水嶋 彬
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アレは、彬が中学に入ってすぐの事だった。
当時、なんとなく一緒に居た女と学校帰りにうろうろしていた。
すると―
(政春?)
女と歩く、従兄弟の進藤政春が目に飛び込んできた。
女は紺と白のワンピースを着こみ、政春の腕やら肩やらにベタベタと
体を絡ませている。
その様子はいかにも汚らしく、彬の目には清潔感を欠いたようにうつった。
女の歳は政春とそう変わらず―大学での知り合いのように見える。
就職活動が終わったと聞いていたが、それによる解放感からあのような事になったんだろうか。

―翌日。
彬は政春のアパートに来ていた。
「彬。…来るなら来ると事前に言って下さい」
「言ったじゃん。さっき」
「……今着いた、ってメールは事前連絡ではないでしょう」
ふぅ…と目を伏せながら、しぶしぶ水嶋を部屋に招き入れる政春。
相変わらず、中学生の自分にも丁寧な敬語を使う彼に笑みがこぼれた。
が、次の瞬間、政春の首筋に赤く、虫さされのような跡がある事を認めどこか冷めた気分になる。
(もしかして…)
彬は部屋に入りしな、政春の腕を掴んで言う。
「もうあの子とヤったの?」
「………えっ…!?」
彬の言葉が理解できたようで、みるみる顔を真っ赤にしていく政春。
「あ、ヤったんだ。やっぱり」
「………………っ」
「どうだった?政春初めてだっただろ」
「……!!!なんでそんなことを……!」
「見てりゃ解る」
「……………」
「うまく出来た?政春」
「……そんな話はしたくありません」
「…ふーん。じゃあ俺が勝手に話しちゃおうかな」
「え?」
彬は髪の毛をかき上げながら、視線を政春に流す。
その姿があまりにも堂に入っていて、まるで大人の男のように政春は思えた。
勉強も運動も、意図も簡単に完璧にこなしてしまう彬。自分とは大違いだ―と苦い思いが頭をかすめる。
そして次の瞬間、政春は益々唖然としてしまう。
「俺も最近童貞きったんだよね。」
「は…………?」
「だから、初エッチ。体育倉庫でしちゃった」
「な………っ!彬……あなた、学校で何を…!大体まだ中学生でしょう…!」
いきなりの告白に政春はどもった口調であれやこれやと口うるさく言い始める。
なんだかそれが女の子みたいで、彬は口元をゆるめる。
彬は身長も既に165cm以上あり、顔つきも口調も酷く大人びていた為、政春と並んでも同年代のように見えてしまう。
「黒髪でさー眼鏡ですっげー真面目そうでちょっと政春に似てんだよね」
「…………」
「でもこれがヤってみたらノリノリでさ。面くらっちゃった。でも政春の彼女ってマグロっぽいよな」
「ま……まぐろ?」
「…エッチの時に何の反応もしないって女。男からみたら最悪って事」
「……やっ…やめて下さい!!彼女を…馬鹿にしないで…!」
「怒んないでよ。」
「……っ……か…彼女が悪いんじゃない…私が……悪い、んです…うまく…出来なくて」
「ん?」

聞けば…政春はいつも最後まで出来ないのだと言う。
これまで何度か挑戦してみているものの、毎回途中で終わりを迎えてしまうらしい。
「ふーん………緊張してんだろ?」
「さ……最初はそうだと思っていたんですが……」
「今は?」
「………その…………失礼な話、ですが…冷めてしまうというか……」
「好みの女じゃないのか」
「それが……私……女の人の好みって特にないんです。…彼女の場合…告白して下さったので喜んでお受けしたんですが…」
「………………じゃあ今まで誰も好きになってないの?ひとりでするときどうしてんの?」
「ひっひとり……の時………?!……いっいえ!こんな事人に話す内容ではないです…。ごめんなさい」
「いいって。これは悩み相談だろ?政春が困ってるから俺が力になりたいって事。ちゃんと解決した方がいい」
「……そ、そうでしょうか…?」
政春はおずおずと、これまでの事を話し始める。
「ごめんなさい……私………ずっと年下のあなたに何を…」
「いいじゃん。俺の方がそこんところは先輩なんだから」
「うぅ……」
猥談など友達同士で死ぬ程してる彬だったが、政春がいちいち恥ずかしがるので酷くくすぐったい気持になっていた。
「まぁ……オカズが女じゃないって事はさ、……政春ゲイなんじゃない?」
「え…………っ?!」
「だって、顔の見えない手だけ想像してする……ってさ。普通の男じゃあんまりナイよ」
「………そう……なんですか……」
「なんで落ち込んでるの?いいじゃん。男が好きだとしても」
「………そうときまった訳では……」
「じゃあ何で彼女とデキないの?」
「わっ……わかり……ません……っ」
「あのさぁ、俺は政春が男好きだったとしても気にしない。だからあんまり肩苦っしく考えんなよ」
「……彬…………」
ふっと目を細めて、首をかしげるように政春は微笑む。
「ありがとう。彬………優しいね」
「っ……………」
見慣れたはずの政春の表情だったが、彬は電気が走ったような衝撃を受けた。
同時に、もしかしたら今後―この笑顔が男の恋人に向けられるかもしれないのだろうか、という暗い確信が胸を走る。
「政春……」
「えっ…?!」
そうして、思わず政春の唇にキスをしていた。
この間やってみたように、ゆっくりと吸って、自分の体液を流し込むようにねっとりと絡めた。
それから女にした通り、胸部を撫でまわし突起をつまむ。首筋に噛みつく―
「っ……彬!何してるんです、か………?!」
「どう?男同士、のキス。と、それ以上のこと?」
「っ……!やっ……めて……」
政春が逃げようとするので肩を押さえこんで、甘く、耳を噛む。
シャンプーの香りが鼻をくすぐって体中が熱くなる。
「俺も男とは初めてしたけど………悪くないよ」
「……!!!私をからかわないで下さい!!!」
「からかってる訳じゃ」
「離して下さい!!」
半ば叫び出す政春。彬は驚いて固まる。
「政春」
「離して……っ…!お願い…、嫌………」
「…………」
「彬、やめて……どうしてこんな事するんですか…?」
取り乱して、彬の腕の中で顔を真っ赤にして懇願する政春。
目じりに涙がたまっている。
彬は常日頃物事を強引に推し進めるタイプだったが、政春にお願いされると逆らう事など出来そうもなかった。
「解った。…ごめんね」
彬はアパートを後にした。
自宅に戻ってからも政春に触れた感触が忘れられず、眠れなかった。
もしかしたら自分は政春が好きなのかもしれない―という考えが頭をよぎったが、拒否された事を思い出せば辛く、考えないように努めた。
―数週間後
いつものようにアパートに遊びに行けば、いつも通りの態度で政春に接して貰える。
彬はホっと胸をなでおろした。
彼女とどうなったのかと聞けば…やはり別れたと言う。
益々機嫌をよくした彬はその日、政春の家に泊っていった。

あれから4年経って―彬は高校生になっていた。進学先は都内有数の進学校。
その中でも彬は成績上位をキープしている。
また、遊び半分に友人とはじめたロックバンドがアマチュアながら異例の人気を誇り、雑誌掲載やラジオ出演などもそう珍しい事ではなくなっていた。
(随分簡単なもんだ)
今まで以上に男も女も自分にすり寄ってくる。
そして彬が望めば彼らは下僕のように言うことを聞き、それ以上の奉仕をしてくれるのだ。
まるで全てを支配したかのように勘違いしそうになるが、まだまだこれからだ、と彬は思った。
誰にも揺るがされない地位と金が欲しい。他人に諂う人生なんてまっぴらだった。
彬はバンドと勉強とで忙しい日々を送っていたが、昔と変わらず政春の部屋にはちょくちょく訪れていた。
政春はあれ以来自分の恋愛については一切話さなくなってしまったので、彬もその話は避けていた。
本気で嫌がられて泣かれるとどうしたらいいか解らない。何より嫌われたくなかったのだ。
そのうち、勝手に合いカギまで作って部屋にあがりこむようになっていた。
政春には一応怒られたが、本気で追い出すつもりはないらしく、彬は政春の部屋にあがることが増えていった。
そんな折。深夜にライブの打ち上げを終えて、どうしても政春に会いたくなった。
明日が土曜日ということもあり、彬は会いカギを使ってアパートの部屋をあける。
当然部屋は真っ暗。
起こしてしまわないように、息をひそめてそろそろとあがりこむ。
―その時だった。
聞き慣れない息遣いが聞えて来ることに気が付く。
「んっ………は………ァ」
(政春?)
「っ……っ…ふ………」
ごく小さい声だけれど、それは明らかに―ひとりの、ソノ時の声だった。
彬は体中の血液が異常な早さでめぐり始めるのを感じた。
政春の顔がみたくって暗やみに目をこらすけれど、シルエットしか解らない。
(政春………)
少しずつ距離を詰めていく。
―その時。
「ぁ………ィ………ッ……万里、さ……っ」
(え?)
万里。
…彬には聞き慣れない名前だった。
(男の………名前…………?)
体温が急激に下がっていく気がした。
「政春」
「……っ?!」
彬はこの最悪の出来事を早く終わらせるべく、政春に声をかける。

「なっ……あき……あきらっ…………」
「政春ってやっぱ男が好きなんだ」
「っな…にを……」
「だって男の名前、……呼びながらシテただろ」
「…………!!」
「なら、俺が手伝ってあげる。ほら…ひとりでするよりいいだろ」
「え……彬!や……っ」
後ろから政春を羽交いじめにするように抱いて、中心を慰める。
細い腰、震える肩。
すべてが彬の頭を溶かしていく。
「…どう?気持ちいい?」
「いや…、やめて……」
緩く抵抗もされるが、後ろから抱きすくめられているので身動きがとれない政春。
また、行為を中断された体とあれば、うまく力が入らないのだろう。
夢中でその体を味わった。
「っ……やぁ………あき、ら…お願い、もう手を…はなし、て………」
「やだ。イイんでしょ?」
「ひっア、あ……、ほんとに……ダメっ…」
体を反らして高く声をあげる政春。
飛び散った彼をペロリと舐める。
「あき……ら………っ」
「随分早かったな、政春」
「………ッこんなこと辞めて下さい!!!」
パシン!
弱弱しく、彬に平手が飛んできた。
突然のことに目を見開く。
「…万里って男と付き合ってるから?」
「!」
「付き合ってるの?」
「……っ………」
「いつから…?」
「…っ付き合って、ません!私とは、全然…関係なんて、ない方、です…」
政春の片想いなのか…、と全身で安堵する彬。

「だったらいいだろ。触ったって…俺政春の痛い事とかしないし」
「そういう問題じゃないですっ…」
「ねえ政春………俺、政春の事好きだよ」
「!」
「親友とか…家族とか、恋人とか、多分全部の意味で好き」
「彬…………」
「政春は?俺のこと好き?」
「もちろん」
「じゃあっ…」
「あなたはずっと大事な…男の子です」
「………どういう意味…?」
「彬…以前にもこういう事がありましたけど……男が好きな男、が珍しいというだけでこんな事するもんじゃありません」
はっきりとした口調で拒絶される。
「あなた…いつも何人もの女性と同時に付き合って、いとも簡単に別れて…繰り返してる。それは、最低の行為だと、どうして解らないんですか?」
「そ…れは」
「何でも出来るあなたにとって他の人の心なんて簡単に操作出来て、オモチャみたいに見えるかもしれません。実際皆あなたの言う事を聞いてしまうでしょうし」
彬は愕然としていた。
確かに、自分は自分以外を人と思わないところがある。政春の言う通りオモチャ…それ以下かもしれない。
けれど政春にそんな態度をとった覚えなどない…。
「でも彬―それはあなたにとってよくない事です。これからの人生で…きっと落とし穴がある。皆、オモチャじゃないんです。それぞれ気持ちがあって…惨めな気分になったり、深く傷ついたりするんですよ?」
子供に言い聞かせるような厳しい口調。諭すような視線を送られる。
「それが出来ないうちは、誰とも心を通わせられない。孤独な未来しかないんです」
「まさは……る…」

―政春は童顔で可愛くてオドオドしたところがあるから
―知らなかった。
彼は自分よりもずっとずっと大人なのだ。年齢だけでなく―心も。
だからきっと―自分の行動など、子供の戯言にしか見えないんだろう。
今回の事だって「愛の告白をされた」とは微塵も思っちゃいない。
「子供が悪ふざけをしているから、叱っている」に過ぎないのだ―…
彬は眩暈を覚えて―それでも何か言わなければならないと想って、なんとか言葉を紡ぐ。
「―さすが政春。よく見てんな」
「…彬」
「確かにそーいうトコ、あると思う。ごめん…気をつけるよ」
「……いいえ。きつく言い過ぎてしまいました。単に、私は彬の若さと才能が羨ましくて、意地悪してるだけかもしれませんんね」
ふわ、と笑って酷く優しい冗談を言う政春。
いつもの穏やかな空気に戻る。
「本当に好きになった子を、幸せにしてあげてくださいね」
美しい笑顔で死刑宣告のような言葉を放つ。
胸がギリギリと傷むけれど、涙をのみ込むように無理して笑うしかなかった。
fin
当時、なんとなく一緒に居た女と学校帰りにうろうろしていた。
すると―
(政春?)
女と歩く、従兄弟の進藤政春が目に飛び込んできた。
女は紺と白のワンピースを着こみ、政春の腕やら肩やらにベタベタと
体を絡ませている。
その様子はいかにも汚らしく、彬の目には清潔感を欠いたようにうつった。
女の歳は政春とそう変わらず―大学での知り合いのように見える。
就職活動が終わったと聞いていたが、それによる解放感からあのような事になったんだろうか。

―翌日。
彬は政春のアパートに来ていた。
「彬。…来るなら来ると事前に言って下さい」
「言ったじゃん。さっき」
「……今着いた、ってメールは事前連絡ではないでしょう」
ふぅ…と目を伏せながら、しぶしぶ水嶋を部屋に招き入れる政春。
相変わらず、中学生の自分にも丁寧な敬語を使う彼に笑みがこぼれた。
が、次の瞬間、政春の首筋に赤く、虫さされのような跡がある事を認めどこか冷めた気分になる。
(もしかして…)
彬は部屋に入りしな、政春の腕を掴んで言う。
「もうあの子とヤったの?」
「………えっ…!?」
彬の言葉が理解できたようで、みるみる顔を真っ赤にしていく政春。
「あ、ヤったんだ。やっぱり」
「………………っ」
「どうだった?政春初めてだっただろ」
「……!!!なんでそんなことを……!」
「見てりゃ解る」
「……………」
「うまく出来た?政春」
「……そんな話はしたくありません」
「…ふーん。じゃあ俺が勝手に話しちゃおうかな」
「え?」
彬は髪の毛をかき上げながら、視線を政春に流す。
その姿があまりにも堂に入っていて、まるで大人の男のように政春は思えた。
勉強も運動も、意図も簡単に完璧にこなしてしまう彬。自分とは大違いだ―と苦い思いが頭をかすめる。
そして次の瞬間、政春は益々唖然としてしまう。
「俺も最近童貞きったんだよね。」
「は…………?」
「だから、初エッチ。体育倉庫でしちゃった」
「な………っ!彬……あなた、学校で何を…!大体まだ中学生でしょう…!」
いきなりの告白に政春はどもった口調であれやこれやと口うるさく言い始める。
なんだかそれが女の子みたいで、彬は口元をゆるめる。
彬は身長も既に165cm以上あり、顔つきも口調も酷く大人びていた為、政春と並んでも同年代のように見えてしまう。
「黒髪でさー眼鏡ですっげー真面目そうでちょっと政春に似てんだよね」
「…………」
「でもこれがヤってみたらノリノリでさ。面くらっちゃった。でも政春の彼女ってマグロっぽいよな」
「ま……まぐろ?」
「…エッチの時に何の反応もしないって女。男からみたら最悪って事」
「……やっ…やめて下さい!!彼女を…馬鹿にしないで…!」
「怒んないでよ。」
「……っ……か…彼女が悪いんじゃない…私が……悪い、んです…うまく…出来なくて」
「ん?」

聞けば…政春はいつも最後まで出来ないのだと言う。
これまで何度か挑戦してみているものの、毎回途中で終わりを迎えてしまうらしい。
「ふーん………緊張してんだろ?」
「さ……最初はそうだと思っていたんですが……」
「今は?」
「………その…………失礼な話、ですが…冷めてしまうというか……」
「好みの女じゃないのか」
「それが……私……女の人の好みって特にないんです。…彼女の場合…告白して下さったので喜んでお受けしたんですが…」
「………………じゃあ今まで誰も好きになってないの?ひとりでするときどうしてんの?」
「ひっひとり……の時………?!……いっいえ!こんな事人に話す内容ではないです…。ごめんなさい」
「いいって。これは悩み相談だろ?政春が困ってるから俺が力になりたいって事。ちゃんと解決した方がいい」
「……そ、そうでしょうか…?」
政春はおずおずと、これまでの事を話し始める。
「ごめんなさい……私………ずっと年下のあなたに何を…」
「いいじゃん。俺の方がそこんところは先輩なんだから」
「うぅ……」
猥談など友達同士で死ぬ程してる彬だったが、政春がいちいち恥ずかしがるので酷くくすぐったい気持になっていた。
「まぁ……オカズが女じゃないって事はさ、……政春ゲイなんじゃない?」
「え…………っ?!」
「だって、顔の見えない手だけ想像してする……ってさ。普通の男じゃあんまりナイよ」
「………そう……なんですか……」
「なんで落ち込んでるの?いいじゃん。男が好きだとしても」
「………そうときまった訳では……」
「じゃあ何で彼女とデキないの?」
「わっ……わかり……ません……っ」
「あのさぁ、俺は政春が男好きだったとしても気にしない。だからあんまり肩苦っしく考えんなよ」
「……彬…………」
ふっと目を細めて、首をかしげるように政春は微笑む。
「ありがとう。彬………優しいね」
「っ……………」
見慣れたはずの政春の表情だったが、彬は電気が走ったような衝撃を受けた。
同時に、もしかしたら今後―この笑顔が男の恋人に向けられるかもしれないのだろうか、という暗い確信が胸を走る。
「政春……」
「えっ…?!」
そうして、思わず政春の唇にキスをしていた。
この間やってみたように、ゆっくりと吸って、自分の体液を流し込むようにねっとりと絡めた。
それから女にした通り、胸部を撫でまわし突起をつまむ。首筋に噛みつく―
「っ……彬!何してるんです、か………?!」
「どう?男同士、のキス。と、それ以上のこと?」
「っ……!やっ……めて……」
政春が逃げようとするので肩を押さえこんで、甘く、耳を噛む。
シャンプーの香りが鼻をくすぐって体中が熱くなる。
「俺も男とは初めてしたけど………悪くないよ」
「……!!!私をからかわないで下さい!!!」
「からかってる訳じゃ」
「離して下さい!!」
半ば叫び出す政春。彬は驚いて固まる。
「政春」
「離して……っ…!お願い…、嫌………」
「…………」
「彬、やめて……どうしてこんな事するんですか…?」
取り乱して、彬の腕の中で顔を真っ赤にして懇願する政春。
目じりに涙がたまっている。
彬は常日頃物事を強引に推し進めるタイプだったが、政春にお願いされると逆らう事など出来そうもなかった。
「解った。…ごめんね」
彬はアパートを後にした。
自宅に戻ってからも政春に触れた感触が忘れられず、眠れなかった。
もしかしたら自分は政春が好きなのかもしれない―という考えが頭をよぎったが、拒否された事を思い出せば辛く、考えないように努めた。
―数週間後
いつものようにアパートに遊びに行けば、いつも通りの態度で政春に接して貰える。
彬はホっと胸をなでおろした。
彼女とどうなったのかと聞けば…やはり別れたと言う。
益々機嫌をよくした彬はその日、政春の家に泊っていった。

あれから4年経って―彬は高校生になっていた。進学先は都内有数の進学校。
その中でも彬は成績上位をキープしている。
また、遊び半分に友人とはじめたロックバンドがアマチュアながら異例の人気を誇り、雑誌掲載やラジオ出演などもそう珍しい事ではなくなっていた。
(随分簡単なもんだ)
今まで以上に男も女も自分にすり寄ってくる。
そして彬が望めば彼らは下僕のように言うことを聞き、それ以上の奉仕をしてくれるのだ。
まるで全てを支配したかのように勘違いしそうになるが、まだまだこれからだ、と彬は思った。
誰にも揺るがされない地位と金が欲しい。他人に諂う人生なんてまっぴらだった。
彬はバンドと勉強とで忙しい日々を送っていたが、昔と変わらず政春の部屋にはちょくちょく訪れていた。
政春はあれ以来自分の恋愛については一切話さなくなってしまったので、彬もその話は避けていた。
本気で嫌がられて泣かれるとどうしたらいいか解らない。何より嫌われたくなかったのだ。
そのうち、勝手に合いカギまで作って部屋にあがりこむようになっていた。
政春には一応怒られたが、本気で追い出すつもりはないらしく、彬は政春の部屋にあがることが増えていった。
そんな折。深夜にライブの打ち上げを終えて、どうしても政春に会いたくなった。
明日が土曜日ということもあり、彬は会いカギを使ってアパートの部屋をあける。
当然部屋は真っ暗。
起こしてしまわないように、息をひそめてそろそろとあがりこむ。
―その時だった。
聞き慣れない息遣いが聞えて来ることに気が付く。
「んっ………は………ァ」
(政春?)
「っ……っ…ふ………」
ごく小さい声だけれど、それは明らかに―ひとりの、ソノ時の声だった。
彬は体中の血液が異常な早さでめぐり始めるのを感じた。
政春の顔がみたくって暗やみに目をこらすけれど、シルエットしか解らない。
(政春………)
少しずつ距離を詰めていく。
―その時。
「ぁ………ィ………ッ……万里、さ……っ」
(え?)
万里。
…彬には聞き慣れない名前だった。
(男の………名前…………?)
体温が急激に下がっていく気がした。
「政春」
「……っ?!」
彬はこの最悪の出来事を早く終わらせるべく、政春に声をかける。

「なっ……あき……あきらっ…………」
「政春ってやっぱ男が好きなんだ」
「っな…にを……」
「だって男の名前、……呼びながらシテただろ」
「…………!!」
「なら、俺が手伝ってあげる。ほら…ひとりでするよりいいだろ」
「え……彬!や……っ」
後ろから政春を羽交いじめにするように抱いて、中心を慰める。
細い腰、震える肩。
すべてが彬の頭を溶かしていく。
「…どう?気持ちいい?」
「いや…、やめて……」
緩く抵抗もされるが、後ろから抱きすくめられているので身動きがとれない政春。
また、行為を中断された体とあれば、うまく力が入らないのだろう。
夢中でその体を味わった。
「っ……やぁ………あき、ら…お願い、もう手を…はなし、て………」
「やだ。イイんでしょ?」
「ひっア、あ……、ほんとに……ダメっ…」
体を反らして高く声をあげる政春。
飛び散った彼をペロリと舐める。
「あき……ら………っ」
「随分早かったな、政春」
「………ッこんなこと辞めて下さい!!!」
パシン!
弱弱しく、彬に平手が飛んできた。
突然のことに目を見開く。
「…万里って男と付き合ってるから?」
「!」
「付き合ってるの?」
「……っ………」
「いつから…?」
「…っ付き合って、ません!私とは、全然…関係なんて、ない方、です…」
政春の片想いなのか…、と全身で安堵する彬。

「だったらいいだろ。触ったって…俺政春の痛い事とかしないし」
「そういう問題じゃないですっ…」
「ねえ政春………俺、政春の事好きだよ」
「!」
「親友とか…家族とか、恋人とか、多分全部の意味で好き」
「彬…………」
「政春は?俺のこと好き?」
「もちろん」
「じゃあっ…」
「あなたはずっと大事な…男の子です」
「………どういう意味…?」
「彬…以前にもこういう事がありましたけど……男が好きな男、が珍しいというだけでこんな事するもんじゃありません」
はっきりとした口調で拒絶される。
「あなた…いつも何人もの女性と同時に付き合って、いとも簡単に別れて…繰り返してる。それは、最低の行為だと、どうして解らないんですか?」
「そ…れは」
「何でも出来るあなたにとって他の人の心なんて簡単に操作出来て、オモチャみたいに見えるかもしれません。実際皆あなたの言う事を聞いてしまうでしょうし」
彬は愕然としていた。
確かに、自分は自分以外を人と思わないところがある。政春の言う通りオモチャ…それ以下かもしれない。
けれど政春にそんな態度をとった覚えなどない…。
「でも彬―それはあなたにとってよくない事です。これからの人生で…きっと落とし穴がある。皆、オモチャじゃないんです。それぞれ気持ちがあって…惨めな気分になったり、深く傷ついたりするんですよ?」
子供に言い聞かせるような厳しい口調。諭すような視線を送られる。
「それが出来ないうちは、誰とも心を通わせられない。孤独な未来しかないんです」
「まさは……る…」

―政春は童顔で可愛くてオドオドしたところがあるから
―知らなかった。
彼は自分よりもずっとずっと大人なのだ。年齢だけでなく―心も。
だからきっと―自分の行動など、子供の戯言にしか見えないんだろう。
今回の事だって「愛の告白をされた」とは微塵も思っちゃいない。
「子供が悪ふざけをしているから、叱っている」に過ぎないのだ―…
彬は眩暈を覚えて―それでも何か言わなければならないと想って、なんとか言葉を紡ぐ。
「―さすが政春。よく見てんな」
「…彬」
「確かにそーいうトコ、あると思う。ごめん…気をつけるよ」
「……いいえ。きつく言い過ぎてしまいました。単に、私は彬の若さと才能が羨ましくて、意地悪してるだけかもしれませんんね」
ふわ、と笑って酷く優しい冗談を言う政春。
いつもの穏やかな空気に戻る。
「本当に好きになった子を、幸せにしてあげてくださいね」
美しい笑顔で死刑宣告のような言葉を放つ。
胸がギリギリと傷むけれど、涙をのみ込むように無理して笑うしかなかった。
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