[本編] 黒木 忠生 編
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あの日、俺は絶望の淵に落とされた……何もかも失ったのだと、そう思って……。
その時つながった黒木との電話は、唯一の救いのような気がしていた。
【ハク】
(それなのに……それなのに、本当はそれすら黒木の思い通りだったんだ………)
黒木を信じていたあの日の自分が、バカみたいだと思った。
情けなくて、悔しくて……悲しくて――――。
【ハク】
「…あの放火……俺の家が火事になったのも、お前のせいなのか……?」
【黒木】
「そうだよ?」
黒木は悪びれもなくそう言う。本当に悪いだなんて思っていないみたいだ。
俺は、怒りと悲しみが混ざり合って、どうしようもない気分になってしまう。
【ハク】
「なんでだよ…?なんでそんなこと、したんだよ…っ……!?」
【黒木】
「だって、俺らが一緒にいるためには理由が必要だろ?」
【ハク】
「り、ゆう……?」
【黒木】
「そう、理由。いろいろ考えたんだよ?でもまぁ、あれが一番良いかなあと思ってさ」
【ハク】
「な、に…言って……っ…」
【黒木】
「でもさぁ、けっこう粋な演出だったと思わない?最高だったろ、あれ?」
【ハク】
「ふざけるなよ……っ!俺が…俺が、どんな気持ちでいたと……っ…!」
【黒木】
「ん?でも、大事なものはみんなこっちに移動させてあるから、心配いらないよ?」
【ハク】
「黒木……おまえ……な、んで……そんな………」
【黒木】
「ほら、これとか…。俺たちの高校の卒業アルバム。ここに2人で写ってる写真もちゃぁんと取ってある……最高だったなぁ……」
【ハク】
「く、ろき……」
【黒木】
「あぁ、見てみろよ、ハク。ほら、これなんか最高の写真じゃないか……」
【ハク】
「………」
【ハク】
(だめだ……もうすでに俺の言葉も理解してない………)
【ハク】
(完全に自分の世界に入っている………)
その目は、あからさまにオカしくなっている。異常だ……瞳孔まで開いている……。
狂気じみたその表情に、俺は寒気を覚える。
そんな黒木に、自由を奪われているという事実は、あまりにも恐怖だった。
【ハク】
(―――――でも……これで、納得はいった気がする…………)
俺は、今まで俺の身に起こった奇妙な出来事を思い返していた。
あの家の火事、小物や洋服がなくなったこと……
それだけじゃない、拉致されたときだって黒木はあんなに早く助けに来たのだ………。
【ハク】
(いままでのこと、すべて………黒木の仕業だったんだ……黒木がわざと、やったことだったんだ……)
つまり俺は、いままで常に黒木に監視されていたということだ………。
いつも、タイミングよく黒木が現れて、俺はそれが黒木の優しさなのだと、純粋に感謝して……。
今までの疑問点がつながり、俺は恐怖に震えた。
恐ろしすぎて、体中から力が抜けていく………。
【ハク】
(そうだ、あの時だって黒木はオカしかったじゃないか……)
【ハク】
(だけど俺は、気のせいだって思い込んで………)
そうだ……あれは、元上司の会社が倒産したとニュースで知ったあの時。
俺の為に会社を倒産まで追い込んだ黒木に、どうしてそこまでしてくれるのかと俺は尋ねた。
あの時、俺は違和感を覚えたものの、それを心にしまいこんだ。
――――でも、あれは………。
【ハク】
(あの正体は、これだったんだ……)
【ハク】
(なんであの時、ちゃんと考えなかったんだ……)
【ハク】
(なんで……もっと、早く気付かなかったんだ………!)
俺は、後悔していた。
いつも、黒木を信じすぎていた自分自身に―――――……。
【黒木】
「さあ、これからお楽しみの時間だよ……」
黒木はじっと俺を見ると、笑顔で嬉しそうに言った。
ぐにゃりと歪んだような含みのあるその笑顔に、俺は気味が悪くなる。
つい数時間前まではあんなに普通に良いやつだと感じていた黒木の正体が、こんなだったなんて………。
【黒木】
「今まで我慢してきた分、楽しませてもらわないとね。……『ハク』……」
【ハク】
「……あ…っ……」
【ハク】
(いま、俺のこと……ハク、って………)
俺はその言葉をきいて、ようやく高校時代の俺がなんと呼ばれていたかを思い出した。
【ハク】
(そうだ………あの頃の俺は、ハク、って呼ばれていたんだ………)
他のやつらは俺をハクと呼んでいたけれど、黒木だけは俺をハクと呼んでいた。
だから、ハクと呼ばれれば、それが黒木だということがすぐに分かった………。
【ハク】
(そうだ……どうして忘れてたんだろう………?)
再会した黒木は、ずっと俺をハクと呼んでいた。
俺はそれが普通のような気になっていて……特に何も思わなかった。
【黒木】
「ははっ、なぁ、やっと思い出してくれた?俺がハクって呼んでたこと……」
【ハク】
「……っ…」
【黒木】
「いつ思い出してくれるんだろうって、もううずうずしちゃったよ」
【黒木】
「だけどハク、全然思い出してくれないんだもんなぁ」
【黒木】
「………悲しかったよ。ハクも酷いと思うだろ?」
【ハク】
「黒木……」
【黒木】
「俺だけがハクって呼んでたのに………俺だけの特権だったのにな」
黒木は急に悲しそうな顔になると、俺の顔をじいっと覗き込んできた。
至近距離で、黒木の見開いた目が俺を見ている………恐ろしくて目がそらせない。
【黒木】
「……でも良いよ。許してあげる。もう、我慢しなくて良いんだから」
【ハク】
「が…我慢って………いったい、何の事だよ……?」
【黒木】
「――――ハク……ほんっとに忘れてるの?…なんでハクはそんなに忘れちゃったんだよ?俺たちの、大切な思い出なのに……」
【ハク】
「な、なんのことだよ………?」
そんなふうに言われても、なんのことだかまるで分からない。
確かに高校時代の記憶は、黒木ほど明確には覚えていなかったけれど……。
黒木は、ねっとりと絡みつくように、俺に言った。
【黒木】
「忘れたなんて言わせない……俺があの日、どんな気分だったか……分かる?」
俺はあの日の出来事を完全に思い出した。
【黒木】
「――――俺が……ハクを好きだって、そう告げたあの日のことだよ…………」
俺は完全に思い出していた。
そう、卒業式のあの日、黒木にいつものパソコンルームに呼び出されて…
黒木から好きだと告白された日のことを…
【黒木】
「やっと思い出してくれたんだね…」
【黒木】
「この日をどんなに待ちわびていたか……………ハ…ク…」
その瞬間険しい顔をしていた黒木の表情が一瞬にして歓喜に変わり、その瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちるのが見えた。
続く…
その時つながった黒木との電話は、唯一の救いのような気がしていた。
【ハク】
(それなのに……それなのに、本当はそれすら黒木の思い通りだったんだ………)
黒木を信じていたあの日の自分が、バカみたいだと思った。
情けなくて、悔しくて……悲しくて――――。
【ハク】
「…あの放火……俺の家が火事になったのも、お前のせいなのか……?」
【黒木】
「そうだよ?」
黒木は悪びれもなくそう言う。本当に悪いだなんて思っていないみたいだ。
俺は、怒りと悲しみが混ざり合って、どうしようもない気分になってしまう。
【ハク】
「なんでだよ…?なんでそんなこと、したんだよ…っ……!?」
【黒木】
「だって、俺らが一緒にいるためには理由が必要だろ?」
【ハク】
「り、ゆう……?」
【黒木】
「そう、理由。いろいろ考えたんだよ?でもまぁ、あれが一番良いかなあと思ってさ」
【ハク】
「な、に…言って……っ…」
【黒木】
「でもさぁ、けっこう粋な演出だったと思わない?最高だったろ、あれ?」
【ハク】
「ふざけるなよ……っ!俺が…俺が、どんな気持ちでいたと……っ…!」
【黒木】
「ん?でも、大事なものはみんなこっちに移動させてあるから、心配いらないよ?」
【ハク】
「黒木……おまえ……な、んで……そんな………」
【黒木】
「ほら、これとか…。俺たちの高校の卒業アルバム。ここに2人で写ってる写真もちゃぁんと取ってある……最高だったなぁ……」
【ハク】
「く、ろき……」
【黒木】
「あぁ、見てみろよ、ハク。ほら、これなんか最高の写真じゃないか……」
【ハク】
「………」
【ハク】
(だめだ……もうすでに俺の言葉も理解してない………)
【ハク】
(完全に自分の世界に入っている………)
その目は、あからさまにオカしくなっている。異常だ……瞳孔まで開いている……。
狂気じみたその表情に、俺は寒気を覚える。
そんな黒木に、自由を奪われているという事実は、あまりにも恐怖だった。
【ハク】
(―――――でも……これで、納得はいった気がする…………)
俺は、今まで俺の身に起こった奇妙な出来事を思い返していた。
あの家の火事、小物や洋服がなくなったこと……
それだけじゃない、拉致されたときだって黒木はあんなに早く助けに来たのだ………。
【ハク】
(いままでのこと、すべて………黒木の仕業だったんだ……黒木がわざと、やったことだったんだ……)
つまり俺は、いままで常に黒木に監視されていたということだ………。
いつも、タイミングよく黒木が現れて、俺はそれが黒木の優しさなのだと、純粋に感謝して……。
今までの疑問点がつながり、俺は恐怖に震えた。
恐ろしすぎて、体中から力が抜けていく………。
【ハク】
(そうだ、あの時だって黒木はオカしかったじゃないか……)
【ハク】
(だけど俺は、気のせいだって思い込んで………)
そうだ……あれは、元上司の会社が倒産したとニュースで知ったあの時。
俺の為に会社を倒産まで追い込んだ黒木に、どうしてそこまでしてくれるのかと俺は尋ねた。
あの時、俺は違和感を覚えたものの、それを心にしまいこんだ。
――――でも、あれは………。
【ハク】
(あの正体は、これだったんだ……)
【ハク】
(なんであの時、ちゃんと考えなかったんだ……)
【ハク】
(なんで……もっと、早く気付かなかったんだ………!)
俺は、後悔していた。
いつも、黒木を信じすぎていた自分自身に―――――……。
【黒木】
「さあ、これからお楽しみの時間だよ……」
黒木はじっと俺を見ると、笑顔で嬉しそうに言った。
ぐにゃりと歪んだような含みのあるその笑顔に、俺は気味が悪くなる。
つい数時間前まではあんなに普通に良いやつだと感じていた黒木の正体が、こんなだったなんて………。
【黒木】
「今まで我慢してきた分、楽しませてもらわないとね。……『ハク』……」
【ハク】
「……あ…っ……」
【ハク】
(いま、俺のこと……ハク、って………)
俺はその言葉をきいて、ようやく高校時代の俺がなんと呼ばれていたかを思い出した。
【ハク】
(そうだ………あの頃の俺は、ハク、って呼ばれていたんだ………)
他のやつらは俺をハクと呼んでいたけれど、黒木だけは俺をハクと呼んでいた。
だから、ハクと呼ばれれば、それが黒木だということがすぐに分かった………。
【ハク】
(そうだ……どうして忘れてたんだろう………?)
再会した黒木は、ずっと俺をハクと呼んでいた。
俺はそれが普通のような気になっていて……特に何も思わなかった。
【黒木】
「ははっ、なぁ、やっと思い出してくれた?俺がハクって呼んでたこと……」
【ハク】
「……っ…」
【黒木】
「いつ思い出してくれるんだろうって、もううずうずしちゃったよ」
【黒木】
「だけどハク、全然思い出してくれないんだもんなぁ」
【黒木】
「………悲しかったよ。ハクも酷いと思うだろ?」
【ハク】
「黒木……」
【黒木】
「俺だけがハクって呼んでたのに………俺だけの特権だったのにな」
黒木は急に悲しそうな顔になると、俺の顔をじいっと覗き込んできた。
至近距離で、黒木の見開いた目が俺を見ている………恐ろしくて目がそらせない。
【黒木】
「……でも良いよ。許してあげる。もう、我慢しなくて良いんだから」
【ハク】
「が…我慢って………いったい、何の事だよ……?」
【黒木】
「――――ハク……ほんっとに忘れてるの?…なんでハクはそんなに忘れちゃったんだよ?俺たちの、大切な思い出なのに……」
【ハク】
「な、なんのことだよ………?」
そんなふうに言われても、なんのことだかまるで分からない。
確かに高校時代の記憶は、黒木ほど明確には覚えていなかったけれど……。
黒木は、ねっとりと絡みつくように、俺に言った。
【黒木】
「忘れたなんて言わせない……俺があの日、どんな気分だったか……分かる?」
俺はあの日の出来事を完全に思い出した。
【黒木】
「――――俺が……ハクを好きだって、そう告げたあの日のことだよ…………」
俺は完全に思い出していた。
そう、卒業式のあの日、黒木にいつものパソコンルームに呼び出されて…
黒木から好きだと告白された日のことを…
【黒木】
「やっと思い出してくれたんだね…」
【黒木】
「この日をどんなに待ちわびていたか……………ハ…ク…」
その瞬間険しい顔をしていた黒木の表情が一瞬にして歓喜に変わり、その瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちるのが見えた。
続く…
