ローレンス・マクファーソン
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ローレンス・マクファーソンが東雲健吉と出逢った事は、彼にとってプラスだったのか、マイナスだったのか。
自身でも、未だ解らない。
恋の多幸感に振り回され続けている事実が、ただ横たわっていた。
***
――数年前
イギリス都心部にて―
ローレンスは、父親との待ち合わせ場所に、時間より10分早くたどり着いた。
遠くから父の姿を確認すれば、隣には東洋人と思われる男が立っている。
そういえば、日本から来ている仕事関係者を紹介したいと言っていた。
「ローレンス。郊外でのプロジェクトメンバーの一人、東雲くんだ」
ホテル経営者である父は、嬉しそうに彼の名を語る。
「はじめまして、東雲健吉と申します。いつも、お父様にはとってもお世話になってます」
シノノメケンキチと名乗る日本人は流暢に英語を操りながら、愛嬌のある笑顔を浮かべていた。
「東雲くんは本当に優秀でね。うちに是非来てくれないかと口説いている最中なんだ」
はは、と父が楽しそうに笑ってシノノメを見る。
シノノメは冗談めかしたリアクションをして、また父の笑いを誘った。
それから、ローレンス自身の自己紹介を終え、3人でテラスのあるカフェに入り、少し早いランチタイムが始まる。
ランチの最中も父の機嫌は良かった。
以前にも仕事の関係者を紹介された事はあったが、特に彼のことを気に入っている様子だった。
確かに、実直そうな印象と情熱が伺えて好感は持てるし、妙にガツガツしている風でもない。
バランスがいいタイプではあるし、きっと仕事等も要領よくこなすのだろう。
けれど、この時のローレンスは、目の前にいる彼の事よりも、試験勉強の事や、試験後のデートをどのようにこなすかといった事を思案しているのだった。

その後、父が実家にまで東雲を招待するようになり、二人の距離は縮まっていく。
基本は日本で仕事をしている彼だったが、プロジェクトの為にイギリスへ来れば必ずマクファーソン家で食事を共にした。
仕事や会社の話だけではなく、学校での出来事や、東雲のプライベートについてまで話す仲になり、
二人の間には、歳の離れた兄弟のように砕けた雰囲気が漂うになっていた。
「へえ~、ローレンスもう彼女居るのか。どんな子だ?」
東雲は客間のソファで紅茶を飲みながら目を丸くしていた。
「勿論、クラスで一番綺麗な子ですよ」
「お!なんだそりゃ、羨ましい。お前、モテるんだなー」
彼のポップな反応は、まるで心地よい音楽のように、家人達を楽しませる。
「当然です」
得意気に笑えば、ローレンスの母親が「ファンクラブまであって、色々な子が家にやってくるんですよ」と親馬鹿を隠そうともせず東雲に告げた。
「凄いですね!学校内のファンクラブなんて、映画かドラマかでしか、聞いた事ないですよ」
「フン。それは、僕だけの力じゃないと思いますけどね」
「ん?どういう意味だ」
「……僕は、マクファーソン家の跡取りですから。将来が約束されているんですよ」
「……?」
「でもソレは僕の力じゃない。家の力です。僕自身が認められるようになるには、家以上に僕は力をつけないと…」
「へーえ…」
「なんです…?その、呆れたような顔」
「いや、お前の年でそんな風に思えるなんて…偉いなぁと思ってよ」
「!」
東雲はポンとローレンスの頭に手を置いた。
「まぁでも、そんなに気張らんでも、お前自身に興味あるって奴は大勢いると思うぜ」
「……何故そう思うんです」
「だってお前面白いじゃん」
「面白い?どこが?」
「うーん、…どこって言われるとな。全体的に、こう、雰囲気っつーか」
「それって……馬鹿にしてるんですか」
「違う違う!…アレだな、面白い、っていうと違うな。…魅力的って意味だ」
ニコリ、と笑いながらなでなで、と手のひらを動かす東雲。
「…………」
―胸のあたりが急速にきゅう、と縮まって苦しい。
ローレンスは顔を真っ赤にして、生まれて初めての熱を感じていた。
「有難う、ございます……健吉さん」
やっとのことで御礼を言うが、東雲の顔は見れなかった。
それからというもの、ローレンスは東雲の事ばかり考えるようになっていた。
東雲の笑顔、手。まだ触れた事のない、けれど逞しく美しい肩や腕、…鎖骨。
(まただ………苦しくて眠れない……)
あの感覚。胸を中心に体中が締め付けられるような、息苦しさ。
東雲の事を考える度にその苦しさは強まっていく気がした。
会えない事が寂しいから、そんな風に苦しくなるのだろうかとも思ったが、実際に会っているともっともっと苦しくなる。
顔を見ただけで、締め付けられた心臓が喉元までせりあがってくるような酷い感覚に陥った。
ドキンドキン、とやかましい心臓の音を、誰か止めて欲しい。

「僕は病気なのか」
たまりかねて。ある日、そう、クラスメートに打ち明けた。
普段はあまり喋らないが、ローレンスと同じぐらい教師や女生徒の人気が高い男子。
「え?」
特定の人の事を考えたり、その人と会ったり喋ったりすると起きるあの現象について説明すると―
「……ははは!ローレンスも、健全な男だったんだな」
「は?」
「安心しろって。病気じゃねーよ!そりゃ恋、だ、恋」
「こい……」
「お前、いっつも彼女居る癖に今更そりゃねーだろ」
「…恋人に対して、このような苦しみを味わった事はない」
「うわ~~、彼女が聞いたら泣いちゃうぜ。ローレンス君浮気なんて酷い!」
「浮気……僕が浮気?」
「心の浮気。だって、その子にだけ感じるんだろ。そのドキドキは」
「…………」
「そっちが本命ってことだぜ」
クラスメートは意味ありげに声を落として囁いた。
ローレンスは目を見開き、その言葉を感受した。
―恋
―本命
―僕が、健吉さんに………。
そして、何もかもが腑に落ちた。
そうか、これが恋なのか。
煩わしいような、恐ろしいような、……幸せに振り回されるような感覚。
「で?どんな子だよ。その本命ちゃん。お前の事だからまたすっげー可愛いんだろうなあ」
「………確かに、………凄く、可愛いかもしれない」
「へえ……年は?」
「僕よりずっと年上で、優秀なビジネスマンだ」
「マジかよ。流石だな、お前。仕事もデキて美人なお姉さまかぁ…」
「お姉さま………では、ない。」
「え?」
そう。彼はれっきとした、立派な成人男性だ。
これまで、ローレンスは男性との恋など考えた事もなかった。
けれど、何故だろう。
自分の恋と、彼の性別に一つも疑問を抱かなかった。
「お、お前そりゃどういう……?」
クラスメートは困惑したような顔を向けて問いかけてきたが、ローレンスは短く礼を言って、足早に去っていくのだった。
―健吉さんに会いたい………
ローレンスは自宅に帰って早速、パソコンから東雲健吉へEメールを打った。
ストレートに会いたい、と伝えると、ちょうど仕事の事で来週そちらに向かうという、短い返信が来た。
健吉さんに会える。健吉さんに会える!
叫びだしたい衝動をおさえながら、彼に会った時どんな事を話そうか考えあぐねるのだった。

翌週。
予定通り、東雲健吉はイギリスにやってきた。
「ローレンス、お前、何か俺に相談したい事でもあんのか?」
「え?」
「会いたい、だなんてストレートに言われっと男同士でも照れるな」
はは、と目を糸みたいにして東雲は笑った。
「健吉さん―あの………」
言いかけて、ローレンスはある事に気がついた。
「健吉さん、その、頬の傷は………」
「あ?あー………コレ、なぁ………」
頬、引っ掻き傷のようなものが認められる。
「誰かが健吉さんに暴力を?」
「いや、暴力って程じゃねーんだ。彼女から、…パシっと一発、…食らったっつーだけで」
「………彼女…」
彼女に平手打ちをされた時に、指先が引っ掛かってしまったのだと言う。
ローレンスは心が冷えるのを感じた。
そうか、この人は普通に女の人が好きな男性で、そして彼女まで居るのだ。
自分の感情にばかり必死で、彼の状況を探る事すら出来ていなかった。
「彼女、ってももう、…多分、終わるだろうけどな」
「!!そう、なんですか…」
「ま、俺の所為だけどな」
「どうして、健吉さんの所為なんですか…?」
「んー、連絡とか全然しねーし、あんまり会いたいとかも思わないからなあ」
「……何故、お付き合いされたのですか」
「…………流れ………いや、いやいや。お前にこういう話は教育上よくねーな、やめやめ」
「問題ありません。僕は性交渉も経験済みです」
「……っ…性交渉、って……お前凄い言い回しだな」
「流れとは、何ですか。もしかして……」
ローレンスは大きな瞳をまたたかせ、東雲の顔を覗き込んだ。
「あー、…カラダが先走ったとでもいいますか。はは…」
ポリポリ、と頬をかいて気まずそうにする東雲。

(「カラダ」が先走った―……)
言葉を反芻すると、ローレンスの鼓動が怖いぐらいに高鳴った。
それも、いつもの、胸がぎゅうっとする感覚だけではなく―、下腹部の方が……
(…………!)
ローレンスは自身の体……中心部の変化に気が付き、頬を赤らめた。
すると、そんなローレンスの異変に東雲も気がついて―
「……今の話のどこでそーなるんだよっ」
と笑った。
「し、仕方ないじゃないですか―!健吉さんが…こんな話したから……」
「ま、若いモンな。でもお前そんなんじゃ女の子が引いちまうぞ」
「……!女性の前ではこんな失態……有り得ません!あなただから、です」
「へ?」
「健吉さん、の…あんな話を聞いたから……、です」
「…………」
東雲は言葉の意味が解らないのか、怪訝な顔をしてローレンスを見る。
「き、聞いてますか?……僕は………」
「……あのな、ローレンス……その前にソレ、処理してこい、って……」
「っっっ」
ローレンスは声にならない言葉をあげてからトイレに駆け込むのだった。
(馬鹿…あんなシーンで告白なんて、ムードも何もないじゃないか)
(………仕切り直して、次はもっとうまく―)
欲望を処理しながら、これからの東雲との未来に想いを馳せるのだった。
苦しい苦しい幸せの、幕開けだった。
fin
自身でも、未だ解らない。
恋の多幸感に振り回され続けている事実が、ただ横たわっていた。
***
――数年前
イギリス都心部にて―
ローレンスは、父親との待ち合わせ場所に、時間より10分早くたどり着いた。
遠くから父の姿を確認すれば、隣には東洋人と思われる男が立っている。
そういえば、日本から来ている仕事関係者を紹介したいと言っていた。
「ローレンス。郊外でのプロジェクトメンバーの一人、東雲くんだ」
ホテル経営者である父は、嬉しそうに彼の名を語る。
「はじめまして、東雲健吉と申します。いつも、お父様にはとってもお世話になってます」
シノノメケンキチと名乗る日本人は流暢に英語を操りながら、愛嬌のある笑顔を浮かべていた。
「東雲くんは本当に優秀でね。うちに是非来てくれないかと口説いている最中なんだ」
はは、と父が楽しそうに笑ってシノノメを見る。
シノノメは冗談めかしたリアクションをして、また父の笑いを誘った。
それから、ローレンス自身の自己紹介を終え、3人でテラスのあるカフェに入り、少し早いランチタイムが始まる。
ランチの最中も父の機嫌は良かった。
以前にも仕事の関係者を紹介された事はあったが、特に彼のことを気に入っている様子だった。
確かに、実直そうな印象と情熱が伺えて好感は持てるし、妙にガツガツしている風でもない。
バランスがいいタイプではあるし、きっと仕事等も要領よくこなすのだろう。
けれど、この時のローレンスは、目の前にいる彼の事よりも、試験勉強の事や、試験後のデートをどのようにこなすかといった事を思案しているのだった。

その後、父が実家にまで東雲を招待するようになり、二人の距離は縮まっていく。
基本は日本で仕事をしている彼だったが、プロジェクトの為にイギリスへ来れば必ずマクファーソン家で食事を共にした。
仕事や会社の話だけではなく、学校での出来事や、東雲のプライベートについてまで話す仲になり、
二人の間には、歳の離れた兄弟のように砕けた雰囲気が漂うになっていた。
「へえ~、ローレンスもう彼女居るのか。どんな子だ?」
東雲は客間のソファで紅茶を飲みながら目を丸くしていた。
「勿論、クラスで一番綺麗な子ですよ」
「お!なんだそりゃ、羨ましい。お前、モテるんだなー」
彼のポップな反応は、まるで心地よい音楽のように、家人達を楽しませる。
「当然です」
得意気に笑えば、ローレンスの母親が「ファンクラブまであって、色々な子が家にやってくるんですよ」と親馬鹿を隠そうともせず東雲に告げた。
「凄いですね!学校内のファンクラブなんて、映画かドラマかでしか、聞いた事ないですよ」
「フン。それは、僕だけの力じゃないと思いますけどね」
「ん?どういう意味だ」
「……僕は、マクファーソン家の跡取りですから。将来が約束されているんですよ」
「……?」
「でもソレは僕の力じゃない。家の力です。僕自身が認められるようになるには、家以上に僕は力をつけないと…」
「へーえ…」
「なんです…?その、呆れたような顔」
「いや、お前の年でそんな風に思えるなんて…偉いなぁと思ってよ」
「!」
東雲はポンとローレンスの頭に手を置いた。
「まぁでも、そんなに気張らんでも、お前自身に興味あるって奴は大勢いると思うぜ」
「……何故そう思うんです」
「だってお前面白いじゃん」
「面白い?どこが?」
「うーん、…どこって言われるとな。全体的に、こう、雰囲気っつーか」
「それって……馬鹿にしてるんですか」
「違う違う!…アレだな、面白い、っていうと違うな。…魅力的って意味だ」
ニコリ、と笑いながらなでなで、と手のひらを動かす東雲。
「…………」
―胸のあたりが急速にきゅう、と縮まって苦しい。
ローレンスは顔を真っ赤にして、生まれて初めての熱を感じていた。
「有難う、ございます……健吉さん」
やっとのことで御礼を言うが、東雲の顔は見れなかった。
それからというもの、ローレンスは東雲の事ばかり考えるようになっていた。
東雲の笑顔、手。まだ触れた事のない、けれど逞しく美しい肩や腕、…鎖骨。
(まただ………苦しくて眠れない……)
あの感覚。胸を中心に体中が締め付けられるような、息苦しさ。
東雲の事を考える度にその苦しさは強まっていく気がした。
会えない事が寂しいから、そんな風に苦しくなるのだろうかとも思ったが、実際に会っているともっともっと苦しくなる。
顔を見ただけで、締め付けられた心臓が喉元までせりあがってくるような酷い感覚に陥った。
ドキンドキン、とやかましい心臓の音を、誰か止めて欲しい。

「僕は病気なのか」
たまりかねて。ある日、そう、クラスメートに打ち明けた。
普段はあまり喋らないが、ローレンスと同じぐらい教師や女生徒の人気が高い男子。
「え?」
特定の人の事を考えたり、その人と会ったり喋ったりすると起きるあの現象について説明すると―
「……ははは!ローレンスも、健全な男だったんだな」
「は?」
「安心しろって。病気じゃねーよ!そりゃ恋、だ、恋」
「こい……」
「お前、いっつも彼女居る癖に今更そりゃねーだろ」
「…恋人に対して、このような苦しみを味わった事はない」
「うわ~~、彼女が聞いたら泣いちゃうぜ。ローレンス君浮気なんて酷い!」
「浮気……僕が浮気?」
「心の浮気。だって、その子にだけ感じるんだろ。そのドキドキは」
「…………」
「そっちが本命ってことだぜ」
クラスメートは意味ありげに声を落として囁いた。
ローレンスは目を見開き、その言葉を感受した。
―恋
―本命
―僕が、健吉さんに………。
そして、何もかもが腑に落ちた。
そうか、これが恋なのか。
煩わしいような、恐ろしいような、……幸せに振り回されるような感覚。
「で?どんな子だよ。その本命ちゃん。お前の事だからまたすっげー可愛いんだろうなあ」
「………確かに、………凄く、可愛いかもしれない」
「へえ……年は?」
「僕よりずっと年上で、優秀なビジネスマンだ」
「マジかよ。流石だな、お前。仕事もデキて美人なお姉さまかぁ…」
「お姉さま………では、ない。」
「え?」
そう。彼はれっきとした、立派な成人男性だ。
これまで、ローレンスは男性との恋など考えた事もなかった。
けれど、何故だろう。
自分の恋と、彼の性別に一つも疑問を抱かなかった。
「お、お前そりゃどういう……?」
クラスメートは困惑したような顔を向けて問いかけてきたが、ローレンスは短く礼を言って、足早に去っていくのだった。
―健吉さんに会いたい………
ローレンスは自宅に帰って早速、パソコンから東雲健吉へEメールを打った。
ストレートに会いたい、と伝えると、ちょうど仕事の事で来週そちらに向かうという、短い返信が来た。
健吉さんに会える。健吉さんに会える!
叫びだしたい衝動をおさえながら、彼に会った時どんな事を話そうか考えあぐねるのだった。

翌週。
予定通り、東雲健吉はイギリスにやってきた。
「ローレンス、お前、何か俺に相談したい事でもあんのか?」
「え?」
「会いたい、だなんてストレートに言われっと男同士でも照れるな」
はは、と目を糸みたいにして東雲は笑った。
「健吉さん―あの………」
言いかけて、ローレンスはある事に気がついた。
「健吉さん、その、頬の傷は………」
「あ?あー………コレ、なぁ………」
頬、引っ掻き傷のようなものが認められる。
「誰かが健吉さんに暴力を?」
「いや、暴力って程じゃねーんだ。彼女から、…パシっと一発、…食らったっつーだけで」
「………彼女…」
彼女に平手打ちをされた時に、指先が引っ掛かってしまったのだと言う。
ローレンスは心が冷えるのを感じた。
そうか、この人は普通に女の人が好きな男性で、そして彼女まで居るのだ。
自分の感情にばかり必死で、彼の状況を探る事すら出来ていなかった。
「彼女、ってももう、…多分、終わるだろうけどな」
「!!そう、なんですか…」
「ま、俺の所為だけどな」
「どうして、健吉さんの所為なんですか…?」
「んー、連絡とか全然しねーし、あんまり会いたいとかも思わないからなあ」
「……何故、お付き合いされたのですか」
「…………流れ………いや、いやいや。お前にこういう話は教育上よくねーな、やめやめ」
「問題ありません。僕は性交渉も経験済みです」
「……っ…性交渉、って……お前凄い言い回しだな」
「流れとは、何ですか。もしかして……」
ローレンスは大きな瞳をまたたかせ、東雲の顔を覗き込んだ。
「あー、…カラダが先走ったとでもいいますか。はは…」
ポリポリ、と頬をかいて気まずそうにする東雲。

(「カラダ」が先走った―……)
言葉を反芻すると、ローレンスの鼓動が怖いぐらいに高鳴った。
それも、いつもの、胸がぎゅうっとする感覚だけではなく―、下腹部の方が……
(…………!)
ローレンスは自身の体……中心部の変化に気が付き、頬を赤らめた。
すると、そんなローレンスの異変に東雲も気がついて―
「……今の話のどこでそーなるんだよっ」
と笑った。
「し、仕方ないじゃないですか―!健吉さんが…こんな話したから……」
「ま、若いモンな。でもお前そんなんじゃ女の子が引いちまうぞ」
「……!女性の前ではこんな失態……有り得ません!あなただから、です」
「へ?」
「健吉さん、の…あんな話を聞いたから……、です」
「…………」
東雲は言葉の意味が解らないのか、怪訝な顔をしてローレンスを見る。
「き、聞いてますか?……僕は………」
「……あのな、ローレンス……その前にソレ、処理してこい、って……」
「っっっ」
ローレンスは声にならない言葉をあげてからトイレに駆け込むのだった。
(馬鹿…あんなシーンで告白なんて、ムードも何もないじゃないか)
(………仕切り直して、次はもっとうまく―)
欲望を処理しながら、これからの東雲との未来に想いを馳せるのだった。
苦しい苦しい幸せの、幕開けだった。
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