[本編] 黒木 忠生 編
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【ハク】
「………黒木が俺に告白してくれた場所……だったね」
【黒木】
「………………」
俺は黒木の乗っている車椅子をドア付近の壁際に止めると、窓際に向かって歩いた。
俺と黒木の距離が、だんだんと離れていく。
いつもつるんで、同じ教室にいるのに、最後の最後で気持ちを理解できなかった…………
まるで当時の俺たちの距離のようだ。
【ハク】
「……あの頃の俺、よくこうして外とか見てたよな……」
【ハク】
「校庭で運動部の奴らが練習してるのを見て……でも俺はどっか無関心でさ……」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「そんな俺だからダメだったのかな…?」
【ハク】
「……この同じパソコンルーム内にいつも黒木がいたのに…」
【ハク】
「あの頃の俺、それにさえ無関心だったのかもしれないな……」
【黒木】
「…………」
俺の言葉に、黒木は黙ったまま何も答えない。俺は、あの頃にタイムスリップしたみたいに、窓から見える校庭を眺めていた。
あの頃の俺は、一体何を考えていたのだろう………。
【ハク】
(黒木は……あの頃からすでに、俺のことが好きだったんだ………)
この変わらない風景と同じように、黒木の気持ちも、あの頃のままなのだ。
たとえ、高校の頃のような純粋さや、まっとうな生き方は失われてしまったとしても………
気持ちは変わっていなかった……。
【ハク】
「――――あの時の俺は…黒木の気持ちに気づいてやれなかった………」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「………ごめんな…」
【黒木】
「………」
俺は、黒木に背を向けたまま、謝った。
黒木は黙っている。
【ハク】
「卒業式の日……黒木がせっかく決心して言ってくれた言葉も台無しにして」
【ハク】
「……ホント、ヒドイよな…」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「再会して……今日までいろいろあったけど……そのことは謝りたいと思ってた」
【ハク】
「謝ったって、あの時の黒木を傷つけたことには変わりないけど……さ」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「本当にごめん」
俺は、もう一度ハッキリと謝った。
今更こんなふうに謝ったところで、過去の何が変わるわけではない。
あの日の記憶は、あのまま残ってしまう。それはわかっている。
でも………。
【ハク】
(でも俺は……あの日で止まってしまったものを、前に進ませたいんだ……)
【ハク】
(あの頃の俺にできなかったこと………それを、今の俺が受け止めるんだ………)
俺は、しばらく黙り込んだ。
黒木もさっきから一言も言葉を口にしない………
だからその場には沈黙が流れる。
――――そして俺は、とうとう意を決した。
【ハク】
「……あのさ、黒木。俺……今ならちゃんと答えられると思うんだ……」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「今更って思われるかもしれない」
【ハク】
「都合がいいって、あの頃の黒木に笑われるかもしれない。………でも、俺…………」
俺は、黒木の方を振り返った。
車椅子に座った黒木はまっすぐ俺を見ている。だから俺もまっすぐに黒木を見る。
俺の目に、高校時代の黒木の姿が浮かび上がった。
俺をここに呼び出した黒木。
その黒木が口にした言葉。
その瞬間の、顔。
【ハク】
「――――俺。………黒木のこと、好きだ」
……あの日の、呆然とした黒木の顔が、そっと消えていく……。
【黒木】
「……っ……!」
俺の視線の先には、今、赤面して照れる黒木の顔があった。
それを見ていたら、俺まで恥ずかしくなってきてしまい、思わず俺はうつむいた……。
何しろ俺は今、あの日の黒木と同じように………告白、しているのだ………。
【ハク】
「今更…って、思っただろ…?でも、これは嘘じゃないから……っ。だから、その……っ」
【ハク】
(やば…いっ……なんか、今になって緊張してきた………っ)
【ハク】
(マトモに黒木の顔、見れない………っ)
さっきまでの、自分でも驚くほどしっかりした口調が崩れ、しどろもどろになってしまう。
でも、なんとしてでも、最後までこの言葉を伝えないといけない………。
その思いが、なんとか俺の口を動かした。
【ハク】
「俺は…っ…さ、今の黒木も、過去の黒木も…………全部、受け止める」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「だから――――だから………」
【黒木】
「…………ハク」
【ハク】
「!?」
――――その時。
ずっと沈黙していた黒木がとうとう口を開き、俺は慌てて顔をあげる。
……すると。
【ハク】
「く…ろき……!?」
【黒木】
「ハク………っ」
【ハク】
「黒木…お前……っ…!」
そこには―――――俺に向かってよろよろと歩く黒木の姿があった。
黒木が、車椅子をおり、自ら歩いたのだ。
それは頼りない足取りだったが、真っ直ぐに俺に向かっていた。
【ハク】
「黒木…黒木……っ」
【黒木】
「ハク……」
俺は黒木に駆け寄ると、思い切りギュッとその身体を抱きすくめた。
黒木のぬくもりがじんわりと伝わってくる。
今はもう、ちゃんと傍にいる。
あの頃とは違う。それが分かる。
【ハク】
「よかった……よかった、黒木………」
【黒木】
「うん…………」
俺の目からは、いつのまにか涙があふれていた。
見れば、黒木の目からも涙が流れている。
俺たちはいつのまにか号泣していた。
抱きしめ合いながら、子供のように泣きじゃくっていた。
思い出のこの場所で…………。
【ハク】
(もう……無理かもしれないって思ってた……)
【ハク】
(歩いてくれないんじゃないかって……でも…)
【ハク】
(……よかった……ここに来てよかった………)
【ハク】
(本当の気持ちを言って、本当に良かった……!)
高校時代、卒業式のあの日、再会、拘束されたこと、リハビリ………
今までの出来事が蘇る。
その長い記憶のせいで、涙はまったく止まる気配がない……。
【ハク】
(でも、それでもいいんだ………)
【ハク】
(今は、黒木とこうしていたいから……)
そんなふうに思う俺の耳に、黒木がぽつりと言った言葉が届く。
それは涙声だったが、俺の耳にはハッキリと聞こえた。
【黒木】
「俺……ハクを好きになってよかった…………」
――――その日の夜……。
俺たちは一緒にベッドの中にもぐりこんだ。
昼間のことがあったからか、少し気恥ずかしい感じもする……
でも、なんだかすごく幸せな気分だった。
【ハク】
(なんか良いな……こうして黒木といっしょに寝るの………)
俺たちは、しばらくとりとめのない話をしながら横になっていた。
その間、俺は至近距離で黒木の顔をじっと見つめる。
そうして見つめていると、だんだんと愛しい気持ちが溢れてきて、俺はなんだか物足りなくなってきてしまった。
【ハク】
(……こんなに近くにいるのに……まだ、足りない………)
【ハク】
(もっと、近づきたい…黒木も、そうだろう………?)
俺は、いつのまにか黒木の手に触れていた。
黒木が、少し驚いたように俺の顔を覗き込む。
【黒木】
「どうした、ハク……?」
【ハク】
「………あ…あの…さ」
【黒木】
「うん?」
【ハク】
(な、なんか……やっぱ…恥ずかしいな………)
俺は、ちょっと照れながら、黒木の手をギュッと握りこんだ。
続く…
「………黒木が俺に告白してくれた場所……だったね」
【黒木】
「………………」
俺は黒木の乗っている車椅子をドア付近の壁際に止めると、窓際に向かって歩いた。
俺と黒木の距離が、だんだんと離れていく。
いつもつるんで、同じ教室にいるのに、最後の最後で気持ちを理解できなかった…………
まるで当時の俺たちの距離のようだ。
【ハク】
「……あの頃の俺、よくこうして外とか見てたよな……」
【ハク】
「校庭で運動部の奴らが練習してるのを見て……でも俺はどっか無関心でさ……」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「そんな俺だからダメだったのかな…?」
【ハク】
「……この同じパソコンルーム内にいつも黒木がいたのに…」
【ハク】
「あの頃の俺、それにさえ無関心だったのかもしれないな……」
【黒木】
「…………」
俺の言葉に、黒木は黙ったまま何も答えない。俺は、あの頃にタイムスリップしたみたいに、窓から見える校庭を眺めていた。
あの頃の俺は、一体何を考えていたのだろう………。
【ハク】
(黒木は……あの頃からすでに、俺のことが好きだったんだ………)
この変わらない風景と同じように、黒木の気持ちも、あの頃のままなのだ。
たとえ、高校の頃のような純粋さや、まっとうな生き方は失われてしまったとしても………
気持ちは変わっていなかった……。
【ハク】
「――――あの時の俺は…黒木の気持ちに気づいてやれなかった………」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「………ごめんな…」
【黒木】
「………」
俺は、黒木に背を向けたまま、謝った。
黒木は黙っている。
【ハク】
「卒業式の日……黒木がせっかく決心して言ってくれた言葉も台無しにして」
【ハク】
「……ホント、ヒドイよな…」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「再会して……今日までいろいろあったけど……そのことは謝りたいと思ってた」
【ハク】
「謝ったって、あの時の黒木を傷つけたことには変わりないけど……さ」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「本当にごめん」
俺は、もう一度ハッキリと謝った。
今更こんなふうに謝ったところで、過去の何が変わるわけではない。
あの日の記憶は、あのまま残ってしまう。それはわかっている。
でも………。
【ハク】
(でも俺は……あの日で止まってしまったものを、前に進ませたいんだ……)
【ハク】
(あの頃の俺にできなかったこと………それを、今の俺が受け止めるんだ………)
俺は、しばらく黙り込んだ。
黒木もさっきから一言も言葉を口にしない………
だからその場には沈黙が流れる。
――――そして俺は、とうとう意を決した。
【ハク】
「……あのさ、黒木。俺……今ならちゃんと答えられると思うんだ……」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「今更って思われるかもしれない」
【ハク】
「都合がいいって、あの頃の黒木に笑われるかもしれない。………でも、俺…………」
俺は、黒木の方を振り返った。
車椅子に座った黒木はまっすぐ俺を見ている。だから俺もまっすぐに黒木を見る。
俺の目に、高校時代の黒木の姿が浮かび上がった。
俺をここに呼び出した黒木。
その黒木が口にした言葉。
その瞬間の、顔。
【ハク】
「――――俺。………黒木のこと、好きだ」
……あの日の、呆然とした黒木の顔が、そっと消えていく……。
【黒木】
「……っ……!」
俺の視線の先には、今、赤面して照れる黒木の顔があった。
それを見ていたら、俺まで恥ずかしくなってきてしまい、思わず俺はうつむいた……。
何しろ俺は今、あの日の黒木と同じように………告白、しているのだ………。
【ハク】
「今更…って、思っただろ…?でも、これは嘘じゃないから……っ。だから、その……っ」
【ハク】
(やば…いっ……なんか、今になって緊張してきた………っ)
【ハク】
(マトモに黒木の顔、見れない………っ)
さっきまでの、自分でも驚くほどしっかりした口調が崩れ、しどろもどろになってしまう。
でも、なんとしてでも、最後までこの言葉を伝えないといけない………。
その思いが、なんとか俺の口を動かした。
【ハク】
「俺は…っ…さ、今の黒木も、過去の黒木も…………全部、受け止める」
【黒木】
「…………」
【ハク】
「だから――――だから………」
【黒木】
「…………ハク」
【ハク】
「!?」
――――その時。
ずっと沈黙していた黒木がとうとう口を開き、俺は慌てて顔をあげる。
……すると。
【ハク】
「く…ろき……!?」
【黒木】
「ハク………っ」
【ハク】
「黒木…お前……っ…!」
そこには―――――俺に向かってよろよろと歩く黒木の姿があった。
黒木が、車椅子をおり、自ら歩いたのだ。
それは頼りない足取りだったが、真っ直ぐに俺に向かっていた。
【ハク】
「黒木…黒木……っ」
【黒木】
「ハク……」
俺は黒木に駆け寄ると、思い切りギュッとその身体を抱きすくめた。
黒木のぬくもりがじんわりと伝わってくる。
今はもう、ちゃんと傍にいる。
あの頃とは違う。それが分かる。
【ハク】
「よかった……よかった、黒木………」
【黒木】
「うん…………」
俺の目からは、いつのまにか涙があふれていた。
見れば、黒木の目からも涙が流れている。
俺たちはいつのまにか号泣していた。
抱きしめ合いながら、子供のように泣きじゃくっていた。
思い出のこの場所で…………。
【ハク】
(もう……無理かもしれないって思ってた……)
【ハク】
(歩いてくれないんじゃないかって……でも…)
【ハク】
(……よかった……ここに来てよかった………)
【ハク】
(本当の気持ちを言って、本当に良かった……!)
高校時代、卒業式のあの日、再会、拘束されたこと、リハビリ………
今までの出来事が蘇る。
その長い記憶のせいで、涙はまったく止まる気配がない……。
【ハク】
(でも、それでもいいんだ………)
【ハク】
(今は、黒木とこうしていたいから……)
そんなふうに思う俺の耳に、黒木がぽつりと言った言葉が届く。
それは涙声だったが、俺の耳にはハッキリと聞こえた。
【黒木】
「俺……ハクを好きになってよかった…………」
――――その日の夜……。
俺たちは一緒にベッドの中にもぐりこんだ。
昼間のことがあったからか、少し気恥ずかしい感じもする……
でも、なんだかすごく幸せな気分だった。
【ハク】
(なんか良いな……こうして黒木といっしょに寝るの………)
俺たちは、しばらくとりとめのない話をしながら横になっていた。
その間、俺は至近距離で黒木の顔をじっと見つめる。
そうして見つめていると、だんだんと愛しい気持ちが溢れてきて、俺はなんだか物足りなくなってきてしまった。
【ハク】
(……こんなに近くにいるのに……まだ、足りない………)
【ハク】
(もっと、近づきたい…黒木も、そうだろう………?)
俺は、いつのまにか黒木の手に触れていた。
黒木が、少し驚いたように俺の顔を覗き込む。
【黒木】
「どうした、ハク……?」
【ハク】
「………あ…あの…さ」
【黒木】
「うん?」
【ハク】
(な、なんか……やっぱ…恥ずかしいな………)
俺は、ちょっと照れながら、黒木の手をギュッと握りこんだ。
続く…