[本編] 黒木 忠生 編
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それから――――1年後。
真面目に熱心にリハビリをやり続けた黒木の足は、ほとんど治っていた。
病院の先生からも、もう大丈夫だという力強い言葉をもらい、俺は思わずホッとする。
【ハク】
「もう一年かあ………長いような、短いような……でも、あっという間だったなあ……」
【黒木】
「あぁ、本当だね。ハクがいてくれて、本当によかった。ハクがいなかったら、こんなに頑張れなかったな……」
【ハク】
「黒木の力になれて、嬉しいよ」
【黒木】
「あとは、料理ができれば完璧だね。ハク」
【ハク】
「いっ!?……そ、そこ…やっぱり必要かな……?」
【黒木】
「あはは。…なーんてね、ウソだよ、ウソ」
【ハク】
「な、なんだよ…っ」
【黒木】
「俺はね、ハク。こうしてハクと一緒にいられるのが一番嬉しいんだ……」
【ハク】
「………うん」
こうやって、軽い話題で笑えるようになったことも、俺には嬉しかった。
怪我をする前の、あの頃に……ちょっとだけでも近づいた気がして。
――――ただ、問題はまだあったのだ……。
【黒木】
「なぁ、ハク、ごめん。取りたいものがあるから、ちょっと椅子、押してくれる?」
【ハク】
「ああ、わかったよ」
家の中だけではなく、スーパーやショッピングモールでの買い物、散歩……どこに行くにも、黒木は車椅子で出かけた。
俺はその車椅子を押して、黒木が希望すれば、その方向に車椅子を向けたりする。
ここ一年半ほどずっとこんなふうにしていたから、俺はその動作にすっかり慣れてしまった。
…………でも。
【ハク】
(黒木………やっぱり、自分の足では歩こうとしない………)
もう黒木の足は、ほぼ治っている。本当は、なんとか一人ででも歩けるのだ。
それでも、黒木はまるでそうしようとはしなかった。
ずっと車椅子に乗ったままで…………。
【ハク】
(足が治ったからといって、このままじゃ……)
【ハク】
(結局、治っていないのと同じになってしまう………)
【ハク】
(……どうしたら黒木は、自分の足で歩いてくれるんだろう……?)
以前、医者にこっそりそれを相談したことがある。
どうやら、自分の中で無意識に、歩くのにブレーキをかけてしまっている状態らしい。
要するに、黒木自身がそのブレーキをはずさない限りは無理だというのだ。
【ハク】
(もうこれだけ時間が経っているのに、未だに解決していない……)
解決しないまま、時間だけが無駄に過ぎていっている。
何か、いい方法でもあれば良いのに――――
そう思いながらも、俺はいいアイディアも思いつかないまま車椅子を押し続けた。
――――そんなある日のこと。
【ハク】
「なあ、黒木。俺、黒木と一緒にいきたいところがあるんだけど……一緒に行ってくれるか?」
【黒木】
「へぇ、ハクが行きたいところか。どこ?」
【ハク】
「それはヒミツ!行ってからのお楽しみ……!」
【黒木】
「えぇ?なんだよ、それ?……でも良いや」
【黒木】
「ハクの行きたいところなら俺も興味あるし。……良いよ、行こう」
【ハク】
「ありがとう……!よし…じゃあ、さっそく支度して出かけようか」
俺は良いことを思いつき、黒木を外に連れ出した。
それが問題を解決してくれるというわけではないが、いい刺激になるとは思うから………。
【ハク】
(黒木、きっと驚くだろうなあ……)
俺はわくわくしながら車椅子を押していた。
電車に乗り、バスに乗り―――――
そして、とうとう目的の場所につく。
それに気づいた黒木の目が、驚きに見開いた。
【黒木】
「………ここは………」
【ハク】
「どう?懐かしいだろ……?」
そこは…………
俺たちが卒業した高校だった―――――。
あの頃となんら変わらない風景がそこにはあった。
校庭も、校舎も、校門を彩る木々も、ずっとあの頃のままだ。
俺たちが卒業した高校は、あの頃となんら変わりなくそこに建っていた。
【黒木】
「本当に懐かしいなぁ……でも、ハク。なんで急にこんなところに……?」
【ハク】
「俺たちの思い出の場所だからな」
【黒木】
「ふうん……」
【ハク】
「それにしてもホント、懐かしいな……あれからもう随分経つのに、ここはあの頃と変わってないんだな………」
【ハク】
(変わったものは、たくさんあるのに………俺にとっても、黒木にとっても……)
俺と黒木は、昔をなつかしみながら校庭を横切っていった。
学校帰りの生徒が2~3人、制服に身を包んで何やら楽しそうに喋りながら歩いている。
それを見て俺は、あの頃の自分達を思い出し、なんだか胸が切なくなった。
【ハク】
「校舎の中には入れないのかな?」
【黒木】
「さぁ、どうだろ。ハク、入りたいの?」
【ハク】
「だって、せっかくここまで来たんだぞ」
【ハク】
「どうせだったら、いろいろ見たいじゃないか。……俺、ちょっと聞いてくる……!」
【ハク】
(………なんて言って、本当はそっちのほうがメインなんだけどさ……」
【ハク】
(OKもらえなきゃ意味がないんだよな……)
俺は、黒木に断りをいれて、校内に入れるかどうかを聞きにいった。
ダメかもしれないという恐れはあったものの、なんとかOKをもらうことができた。
卒業生ということと、仕事の取材も兼ねてます、なんて嘘をついたのが功を奏したのかもしれない。
【ハク】
「それじゃ、数年ぶりに授業でも受けにいくか…っ」
【黒木】
「まぁ、授業ときたら俺は寝ないといけないんだけどね」
【ハク】
「そっか…そういえば黒木、いっつも寝てたもんなあ……」
【ハク】
「その割にはテストとかマトモだったし……思えばホント、憎たらしいヤツだったよ」
【黒木】
「あはは!ヒドイなぁ、ハク。器用だって言ってよ」
俺の冗談めかした言葉で、黒木が笑う。それが嬉しい。
俺は、声を出して笑う黒木を見て、やっぱり来て良かったな、などと思う。
【ハク】
(………あそこに着いたら……もっと喜んでくれればいいんだけど………)
車椅子を押す俺の手は、校舎内のある場所へと向かっていた。
俺は軽い話題を繰り出して、なるべくそれを悟られないようにしていたが………
どうやら道順だけで黒木は理解したらしい。俺がどこに向かおうとしているのか――――――。
【ハク】
「……ああ。そう言えば、ここだっけか……?」
目的の場所に着いて、俺は車椅子を止めた。
そして、わざと、たまたま通りかかっただけ、というように呟いてみせる。
すると黒木は、明らかに挙動不審になり、わざと知らないフリをした。
【黒木】
「…えっ?なんのこと……?」
【ハク】
「………」
【ハク】
(黒木……わかってるクセに………)
――――――そこは、パソコンルーム。
当時の俺たちがよく好んで入り浸っていた場所…………そして………。
真面目に熱心にリハビリをやり続けた黒木の足は、ほとんど治っていた。
病院の先生からも、もう大丈夫だという力強い言葉をもらい、俺は思わずホッとする。
【ハク】
「もう一年かあ………長いような、短いような……でも、あっという間だったなあ……」
【黒木】
「あぁ、本当だね。ハクがいてくれて、本当によかった。ハクがいなかったら、こんなに頑張れなかったな……」
【ハク】
「黒木の力になれて、嬉しいよ」
【黒木】
「あとは、料理ができれば完璧だね。ハク」
【ハク】
「いっ!?……そ、そこ…やっぱり必要かな……?」
【黒木】
「あはは。…なーんてね、ウソだよ、ウソ」
【ハク】
「な、なんだよ…っ」
【黒木】
「俺はね、ハク。こうしてハクと一緒にいられるのが一番嬉しいんだ……」
【ハク】
「………うん」
こうやって、軽い話題で笑えるようになったことも、俺には嬉しかった。
怪我をする前の、あの頃に……ちょっとだけでも近づいた気がして。
――――ただ、問題はまだあったのだ……。
【黒木】
「なぁ、ハク、ごめん。取りたいものがあるから、ちょっと椅子、押してくれる?」
【ハク】
「ああ、わかったよ」
家の中だけではなく、スーパーやショッピングモールでの買い物、散歩……どこに行くにも、黒木は車椅子で出かけた。
俺はその車椅子を押して、黒木が希望すれば、その方向に車椅子を向けたりする。
ここ一年半ほどずっとこんなふうにしていたから、俺はその動作にすっかり慣れてしまった。
…………でも。
【ハク】
(黒木………やっぱり、自分の足では歩こうとしない………)
もう黒木の足は、ほぼ治っている。本当は、なんとか一人ででも歩けるのだ。
それでも、黒木はまるでそうしようとはしなかった。
ずっと車椅子に乗ったままで…………。
【ハク】
(足が治ったからといって、このままじゃ……)
【ハク】
(結局、治っていないのと同じになってしまう………)
【ハク】
(……どうしたら黒木は、自分の足で歩いてくれるんだろう……?)
以前、医者にこっそりそれを相談したことがある。
どうやら、自分の中で無意識に、歩くのにブレーキをかけてしまっている状態らしい。
要するに、黒木自身がそのブレーキをはずさない限りは無理だというのだ。
【ハク】
(もうこれだけ時間が経っているのに、未だに解決していない……)
解決しないまま、時間だけが無駄に過ぎていっている。
何か、いい方法でもあれば良いのに――――
そう思いながらも、俺はいいアイディアも思いつかないまま車椅子を押し続けた。
――――そんなある日のこと。
【ハク】
「なあ、黒木。俺、黒木と一緒にいきたいところがあるんだけど……一緒に行ってくれるか?」
【黒木】
「へぇ、ハクが行きたいところか。どこ?」
【ハク】
「それはヒミツ!行ってからのお楽しみ……!」
【黒木】
「えぇ?なんだよ、それ?……でも良いや」
【黒木】
「ハクの行きたいところなら俺も興味あるし。……良いよ、行こう」
【ハク】
「ありがとう……!よし…じゃあ、さっそく支度して出かけようか」
俺は良いことを思いつき、黒木を外に連れ出した。
それが問題を解決してくれるというわけではないが、いい刺激になるとは思うから………。
【ハク】
(黒木、きっと驚くだろうなあ……)
俺はわくわくしながら車椅子を押していた。
電車に乗り、バスに乗り―――――
そして、とうとう目的の場所につく。
それに気づいた黒木の目が、驚きに見開いた。
【黒木】
「………ここは………」
【ハク】
「どう?懐かしいだろ……?」
そこは…………
俺たちが卒業した高校だった―――――。
あの頃となんら変わらない風景がそこにはあった。
校庭も、校舎も、校門を彩る木々も、ずっとあの頃のままだ。
俺たちが卒業した高校は、あの頃となんら変わりなくそこに建っていた。
【黒木】
「本当に懐かしいなぁ……でも、ハク。なんで急にこんなところに……?」
【ハク】
「俺たちの思い出の場所だからな」
【黒木】
「ふうん……」
【ハク】
「それにしてもホント、懐かしいな……あれからもう随分経つのに、ここはあの頃と変わってないんだな………」
【ハク】
(変わったものは、たくさんあるのに………俺にとっても、黒木にとっても……)
俺と黒木は、昔をなつかしみながら校庭を横切っていった。
学校帰りの生徒が2~3人、制服に身を包んで何やら楽しそうに喋りながら歩いている。
それを見て俺は、あの頃の自分達を思い出し、なんだか胸が切なくなった。
【ハク】
「校舎の中には入れないのかな?」
【黒木】
「さぁ、どうだろ。ハク、入りたいの?」
【ハク】
「だって、せっかくここまで来たんだぞ」
【ハク】
「どうせだったら、いろいろ見たいじゃないか。……俺、ちょっと聞いてくる……!」
【ハク】
(………なんて言って、本当はそっちのほうがメインなんだけどさ……」
【ハク】
(OKもらえなきゃ意味がないんだよな……)
俺は、黒木に断りをいれて、校内に入れるかどうかを聞きにいった。
ダメかもしれないという恐れはあったものの、なんとかOKをもらうことができた。
卒業生ということと、仕事の取材も兼ねてます、なんて嘘をついたのが功を奏したのかもしれない。
【ハク】
「それじゃ、数年ぶりに授業でも受けにいくか…っ」
【黒木】
「まぁ、授業ときたら俺は寝ないといけないんだけどね」
【ハク】
「そっか…そういえば黒木、いっつも寝てたもんなあ……」
【ハク】
「その割にはテストとかマトモだったし……思えばホント、憎たらしいヤツだったよ」
【黒木】
「あはは!ヒドイなぁ、ハク。器用だって言ってよ」
俺の冗談めかした言葉で、黒木が笑う。それが嬉しい。
俺は、声を出して笑う黒木を見て、やっぱり来て良かったな、などと思う。
【ハク】
(………あそこに着いたら……もっと喜んでくれればいいんだけど………)
車椅子を押す俺の手は、校舎内のある場所へと向かっていた。
俺は軽い話題を繰り出して、なるべくそれを悟られないようにしていたが………
どうやら道順だけで黒木は理解したらしい。俺がどこに向かおうとしているのか――――――。
【ハク】
「……ああ。そう言えば、ここだっけか……?」
目的の場所に着いて、俺は車椅子を止めた。
そして、わざと、たまたま通りかかっただけ、というように呟いてみせる。
すると黒木は、明らかに挙動不審になり、わざと知らないフリをした。
【黒木】
「…えっ?なんのこと……?」
【ハク】
「………」
【ハク】
(黒木……わかってるクセに………)
――――――そこは、パソコンルーム。
当時の俺たちがよく好んで入り浸っていた場所…………そして………。
