告白編 -井伏の場合-
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―プロローグ―
【宮沢】
(あ…、忘れてた)
プールサイドの壁に貼られたシフト表に、気まぐれに目をやり…
俺は、明日の日曜日が休みだったことを思い出した
【宮沢】
(先週風邪で休んだ川端さんと、シフト入れ替えたんだっけ…)
【宮沢】
(とりあえず、気付いて良かった。
普通に出勤しちゃうとこだったよ…)
【宮沢】
「……………」
【宮沢】
(こういうとこウッカリしてるから、いつも潤司に迷惑かけちゃうんだよなぁ…)
【宮沢】
(…念のため、2週間分くらいのシフト…確認してメモしとこっと)
シフト表を1日ずつチェックしながら、スケジュールアプリに登録していると…
【???】
「なんだ、宮沢くん明日休みじゃん」
俺のすぐ耳元で、聞き慣れた声が響いた
【宮沢】
「井伏さん!今日はお早いんですね」
振り返ると、俺の肩越しに井伏さんがシフト表を覗き込んでいる
割と不定期に現れることの多い井伏さんだが…
最近は特に仕事が忙しいらしく、22時近くに訪れることも多かった
【井伏】
「ようやく大きな案件が一段落着いてさ?。
本日で休日出勤もひとまず終了ってトコ」
【宮沢】
「ああ、そういえば今日は土曜日でしたね
休日出勤、お疲れ様です」
【宮沢】
「これから泳ぐんでしょう?それ、預かっておきますよ」
俺はそう言って、井伏さんが脇に抱えていたタオルを受け取った
【井伏】
「お、今のちょっと、帰宅した旦那を労う新妻ぽくね?」
【井伏】
「な、な。もっかい言って!
『休日出勤お疲れ様』ってトコ、次はこう…小首を傾げて……」
【宮沢】
「…言いません」
【井伏】
「あーあ、お兄さんは悲しいねぇ。せっかく休出で疲れた躰で、愛しい宮沢くんに会いに来たっていうのにさ?」
……そう言われて、よく見ると…
井伏さんの目元に、珍しくクマができている
【宮沢】
「冗談はともかく、井伏さん…本当にお疲れなんじゃないですか?」
【宮沢】
「疲れてるときに無理すると、筋肉にも負担がかかりますし、今日はもう休まれた方が……」
【井伏】
「……ちぇ。
冗談じゃねーって
どう言ったら信じてくれんのかねえ」
そんな俺の言葉を遮って、井伏さんがボソリと呟いた
―そうして、暫く黙りこんだあと…
【井伏】
「よし、明日デートしようぜ」
【宮沢】
「へ?」
【井伏】
「だから、デートだって。
な、決まり!
遊園地行こうぜ、定番だろ?」
【宮沢】
「ちょ、ちょっと待って下さいよ。
いきなりデートとか言われても…」
【井伏】
「明日休みなんだろ?俺も休み♪」
【宮沢】
「……?っ!」
【???】
「あ、居た居た。おーい宮沢?」
井伏さんとそんな会話をしていると、プールの入り口の方から、俺を呼ぶ声が聞こえて来た
見ると、スタッフの太宰さんが、こちらに向かって手を振っている
【太宰】
「宮沢?、お前が担当してるキッズクラスの体験入学希望者が受付に来てるから、対応お願いできるか?」
【宮沢】
「あ、はーい!すぐ行きます」
【太宰】
「おう、宜しくな。
談話スペースにお通ししておくから、準備が出来たら来てくれ」
【宮沢】
「了解です。
……………あ」
……俺は、チラリと井伏さんの方を振り返った
【井伏】
「つーワケでさっきの話、決まりな。
10時に現地集合ってことで」
井伏さんはニッコリ笑ってそれだけ言うと、
【井伏】
「んじゃ、とりあえずひと泳ぎしてくっから」
俺に向かってヒラヒラと手を振り、そのままプールへ飛び込んで泳ぎ始めてしまった
【宮沢】
「ちょ!?
井伏さーん!」
【宮沢】
「…………もー。
タオル、ここに置いておきますからね?!」
既に20mラインまで泳いでいってしまった井伏さんに向かって、大声で呼びかけると
俺は急いでジャージを身に着け、談話スペースへと向かった
こうして…井伏さんとのデートの約束は、なし崩し的に成立してしまったのだった
―第1話―
『初恋』
【井伏】
(ふーっ、ようやく片付いたか…。
まったく、営業マンも楽じゃないねぇ…)
オフィスの休憩スペースで1人、コーヒーを片手に溜息をつく
ヶ月ほど前、大手イベント会社との大口契約を取り付けた俺は
会場への同行、設営の手伝い、関係者への挨拶回り…その他諸々、曜日を問わず走り回っていたのだった
しかし……その間も俺は、暇を見つけては例のフィットネスプールに足を運んでいた
【井伏】
(体型維持も、見た目が決め手の営業職の務めっつーのもあるけど……)
………正直
本当の理由は別のところにあった
【井伏】
(…………しかし俺も
よりにもよって、何でこんな不毛な道を選んじゃったのかねえ…)
ぼんやりと自販機の光を見つめながら
俺は、考えるともなしに宮沢くんの事を思い出していた
―宮沢宮沢
彼が自分にとって特別な人間だと意識し始めたのはいつ頃だったか―
曇りない笑顔、揺るぎない姿勢、真っ直ぐな眼差し……
生まれて初めて―、自分から手に入れたいと思った相手
【井伏】
(それが男だったってのは、自分でも少しばかり意外だったけど、な……)
窓の外へと視線を移しながら、過去の恋愛に思いを巡らせる
過去…、付き合ってきたのは全て女性だった
それらの『つき合い』が、あまり誠実なものでなかったのは自覚している
向こうから声を掛けられたとき、こちらがフリーだったら「彼女」という肩書を与えた
身体だけの関係を求められれば…、彼女の有無に関係なくそれに応えた
そんな、世間では不誠実と言われる付き合い方を続けながらも、言い寄ってくる女性は常に存在した…
特に必要という訳ではなかったが…、自分に好意を持ってくれる女性は可愛くも思えたし、
健全な男としての性欲は人並にあったので、断る理由もなかった
だが……、最近はその手の誘いを受けても、あまり乗り気になれないでいた
余程その場で断るのが面倒な相手以外は、誘われた直後に、適当な理由をつけてお断りするようになった
初めは、自分がどうしてそんな状態になっているのか、思い当たる原因もなく…
さして気に留める事でもないので、そのまま日々を過ごしているうちに…
不意に、あることに気が付いたのだ
ある特定の誰かの事を考えている時間が、日に日に増えていること―
冗談のつもりでかけていた言葉が、いつの間にか…冗談ではなくなっていたこと―
【宮沢】
(あ…、忘れてた)
プールサイドの壁に貼られたシフト表に、気まぐれに目をやり…
俺は、明日の日曜日が休みだったことを思い出した
【宮沢】
(先週風邪で休んだ川端さんと、シフト入れ替えたんだっけ…)
【宮沢】
(とりあえず、気付いて良かった。
普通に出勤しちゃうとこだったよ…)
【宮沢】
「……………」
【宮沢】
(こういうとこウッカリしてるから、いつも潤司に迷惑かけちゃうんだよなぁ…)
【宮沢】
(…念のため、2週間分くらいのシフト…確認してメモしとこっと)
シフト表を1日ずつチェックしながら、スケジュールアプリに登録していると…
【???】
「なんだ、宮沢くん明日休みじゃん」
俺のすぐ耳元で、聞き慣れた声が響いた
【宮沢】
「井伏さん!今日はお早いんですね」
振り返ると、俺の肩越しに井伏さんがシフト表を覗き込んでいる
割と不定期に現れることの多い井伏さんだが…
最近は特に仕事が忙しいらしく、22時近くに訪れることも多かった
【井伏】
「ようやく大きな案件が一段落着いてさ?。
本日で休日出勤もひとまず終了ってトコ」
【宮沢】
「ああ、そういえば今日は土曜日でしたね
休日出勤、お疲れ様です」
【宮沢】
「これから泳ぐんでしょう?それ、預かっておきますよ」
俺はそう言って、井伏さんが脇に抱えていたタオルを受け取った
【井伏】
「お、今のちょっと、帰宅した旦那を労う新妻ぽくね?」
【井伏】
「な、な。もっかい言って!
『休日出勤お疲れ様』ってトコ、次はこう…小首を傾げて……」
【宮沢】
「…言いません」
【井伏】
「あーあ、お兄さんは悲しいねぇ。せっかく休出で疲れた躰で、愛しい宮沢くんに会いに来たっていうのにさ?」
……そう言われて、よく見ると…
井伏さんの目元に、珍しくクマができている
【宮沢】
「冗談はともかく、井伏さん…本当にお疲れなんじゃないですか?」
【宮沢】
「疲れてるときに無理すると、筋肉にも負担がかかりますし、今日はもう休まれた方が……」
【井伏】
「……ちぇ。
冗談じゃねーって
どう言ったら信じてくれんのかねえ」
そんな俺の言葉を遮って、井伏さんがボソリと呟いた
―そうして、暫く黙りこんだあと…
【井伏】
「よし、明日デートしようぜ」
【宮沢】
「へ?」
【井伏】
「だから、デートだって。
な、決まり!
遊園地行こうぜ、定番だろ?」
【宮沢】
「ちょ、ちょっと待って下さいよ。
いきなりデートとか言われても…」
【井伏】
「明日休みなんだろ?俺も休み♪」
【宮沢】
「……?っ!」
【???】
「あ、居た居た。おーい宮沢?」
井伏さんとそんな会話をしていると、プールの入り口の方から、俺を呼ぶ声が聞こえて来た
見ると、スタッフの太宰さんが、こちらに向かって手を振っている
【太宰】
「宮沢?、お前が担当してるキッズクラスの体験入学希望者が受付に来てるから、対応お願いできるか?」
【宮沢】
「あ、はーい!すぐ行きます」
【太宰】
「おう、宜しくな。
談話スペースにお通ししておくから、準備が出来たら来てくれ」
【宮沢】
「了解です。
……………あ」
……俺は、チラリと井伏さんの方を振り返った
【井伏】
「つーワケでさっきの話、決まりな。
10時に現地集合ってことで」
井伏さんはニッコリ笑ってそれだけ言うと、
【井伏】
「んじゃ、とりあえずひと泳ぎしてくっから」
俺に向かってヒラヒラと手を振り、そのままプールへ飛び込んで泳ぎ始めてしまった
【宮沢】
「ちょ!?
井伏さーん!」
【宮沢】
「…………もー。
タオル、ここに置いておきますからね?!」
既に20mラインまで泳いでいってしまった井伏さんに向かって、大声で呼びかけると
俺は急いでジャージを身に着け、談話スペースへと向かった
こうして…井伏さんとのデートの約束は、なし崩し的に成立してしまったのだった
―第1話―
『初恋』
【井伏】
(ふーっ、ようやく片付いたか…。
まったく、営業マンも楽じゃないねぇ…)
オフィスの休憩スペースで1人、コーヒーを片手に溜息をつく
ヶ月ほど前、大手イベント会社との大口契約を取り付けた俺は
会場への同行、設営の手伝い、関係者への挨拶回り…その他諸々、曜日を問わず走り回っていたのだった
しかし……その間も俺は、暇を見つけては例のフィットネスプールに足を運んでいた
【井伏】
(体型維持も、見た目が決め手の営業職の務めっつーのもあるけど……)
………正直
本当の理由は別のところにあった
【井伏】
(…………しかし俺も
よりにもよって、何でこんな不毛な道を選んじゃったのかねえ…)
ぼんやりと自販機の光を見つめながら
俺は、考えるともなしに宮沢くんの事を思い出していた
―宮沢宮沢
彼が自分にとって特別な人間だと意識し始めたのはいつ頃だったか―
曇りない笑顔、揺るぎない姿勢、真っ直ぐな眼差し……
生まれて初めて―、自分から手に入れたいと思った相手
【井伏】
(それが男だったってのは、自分でも少しばかり意外だったけど、な……)
窓の外へと視線を移しながら、過去の恋愛に思いを巡らせる
過去…、付き合ってきたのは全て女性だった
それらの『つき合い』が、あまり誠実なものでなかったのは自覚している
向こうから声を掛けられたとき、こちらがフリーだったら「彼女」という肩書を与えた
身体だけの関係を求められれば…、彼女の有無に関係なくそれに応えた
そんな、世間では不誠実と言われる付き合い方を続けながらも、言い寄ってくる女性は常に存在した…
特に必要という訳ではなかったが…、自分に好意を持ってくれる女性は可愛くも思えたし、
健全な男としての性欲は人並にあったので、断る理由もなかった
だが……、最近はその手の誘いを受けても、あまり乗り気になれないでいた
余程その場で断るのが面倒な相手以外は、誘われた直後に、適当な理由をつけてお断りするようになった
初めは、自分がどうしてそんな状態になっているのか、思い当たる原因もなく…
さして気に留める事でもないので、そのまま日々を過ごしているうちに…
不意に、あることに気が付いたのだ
ある特定の誰かの事を考えている時間が、日に日に増えていること―
冗談のつもりでかけていた言葉が、いつの間にか…冗談ではなくなっていたこと―
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