[本編] 黒木 忠生 編
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【ハク】
「?…なんだよ、そんな顔して…?」
【黒木】
「…ううん。ただ、こうしてハクがずっと傍にいてくれるのが嬉しいなぁって思って……」
【黒木】
「ずっとこのままだったら、ずっとハクに車椅子押してもらえるのになぁって……」
【ハク】
「黒木…なに言ってるんだよ…」
黒木の世話をするのが嫌というわけじゃない。
むしろ俺は、こうして世話できることが嬉しいような気もしていた。
でも………。
【ハク】
(俺は、黒木にちゃんと治ってもらいたいよ……)
【ハク】
(元通り、ちゃんと元気に、歩けるようになってほしい……)
黒木が入院している間、俺は家で一人きりだった。
昔だって、一人きりだったのに………
黒木との生活に慣れてしまったのか、なんだか寂しい気がする。
【ハク】
「そういえば黒木……俺の好きなもの、作ってくれたよなあ……」
俺は、味気ないコンビニの弁当をつつきながら、そんなことを思い出す。
思えばあれも、盗撮か何かで情報収集したのかもしれない。
でも……その事実よりも、そうして俺のためを思って作ってくれたことの方が、今の俺には大きかった。
【ハク】
「もうそろそろ……治るんだよな……」
俺はふと、カレンダーに目を向ける。
医者と黒木本人からの報告で、黒木のケガはもうそろそろ治りそうだということだった。
俺の介護も、もう随分と続いている。
【ハク】
「治ったら……今度はリハビリだよな……」
俺は、最初に医者から言われた言葉を思い出していた。
―――“相当の覚悟のリハビリをしない限りは……”
―――“残念ですが、元のように歩けるようになるのは難しいでしょうね”
【ハク】
「………………」
【ハク】
(黒木にとっては大きな壁だけど……でも、負けないで欲しい………)
俺は、一人きりの部屋で、そっと覚悟を決めた。
黒木のことを思いながら……。
それが、どんなに長く辛い道のりになろうとしても―――――
構わない。
【ハク】
「俺………最後まで介護しよう………」
【ハク】
「黒木の足が、元通りになるまで」
4ヶ月――――月日は流れていた。
俺の看護のかいもあってか、黒木の足の容体はかなり良くなった。
完全に砕けていた膝の骨はほとんど元に戻ったらしく、黒木は退院も許され、家に戻ってきたのだ。
もちろん、まだ車椅子ははずせなかったけれど……。
【ハク】
「どう、久々の我が家は?懐かしいだろ?」
【黒木】
「はは、確かにね。ハク、ずっと一人だったんだろ?俺がいなくて寂しかったんじゃない?」
【ハク】
「なっ…バカっ、何言ってんだよっ」
【ハク】
(ま、まあ……実際はそうだったけど……)
俺は、黒木とまた一緒に同じ部屋で生活できることが嬉しかった。
とはいえ、以前と違ってそれは容易なことではない。
何しろ、ケガが治ったといっても黒木は元のように歩けるわけではないのだ……。
それは、生活の中の些細なことにさえも、俺の介護を必要とするくらい……。
【黒木】
「こんなことまでハクに頼むなんて……ちょっと恥ずかしいな……」
【ハク】
「仕方ないだろ。お、俺だってちょっと恥ずかしいよ……俺、ドアの向こうで待ってるから…っ」
【ハク】
(トイレとか…さすがに人に見られたくないもんな………)
今の黒木はバランスを崩して倒れてしまうこともまだまだ多い。
俺は、身体を拭いたり、ベッドに寝かせたり、トイレの付き添いまで、とにかく黒木の傍についていなければならなかった。
自分だけでできないことがもどかしいのか、たまに黒木は悔しそうな顔をしたりする。
【ハク】
(黒木……入院中は、このままでもいい、だなんて言っていたけど……やっぱり辛いんだな……)
そんな黒木の姿を見ていると俺は切なくなってしまう。
早くリハビリを始めて、一日も早く元の黒木に戻ってほしいと思う……
それは、黒木のためにも………。
【ハク】
「黒木…リハビリ、いつから始めようか?先生も早いほうが良いって言ってたし、明日にでも行くか?」
【黒木】
「……そんな早くなくても良いよ」
【ハク】
「何言ってるんだよ。早く治さないと、ちゃんと歩けないだろ?今のままじゃ何かと不便だろうし……」
【黒木】
「俺は別に、ハクがついててくれればそれで良いんだよ……」
【ハク】
「そんなこと言ったって…俺だって、ずっと24時間くっついてるわけにはいかないだろ?」
【黒木】
「………」
黒木に元気になってもらいたい一心でそう言ったのに、黒木は何か別のことを思ったのか、そのまま押し黙ってしまう……。
でも――――黒木はリハビリをする決心をしてくれた。
【黒木】
「………わかったよ…ハクが言うなら……やる」
【ハク】
「……うん」
【ハク】
(良かった……)
――――その日以降、俺たちの過酷なリハビリの毎日が始まった。
リハビリは、当初医者が言ったとおり、想像を絶する過酷なものだった。
黒木は思い通りにならない自分の足にイラついているようで、額にも玉の汗が浮かんでいる。
俺はそれをなんとか支えようと、傍について励ました。
【黒木】
「うっ………っ……ふぅ……」
【ハク】
「いいぞ、黒木……その調子……!」
平行棒をたどって歩くリハビリで、よろめきながらも黒木はなんとか歩いていた。
隣についている俺の方が、なんだか感激して涙ぐんでしまう。
【ハク】
「そうだ……そうだよ、黒木……そのままゆっくり………」
【黒木】
「…っ……ううっ…………あっ…っ!!」
【ハク】
「黒木っ!?」
―――その時。
ふとした瞬間に突然バランスを崩した黒木が、途中で派手に転倒した。
俺はびっくりして慌てて黒木の身体を抱き起こす。
【ハク】
「大丈夫か!?黒木…!」
【黒木】
「く…っ…!」
【ハク】
「俺が支えてるから、ゆっくり起き上がろう…?な…?それで、もう一度、頑張って………」
【黒木】
「もういい…っ!!」
【ハク】
「黒木……?」
突然、黒木が叫び声を上げた。
俺は身体を支えながらも呆然と黒木を見やる。
【黒木】
「もういい…!こんなことやったって無駄だ!どうせ、完璧に元になんて戻らないんだ…!」
【ハク】
「な…なに言ってるんだよ、黒木。そんな、最初から諦めたら………」
【黒木】
「ハクだって…!こんな俺の面倒見るのなんて、もうコリゴリなんだろ…?」
【黒木】
「さっさとリハビリなんか終わらせたいって……なぁ、そう思ってるんだろ…?」
【ハク】
「………黒木………」
俺は悲しかった……
俺はそんなふうに思っているわけじゃない……。
こんなふうに黒木のリハビリにつきそうのだって、黒木の役に立てるなら嬉しいとさえ思っていたのに……。
【ハク】
「……俺、そんなこと思ってないよ……」
【ハク】
「黒木がちゃんと立って歩けるようになるまで、俺が黒木の足になって、ちゃんと支えるつもりだから……」
【黒木】
「ハク………」
【ハク】
「だから…俺と一緒に頑張ろう……?」
【ハク】
「お願いだから………」
【黒木】
「…………ごめん…何だかイライラして……」
【ハク】
「……いや、いいんだ」
【黒木】
「……俺、足を治して……もう二度とハクに悲しい顔をさせないって誓うよ……
【黒木】
「ごめんね、ハク」
気持ちが落ち着いたらしい黒木は、静かにそう言うと、俺の肩を借りてよろよろと立ち上がった。
そうして、バーをしっかりと掴み、一歩を踏み出す。
【ハク】
(黒木………いつかまた、一緒に肩を並べて歩けるよな………?)
俺は、もう一度リハビリに挑む黒木の姿を見て、心が熱くなるのを感じていた………。
続く…
「?…なんだよ、そんな顔して…?」
【黒木】
「…ううん。ただ、こうしてハクがずっと傍にいてくれるのが嬉しいなぁって思って……」
【黒木】
「ずっとこのままだったら、ずっとハクに車椅子押してもらえるのになぁって……」
【ハク】
「黒木…なに言ってるんだよ…」
黒木の世話をするのが嫌というわけじゃない。
むしろ俺は、こうして世話できることが嬉しいような気もしていた。
でも………。
【ハク】
(俺は、黒木にちゃんと治ってもらいたいよ……)
【ハク】
(元通り、ちゃんと元気に、歩けるようになってほしい……)
黒木が入院している間、俺は家で一人きりだった。
昔だって、一人きりだったのに………
黒木との生活に慣れてしまったのか、なんだか寂しい気がする。
【ハク】
「そういえば黒木……俺の好きなもの、作ってくれたよなあ……」
俺は、味気ないコンビニの弁当をつつきながら、そんなことを思い出す。
思えばあれも、盗撮か何かで情報収集したのかもしれない。
でも……その事実よりも、そうして俺のためを思って作ってくれたことの方が、今の俺には大きかった。
【ハク】
「もうそろそろ……治るんだよな……」
俺はふと、カレンダーに目を向ける。
医者と黒木本人からの報告で、黒木のケガはもうそろそろ治りそうだということだった。
俺の介護も、もう随分と続いている。
【ハク】
「治ったら……今度はリハビリだよな……」
俺は、最初に医者から言われた言葉を思い出していた。
―――“相当の覚悟のリハビリをしない限りは……”
―――“残念ですが、元のように歩けるようになるのは難しいでしょうね”
【ハク】
「………………」
【ハク】
(黒木にとっては大きな壁だけど……でも、負けないで欲しい………)
俺は、一人きりの部屋で、そっと覚悟を決めた。
黒木のことを思いながら……。
それが、どんなに長く辛い道のりになろうとしても―――――
構わない。
【ハク】
「俺………最後まで介護しよう………」
【ハク】
「黒木の足が、元通りになるまで」
4ヶ月――――月日は流れていた。
俺の看護のかいもあってか、黒木の足の容体はかなり良くなった。
完全に砕けていた膝の骨はほとんど元に戻ったらしく、黒木は退院も許され、家に戻ってきたのだ。
もちろん、まだ車椅子ははずせなかったけれど……。
【ハク】
「どう、久々の我が家は?懐かしいだろ?」
【黒木】
「はは、確かにね。ハク、ずっと一人だったんだろ?俺がいなくて寂しかったんじゃない?」
【ハク】
「なっ…バカっ、何言ってんだよっ」
【ハク】
(ま、まあ……実際はそうだったけど……)
俺は、黒木とまた一緒に同じ部屋で生活できることが嬉しかった。
とはいえ、以前と違ってそれは容易なことではない。
何しろ、ケガが治ったといっても黒木は元のように歩けるわけではないのだ……。
それは、生活の中の些細なことにさえも、俺の介護を必要とするくらい……。
【黒木】
「こんなことまでハクに頼むなんて……ちょっと恥ずかしいな……」
【ハク】
「仕方ないだろ。お、俺だってちょっと恥ずかしいよ……俺、ドアの向こうで待ってるから…っ」
【ハク】
(トイレとか…さすがに人に見られたくないもんな………)
今の黒木はバランスを崩して倒れてしまうこともまだまだ多い。
俺は、身体を拭いたり、ベッドに寝かせたり、トイレの付き添いまで、とにかく黒木の傍についていなければならなかった。
自分だけでできないことがもどかしいのか、たまに黒木は悔しそうな顔をしたりする。
【ハク】
(黒木……入院中は、このままでもいい、だなんて言っていたけど……やっぱり辛いんだな……)
そんな黒木の姿を見ていると俺は切なくなってしまう。
早くリハビリを始めて、一日も早く元の黒木に戻ってほしいと思う……
それは、黒木のためにも………。
【ハク】
「黒木…リハビリ、いつから始めようか?先生も早いほうが良いって言ってたし、明日にでも行くか?」
【黒木】
「……そんな早くなくても良いよ」
【ハク】
「何言ってるんだよ。早く治さないと、ちゃんと歩けないだろ?今のままじゃ何かと不便だろうし……」
【黒木】
「俺は別に、ハクがついててくれればそれで良いんだよ……」
【ハク】
「そんなこと言ったって…俺だって、ずっと24時間くっついてるわけにはいかないだろ?」
【黒木】
「………」
黒木に元気になってもらいたい一心でそう言ったのに、黒木は何か別のことを思ったのか、そのまま押し黙ってしまう……。
でも――――黒木はリハビリをする決心をしてくれた。
【黒木】
「………わかったよ…ハクが言うなら……やる」
【ハク】
「……うん」
【ハク】
(良かった……)
――――その日以降、俺たちの過酷なリハビリの毎日が始まった。
リハビリは、当初医者が言ったとおり、想像を絶する過酷なものだった。
黒木は思い通りにならない自分の足にイラついているようで、額にも玉の汗が浮かんでいる。
俺はそれをなんとか支えようと、傍について励ました。
【黒木】
「うっ………っ……ふぅ……」
【ハク】
「いいぞ、黒木……その調子……!」
平行棒をたどって歩くリハビリで、よろめきながらも黒木はなんとか歩いていた。
隣についている俺の方が、なんだか感激して涙ぐんでしまう。
【ハク】
「そうだ……そうだよ、黒木……そのままゆっくり………」
【黒木】
「…っ……ううっ…………あっ…っ!!」
【ハク】
「黒木っ!?」
―――その時。
ふとした瞬間に突然バランスを崩した黒木が、途中で派手に転倒した。
俺はびっくりして慌てて黒木の身体を抱き起こす。
【ハク】
「大丈夫か!?黒木…!」
【黒木】
「く…っ…!」
【ハク】
「俺が支えてるから、ゆっくり起き上がろう…?な…?それで、もう一度、頑張って………」
【黒木】
「もういい…っ!!」
【ハク】
「黒木……?」
突然、黒木が叫び声を上げた。
俺は身体を支えながらも呆然と黒木を見やる。
【黒木】
「もういい…!こんなことやったって無駄だ!どうせ、完璧に元になんて戻らないんだ…!」
【ハク】
「な…なに言ってるんだよ、黒木。そんな、最初から諦めたら………」
【黒木】
「ハクだって…!こんな俺の面倒見るのなんて、もうコリゴリなんだろ…?」
【黒木】
「さっさとリハビリなんか終わらせたいって……なぁ、そう思ってるんだろ…?」
【ハク】
「………黒木………」
俺は悲しかった……
俺はそんなふうに思っているわけじゃない……。
こんなふうに黒木のリハビリにつきそうのだって、黒木の役に立てるなら嬉しいとさえ思っていたのに……。
【ハク】
「……俺、そんなこと思ってないよ……」
【ハク】
「黒木がちゃんと立って歩けるようになるまで、俺が黒木の足になって、ちゃんと支えるつもりだから……」
【黒木】
「ハク………」
【ハク】
「だから…俺と一緒に頑張ろう……?」
【ハク】
「お願いだから………」
【黒木】
「…………ごめん…何だかイライラして……」
【ハク】
「……いや、いいんだ」
【黒木】
「……俺、足を治して……もう二度とハクに悲しい顔をさせないって誓うよ……
【黒木】
「ごめんね、ハク」
気持ちが落ち着いたらしい黒木は、静かにそう言うと、俺の肩を借りてよろよろと立ち上がった。
そうして、バーをしっかりと掴み、一歩を踏み出す。
【ハク】
(黒木………いつかまた、一緒に肩を並べて歩けるよな………?)
俺は、もう一度リハビリに挑む黒木の姿を見て、心が熱くなるのを感じていた………。
続く…