[本編] 黒木 忠生 編
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俺と黒木はタクシーに乗り込んだ。
動き出す車内で気を失ったままの黒木を見ていると、俺の目からは自然と涙が流れ始める。
涙は、止まる気配がなかった。
【ハク】
(黒木……こんな…こんな姿になって………)
俺の泣き声が聞こえたのか、痛みで気を失っていた黒木がぼんやりと意識を取り戻す。
黒木は、暴力を受けた腹と足に激痛が走っているらしく、顔を歪めている。
【黒木】
「…くっ……うぅ」
【黒木】
「ハク……?…泣いてるの………?」
【ハク】
「…っ……っく……」
【黒木】
「俺の為に…泣いてくれてる…の……?」
俺はただ頷くことしかできなかった。
うん、と言葉を返すことすらできないほどに涙が溢れて、それはいつしか嗚咽に変わっていた。
【黒木】
「ハク………ありがとう………」
【ハク】
「……ひ、っく……っく…っ……」
痛みに顔を歪めながらも必死に笑う黒木が、震える手をゆっくり伸ばしてくる。
俺はそれをぎゅっと握った。しっかりと、離さないように………。
――――――それから数分後……
タクシーが病院の前で停まった。
【ハク】
「病院に着いたよ、黒木。早く診てもらわないとな……」
【黒木】
「……つっ…!」
【ハク】
「あっ、黒木、無理すんなよ…!その体じゃ、一人では無理だろ?」
【ハク】
「俺の肩、貸すから……ほら、捕まって……」
【黒木】
「……ハク……」
【ハク】
「俺、手伝うから……」
黒木は自力でタクシーを降りようと踏ん張っていたが、それは無理に等しかった。
両膝はもう動かない状態で、自力で立ちあがることすら難しい状況だったのだ……。
俺は肩を貸し、黒木をタクシーから降ろすと、一直線に院内をめざした。
【黒木】
「…………ハク、ごめん……」
【ハク】
「え…?」
【黒木】
「……俺は、ハクに散々酷いことをしてきたのに………」
【黒木】
「ハクは、こんな俺のことを支えてくれるから………」
黒木は悲しそうな表情で、ぽつりとそう言った。
それはあまりにも感情的で……
多分、黒木は本心から心苦しく思っていたんだろう……
俺に対してやってきたことを……。
【ハク】
(そう言えば………こんなこと、昔もあったっけか………)
俺は、ぼろぼろになった黒木を支えながら、昔のことを思い出していた。
それは、やはり高校時代のあの頃のこと――――――……。
高校時代―――いつも一緒につるんでいた俺たちは、学校帰りによく繁華街で遊んでいた。
ゲーセンに行ったり、カラオケに行ったり、いろいろなことをしていたものだ。
そんなある日のこと…………。
【男子生徒1】
「おい、てめぇ!そこは俺の指定席なんだよ。なにすわってやがる…!」
【ハク】
「え…!?あ、ごめんなさい…っ」
ゲーセンでゲームをしていると、俺は突然、他校の生徒に絡まれた。いかにもガラが悪い。
指定席だなんて、そんなのはもちろん言いがかりだ。
それはわかっていたが、これ以上絡まれるのも嫌で、俺は素直に引き下がった。
………それなのに。
【男子生徒1】
「おいおい、なに逃げようとしてんだよ?あぁ?おい、お前おもて出ろ。ツラかせよ」
【ハク】
「ちょ、俺、別に何もしてな……!」
【男子生徒1】
「うるせぇ!!」
俺は強制的にゲーセンから引きずり出されると、数人の厳つい男子校生に取り囲まれた。
明らかにやばい……直感的にそう思ったのと同時に、パンチが飛んでくる。
【男子生徒1】
「覚悟しなっ!!」
【ハク】
「……っ……」
【黒木】
「ハク……っ!」
ボコッ…!
鈍い音が響いた。…………でも、痛くない………。
【ハク】
(あ…れ?今確かに、殴られたはずなのに……)
恐る恐る目を開けると、目の前にはボコボコに殴られる黒木の姿があった。
俺は目の前の光景が恐ろしくて、萎縮してしまい身体が動かせない……。
【男子生徒1】
「ははは!なんだこいつ、弱ぇな!」
【男子生徒2】
「いきがってんじゃねぇよ!このっ!」
【黒木】
「ぐっ……うっ、ぐ……っ……」
【男子生徒1】
「おらよ!もっと楽しませろよ!」
【ハク】
「あ………ぁ………」
【ハク】
(黒木………っ……)
黒木は、俺を助けようとして飛び出し、俺のかわりにボコボコにされていたのだ。
情けないことに俺は、自分の代わりに殴られている黒木を助けることができなかった……。
【男子生徒1】
「へっ!今後は生意気な態度とんじゃねーぞ!」
【黒木】
「う、……ぅ……っ」
しばらくすると、散々黒木を殴ったことで気が済んだらしい他校の生徒は、その場から立ち去っていった。
俺は慌てて黒木にかけ寄る。
【ハク】
「く………黒木…っ!」
【黒木】
「ハク………」
【ハク】
「ご、ごめ…ん…っ。お、おれ、ビビって動けなくて………っ」
【黒木】
「大丈夫だった……ハク?」
【ハク】
「え……?」
【黒木】
「ハクがなんともないなら…良かった………」
【ハク】
「く、ろき……」
黒木は、自分がボロボロだというのに、それでもまだ俺の身を気にしていた。
なんでそこまでしてくれるのだろうかと、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになったものだ―――。
【ハク】
(―――――今思うと……あれも、俺のことを好きだったから……だから、守ってくれたんだな……)
【ハク】
(それなのにあの時の俺は………黒木を守るなんて、全然考えられなかった……)
あの時のことを思い出して、俺の頬をまた涙がつたっていく。
俺のためにここまで身を挺してくれるなんて―――――。
【ハク】
(………次は、俺の番だ。今後は…これからは俺が、黒木を支えていかなくちゃ………)
俺は心の中でそう誓うと、黒木の身体を支える手にギュッと力を込めた。
黒木の家に帰ると、俺はソファに黒木を座らせた。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して渡すと、黒木はそれをゴクゴクと一気に飲み干す。
痛みが激しいのか、息が荒くなっている。
【ハク】
「大丈夫か、黒木……」
動き出す車内で気を失ったままの黒木を見ていると、俺の目からは自然と涙が流れ始める。
涙は、止まる気配がなかった。
【ハク】
(黒木……こんな…こんな姿になって………)
俺の泣き声が聞こえたのか、痛みで気を失っていた黒木がぼんやりと意識を取り戻す。
黒木は、暴力を受けた腹と足に激痛が走っているらしく、顔を歪めている。
【黒木】
「…くっ……うぅ」
【黒木】
「ハク……?…泣いてるの………?」
【ハク】
「…っ……っく……」
【黒木】
「俺の為に…泣いてくれてる…の……?」
俺はただ頷くことしかできなかった。
うん、と言葉を返すことすらできないほどに涙が溢れて、それはいつしか嗚咽に変わっていた。
【黒木】
「ハク………ありがとう………」
【ハク】
「……ひ、っく……っく…っ……」
痛みに顔を歪めながらも必死に笑う黒木が、震える手をゆっくり伸ばしてくる。
俺はそれをぎゅっと握った。しっかりと、離さないように………。
――――――それから数分後……
タクシーが病院の前で停まった。
【ハク】
「病院に着いたよ、黒木。早く診てもらわないとな……」
【黒木】
「……つっ…!」
【ハク】
「あっ、黒木、無理すんなよ…!その体じゃ、一人では無理だろ?」
【ハク】
「俺の肩、貸すから……ほら、捕まって……」
【黒木】
「……ハク……」
【ハク】
「俺、手伝うから……」
黒木は自力でタクシーを降りようと踏ん張っていたが、それは無理に等しかった。
両膝はもう動かない状態で、自力で立ちあがることすら難しい状況だったのだ……。
俺は肩を貸し、黒木をタクシーから降ろすと、一直線に院内をめざした。
【黒木】
「…………ハク、ごめん……」
【ハク】
「え…?」
【黒木】
「……俺は、ハクに散々酷いことをしてきたのに………」
【黒木】
「ハクは、こんな俺のことを支えてくれるから………」
黒木は悲しそうな表情で、ぽつりとそう言った。
それはあまりにも感情的で……
多分、黒木は本心から心苦しく思っていたんだろう……
俺に対してやってきたことを……。
【ハク】
(そう言えば………こんなこと、昔もあったっけか………)
俺は、ぼろぼろになった黒木を支えながら、昔のことを思い出していた。
それは、やはり高校時代のあの頃のこと――――――……。
高校時代―――いつも一緒につるんでいた俺たちは、学校帰りによく繁華街で遊んでいた。
ゲーセンに行ったり、カラオケに行ったり、いろいろなことをしていたものだ。
そんなある日のこと…………。
【男子生徒1】
「おい、てめぇ!そこは俺の指定席なんだよ。なにすわってやがる…!」
【ハク】
「え…!?あ、ごめんなさい…っ」
ゲーセンでゲームをしていると、俺は突然、他校の生徒に絡まれた。いかにもガラが悪い。
指定席だなんて、そんなのはもちろん言いがかりだ。
それはわかっていたが、これ以上絡まれるのも嫌で、俺は素直に引き下がった。
………それなのに。
【男子生徒1】
「おいおい、なに逃げようとしてんだよ?あぁ?おい、お前おもて出ろ。ツラかせよ」
【ハク】
「ちょ、俺、別に何もしてな……!」
【男子生徒1】
「うるせぇ!!」
俺は強制的にゲーセンから引きずり出されると、数人の厳つい男子校生に取り囲まれた。
明らかにやばい……直感的にそう思ったのと同時に、パンチが飛んでくる。
【男子生徒1】
「覚悟しなっ!!」
【ハク】
「……っ……」
【黒木】
「ハク……っ!」
ボコッ…!
鈍い音が響いた。…………でも、痛くない………。
【ハク】
(あ…れ?今確かに、殴られたはずなのに……)
恐る恐る目を開けると、目の前にはボコボコに殴られる黒木の姿があった。
俺は目の前の光景が恐ろしくて、萎縮してしまい身体が動かせない……。
【男子生徒1】
「ははは!なんだこいつ、弱ぇな!」
【男子生徒2】
「いきがってんじゃねぇよ!このっ!」
【黒木】
「ぐっ……うっ、ぐ……っ……」
【男子生徒1】
「おらよ!もっと楽しませろよ!」
【ハク】
「あ………ぁ………」
【ハク】
(黒木………っ……)
黒木は、俺を助けようとして飛び出し、俺のかわりにボコボコにされていたのだ。
情けないことに俺は、自分の代わりに殴られている黒木を助けることができなかった……。
【男子生徒1】
「へっ!今後は生意気な態度とんじゃねーぞ!」
【黒木】
「う、……ぅ……っ」
しばらくすると、散々黒木を殴ったことで気が済んだらしい他校の生徒は、その場から立ち去っていった。
俺は慌てて黒木にかけ寄る。
【ハク】
「く………黒木…っ!」
【黒木】
「ハク………」
【ハク】
「ご、ごめ…ん…っ。お、おれ、ビビって動けなくて………っ」
【黒木】
「大丈夫だった……ハク?」
【ハク】
「え……?」
【黒木】
「ハクがなんともないなら…良かった………」
【ハク】
「く、ろき……」
黒木は、自分がボロボロだというのに、それでもまだ俺の身を気にしていた。
なんでそこまでしてくれるのだろうかと、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになったものだ―――。
【ハク】
(―――――今思うと……あれも、俺のことを好きだったから……だから、守ってくれたんだな……)
【ハク】
(それなのにあの時の俺は………黒木を守るなんて、全然考えられなかった……)
あの時のことを思い出して、俺の頬をまた涙がつたっていく。
俺のためにここまで身を挺してくれるなんて―――――。
【ハク】
(………次は、俺の番だ。今後は…これからは俺が、黒木を支えていかなくちゃ………)
俺は心の中でそう誓うと、黒木の身体を支える手にギュッと力を込めた。
黒木の家に帰ると、俺はソファに黒木を座らせた。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して渡すと、黒木はそれをゴクゴクと一気に飲み干す。
痛みが激しいのか、息が荒くなっている。
【ハク】
「大丈夫か、黒木……」