松木 候星
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数年前―
松木侯星がまだ医学部2回生だった頃。
彼のアパートにてその、小さな事件は起きた。
―松木は大学の同級生に罰ゲームを課せられて居た。
ある講義の研究発表で、一番悪い評価を受けた者に課せられていたこの罰ゲーム。
松木は、うっかり、発表自体を忘れてしまっていたのである。
普段しっかり者で通ってる松木だったが、どうにも意外なところで抜けているタイプだった。
そしてその罰ゲームの内容は―……「裸エプロン」だった。
「もういいだろ?脱ぐから」
「それじゃ罰ゲームになんねーじゃん!このまま鍋しようぜ」
「…………」
男である自分が、何故裸にエプロンをまとわなければならないのか。
はぁ~、と、弱いため息を吐く。
この恰好で料理を作れと言われても……、背中を向ければ全てが見えてしまう。
でも作らなければこの時間は終わらないのだろう。
松木は意を決して席を立ち、台所にたった。
しぶしぶ鍋を取り出したその時…
「ひゃぁっ?!」
背後から同級生の一人が…松木の腰をツツツ、と指先で撫ぜる。
「や、やめろ、よ…!何す……」
「いいから、気にしないで早く作れよ」
松木の言葉は無視して同級生2人は彼を囲うよう、背後に立っていた。
「侯星ってさぁ、…なんか、赤ん坊みたいだよな」
うわ言のように呟きながら、1人が肌の露出した松木を抱き寄せる。
「…っ…どこ、触って…!」
手から逃れようと身を捩るが、もう1人の同級生が手首を後ろ手に押さえつけていた。
「まあまぁ」
「んーーー!っ…あんまり触るな、………っ」
―その時、扉がガチャりとあいて
「邪魔するぞ」
十条拓哉が、断りもなく…まるで自宅のドアを開けるかのように、自然な様子で玄関に入ってきた。
「………?!!」
「あっ……十条…………、お前、来ないんじゃ……」
「何してんだよ、お前ら」
「な…に、って……遊びだよ、遊び!そう罰ゲーム…」
ギャアア!!という悲鳴が響いた。
十条が、松木の同級生の一人の股間を蹴りあげたのだ。
「チッ……汚ねえモンおったたせてんじゃねーぞ!てめーらさっさと帰れ!」
「………拓哉……ここ、俺の家なんだけど……」
「んなこたァ今どうだっていいんだよ!!」
当時、喧嘩っ早くて有名だった十条拓哉の出現に、二人の同級生はすごすごと逃げ帰るしか出来なかった。
「お前、何襲われてんだ!そもそもその恰好は何だ!」
「ちょっと、…いや、結構、タチの悪い冗談だね」
「冗談じゃねえっつーの!あいつら、前々からお前の事狙ってただろうが!」
「?何それ。そんな訳ないだろ」
「あのなぁ……とりあえず、あんな危ねぇ奴ら、金輪際、家にいれんなよ」
強い口調ではあるが、心配してくれているらしい十条の視線に、松木はほだされて頷いた。
「…解った。もう家にはいれないようにする」
「おう」
「心配してくれて、有難う、拓哉」
「……………」
十条拓哉は学内では知らない人間が居ない程有名人だった。
だが、それは必ずしもイイ意味で…ではない。
開業医の息子で、首席入学の上、あのルックスに、派手な女遊び、大胆な行動パターン。
彼に好意をしめす女性は多いが、それと同じだけ、泣かされた女性が居る。
同時に、男子生徒にとっては「敵」のような存在だった。
一方、松木侯星は、男女問わず、「ライク」の意味で好かれる人物だった。
誰に対しても平等に声をかけ、とりとめもない世間話をして、求められればいくらでも世話を焼く。
浮いた噂もなく、至って真面目で規則正しい生活態度だ。
そんな二人がこんなにも仲良くしていられる事が、松木自身不思議だった。
「………あれ?拓哉……」
松木の視線が、十条の下半身へ落とされる。
「ああ?」
「その………」
「!」
十条のソレは存在をはっきり主張していた。
「あー………、……クソ。何だよ…」
独り言のように呟きながら、頭を掻く十条。
「おい、風呂借りるぞ」
「え?」
「だから……コレ。処理、してくんだよ」
「女の人に会いに行かないの?だって、したいからそうなったんでしょ」
「……こんな状態で行けるか。馬鹿にされんだろーが」
「ふーん。馬鹿にされるような事、なんだね」
「………ハ。お前ってやっぱり……」
「なに?」
「いや。何でもねーよ」
言いながら、またもや自分の家のような態度でずかずかと部屋を闊歩し、風呂場へ向かう十条だった。
松木は、十条が風呂に入っている間にエプロンを脱いで、服を着た。
そして、途中だった料理を再開する。
(……何か、変な感じ)
今、自分の部屋の風呂で、顔見知りの男が「ソウイウコト」をしている。
それを互いに知っている状態。
(あはは。なんか、…笑える)
顔をほころばせ、トントンと野菜を刻んでいった。
今日は揚げ豆腐、味噌汁、小松菜のお浸しを作る。下ごしらえは終わっているから、すぐに出来あがりそうだ。
(拓哉、普段野菜なんか食べないんだろうな)
揚げ豆腐にかけるあんかけにはタップリ野菜が入っている。
「お、美味そうだな」
「……拓哉。ちゃんと拭いてから出て来いよー……」
風呂からあがったらしい十条が松木の背後に立っていた。
「あ?もう乾いてんだろ」
「髪の毛濡れてるじゃん」
十条が持っていたタオルで頭をガシガシ拭いてやる。
「…やめろ、自分で出来る」
「だったら。最初からそうしたらいいのに」
「うるせーな」
と。その時。十条は変な顔をした。
「何?拓哉」
「……なんでお前まで」
「えっ」
「コレ。なーんで飯作ってこうなんだよ」
「ぅわっ、ァ……!」
十条は何故か立ちあがっていた松木自身を軽くつついた。
「………変な声出してんじゃねー」
「な…、だって拓哉が、急に、…変なところ、触るから、っ…だよ…」
「っつーか、だからなんで、こうなってんだよ」
「な、何で、だろう…俺も、解んないよぉ………」
「………。泣きそうな声、出すな」
「泣いて、なん、か……ないよ……」
「……………。おい、お前も風呂入って来い」
「………うん」
十条に言われるがまま、風呂へ向かい、ガラリと戸を閉める。
そして―
(あ~……何で、…こんなことに……)
さっきまでと、逆の立場になってしまった。
十条が自分の部屋に居る。
なおかつ、今自分がナニをしているか解っている状態だ。
(う………)
羞恥心を感じながら、指先を動かす。
けれど、突然の事なので何を想像すればいいものか解らない。
本物の女性のぬくもりを味わった事は、ただの一度もない為、想像力に乏しい。
(拓哉は……、いっぱい、そういう事、してるんだろうな……)
いつも違う女を連れている十条。
構内で見かけても、女性の方が十条にベッタリと腕や指を彼に絡ませている事が多い。
(どんな、風に……するんだろ…、……)
女性に対して、十条はいささかぶっきらぼうな態度をとる方だ。
強引に腕を引いたり、名前も呼ばない。「オイ」とか「お前」と呼んでいるところしか見た事がない。
そんな彼は―きっと、ベッドの中でも乱暴に女性を―
(……でも、……優しい、よね………)
年の離れた姉の事をいつも心配しているし、両親の事も気にかけている。
だから、もしかしたらソウイウ時は、彼の優しい面が―
「っ……ン………!」
松木はビクン!と肩を震わせて達した。
声が漏れないように奥歯を噛みしめていたので、少しだけ息苦しかった。
「あれ?拓哉、準備してくれたんだ?」
「……まーな」
松木が盛り付けをする予定だった料理。
十条によって、綺麗にはテーブルへ並べられていた。
「へえ……拓哉ってこんな事出来るんだ」
「お前は、俺をなんだと思ってんだよ…」
「だって、料理なんてした事ないでしょ」
「……飯運ぶぐらいは、実家でやってた」
「はは。そっか」
二人は穏やかに夕食を摂る。
少しだけビールも飲んで、食後のデザートも食べて、夜が更けていった。
「拓哉、今日泊ってく?」
「ああ」
「じゃあ布団出しておくね」
「おー」
「拓哉」
「…何だ?」
「あのさ、…拓哉って、一人でスル時、何考えてる?」
「…………はあ?」
「だから、一人で……ソウイウの、する時って……どういう事考えるの?」
「おい、待て。どういう発想でその質問が出た」
「いや、俺さっきさ…」
「あ?」
「……俺のことじゃなくて、拓哉は?」
「……はあ。お前って変な奴だよな、ほんと……」
「変かな」
「いーから、もう寝るぞ。お前明日はえーんだろ」
強引に電気を消して布団に入る十条。
仕方なく松木も布団の中に入った。
「あのな…侯星。……さっきの話」
「え?」
天井を眺めていると、不意に十条が声をかけてくる。
「他の男に聞くなよ?また厄介なことになるから」
「じゃあ答えてくれればいいのに」
「はあ………」
「じゃあ、拓哉が言ったら俺も言う」
「………。俺は、一人であんましねーよ」
「え?いつも女の人とするってこと?」
「………まあ、そんなような事だ」
「今日はじゃあ、イレギュラーだったんだ?」
「…………不慮の事故。…いや、災難だな」
「災難?」
「何でもねー。つうかそもそも何でこんなことが気になんだよ?」
「いや、…俺今日さあ………」
「今日?」
「……うーん、俺、実は女の人とした事ないんだよ」
「知ってる」
「あ、本当。何でだろう。…まあ、そうなんだけど……だからね」
「おお」
「拓哉はどうやって女の人とするんだろう、って考えて……」
「…………は?」
十条はガバっと起き上がって、松木の方に体を向けた。
「あー…、やっぱり良くないよなー、他人のそういうプライベートな事を勝手に想像して…」
「いやいや、別にそりゃいいけど……」
「ううん。駄目だよ。俺もちゃんと、彼女作れたらいいのにな……」
「彼女……」
「うん。した事が無いから余計変な想像を……あ、でもまずは好きな子が欲しい」
「………………」
十条はそれっきり背を向けて黙ってしまい、松木はその背中を眺める事にした。
そのうちに穏やかな眠気が襲ってきて、心地のよい夢の中に溶けていった。
fin
松木侯星がまだ医学部2回生だった頃。
彼のアパートにてその、小さな事件は起きた。
―松木は大学の同級生に罰ゲームを課せられて居た。
ある講義の研究発表で、一番悪い評価を受けた者に課せられていたこの罰ゲーム。
松木は、うっかり、発表自体を忘れてしまっていたのである。
普段しっかり者で通ってる松木だったが、どうにも意外なところで抜けているタイプだった。
そしてその罰ゲームの内容は―……「裸エプロン」だった。
「もういいだろ?脱ぐから」
「それじゃ罰ゲームになんねーじゃん!このまま鍋しようぜ」
「…………」
男である自分が、何故裸にエプロンをまとわなければならないのか。
はぁ~、と、弱いため息を吐く。
この恰好で料理を作れと言われても……、背中を向ければ全てが見えてしまう。
でも作らなければこの時間は終わらないのだろう。
松木は意を決して席を立ち、台所にたった。
しぶしぶ鍋を取り出したその時…
「ひゃぁっ?!」
背後から同級生の一人が…松木の腰をツツツ、と指先で撫ぜる。
「や、やめろ、よ…!何す……」
「いいから、気にしないで早く作れよ」
松木の言葉は無視して同級生2人は彼を囲うよう、背後に立っていた。
「侯星ってさぁ、…なんか、赤ん坊みたいだよな」
うわ言のように呟きながら、1人が肌の露出した松木を抱き寄せる。
「…っ…どこ、触って…!」
手から逃れようと身を捩るが、もう1人の同級生が手首を後ろ手に押さえつけていた。
「まあまぁ」
「んーーー!っ…あんまり触るな、………っ」
―その時、扉がガチャりとあいて
「邪魔するぞ」
十条拓哉が、断りもなく…まるで自宅のドアを開けるかのように、自然な様子で玄関に入ってきた。
「………?!!」
「あっ……十条…………、お前、来ないんじゃ……」
「何してんだよ、お前ら」
「な…に、って……遊びだよ、遊び!そう罰ゲーム…」
ギャアア!!という悲鳴が響いた。
十条が、松木の同級生の一人の股間を蹴りあげたのだ。
「チッ……汚ねえモンおったたせてんじゃねーぞ!てめーらさっさと帰れ!」
「………拓哉……ここ、俺の家なんだけど……」
「んなこたァ今どうだっていいんだよ!!」
当時、喧嘩っ早くて有名だった十条拓哉の出現に、二人の同級生はすごすごと逃げ帰るしか出来なかった。
「お前、何襲われてんだ!そもそもその恰好は何だ!」
「ちょっと、…いや、結構、タチの悪い冗談だね」
「冗談じゃねえっつーの!あいつら、前々からお前の事狙ってただろうが!」
「?何それ。そんな訳ないだろ」
「あのなぁ……とりあえず、あんな危ねぇ奴ら、金輪際、家にいれんなよ」
強い口調ではあるが、心配してくれているらしい十条の視線に、松木はほだされて頷いた。
「…解った。もう家にはいれないようにする」
「おう」
「心配してくれて、有難う、拓哉」
「……………」
十条拓哉は学内では知らない人間が居ない程有名人だった。
だが、それは必ずしもイイ意味で…ではない。
開業医の息子で、首席入学の上、あのルックスに、派手な女遊び、大胆な行動パターン。
彼に好意をしめす女性は多いが、それと同じだけ、泣かされた女性が居る。
同時に、男子生徒にとっては「敵」のような存在だった。
一方、松木侯星は、男女問わず、「ライク」の意味で好かれる人物だった。
誰に対しても平等に声をかけ、とりとめもない世間話をして、求められればいくらでも世話を焼く。
浮いた噂もなく、至って真面目で規則正しい生活態度だ。
そんな二人がこんなにも仲良くしていられる事が、松木自身不思議だった。
「………あれ?拓哉……」
松木の視線が、十条の下半身へ落とされる。
「ああ?」
「その………」
「!」
十条のソレは存在をはっきり主張していた。
「あー………、……クソ。何だよ…」
独り言のように呟きながら、頭を掻く十条。
「おい、風呂借りるぞ」
「え?」
「だから……コレ。処理、してくんだよ」
「女の人に会いに行かないの?だって、したいからそうなったんでしょ」
「……こんな状態で行けるか。馬鹿にされんだろーが」
「ふーん。馬鹿にされるような事、なんだね」
「………ハ。お前ってやっぱり……」
「なに?」
「いや。何でもねーよ」
言いながら、またもや自分の家のような態度でずかずかと部屋を闊歩し、風呂場へ向かう十条だった。
松木は、十条が風呂に入っている間にエプロンを脱いで、服を着た。
そして、途中だった料理を再開する。
(……何か、変な感じ)
今、自分の部屋の風呂で、顔見知りの男が「ソウイウコト」をしている。
それを互いに知っている状態。
(あはは。なんか、…笑える)
顔をほころばせ、トントンと野菜を刻んでいった。
今日は揚げ豆腐、味噌汁、小松菜のお浸しを作る。下ごしらえは終わっているから、すぐに出来あがりそうだ。
(拓哉、普段野菜なんか食べないんだろうな)
揚げ豆腐にかけるあんかけにはタップリ野菜が入っている。
「お、美味そうだな」
「……拓哉。ちゃんと拭いてから出て来いよー……」
風呂からあがったらしい十条が松木の背後に立っていた。
「あ?もう乾いてんだろ」
「髪の毛濡れてるじゃん」
十条が持っていたタオルで頭をガシガシ拭いてやる。
「…やめろ、自分で出来る」
「だったら。最初からそうしたらいいのに」
「うるせーな」
と。その時。十条は変な顔をした。
「何?拓哉」
「……なんでお前まで」
「えっ」
「コレ。なーんで飯作ってこうなんだよ」
「ぅわっ、ァ……!」
十条は何故か立ちあがっていた松木自身を軽くつついた。
「………変な声出してんじゃねー」
「な…、だって拓哉が、急に、…変なところ、触るから、っ…だよ…」
「っつーか、だからなんで、こうなってんだよ」
「な、何で、だろう…俺も、解んないよぉ………」
「………。泣きそうな声、出すな」
「泣いて、なん、か……ないよ……」
「……………。おい、お前も風呂入って来い」
「………うん」
十条に言われるがまま、風呂へ向かい、ガラリと戸を閉める。
そして―
(あ~……何で、…こんなことに……)
さっきまでと、逆の立場になってしまった。
十条が自分の部屋に居る。
なおかつ、今自分がナニをしているか解っている状態だ。
(う………)
羞恥心を感じながら、指先を動かす。
けれど、突然の事なので何を想像すればいいものか解らない。
本物の女性のぬくもりを味わった事は、ただの一度もない為、想像力に乏しい。
(拓哉は……、いっぱい、そういう事、してるんだろうな……)
いつも違う女を連れている十条。
構内で見かけても、女性の方が十条にベッタリと腕や指を彼に絡ませている事が多い。
(どんな、風に……するんだろ…、……)
女性に対して、十条はいささかぶっきらぼうな態度をとる方だ。
強引に腕を引いたり、名前も呼ばない。「オイ」とか「お前」と呼んでいるところしか見た事がない。
そんな彼は―きっと、ベッドの中でも乱暴に女性を―
(……でも、……優しい、よね………)
年の離れた姉の事をいつも心配しているし、両親の事も気にかけている。
だから、もしかしたらソウイウ時は、彼の優しい面が―
「っ……ン………!」
松木はビクン!と肩を震わせて達した。
声が漏れないように奥歯を噛みしめていたので、少しだけ息苦しかった。
「あれ?拓哉、準備してくれたんだ?」
「……まーな」
松木が盛り付けをする予定だった料理。
十条によって、綺麗にはテーブルへ並べられていた。
「へえ……拓哉ってこんな事出来るんだ」
「お前は、俺をなんだと思ってんだよ…」
「だって、料理なんてした事ないでしょ」
「……飯運ぶぐらいは、実家でやってた」
「はは。そっか」
二人は穏やかに夕食を摂る。
少しだけビールも飲んで、食後のデザートも食べて、夜が更けていった。
「拓哉、今日泊ってく?」
「ああ」
「じゃあ布団出しておくね」
「おー」
「拓哉」
「…何だ?」
「あのさ、…拓哉って、一人でスル時、何考えてる?」
「…………はあ?」
「だから、一人で……ソウイウの、する時って……どういう事考えるの?」
「おい、待て。どういう発想でその質問が出た」
「いや、俺さっきさ…」
「あ?」
「……俺のことじゃなくて、拓哉は?」
「……はあ。お前って変な奴だよな、ほんと……」
「変かな」
「いーから、もう寝るぞ。お前明日はえーんだろ」
強引に電気を消して布団に入る十条。
仕方なく松木も布団の中に入った。
「あのな…侯星。……さっきの話」
「え?」
天井を眺めていると、不意に十条が声をかけてくる。
「他の男に聞くなよ?また厄介なことになるから」
「じゃあ答えてくれればいいのに」
「はあ………」
「じゃあ、拓哉が言ったら俺も言う」
「………。俺は、一人であんましねーよ」
「え?いつも女の人とするってこと?」
「………まあ、そんなような事だ」
「今日はじゃあ、イレギュラーだったんだ?」
「…………不慮の事故。…いや、災難だな」
「災難?」
「何でもねー。つうかそもそも何でこんなことが気になんだよ?」
「いや、…俺今日さあ………」
「今日?」
「……うーん、俺、実は女の人とした事ないんだよ」
「知ってる」
「あ、本当。何でだろう。…まあ、そうなんだけど……だからね」
「おお」
「拓哉はどうやって女の人とするんだろう、って考えて……」
「…………は?」
十条はガバっと起き上がって、松木の方に体を向けた。
「あー…、やっぱり良くないよなー、他人のそういうプライベートな事を勝手に想像して…」
「いやいや、別にそりゃいいけど……」
「ううん。駄目だよ。俺もちゃんと、彼女作れたらいいのにな……」
「彼女……」
「うん。した事が無いから余計変な想像を……あ、でもまずは好きな子が欲しい」
「………………」
十条はそれっきり背を向けて黙ってしまい、松木はその背中を眺める事にした。
そのうちに穏やかな眠気が襲ってきて、心地のよい夢の中に溶けていった。
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