告白編 -夏目の場合-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
―プロローグ―
コンコン
【宮沢】
「失礼します」
【夏目】
「おう、宮沢。
悪かったな急に呼び出して。業務は大丈夫か?」
【宮沢】
「はい、今日は半日シフトでしたので。さっき永井さんに作業報告も済ませてきました」
―ある日の平日の昼間
バイト終了後に、オーナーから館長室に来るように言われた
その日は前々から全ての講義が休講で、1日空いていたのだが…
同じアルバイトスタッフの川端さんから是非にと頼まれて、シフトを交代していたのだった
【宮沢】
(川端さん、片思いの彼女と遊びに行くとか言ってたっけ…、今頃上手くいってるかなぁ…)
【夏目】
「それでな宮沢、今日はこれから予定はあるか?」
【宮沢】
「いえ。部屋に帰ったら、先週の皆の身体能力データをまとめて、レポート化しようと思っていたくらいで…」
レポートは夜でもまとめられるし
むしろ夜、潤司とデータを共有しながら話し合った方が効率的だ
……………
……………それに
……最近1人になると、考えてしまうことがあるから
あまり早く…部屋に帰りたくなかった
【夏目】
「よし、それなら今から俺とデートだ」
【宮沢】
「あ、はい デー……………」
【宮沢】
「って、ええっ!?
デ…デート!?」
あまりにサラリと言われたので、思わず一瞬流しそうになったけど…
【宮沢】
(で…でででで…でーとっていうのは『泥土(でいと)』…ちがう『出干支(でえと)』…いや……)
動揺し過ぎて『でーと』という単語がうまく脳内で変換できない
【夏目】
「ははは、今日は1テンポ遅いな。
相変わらず飽きない反応だが」
顔を真っ赤にして動揺する俺をみて、オーナーは楽しそうに笑った
【宮沢】
「もう…!またからかったんですか!」
俺がオーナーの言葉をいつも間に受けてしまうのを良いことに、何かとからかってくる夏目オーナー
【宮沢】
(学習しない俺も俺だけど……)
でも、オーナーのさりげない一言に…どうしても心が過敏に反応してしまうのもまた事実で……
【夏目】
「まあ、そうむくれるな。
八王子のほうに新しい水中トレーニング施設ができたらしくてな」
【夏目】
「案内が来たから見に行ってみようと思うんだが、お前も付き合わないか?」
【宮沢】
「えっ!本当ですか!?
わあ!是非行きたいです!」
【夏目】
「フッ、お前はシンクロの話になると途端に笑顔になるな」
【宮沢】
「だって新しい施設なんて…!
最新機材が揃ってたりして、新しいトレーニングが考えられるかも…!」
【宮沢】
「それに、色んなチームの人が練習に来るなら、情報交換だって―!」
ワクワクする気持ちが抑えきれなくて、前のめりになる俺を見ながら…オーナーが口を開いた
【夏目】
「……その反応を、『デート』と聞いたときにしてくれたら、嬉しかったんだがな」
【宮沢】
「………え?」
―さあっと
窓からの秋風が、俺とオーナーの髪を揺らした
【夏目】
「はは、じゃあ行くか。
車で行くから、駐車場に向かうぞ」
【宮沢】
「あ、…はい」
【宮沢】
(……オーナーのさっきのセリフ
どういう意味だろう)
そんなことを考えながら―
俺は館長室の窓を閉じ…
ドアの前で待ってくれているオーナーの元へ駆けより、一緒に駐車場へと向かった
―第1話―
『加護』
【夏目】
「―悪かったな急に呼び出して。業務は大丈夫か?」
―シフト変更で平日の昼間にバイトに入っていた宮沢を、俺は館長室へと呼んだ
先週の大会のあとから、宮沢が何か悩みを抱えている事は気付いていた
―だが、正面から『悩み事はなんだ?』と尋ねることは…あえてしないでいたのだ
……仮にそんなことをしたとしても、宮沢のことだ
【宮沢】
「いえ、悩んでなんてないです。
心配して下さってありがとうございます」
なんて、笑って答えるに違いないから……
だから今日は、悩みを聞く代わりに……
少しでも気晴らしになるならと―
宮沢を外に連れ出すことにしたのだった
宮沢の心の負担を
少しでも、取り除いてやりたいから―
………
『デート』などと冗談めかして誘った俺に
【宮沢】
「ええっ!?
デ…デート!?」
いつものように顔を真っ赤にして狼狽える宮沢
―いつからだったか
こういう純粋な反応を目の当たりにする度に
少し―、胸の奥底から…チリチリとした熱が発されるようになったのは
【夏目】
(こんな気持ちは、20代の内に、失ってしまったものだと思っていたのだが……)
ある程度年を重ねると、恋愛もある種の駆け引きのようなものになってしまう
…誰かを思って胸をときめかせたり、切ない気持ちに浸る事がなくなるのは…いつ頃からなのか
……だが、耳まで赤くして俯いている宮沢は、ある種ソレに似た感情を、俺に呼び起こさせた
その後…
今日の目的地を明かしたときの…、本当に嬉しそうにはしゃぐ様子を見て…
【夏目】
「……その反応を、『デート』と聞いたときにしてくれたら、嬉しかったんだがな」
【宮沢】
「………え?」
思わず呟いてしまったその一言は、俺の本音だった
―2年前
アルバイトの最終面接で、初めて宮沢と顔を合わせた
嬉しそうに瞳を輝かせて、将来の目標を語る様子が印象的で、すぐに採用を決定した
宮沢が明るく前向きなだけでなく…
とても強い人間だと気づくのに、そう時間はかからなかった
辛い事故で選手生命を失った過去など、おくびにも出さず、ひたすら前向きに夢を追うその姿を見ていて…
いつしか、
傍に居て、支えてやりたいと思うようになった
泣いているときは、胸を貸してやりたい
笑っているときは、一番傍で分かち合いたい
辛そうなときは、隣にいて…肩を抱いてやりたい
ただひたすらに愛しい―
宮沢は俺にとって、そんな存在になっていたのだ
―第2話―
『デートのはじまり』
オーナーに連れて来てもらったその施設は
水中の様子を側面の窓からチェックできて、大音量スピーカーを備えた…完全防音の室内プール
それに最新式の肺活量トレーニング器具と…、想像以上に充実した施設だった
【宮沢】
「わあ!本当にすごい施設ですね、オーナー。
あっ!あれ見て下さい!」
初めてみる夢のような施設に大興奮して、施設中を歩き回る俺
でも…どんなに夢中で走っていっても、
俺が振り返ったとき…オーナーは絶対に傍にいて、優しく微笑み返してくれた
コンコン
【宮沢】
「失礼します」
【夏目】
「おう、宮沢。
悪かったな急に呼び出して。業務は大丈夫か?」
【宮沢】
「はい、今日は半日シフトでしたので。さっき永井さんに作業報告も済ませてきました」
―ある日の平日の昼間
バイト終了後に、オーナーから館長室に来るように言われた
その日は前々から全ての講義が休講で、1日空いていたのだが…
同じアルバイトスタッフの川端さんから是非にと頼まれて、シフトを交代していたのだった
【宮沢】
(川端さん、片思いの彼女と遊びに行くとか言ってたっけ…、今頃上手くいってるかなぁ…)
【夏目】
「それでな宮沢、今日はこれから予定はあるか?」
【宮沢】
「いえ。部屋に帰ったら、先週の皆の身体能力データをまとめて、レポート化しようと思っていたくらいで…」
レポートは夜でもまとめられるし
むしろ夜、潤司とデータを共有しながら話し合った方が効率的だ
……………
……………それに
……最近1人になると、考えてしまうことがあるから
あまり早く…部屋に帰りたくなかった
【夏目】
「よし、それなら今から俺とデートだ」
【宮沢】
「あ、はい デー……………」
【宮沢】
「って、ええっ!?
デ…デート!?」
あまりにサラリと言われたので、思わず一瞬流しそうになったけど…
【宮沢】
(で…でででで…でーとっていうのは『泥土(でいと)』…ちがう『出干支(でえと)』…いや……)
動揺し過ぎて『でーと』という単語がうまく脳内で変換できない
【夏目】
「ははは、今日は1テンポ遅いな。
相変わらず飽きない反応だが」
顔を真っ赤にして動揺する俺をみて、オーナーは楽しそうに笑った
【宮沢】
「もう…!またからかったんですか!」
俺がオーナーの言葉をいつも間に受けてしまうのを良いことに、何かとからかってくる夏目オーナー
【宮沢】
(学習しない俺も俺だけど……)
でも、オーナーのさりげない一言に…どうしても心が過敏に反応してしまうのもまた事実で……
【夏目】
「まあ、そうむくれるな。
八王子のほうに新しい水中トレーニング施設ができたらしくてな」
【夏目】
「案内が来たから見に行ってみようと思うんだが、お前も付き合わないか?」
【宮沢】
「えっ!本当ですか!?
わあ!是非行きたいです!」
【夏目】
「フッ、お前はシンクロの話になると途端に笑顔になるな」
【宮沢】
「だって新しい施設なんて…!
最新機材が揃ってたりして、新しいトレーニングが考えられるかも…!」
【宮沢】
「それに、色んなチームの人が練習に来るなら、情報交換だって―!」
ワクワクする気持ちが抑えきれなくて、前のめりになる俺を見ながら…オーナーが口を開いた
【夏目】
「……その反応を、『デート』と聞いたときにしてくれたら、嬉しかったんだがな」
【宮沢】
「………え?」
―さあっと
窓からの秋風が、俺とオーナーの髪を揺らした
【夏目】
「はは、じゃあ行くか。
車で行くから、駐車場に向かうぞ」
【宮沢】
「あ、…はい」
【宮沢】
(……オーナーのさっきのセリフ
どういう意味だろう)
そんなことを考えながら―
俺は館長室の窓を閉じ…
ドアの前で待ってくれているオーナーの元へ駆けより、一緒に駐車場へと向かった
―第1話―
『加護』
【夏目】
「―悪かったな急に呼び出して。業務は大丈夫か?」
―シフト変更で平日の昼間にバイトに入っていた宮沢を、俺は館長室へと呼んだ
先週の大会のあとから、宮沢が何か悩みを抱えている事は気付いていた
―だが、正面から『悩み事はなんだ?』と尋ねることは…あえてしないでいたのだ
……仮にそんなことをしたとしても、宮沢のことだ
【宮沢】
「いえ、悩んでなんてないです。
心配して下さってありがとうございます」
なんて、笑って答えるに違いないから……
だから今日は、悩みを聞く代わりに……
少しでも気晴らしになるならと―
宮沢を外に連れ出すことにしたのだった
宮沢の心の負担を
少しでも、取り除いてやりたいから―
………
『デート』などと冗談めかして誘った俺に
【宮沢】
「ええっ!?
デ…デート!?」
いつものように顔を真っ赤にして狼狽える宮沢
―いつからだったか
こういう純粋な反応を目の当たりにする度に
少し―、胸の奥底から…チリチリとした熱が発されるようになったのは
【夏目】
(こんな気持ちは、20代の内に、失ってしまったものだと思っていたのだが……)
ある程度年を重ねると、恋愛もある種の駆け引きのようなものになってしまう
…誰かを思って胸をときめかせたり、切ない気持ちに浸る事がなくなるのは…いつ頃からなのか
……だが、耳まで赤くして俯いている宮沢は、ある種ソレに似た感情を、俺に呼び起こさせた
その後…
今日の目的地を明かしたときの…、本当に嬉しそうにはしゃぐ様子を見て…
【夏目】
「……その反応を、『デート』と聞いたときにしてくれたら、嬉しかったんだがな」
【宮沢】
「………え?」
思わず呟いてしまったその一言は、俺の本音だった
―2年前
アルバイトの最終面接で、初めて宮沢と顔を合わせた
嬉しそうに瞳を輝かせて、将来の目標を語る様子が印象的で、すぐに採用を決定した
宮沢が明るく前向きなだけでなく…
とても強い人間だと気づくのに、そう時間はかからなかった
辛い事故で選手生命を失った過去など、おくびにも出さず、ひたすら前向きに夢を追うその姿を見ていて…
いつしか、
傍に居て、支えてやりたいと思うようになった
泣いているときは、胸を貸してやりたい
笑っているときは、一番傍で分かち合いたい
辛そうなときは、隣にいて…肩を抱いてやりたい
ただひたすらに愛しい―
宮沢は俺にとって、そんな存在になっていたのだ
―第2話―
『デートのはじまり』
オーナーに連れて来てもらったその施設は
水中の様子を側面の窓からチェックできて、大音量スピーカーを備えた…完全防音の室内プール
それに最新式の肺活量トレーニング器具と…、想像以上に充実した施設だった
【宮沢】
「わあ!本当にすごい施設ですね、オーナー。
あっ!あれ見て下さい!」
初めてみる夢のような施設に大興奮して、施設中を歩き回る俺
でも…どんなに夢中で走っていっても、
俺が振り返ったとき…オーナーは絶対に傍にいて、優しく微笑み返してくれた
1/4ページ