菅原 亮次
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新緑の眩しい初夏…青空の下、三宮屋敷では運動会が行われていた。
執事達は「Sチーム」・「Mチーム」の2つに分けられる。
トム、ジャッキー、ラリー、エミリオの中に我が物顔のアルバートが交ざっている「Sチーム」。
そして残りの執事が「Mチーム」に配属された内訳となり、
「パーーーン!」「ズキューーーン!!」と様々な競技のスターターピストルが鳴り響いていく――
***
万里が出場するらしい「リレー競技」の応援の為、菅原は応援席に待機していた。
アンカーとして出場し、パフォーマンスの一環として来賓を楽しませる……ってな建前らしいが、単に出たいだけなんじゃねえか、と思っている。
「接客の勉強になるからって言ってたし…がんばろう」
ふと――少し離れた席でそう呟く倉科が目に映った。
倉科はぶかぶかの応援団の制服を着せられていて、胸には申し訳程度に巻いたさらしが若干解けそうになっている状態。
どう見てもある一定層を悦ばせそうな格好をしているが……
着こんでいる理由は、万里に皆の応援をすることによって、客の心を把握しつつ喜んでもらうという「おもてなしの心」を知る勉強になる、といったことを言われたから……らしい。
……ンな訳ねえだろ
と思わず口をつきそうになる。
笑いをとりたいのか、と思える程理不尽な言葉がポンポン飛び出る万里は見ていて飽きない。
飽きない人間ではあるが……、直接親密になりたい相手か、と問われればかなり微妙だ。
善悪に興味がなく、自分の欲望を追い求める事に正直で支配欲の強い人間――
それでいて、相手の自尊心を擽る事に長けている。
経験豊富な人間…と称してもよい菅原は、万里に食い殺されないだけの自信がない…訳ではないが。
それでも「触らぬ神に祟りなし」の精神で――適度な距離を保つべきだ。
出会ったその瞬間から、そう判断していた。
旨みのある部分だけでお互い繋がりあっていればいい、と。
――それなのに。
いつのまにか随分と親しい間柄になってしまった気がする。
…そう、
だから、厄介なのだ。
こんな風に、いつのまにか――一緒に居る事を当たり前にしてしまう、強い魅力のある人間。
――それでいて、善である事を良しとするのなら何の害もないのだが
……美味い物程体に悪い。
そういう事だろうか。

「頑張ってるな」
あれこれ考えていたら、当の万里が現れ、倉科は嬉しそうに、駆け寄っていく。
万里も競技に出場する為、Tシャツにジャージと、動きやすい格好をしていた。
声の出し方を指南してやる……等という古典的な体裁で、倉科にセクハラまがいの事を行う万里。
どこのオッサンだよ、と思わなくもない嗜好だが、何だかそれすら面白い。
特に菅原に声をかける事なく去っていった万里。
酷く気まぐれで法則性がないかと思えば、理にかなう事を言うので周りが戸惑っても仕方ない。
『次の競技は―リレーになります。選手の方はトラックまでお集まりください……』
橘の通る声で放送が入り、万里がトラックに向かって走っていく。
女ウケのよさそうな愛想笑い。
歯の浮きそうな甘い台詞でも吐いてくれそうだ。
(……ん?)
ふと気が付くと…いつのまにか応援席のはじっこに進藤政春が、こちらの中央側に来たがっている事に気が付く。
「………どうしたんだこんなところで」
「菅原さん……」
進藤は少し頬を染めながら、万里に視線を送ったり、あるいは目をそらしたりしている。
まるで少女漫画の主人公のような風情だ。
……確か進藤は30歳を超えていると聞いていたが
近くで見ても童顔で、随分年若く見える。
(ご主人様がリレーに出るから応援したい……ってか?)
でも、恥ずかしいからどうしよう……
みたいな、心情が表情にありありと現れている。
進藤が、あんな男に一途な想いを寄せているらしい事は誰の目から見ても明らかだった。
「こんなあっつい日に仰々しい服着せられてよ……応援団長らしい。
人が足りないから手伝ってくれるか?」
菅原は、ついついお節介じみた調子でメガホンを渡しながらそう言っていた。
「……私が、ですか?」
「アンタ、応援したい奴がいるんだろ?丁度いいじゃねえか」
「っ……そ、んな…!」
驚いた表情を浮かべる進藤。
……まさか、気が付かれていないとでも思っていたのだろうか。

そんな風に菅原が進藤を観察していたら、競技が始まっていた。
始まって早々から、1位との差は大分離れてしまっていたが……
万里の演出なのか何なのか、万里が結局他の走者をぐんぐん抜いて1位を勝ち取っていたのだった。
「ご主人様、すごい………」
そう呟く進藤を見れば、どこか幸せそうにすら見える表情でただ立ち尽くしていた。
「お前は行かなくていいのか?」
「いえ……私は、いいんです」
にっこりと、控え目に笑う進藤。
けれど、悲しくもなさそうで、どちらかというと楽しそうだった。
「ふぅん。一途なこった。
でも、偶には違う男に目ぇ向けてもいいんじゃねえの?」
「……?」
手を背後にまわし、腰を抱いた。
ここまで解り易く口説いているのに、解っていないらしい。
少し間を置いてから――
「あ、あの……からかうのは止めて下さい」
等と言われる。
「はは。あんたのそういう顔ってさ、構って、って言ってるようなもんだ」
「えっ……」
「遊び方ぐらい覚えといて損はないぜ?俺が手とり足とり教えてやるよ」
「………っ」
そこまで言うと、反論するでも抵抗するでもなく、……固まってしまう進藤。
脅えるような素ぶりは見せているが、どこか危なっかしい。
普段はそれなりにしっかりしているようにも見えたのだが。
……第一、その歳で、どうしてこんなに無防備でいられるのか解らない。
自分に向けられた「悪意を疑う・避ける」…というセンスが決定的に無い、としか思えなかった。
悪意だらけの中を潜り抜ける事こそ「日常」と考えてきた菅原にとっては、まるで異世界の住人だった。
真面目なトーンで、あんたは万里、やめた方がいいんじゃねえか?……などと言ってしまいそうになったが、後で万里に何を言われるか解らなかったので躊躇われた。
fin
執事達は「Sチーム」・「Mチーム」の2つに分けられる。
トム、ジャッキー、ラリー、エミリオの中に我が物顔のアルバートが交ざっている「Sチーム」。
そして残りの執事が「Mチーム」に配属された内訳となり、
「パーーーン!」「ズキューーーン!!」と様々な競技のスターターピストルが鳴り響いていく――
***
万里が出場するらしい「リレー競技」の応援の為、菅原は応援席に待機していた。
アンカーとして出場し、パフォーマンスの一環として来賓を楽しませる……ってな建前らしいが、単に出たいだけなんじゃねえか、と思っている。
「接客の勉強になるからって言ってたし…がんばろう」
ふと――少し離れた席でそう呟く倉科が目に映った。
倉科はぶかぶかの応援団の制服を着せられていて、胸には申し訳程度に巻いたさらしが若干解けそうになっている状態。
どう見てもある一定層を悦ばせそうな格好をしているが……
着こんでいる理由は、万里に皆の応援をすることによって、客の心を把握しつつ喜んでもらうという「おもてなしの心」を知る勉強になる、といったことを言われたから……らしい。
……ンな訳ねえだろ
と思わず口をつきそうになる。
笑いをとりたいのか、と思える程理不尽な言葉がポンポン飛び出る万里は見ていて飽きない。
飽きない人間ではあるが……、直接親密になりたい相手か、と問われればかなり微妙だ。
善悪に興味がなく、自分の欲望を追い求める事に正直で支配欲の強い人間――
それでいて、相手の自尊心を擽る事に長けている。
経験豊富な人間…と称してもよい菅原は、万里に食い殺されないだけの自信がない…訳ではないが。
それでも「触らぬ神に祟りなし」の精神で――適度な距離を保つべきだ。
出会ったその瞬間から、そう判断していた。
旨みのある部分だけでお互い繋がりあっていればいい、と。
――それなのに。
いつのまにか随分と親しい間柄になってしまった気がする。
…そう、
だから、厄介なのだ。
こんな風に、いつのまにか――一緒に居る事を当たり前にしてしまう、強い魅力のある人間。
――それでいて、善である事を良しとするのなら何の害もないのだが
……美味い物程体に悪い。
そういう事だろうか。

「頑張ってるな」
あれこれ考えていたら、当の万里が現れ、倉科は嬉しそうに、駆け寄っていく。
万里も競技に出場する為、Tシャツにジャージと、動きやすい格好をしていた。
声の出し方を指南してやる……等という古典的な体裁で、倉科にセクハラまがいの事を行う万里。
どこのオッサンだよ、と思わなくもない嗜好だが、何だかそれすら面白い。
特に菅原に声をかける事なく去っていった万里。
酷く気まぐれで法則性がないかと思えば、理にかなう事を言うので周りが戸惑っても仕方ない。
『次の競技は―リレーになります。選手の方はトラックまでお集まりください……』
橘の通る声で放送が入り、万里がトラックに向かって走っていく。
女ウケのよさそうな愛想笑い。
歯の浮きそうな甘い台詞でも吐いてくれそうだ。
(……ん?)
ふと気が付くと…いつのまにか応援席のはじっこに進藤政春が、こちらの中央側に来たがっている事に気が付く。
「………どうしたんだこんなところで」
「菅原さん……」
進藤は少し頬を染めながら、万里に視線を送ったり、あるいは目をそらしたりしている。
まるで少女漫画の主人公のような風情だ。
……確か進藤は30歳を超えていると聞いていたが
近くで見ても童顔で、随分年若く見える。
(ご主人様がリレーに出るから応援したい……ってか?)
でも、恥ずかしいからどうしよう……
みたいな、心情が表情にありありと現れている。
進藤が、あんな男に一途な想いを寄せているらしい事は誰の目から見ても明らかだった。
「こんなあっつい日に仰々しい服着せられてよ……応援団長らしい。
人が足りないから手伝ってくれるか?」
菅原は、ついついお節介じみた調子でメガホンを渡しながらそう言っていた。
「……私が、ですか?」
「アンタ、応援したい奴がいるんだろ?丁度いいじゃねえか」
「っ……そ、んな…!」
驚いた表情を浮かべる進藤。
……まさか、気が付かれていないとでも思っていたのだろうか。

そんな風に菅原が進藤を観察していたら、競技が始まっていた。
始まって早々から、1位との差は大分離れてしまっていたが……
万里の演出なのか何なのか、万里が結局他の走者をぐんぐん抜いて1位を勝ち取っていたのだった。
「ご主人様、すごい………」
そう呟く進藤を見れば、どこか幸せそうにすら見える表情でただ立ち尽くしていた。
「お前は行かなくていいのか?」
「いえ……私は、いいんです」
にっこりと、控え目に笑う進藤。
けれど、悲しくもなさそうで、どちらかというと楽しそうだった。
「ふぅん。一途なこった。
でも、偶には違う男に目ぇ向けてもいいんじゃねえの?」
「……?」
手を背後にまわし、腰を抱いた。
ここまで解り易く口説いているのに、解っていないらしい。
少し間を置いてから――
「あ、あの……からかうのは止めて下さい」
等と言われる。
「はは。あんたのそういう顔ってさ、構って、って言ってるようなもんだ」
「えっ……」
「遊び方ぐらい覚えといて損はないぜ?俺が手とり足とり教えてやるよ」
「………っ」
そこまで言うと、反論するでも抵抗するでもなく、……固まってしまう進藤。
脅えるような素ぶりは見せているが、どこか危なっかしい。
普段はそれなりにしっかりしているようにも見えたのだが。
……第一、その歳で、どうしてこんなに無防備でいられるのか解らない。
自分に向けられた「悪意を疑う・避ける」…というセンスが決定的に無い、としか思えなかった。
悪意だらけの中を潜り抜ける事こそ「日常」と考えてきた菅原にとっては、まるで異世界の住人だった。
真面目なトーンで、あんたは万里、やめた方がいいんじゃねえか?……などと言ってしまいそうになったが、後で万里に何を言われるか解らなかったので躊躇われた。
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