは、小さな公園や神社などが多い
メディアへの露出も多い梶井さんは、写真を撮られたり、サインを求められたりすることも稀ではないし…
俺と一緒に居る時にそういう事があると、そのあと…酷く取り乱すことがあるから…
【宮沢】
(こんな雨なら、さすがに公園に人が居ることもないだろうし、案外良かったのかな)
なんてことを考えながら、公園の入り口を通過したのだが
【宮沢】
(…………ん?)
多少季節外れな花の残る藤棚の下に、雨にけぶって人影が見えた
傘など差している様子もなく、激しく落ちる雨粒に、その身を打たれて…
濡れそぼった長い黒髪からは、透明な雫が……
【宮沢】
「梶井さん!?」
【梶井】
「………………宮沢さん」
【宮沢】
「こんなに濡れたら風邪をひいてしまいます」
慌てて駆け寄って、手遅れかもしれない傘を頭上に差し出す
【宮沢】
「申し訳ありません
俺が遅くなったばっかり
に」
雨が降り始めて、既に10分は経過している
梶井さんがフィットネスを出た時間を考えると、降り始める前からここに居たに違いない
サマーニットはすっかり水を含んで身体を透かし…
細くしなやかな髪の毛は、肩や首筋に貼りついている
【宮沢】
「とにかく一度、フィットネスに戻ってシャワーを…」
―くすくす
言いかけた俺の言葉に、梶井さんの笑い声が重なった
【梶井】
「やっぱり本物の宮沢さんの方が、ずっとお優しい」
【梶井】
「暖かな雨も、所詮は代用品でしかなかったようですね」
イノセントな笑顔を浮かべた梶井さんの額から、雨の雫が頬を伝って落ちていく
【宮沢】
「―雨には、一緒にお料理を作る事も、お風呂に入る事もできませんから」
【梶井】
「ふふ、本当ですね
やはり、貴方の代わりは何処にも
居ないようです」
傍から見たら、もしかすると気が触れたかのように見えるかもしれない光景
だけど、俺は知っている
梶井さんはこうして…日常生活と精神の
バランスをとりながら、傷を癒して
いるのだと
年以上かけてえぐられてきた心を
、ぬくもりで埋めるように…
俺は未熟だから、ただ傍に居るだけで…ちゃんと役に立てているかは分からないけれど
だけど、せめてそんな梶井さんの傍で、こんな風に傘を差し出せる関係でいたい。―そう思うから
【梶井】
「―ねえ宮沢さん
早く部屋に帰って、夏野菜のシチューでも作りましょうか」
【宮沢】
「はい!」
俺は笑顔で頷いて、梶井さんと共に、マンションへと歩き出したのだった
【宮沢】
「シチューに大葉を入れるなんて面白いですね」
【梶井】
「暖かいのに、夏らしく爽やかな味わいになって、栄養価も高いのですよ」
お風呂を済ませた梶井さんと一緒に、キッチンに並んでシチューをつくる
(……宮沢さんは、誰とも違う)
……物心ついたときから存在した、おおきな空洞
それを埋めたくて、男も…女も…片端から手を出してきた
しかし、穴は大きくなるばかりで、薬に頼る機会もどんどん増えて行き………
―そんな中で出会ったのが、宮沢さんだったのだ
宮沢さんは、私の立場や容姿目当てにすり寄ってきた、下衆な男とも女とも…全く違った
ふわりと温かな笑顔、真っ直ぐで透明な眼差し、柳のようにしなやかな精神…
決して私に依存することなく、させようとすることもない、温かな水の流れのような彼は
―ただ黙って、温かな腕(かいな)で…私を抱きとめてくれるのだ
初めは、逃げられるのが怖くて…
拒絶して突き飛ばされるのが
怖くて…
腕を拘束することも、度々あった
だけど、そんな私の行為を暴力などと捕えることも無く
宮沢さんは私を受け容れ、そして…縛(いましめ)を解く度に、決まって私の背中に腕を回してくれた
宮沢さんの肌に触れる度、宮沢さんの瞳を覗き込む度…
何か、高次元な魂に触れている気持ちになる
豊かな心の持ち主に囲まれて、愛され、健全に、健やかに生きてきた人間の証
そして、絶望的な苦難を乗り越えて、再び立ち直った人間の証
広さと深さを併せ持った、透明で深淵な魂
…しかし、そんな彼と向き合う己に、負い目を感じて
最近は行為の際に、彼の目や口を塞いでしまうことが増えた
【梶井】
「…五感を2つ以上奪ってしまうのは可哀想だから、いつも1箇所だけですけどね。…フフ」
【梶井】
「だって宮沢さんは、私の大事な……」
―ポツリ
【梶井】
「―?」
突如、天からの雫が、手の甲を濡らした
【梶井】
「………雨?」
見上げると、先程まで晴れていた筈の空には、薄暗い雲が分厚く立ち込めている
【梶井】
「…なんとも、無粋な天気ですね」
重く湿気を孕んだ雲を見つめながら、忌々しさ込めて呟く
先程宮沢さんに宛てて送ったメールには、程なく20分ほどで出られますと返信があった
宮沢さんが、待ち合わせ場所である、この公園に現れるのに…早くともあと15分はかかるだろう
【梶井】
(このままここに居ては、濡れてしまうでしょうね……)
まったく…、私と宮沢さんの逢瀬に水を差そうなどと、気が利かないにも程がある
【梶井】
(あまり人の集まる場所には居たくないのですが、カフェにでも入っていましょうか…)
―なんて思った、矢先だった
カッ!
ザアアアアアア―
世界は一瞬で、雨のベールに包まれた
抗いようもなく、服が…髪が…肌が濡れそぼっていく…
―しかし
【梶井】
「………………―宮沢、さん?」
その暖かな奔流は、まるで愛しい人の抱擁のようで…
【梶井】
「クスクス……
……………ふふ」
―第2話―
『濡れた恋人』
【宮沢】
(外に出た途端に夕立なんて…
折り畳み傘、入れておいて良かったよ)
突然の豪雨に驚きながらも、待ち合わせ場所の公園を目指す
【宮沢】
(でもあそこ、雨宿りする場所あったかなあ。梶井さん、濡れてないといいけど…)
バシャバシャと、靴や脚に雨水が跳ねるのも気にせず公園を目指す
人通りの多い場所が苦手な梶井さんとの待ち合わせは、小さな公園や神社などが多い
メディアへの露出も多い梶井さんは、写真を撮られたり、サインを求められたりすることも稀ではないし…
俺と一緒に居る時にそういう事があると、そのあと…酷く取り乱すことがあるから…
【宮沢】
(こんな雨なら、さすがに公園に人が居ることもないだろうし、案外良かったのかな)
なんてことを考えながら、公園の入り口を通過したのだが
【宮沢】
(…………ん?)
多少季節外れな花の残る藤棚の下に、雨にけぶって人影が見えた
傘など差している様子もなく、激しく落ちる雨粒に、その身を打たれて…
濡れそぼった長い黒髪からは、透明な雫が……
【宮沢】
「梶井さん!?」
【梶井】
「………………宮沢さん」
【宮沢】
「こんなに濡れたら風邪をひいてしまいます」
慌てて駆け寄って、手遅れかもしれない傘を頭上に差し出す
【宮沢】
「申し訳ありません
俺が遅くなったばっかり
に」
雨が降り始めて、既に10分は経過している
梶井さんがフィットネスを出た時間を考えると、降り始める前からここに居たに違いない
サマーニットはすっかり水を含んで身体を透かし…
細くしなやかな髪の毛は、肩や首筋に貼りついている
【宮沢】
「とにかく一度、フィットネスに戻ってシャワーを…」
―くすくす
言いかけた俺の言葉に、梶井さんの笑い声が重なった
【梶井】
「やっぱり本物の宮沢さんの方が、ずっとお優しい」
【梶井】
「暖かな雨も、所詮は代用品でしかなかったようですね」
イノセントな笑顔を浮かべた梶井さんの額から、雨の雫が頬を伝って落ちていく
【宮沢】
「―雨には、一緒にお料理を作る事も、お風呂に入る事もできませんから」
【梶井】
「ふふ、本当ですね
やはり、貴方の代わりは何処にも
居ないようです」
傍から見たら、もしかすると気が触れたかのように見えるかもしれない光景
だけど、俺は知っている
梶井さんはこうして…日常生活と精神の
バランスをとりながら、傷を癒して
いるのだと
年以上かけてえぐられてきた心を
、ぬくもりで埋めるように…
俺は未熟だから、ただ傍に居るだけで…ちゃんと役に立てているかは分からないけれど
だけど、せめてそんな梶井さんの傍で、こんな風に傘を差し出せる関係でいたい。―そう思うから
【梶井】
「―ねえ宮沢さん
早く部屋に帰って、夏野菜のシチューでも作りましょうか」
【宮沢】
「はい!」
俺は笑顔で頷いて、梶井さんと共に、マンションへと歩き出したのだった
【宮沢】
「シチューに大葉を入れるなんて面白いですね」
【梶井】
「暖かいのに、夏らしく爽やかな味わいになって、栄養価も高いのですよ」
お風呂を済ませた梶井さんと一緒に、キッチンに並んでシチューをつくる